『RE:LAY ―幽霊となった伝説のモデルが妹をプロデュースする話―』 のすべてのチャプター: チャプター 71 - チャプター 73

73 チャプター

第71話《正しい人たち》

1.Atelier SAKUMA・続き 静寂。 白い仮縫いの中で。 彩が立っている。 その正面。 佐久間。 少し離れた場所に。 七瀬。 二人の視線は。 互いではなく。 彩へ向いている。 それでも。 見ているものは。 違っていた。 佐久間 「これは。」 一拍。 「僕が作った服です。」 七瀬 「歌原彩が着た時点で。」 一拍。 「あなた一人の服じゃありません。」 空気が。 また。 硬くなる。 良太は。 二人を見る。 次に。 彩を見る。 彩は。 何も言わない。 言えない。 自分のために作られた服。 自分の顔を守ろうとする人。 どちらかを選べば。 もう一方を。 否定するような気がした。 良太 「七瀬さん。」 七瀬 「何ですか。」 良太は。 一度。 息を整える。 「触る前に。」 「佐久間さんへ。」 「確認してください。」 七瀬 「確認したら。」 「変えてくれるんですか?」 佐久間 「必要なら。」 七瀬が。 佐久間を見る。 「必要です。」 佐久間 「僕は。」 「まだ。」 「必要だと思っていません。」 七瀬 「だから。」 「私が説明してるんです。」 佐久間 「説明は聞きました。」 「その上で。」 「今は変えません。」 七瀬の眉が。 少し動く。 良太 「七瀬さん。」 一拍。 「前に。」 「約束しましたよね。」 七瀬は。 良太を見る。 良太 「ヘアメイクは。」 「七瀬さんへ任せる。」 「でも。」 「他の担当へ。」 「勝手に口を出さない。」 七瀬 「勝手には出してません。」 良太 「出してます。」 即答だった。 七瀬が。 少し止まる。 良太 「佐久間さんが。」 「触らないでと言ったのに。」 「触ろうとした。」 「それは。」 「ルール違反です。」 七瀬は。 彩を見る。 首元。 顎。 目元。 そして。 良太へ戻る。 「じゃあ。」 一拍。 「間違ってると思っても。」 「黙ってろってことですか?」 良太 「違います。」 七瀬 「同じでしょう。」 良太 「違います。」 今度は。 少し強く。 良太は言った。 七瀬が。 良太を見る。 良太 「意見を言うなとは。」 「言
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第72話《ちゃんと歩ける服》

1.Atelier SAKUMA・続き 「だから。」 一拍。 「ちゃんと歩ける服にしてほしいです。」 白い仮縫いの中で。 彩が。 佐久間を見ている。 佐久間は。 すぐには答えなかった。 首元。 肩。 腰。 裾。 自分が引いた線。 彩だけを見て。 描いたはずの服。 けれど。 その中で。 彩は。 苦しそうに立っている。 佐久間 「……分かりました。」 一拍。 「直します。」 彩 「全部ですか?」 佐久間は。 首を横に振る。 「好きだと言ってくれたところは。」 「残します。」 一拍。 「歩けないところだけ。」 「全部。」 「見つけます。」 彩は。 小さく頷く。 「お願いします。」 その声は。 服を作ってもらう人ではなく。 一緒に作る人の声だった。 ―――――――――― 2.見ていたもの 佐久間は。 彩へ椅子を勧める。 「座ってみてください。」 彩が。 腰を下ろす。 その瞬間。 背中が。 不自然に伸びる。 七瀬 「苦しい?」 彩 「少し。」 佐久間 「どこが?」 彩は。 腰を指す。 「後ろへ。」 「引っ張られる感じがします。」 奏が。 背後へ回る。 「布が。」 「上に引かれてます。」 七瀬は。 彩の顔を見る。 「顎も上がってる。」 佐久間 「顎?」 七瀬 「苦しいから。」 「身体が逃げてる。」 佐久間は。 彩を見る。 さっきまで。 七瀬は。 首元を下げろと言った。 佐久間は。 形を守ろうとした。 けれど。 どちらも。 彩が苦しいかは。 聞いていなかった。 七瀬 「私。」 一拍。 「顔しか見てなかった。」 佐久間も。 仮縫いを見る。 「僕は。」 「服しか見ていなかった。」 奏が。 裾の近くへしゃがむ。 布へ触れる前に。 佐久間を見る。 「触ってもいいですか?」 佐久間は。 一瞬だけ止まり。 頷く。 「お願いします。」 奏は。 裾を持ち上げる。 「私は。」 一拍。 「動きしか見てませんでした。」 良太 「全員。」 「彩を見てたんじゃないの?」 誰も。 答えない。 レイラが。 小さく言う。 「見てたわ。」 一拍。 「自分が見たいところだけ。」 ――――
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第73話《新人の目》

1.待たせない布 Atelier SAKUMA・午後。 机の上に。 何枚もの布が。 並んでいる。 厚い布。 薄い布。 硬い布。 柔らかい布。 奏は。 一枚ずつ。 持ち上げる。 揺らす。 離す。 布が落ちる速さを。 見ている。 良太 「何してるの?」 奏 「探してます。」 「何を?」 一拍。 「彩さんを。」 「待たせない布。」 佐久間が。 奏を見る。 奏は。 今の仮縫いに使われている布を持つ。 「外側の布が。」 「彩さんの足より。」 「少し遅れてます。」 佐久間 「静けさを出すためです。」 奏 「はい。」 「外側は。」 「変えなくていいと思います。」 別の薄い布を取る。 「変えるのは。」 「内側だけです。」 次に。 少し張りのある布を重ねる。 「こっちと。」 「重ねたら。」 佐久間が。 二枚を受け取る。 揺らす。 内側は早く動き。 外側は。 わずかに遅れて落ちる。 佐久間 「……面白い。」 七瀬 「根拠は?」 奏の手が。 止まる。 「見たら。」 「そう思ったので。」 七瀬 「それは根拠じゃない。」 一拍。 「歩幅が変わっても?」 「ターンでも?」 「本番の生地でも?」 「同じになるの?」 奏は。 答えられない。 「たぶん。」 「試してみないと。」 七瀬 「本番で。」 「たぶんは使えない。」 空気が。 少し硬くなる。 良太 「言い方。」 七瀬 「普通です。」 奏は。 布を見つめたまま。 手放さない。 七瀬 「説明できないなら。」 「説明できるまで考えて。」 一拍。 「新人だからって。」 「本番は待ってくれない。」 厳しい。 けれど。 拒絶ではない。 良太が。 机へ近づく。 「仮縫いに。」 「付けられる?」 奏 「え?」 「試したら。」 「分かることがあるんじゃない?」 七瀬 「失敗したら?」 良太 「仮縫いですよね。」 一拍。 「試すために。」 「あるんじゃないですか。」 佐久間は。 奏を見る。 「どのくらい必要ですか。」 奏は。 仮縫いを見る。 「二十分ください。」 佐久間 「分かりました。」 ―――――――――― 2.好きで見てきたもの
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