Atelier SAKUMAの工房には、まだ前話の緊張が残っていた。 白い仮縫いの中で、彩が立っている。 その正面に佐久間博之。 少し離れたところに相沢七瀬。 二人とも彩を見ていた。 ただし、見ているものは違う。 佐久間が静かに言う。 「これは、僕が作った服です」 七瀬はすぐに返した。 「歌原彩が着た時点で、あなた一人の服じゃありません」 空気がまた硬くなる。 良太は二人を見て、それから彩へ視線を移した。 彩は何も言わなかった。 自分のために作られた服。 自分の顔を守ろうとしてくれている人。 どちらかに賛成すれば、もう一方を否定するような気がする。 その迷いが、表情に出ていた。 良太は一度息を整えた。 「七瀬さん」 「何ですか」 「触る前に、佐久間さんへ確認してください」 七瀬の眉がわずかに動く。 「確認したら、変えてくれるんですか?」 「必要なら変えます」 佐久間が答えた。 「必要です」 「僕は、まだ必要だと思っていません」 「だから説明してるんです」 「説明は聞きました。その上で、今は変えません」 七瀬が良太を見る。 良太は逃げなかった。 「前に約束しましたよね」 「何をですか」 「ヘアメイクは七瀬さんへ任せる。でも、他の担当の仕事を勝手に変えない」 「勝手にはしてません」 「してます」 良太は即答した。 七瀬が少し止まる。 「佐久間さんが触らないでと言ったのに、触ろうとした。それはルール違反です」 七瀬は一度、彩の首元を見る。 「じゃあ、間違ってると思っても黙ってろってことですか?」 「違います」 「同じでしょう」 「違います」 今度は少し強く言った。 七瀬の視線が、良太へ戻る。 「意見を言うなとは言ってません。勝手に変えるなって言ってるんです」 一拍。 「七瀬さんの仕事を、佐久間さんが勝手に変えたら嫌でしょう」 七瀬は答えなかった。 「だから話してください。でも、決める前に相手の仕事を奪わないでください」 佐久間も良太を見る。 七瀬はしばらく黙ったあと、小さく息を吐いた。 「分かりました」 一拍。 「触りません」 良太は少しだけ肩の力を抜いた。 その隣で、レイラは腕を組んだまま良太を見ていた。 * 佐久間は、彩の首元をもう一度確認した。 「
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