All Chapters of 『RE:LAY ―幽霊となった伝説のモデルが妹をプロデュースする話―』: Chapter 91 - Chapter 92

92 Chapters

第91話《久しぶりね、ノルディ》

RE:CODE MODE CONTEST、本番当日。チーム彩に、もう新しくできることはなかった。衣装は、佐久間博之が最後まで詰めた。七瀬は、本番で直す回数そのものを減らす前提でヘアとメイクを組んだ。奏は、彩が歩いた時に服がどう動くかを何度も確認した。良太は移動時間、持ち物、連絡先、当日の導線まで紙に落とした。そして彩は。歩いた。何度も。服を見て。自分の身体を見て。止まって。また歩いた。御堂玲奈のチームほど人数はいない。真壁ミラのチームほど経験もない。万全かと聞かれれば、違う。足りないものはいくらでもある。それでも。今いる人間でできることは、全部やった。あとは。本番を待つだけだった。*「……帰りたい」良太が小さく言った。会場へ入って、まだ十分も経っていなかった。隣にいたレイラが呆れた顔をする。《何しに来たのよ》「いや、違うんだよ」良太は声を抑えた。「頭では分かってたんだけど」改めて、周囲を見る。モデル。その所属事務所。スタイリスト。ヘア。メイク。デザイナー。スポンサー関係者。招待客。ファッション誌。テレビ。配信メディア。海外メディアらしいカメラまである。通路の向こうには観客席。すでに何百人もの人間が入場を始めていた。いたるところでカメラのシャッターが鳴る。スタッフがインカムで連絡を取り合う。知らない言語も聞こえる。そのすべてが。自分とは無縁だった世界に見えた。「場違いにもほどがあるだろ……」《今さら?》「今さらだから怖いんだよ」良太は胸元のスタッフパスを見る。《UTAHARA MODEL OFFICE 代表》何度見ても。自分の名前がここにあることがおかしい。少し前まで。五年間、ほとんど働いていなかった。ファッション誌の名前も知らなかった。モデルの歩き方に種類があることすら知らなかった。それが今。世界最高峰のコレクションへつながる大会で。一つのモデル事務所の代表として立っている。「……ほんとに俺でよかったのかな」レイラは何も言わなかった。少し離れた場所では、彩が七瀬の前に座っている。奏が衣装を確認し。佐久間が裾を見ている。誰も慌てていない。少なくとも。良太よりは。ずっと落ち着いて見えた。良太はしばらくその光景を見ていた。そ
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第92話《五時間》

本番当日。 午前八時四十五分。 RE:CODE MODE CONTESTのメインステージに、十六人のモデルが並んでいた。 御堂玲奈。 真壁ミラ。 そして。 歌原彩。 ほか十三名。 国内の大手事務所から推薦された者。 海外経験のある者。 広告や雑誌で名前を知られている者。 まだ若い者。 それぞれ違う経歴を持った十六人が、同じ照明の下に立っている。 客席にはスポンサー関係者、ファッション業界の人間、招待客。 後方にはテレビカメラ。 配信機材。 国内外のメディア。 さらにその向こうには、一般観覧者がいる。 さっきまで会場を満たしていた話し声が。 照明が少し落ちただけで、ゆっくり消えた。 ステージ中央へ司会者が進む。 「それでは」 一拍。 「RE:CODE MODE CONTEST、本日のルールをご説明します」 大型スクリーンに。 《FINAL SESSION》 の文字が現れた。 ステージ上の空気が変わる。 ここまで詳しいルールは、事前には知らされていない。 知らされていたのは。 開始時刻。 終了予定。 安全上の規定。 持ち込み禁止物。 そして。 最終評価はモデル個人ではなく、チーム全体を含めて行われること。 それだけだった。 良太はステージ脇のスタッフエリアから、彩を見る。 身体の内側には。 今もレイラがいる。 《来るわよ》 心の中で声がした。 《何が?》 《ノルディ》 それだけで。 良太の背筋が少し伸びた。 * 「本日のセッション開始は、午前十時」 スクリーンに大きく、 《10:00》 と表示される。 「終了は、午後三時」 《15:00》 続いて。 その間に一本の線が引かれた。 《5 HOURS》 客席が少しざわつく。 司会者は続ける。 「参加する十六チームには、この五時間で、本日の最終ステージに立つための準備を完成させていただきます」 彩の目が、僅かに動いた。 五時間。 長いようで。 短い。 「衣装、ヘア、メイク、スタイリング、演出」 一つずつ表示される。 「必要な調整は、すべてこの時間内に行ってください」 そして。 次の文字。 《会場外への移動――可》 今度は。 客席のざわめきが明確に大きくなった。 「セッション中の外出は自
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