All Chapters of 『RE:LAY ―幽霊となった伝説のモデルが妹をプロデュースする話―』: Chapter 91 - Chapter 100

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第91話《七人いない》 

RE:CODE MODE CONTESTの正式エントリー締切まで、残り十日。 1207号室の事務所スペースで、良太はノートパソコンを見つめていた。 表示されているのは、参加予定チームの登録情報。 御堂玲奈。 八名。 真壁ミラ。 七名。 他のチームも似たようなものだった。 ヘア。 メイク。 スタイリスト。 デザイナー。 演出。 マネージャー。 アシスタント。 それぞれに名前が入っている。 良太は別の紙を見る。 チーム彩。 歌原彩。 与那嶺良太。 相沢七瀬。 高梨奏。 佐久間博之。 五人。 「……少なくない?」 向かいで資料を読んでいた七瀬が顔を上げた。 「何が?」 「人数です」 良太は画面を回した。 「玲奈さんは八人。ミラさんは七人」 奏も画面を覗き込む。 「ヘアとメイクも別ですね」 「うちは?」 「七瀬さんが両方です」 七瀬は気にした様子もなく答えた。 「できるわよ」 「できるかどうかは心配してないです」 七瀬の眉が少し上がる。 「じゃあ何?」 良太は少し考えた。 「七瀬さんしかできない状態になるのが怖いんです」 七瀬が黙った。 「本番で髪を直してる時に、メイクで何か起きたら、両方とも七瀬さんを待つことになる」 良太は他のチームの登録情報を見る。 「向こうが人数を入れてるのって、そういう時に止まらないためじゃないですか?」 少し間があった。 七瀬が口元を緩める。 「代表らしいこと言うようになったわね」 「褒めてます?」 「半分」 「半分か」 奏が小さく笑った。 良太はもう一度、五人の名前を見る。 《レイラ》 《何》 《誰か呼べない?》 レイラが良太を見る。 《誰かって?》 《お前と昔、一緒に仕事してた人》 少しだけ間があった。 《無理》 《即答?》 《遅いのよ》 レイラは画面を指した。 御堂玲奈のチーム。 そこに登録されているメイク担当。 《この人、私と何度もパリを回ってる》 別の名前を指す。 《こっちはミラのところ》 良太は画面を見渡した。 《もう声かかってるってこと?》 《当然。ノルディが見に来るのよ》 モデルだけではない。 ヘアも。 メイクも。 スタイリストも。 世界へ行きたい人間は、すでに動いている。 《じ
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第92話《久しぶりね、ノルディ》

RE:CODE MODE CONTEST、本番当日。 チーム彩に、もう新しくできることはなかった。 衣装は、佐久間博之が最後まで詰めた。 七瀬は、本番で直す回数そのものを減らす前提でヘアとメイクを組んだ。 奏は、彩が歩いた時に服がどう動くかを何度も確認した。 良太は移動時間、持ち物、連絡先、当日の導線まで紙に落とした。 そして彩は。 歩いた。 何度も。 服を見て。 自分の身体を見て。 止まって。 また歩いた。 御堂玲奈のチームほど人数はいない。 真壁ミラのチームほど経験もない。 万全かと聞かれれば、違う。 足りないものはいくらでもある。 それでも。 今いる人間でできることは、全部やった。 あとは。 本番を待つだけだった。      ◇ 「……帰りたい」 良太が小さく言った。 会場へ入って、まだ十分も経っていなかった。 隣にいたレイラが呆れた顔をする。 《何しに来たのよ》 「いや、違うんだよ」 良太は声を抑えた。 「頭では分かってたんだけど」 改めて、周囲を見る。 モデル。 その所属事務所。 スタイリスト。 ヘア。 メイク。 デザイナー。 スポンサー関係者。 招待客。 ファッション誌。 テレビ。 配信メディア。 海外メディアらしいカメラまである。 通路の向こうには観客席。 すでに何百人もの人間が入場を始めていた。 いたるところでカメラのシャッターが鳴る。 スタッフがインカムで連絡を取り合う。 知らない言語も聞こえる。 そのすべてが。 自分とは無縁だった世界に見えた。 「場違いにもほどがあるだろ……」 《今さら?》 「今さらだから怖いんだよ」 良太は胸元のスタッフパスを見る。 《UTAHARA MODEL OFFICE 代表》 何度見ても。 自分の名前がここにあることがおかしい。 少し前まで。 五年間、ほとんど働いていなかった。 ファッション誌の名前も知らなかった。 モデルの歩き方に種類があることすら知らなかった。 それが今。 世界最高峰のコレクションへつながる大会で。 一つのモデル事務所の代表として立っている。 「……ほんとに俺でよかったのかな」 レイラは何も言わなかった。 少し離れた場所では、彩が七瀬の前に座っている。 奏が衣装を確認
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第93話 《五時間》 

RE:CODE MODE CONTEST。 本番当日。 午前八時五十分。 ルール説明が終わって、まだ五分しか経っていなかった。 それでも。 世間はもう。 十六人を比べ始めていた。 《御堂玲奈が本命でしょ》 《対抗は真壁ミラ》 《歌原彩16歳か》 《レイラの妹ってだけじゃ厳しくない?》 《でも、ルール説明の時ほとんど動かなかったよね》 《あの子、思ったより落ち着いてる》 大型モニターでも。 同じ三人が並んでいた。 御堂玲奈。 真壁ミラ。 歌原彩。 特設スタジオの司会者が聞く。 「現時点での本命は?」 元ファッション誌編集長は迷わなかった。 「御堂玲奈でしょう」 「対抗は?」 「真壁ミラ」 そして。 歌原彩。 十六歳。 UTAHARA MODEL OFFICE。 《故・歌原レイラさんの妹》 司会者が聞く。 「姉が歌原レイラであることは、有利に働きますか?」 元編集長は首を横に振った。 「見る理由にはなるでしょう」 一拍。 「でも、残す理由にはならない」 「実績では御堂と真壁に及ばない?」 「かなり差があります」 そこで。 画面の彩を見る。 「ただ」 「何でしょう?」 「あの子」 一拍。 「何もしてこなかった人の顔には見えませんね」 * 午前八時五十八分。 チーム彩。 七瀬はメイク道具。 奏は衣装と小物。 佐久間博之は服。 彩は、運営から渡された白いTシャツとジーンズを持っていた。 そして。 良太は全員を見ている。 正確には。 良太の身体を使って。 レイラが見ていた。 道具。 衣装。 鏡。 動線。 誰が。 どこで。 何を直すのか。 一度見れば。 必要なものは頭に入る。 「七瀬」 七瀬が顔を上げる。 「何?」 「今使わないものは右へ。左に、直す可能性が高いものだけ」 七瀬の手が止まった。 「……社長」 「何」 「今日、ずいぶん迷わないね」 レイラは答えず。 奏を見る。 「奏。小物は全部出さなくていい」 「でも、途中で変わったら」 「必要になったら出す」 即答だった。 奏が少し目を見開く。 いつもの良太なら。 まず聞く。 確認する。 一緒に決める。 今日は違う。 判断が。 早すぎる。 佐久間も気づいていた
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第94話 《動かない人》

午前十時。 RE:CODE MODE CONTEST。 大型スクリーンの数字が切り替わった。 《10:00:00》 会場のざわめきが消える。 司会者がステージ中央へ立った。 「ただいまより、ファイナルセッションを開始します」 スクリーンに。 《5 HOURS》 《FINISH 15:00》 「午後三時までの五時間、衣装、ヘア、メイク、スタイリング、その他必要な準備は、各チームの裁量で行ってください」 一拍。 「会場外への移動も自由です」 「ただし、午後二時五十分までに戻れなかったチームは失格となります」 会場の空気が少し張る。 「時間も含めて、皆さんの選択です」 司会者が前を見る。 「それでは」 一拍。 「始めてください」 《START》 その文字が表示された瞬間。 会場が動いた。 * 最初に走り出したのは。 モデルではなかった。 スタッフだった。 電話をかける。 衣装ケースを持って出口へ向かう。 ブランドショップへ連絡する。 車を手配する。 十六チームが。 それぞれ違う方向へ広がっていく。 必要なら。 外へ出る。 足す。 変える。 五時間を使って。 今日の最善を作る。 それも。 一つの戦い方だった。 * 午前十時二分。 御堂玲奈は。 動かなかった。 椅子に座り。 水を一口飲む。 その周囲では。 八人のスタッフがすでに動いている。 「照度、想定より高い」 「床反射も強いです」 「衣装、一番は外します」 「二番を残して」 「追加調達、必要です」 返事と同時に。 二人が立つ。 玲奈は。 その場にいるだけでいい。 サイズ。 丈。 ヒール。 身体の癖。 肌。 照明。 何を使えば。 玲奈が最も良く見えるのか。 チームが。 知っている。 メイク担当が言った。 「玲奈さんは動かさないで」 久我沙織が頷く。 「今日、あなたに使わせる体力が一番もったいない」 玲奈が少し笑った。 「分かった」 本人は。 動かない。 代わりに。 チームが動く。 御堂玲奈には。 それができる組織があった。 * 午前十時五分。 真壁ミラも。 動かなかった。 桐島誠司が。 会場で撮った写真を確認している。 床。 壁。 光。 客席。
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第95話《何を捨てるか》

午前十時十五分。 RE:CODE MODE CONTEST。 チーム彩は。 まだ。 会場を出ていなかった。 ほかのチームでは。 スタッフが次々と街へ向かっている。 服。 靴。 化粧品。 今日の光と。 床と。 会場に合わせて。 選択肢を増やすために。 けれど。 良太は。 佐久間博之の衣装ケースを見下ろしていた。 正確には。 その身体を借りたレイラが。 「全部出して」 佐久間が顔を上げる。 「全部ですか?」 「候補になってるもの」 佐久間が。 ケースを開く。 衣装。 予備のパーツ。 素材違いの付属品。 奏も。 小物を並べる。 七瀬も。 使う可能性のある色を。 机へ置いた。 思っていた以上のものが。 彩の前へ並んだ。 奏が聞く。 「ここから選ぶんですか?」 「ううん」 良太の口から。 迷いのない声が出る。 「捨てるの」 三人が止まった。 「今日」 一拍。 「使わないものを決める」 レイラは。 小物を一つ指す。 「これ、いらない」 奏が。 少し驚く。 「昨日まで候補でした」 「昨日はね」 次。 「これも」 佐久間が聞く。 「理由は?」 「今日の光だと」 「彩より先に目へ入る」 さらに。 七瀬の道具を見る。 「その色も、今はいらない」 七瀬が。 眉を上げる。 「まだ顔、作ってないけど」 「だから」 レイラは。 彩を見る。 白いTシャツ。 ジーンズ。 ノーメイク。 午前十時から。 ほとんど消耗させていない。 呼吸。 顔色。 身体。 どれも。 いい。 「今日は」 一拍。 「今の彩を消したくない」 七瀬の目が。 少し変わった。 * 身体の内側で。 良太が聞く。 《さっきから、捨ててばっかりだな》 《それが仕事よ》 《足すのが仕事じゃないの?》 《必要ならね》 レイラは。 机の上を見る。 服。 小物。 色。 全部。 悪くない。 むしろ。 良い。 だからこそ。 厄介だった。 良いものを。 全部乗せれば。 良くなるとは限らない。 《ノルディも、そこを見る?》 《見るわ》 《何を?》 《完成品だけじゃなくて》 一拍。 《どうして、それを残したか》 昔。 まだ。 歌原レイラ
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第96話《残すもの》

午前十一時。 RE:CODE MODE CONTEST。 良太は。 いや。 良太の身体を借りたレイラは、彩を歩かせていた。 白いTシャツ。 ジーンズ。 まだ本番用の衣装ではない。 メイクもしていない。 一往復。 二往復。 レイラは声をかけない。 ただ見る。 一歩目。 迷いはない。 歩幅も縮んでいない。 右肩は上がらない。 ターンの直前で足も止まらない。 呼吸。 浅くない。 視線。 周囲は見えている。 でも、引っ張られてはいない。 彩が戻ってきた。 「もう一回?」 「いや」 良太の口から答える。 「もういい」 彩が止まる。 レイラは、その顔を見る。 緊張していないわけではない。 観客。 カメラ。 御堂玲奈。 真壁ミラ。 自分より長くモデルを続けてきた人間ばかり。 怖くないはずがない。 それでも。 彩の身体は逃げていなかった。 「彩」 「はい」 「怖い?」 「怖いです」 返事は早い。 「何が?」 彩は少し考えた。 「失敗するのも」 一拍。 「見られるのも」 「帰りたい?」 今度は、少しだけ笑った。 「それはないです」 レイラの口元も、わずかに上がる。 以前なら。 大丈夫です。 そう答えていただろう。 今は。 怖いものを、怖いと言う。 そのうえで。 立っている。 身体の奥で、良太が聞いた。 《どう?》 《かなりいい》 《そんなに?》 《呼吸が乱れてない。肩も逃げてない。床も怖がってない》 一拍。 《それに》 彩は観客席のどこかを一度見た。 神谷章介がいる場所。 すぐに前へ戻る。 《揺れても、自分で戻ってくる》 良太は黙った。 レイラは思う。 今日の彩は。 整っている。 完璧ではない。 完成してもいない。 でも。 本人が。 ちゃんとそこにいる。 だったら。 外から完成形を被せる必要はない。 * 「七瀬」 「何?」 「始めていい」 七瀬がメイク道具を手に取る。 「やっと?」 「でも、作りすぎないで」 七瀬の手が止まった。 「どういう意味?」 「今日の彩、調子いいから」 「それは見れば分かる」 「なら、消さないで」 七瀬は鏡越しに彩を見る。 「綺麗な顔を作らなくていい」 一拍。 「今ある
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第97話《最高の私を》

午前十一時二十分。 RE:CODE MODE CONTEST。 クロスリンク・エンタメの作業スペース。 真壁ミラの前には。 三着の衣装が並んでいた。 一着目。 今までのミラを。 最も綺麗に見せる服。 自分の見せ方も分かる。 歩き方も。 視線を取る位置も。 全部。 知っている。 二着目。 身体の線を強く出す服。 似合う。 強い。 失敗もしにくい。 そして。 三着目。 肩から腰へ落ちるシルエットが。 わずかに不安定だった。 歩き方を間違えれば。 服に負ける。 けれど。 成立した時は。 一番。 今までの真壁ミラから遠い。 桐島誠司が聞く。 「どれにしますか」 ミラは。 一着目を見る。 数秒。 「これじゃないです」 二着目。 「これも違う」 最後に。 三着目へ触れる。 「これで」 桐島が。 初めて理由を聞いた。 「なぜです?」 ミラは。 布から手を離した。 「今までの私じゃないからです」 桐島は。 それ以上聞かなかった。 「分かりました」 少し離れた場所で。 南条圭介が。 スマートフォンを構えていた。 衣装を選ぶ瞬間。 捨てる瞬間。 桐島との会話。 準備の過程を。 記録している。 その近くでは。 黒瀬が。 カメラ越しにミラを見ていた。 まだ。 シャッターは切らない。 ただ。 どこで表情が変わるのか。 どこで身体が決まるのか。 見ている。 ミラが。 南条へ視線を向けた。 「南条さん」 「はい」 「それ、今日出すんですか」 「使えるものはあります」 「SNS?」 「それも含めて」 ミラは。 三着目へ視線を戻す。 「出さないでください」 南条の手が止まった。 「理由、聞いても?」 「今」 一拍。 「自分を見せる時間じゃないので」 南条は黙る。 「今日は、勝つために来てます」 「はい」 「途中の私を見せて」 「話題を取るためじゃない」 声は強くない。 でも。 迷いもなかった。 「今は」 「モデルに集中したいです」 南条は。 スマートフォンを下ろした。 「分かりました」 ミラが。 少し意外そうに見る。 「いいんですか」 「何がです?」 「移籍して」 「最初の大きな仕事ですよ」 「出したい
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第98話《八人》

午後二時五十分。 RE:CODE MODE CONTEST。 第一ラウンド開始まで。 あと十分。 良太の身体を借りたレイラは。 少し離れた場所から。 御堂玲奈のチームを見ていた。 玲奈を含めて。 九人。 モデルを除けば。 スタッフは八人。 井原。 スタイリスト。 衣装全体を見る。 安藤。 メイク。 玲奈の顔を。 舞台の光へ合わせる。 そのほかにも。 ヘア。 フィッティング。 シューズ。 身体状態。 進行。 全体統括。 それぞれに。 担当がいる。 良太が。 身体の奥で言った。 《……やっぱ多いな》 《そうね》 《彩のところ、俺入れて四人だろ》 《彩を入れて五人》 《倍近いじゃん》 レイラは。 答えなかった。 人数だけなら。 見れば分かる。 問題は。 その八人が。 何をしているか。 だった。 * 「玲奈さん」 一人が。 声をかける。 「右足」 玲奈が。 椅子に座ったまま。 足を少し上げる。 シューズ担当が。 靴底を見る。 「問題ありません」 その横で。 安藤が。 頬へ指を置く。 ほんの少し。 顔を傾ける。 「正面」 玲奈が向く。 「もう少し左」 向く。 安藤は。 一度だけ見る。 「大丈夫」 すぐ離れる。 同時に。 井原は。 衣装の裾を見ていた。 しゃがむ。 触る。 立つ。 玲奈へ。 「一回だけ立って」 玲奈が立つ。 フィッティング担当が。 背中側へ回る。 井原が前。 二人が。 同時に。 別の場所を見る。 誰も。 指示を重ねない。 「右、二ミリ」 「はい」 フィッティング担当が。 留め位置を変える。 その間。 別のスタッフが。 玲奈へ水を渡す。 「一口だけ」 玲奈が飲む。 「ありがとうございます」 すぐ返す。 進行担当が。 時計を見る。 「七分」 全体統括が頷く。 「予定通り」 それだけ。 誰も。 慌てていない。 良太が。 言った。 《すげえな》 レイラは。 玲奈ではなく。 八人を見る。 《何が?》 《同時に動いてるのに、邪魔してない》 《そこよ》 《え?》 《人数が多いだけなら》 一拍。 《邪魔になることもある》 良太が黙る。 レイラは続ける
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第99話《七人》

RE:CODE MODE CONTEST ――正解は、私が決める。 午後三時七分。 御堂玲奈のランウェイが終わった。 会場には、まだ大きな拍手の余韻が残っている。 圧倒的だった。 観客の興奮も冷めないまま、次の準備が進められていた。 * ランウェイ袖。 クロスリンクの作業スペース。 真壁ミラは、鏡の前に立っていた。 三着目の衣装。 今回、最も扱いが難しい一着だった。 スタイリストの桐島誠司が、肩の布を確認する。 「右、少し詰めましょうか」 ミラは鏡を見たまま、肩を動かした。 布が、わずかに遅れてついてくる。 「詰めないでください」 「動くと遅れますよ」 「分かってます」 もう一度、肩を動かす。 「この遅れ、残したいです」 桐島は布を見る。 「本番で邪魔になるかもしれません」 「そのときは、そのときです」 ミラは小さく笑った。 「服がどう動くか、全部決めておく必要はないと思うので」 桐島は一秒だけ考えた。 「分かりました」 手を離す。 ヘア担当が尋ねる。 「前髪、少し上げますか?」 「今のままで」 メイク担当も確認する。 「会場の照明、少し強くなっています」 「顔は変えないでください」 「分かりました」 ミラは鏡の中の自分を見る。 髪。 顔。 肩。 衣装。 最後に、足元。 一つずつ確かめる。 「これで行きます」 その言葉で、スタッフの手が止まった。 * 「あと四分です」 進行担当の声。 南条圭介が、スマートフォンを手に近づいてきた。 「御堂さんの映像、確認しますか?」 「いりません」 「かなり完成度が高かったですよ」 「見てました」 ミラは鏡から目を離さない。 「すごかったですね」 「はい」 「でも」 ミラは衣装の肩に軽く触れた。 「御堂さんの正解を、今から覚えても意味ないので」 南条が黙る。 桐島が尋ねた。 「では、真壁さんは何を見せますか?」 ミラは三着目の衣装を見る。 「これを」 一拍。 「私にします」 桐島が笑った。 「分かりました」 * 残り一分。 カメラマンの黒瀬が、一枚撮った。 シャッター音。 ミラが振り向く。 「どうですか?」 黒瀬は画面を確認する。 「まだ服が勝ってる」 「そうですか」 「でも、悪
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第100話《やってきたこと》

午後三時二十六分。 RE:CODE MODE CONTEST。 第一ラウンド。 御堂玲奈。 真壁ミラ。 二人のランウェイは。 もう終わっている。 それでも。 会場の熱は。 まだ。 冷めていなかった。 「あの二人、すごかったな」 「完成度が違う」 「優勝、どっちかじゃない?」 配信にも。 まだ。 名前が流れている。 《玲奈強すぎ》 《ミラもやばかった》 《あの二人が抜けてる》 そんな声が。 残る中。 歌原彩の出番が。 近づいていた。      ◇ ランウェイ袖。 彩は。 立っていた。 七瀬。 奏。 佐久間。 良太。 四人が。 そばにいる。 もう。 大きく変えるところはない。 七瀬が。 彩の顔を見る。 触らない。 「大丈夫」 奏も。 衣装を見る。 「私も大丈夫です」 佐久間。 「歩けます」 彩が。 三人を見る。 それから。 良太へ。 「良太さん」 「何?」 「私」 少し。 間。 「逃げてないですか」 良太が。 彩を見る。 肩。 呼吸。 足。 目。 「逃げてない」 彩が。 ゆっくり。 息を吐いた。 「じゃあ」 一拍。 「大丈夫です」 会場から。 拍手。 また一人。 歩き終えた。 進行スタッフが。 袖へ来る。 「歌原さん」 「次です」 彩。 「はい」 スタッフが。 離れる。 良太が。 聞く。 「怖い?」 「怖いです」 「帰りたい?」 「それはないです」 「玲奈とミラ」 一拍。 「見た?」 「見ました」 「どうだった?」 彩は。 少し考える。 「すごかったです」 「勝てそう?」 彩が。 一瞬。 止まる。 七瀬。 奏。 佐久間も。 見る。 彩は。 正直に。 答えた。 「分かりません」 良太が。 頷く。 「それでいい」 彩。 「いいんですか?」 「今から」 「玲奈みたいになろうとしても」 「間に合わない」 一拍。 「ミラも同じ」 彩。 「じゃあ」 「何を考えればいいですか?」 良太は。 少しだけ。 周囲を見る。 七瀬。 奏。 佐久間。 そして。 彩。 「ここまで」 一拍。 「やってきたこと」 彩が。 黙る。 「七瀬が」
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