RE:CODE MODE CONTEST、本番当日。チーム彩に、もう新しくできることはなかった。衣装は、佐久間博之が最後まで詰めた。七瀬は、本番で直す回数そのものを減らす前提でヘアとメイクを組んだ。奏は、彩が歩いた時に服がどう動くかを何度も確認した。良太は移動時間、持ち物、連絡先、当日の導線まで紙に落とした。そして彩は。歩いた。何度も。服を見て。自分の身体を見て。止まって。また歩いた。御堂玲奈のチームほど人数はいない。真壁ミラのチームほど経験もない。万全かと聞かれれば、違う。足りないものはいくらでもある。それでも。今いる人間でできることは、全部やった。あとは。本番を待つだけだった。*「……帰りたい」良太が小さく言った。会場へ入って、まだ十分も経っていなかった。隣にいたレイラが呆れた顔をする。《何しに来たのよ》「いや、違うんだよ」良太は声を抑えた。「頭では分かってたんだけど」改めて、周囲を見る。モデル。その所属事務所。スタイリスト。ヘア。メイク。デザイナー。スポンサー関係者。招待客。ファッション誌。テレビ。配信メディア。海外メディアらしいカメラまである。通路の向こうには観客席。すでに何百人もの人間が入場を始めていた。いたるところでカメラのシャッターが鳴る。スタッフがインカムで連絡を取り合う。知らない言語も聞こえる。そのすべてが。自分とは無縁だった世界に見えた。「場違いにもほどがあるだろ……」《今さら?》「今さらだから怖いんだよ」良太は胸元のスタッフパスを見る。《UTAHARA MODEL OFFICE 代表》何度見ても。自分の名前がここにあることがおかしい。少し前まで。五年間、ほとんど働いていなかった。ファッション誌の名前も知らなかった。モデルの歩き方に種類があることすら知らなかった。それが今。世界最高峰のコレクションへつながる大会で。一つのモデル事務所の代表として立っている。「……ほんとに俺でよかったのかな」レイラは何も言わなかった。少し離れた場所では、彩が七瀬の前に座っている。奏が衣装を確認し。佐久間が裾を見ている。誰も慌てていない。少なくとも。良太よりは。ずっと落ち着いて見えた。良太はしばらくその光景を見ていた。そ
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