午後のAtelier SAKUMAには、ミシンの音だけが一定の間隔で響いていた。 机の上には、糸、針、型紙、裁断された布。 その中央に、白い服が置かれている。 本番で使う生地ではない。 色もない。 装飾もない。 形だけを確かめるための、最初の仮縫いだった。 佐久間博之は服を持ち上げ、正面から見る。 肩の位置。 袖の付け根。 腰から裾へ落ちる線。 背中へ回した布の量。 何度確認しても、大きな破綻はない。 「……悪くない」 思っていた以上だった。 展示会の夜。 歌原彩だけを思い浮かべて描いた、最初のデザイン。 あの紙の上にしかなかった線が、ようやく人の身体へ着せられる形になった。 けれど佐久間は、すぐに首を横へ振る。 「まだだ」 まだ彩が着ていない。 トルソーで成立している服と、人の身体で成立する服は違う。 まして。 これは歌原彩から作ろうと決めた服だった。 本人が入るまで、何も決まっていない。 その時、インターホンが鳴った。 佐久間は仮縫いをトルソーへ戻し、一度だけ大きく息を吐いてから扉へ向かった。 * やって来たのは、良太と彩。 その後ろに相沢七瀬と高梨奏。 そして良太にだけ見えているレイラも、当然のように工房へ入ってくる。 「今日はお願いします」 良太が頭を下げる。 「こちらこそ」 彩も続いた。 「お願いします」 七瀬は工房へ入るなり、作業机、照明、鏡、トルソーを順に見た。 奏はほとんど迷わず、中央の白い仮縫いへ視線を止めた。 佐久間は二人の反応に気づく。 「まだ本番用じゃありません。形を見るためのものです」 「分かってます」 七瀬が答える。 奏も小さく頷いた。 良太は白い服を見る。 専門的な良し悪しは分からない。 だから隣へ視線だけを送った。 《どう?》 レイラはしばらく答えなかった。 服の正面から背中までを見ている。 《着てから》 《え?》 《服は、着る前に決めない》 良太は黙って頷いた。 佐久間も同じように彩を見る。 「試着してもらっていいですか」 「はい」 佐久間は仮縫いをトルソーから外し、彩へ渡した。 「こちらで」 試着室の扉が閉まる。 途端に、佐久間が机の上を整え始めた。 すでに揃っている型紙を重ね直し、ペンの向きを直す。 良太はそ
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