All Chapters of 『RE:LAY ―幽霊となった伝説のモデルが妹をプロデュースする話―』: Chapter 101 - Chapter 110

112 Chapters

第101話《見ていない》

午後三時四十三分。 RE:CODE MODE CONTEST。 全十六名のランウェイが終わった。 会場には。 まだ拍手の余韻が残っている。 モデルたちは。 それぞれのチームへ戻っていた。 審査席では。 すぐに確認が始まっている。 評価表。 映像。 記録。 審査員同士の。 短い会話。 御堂玲奈。 真壁ミラ。 歌原彩。 ほか十三名。 一人ずつ。 もう一度。 見直されていく。 良太の身体の奥で。 本人が言った。 《ほぼ勝てない、か》 レイラは。 返事をしなかった。 《そこまで差ある?》 《ある》 今度は。 即答だった。 良太が黙る。 レイラは。 御堂玲奈を見る。 八人のスタッフに囲まれている。 誰も。 浮かれていない。 ランウェイを終えたあとも。 顔。 身体。 衣装。 全部を。 確認している。 玲奈本人も。 落ち着いていた。 崩れなかった。 最初から最後まで。 そして。 真壁ミラ。 桐島と。 短く話している。 少し離れた場所では。 黒瀬が。 さっきの写真を確認している。 南条も。 スマートフォンを見ていた。 すでに。 外へ出す準備を始めているのだろう。 ランウェイが終わっても。 チームの仕事は。 止まっていない。 レイラは。 もう一度。 彩を見る。 七瀬。 奏。 佐久間。 三人と。 話している。 笑ってはいない。 落ち込んでもいない。 普通に。 終わったばかりのランウェイを。 振り返っている。 《彩も》 良太が言う。 《悪くなかったんだろ?》 《悪くない》 《むしろ》 一拍。 《今の彩なら》 《かなり出せた》 《じゃあ》 《だからよ》 レイラは。 静かに返した。 《出せたから》 《分かる》 良太が。 少しだけ。 言葉を止める。 《足りないって?》 《ええ》 玲奈。 ミラ。 彩。 三人。 《失敗したなら》 《直せばいい》 《緊張したなら》 《次は慣れればいい》 《でも》 一拍。 《今日は》 《できることを》 《かなり出した》 良太は。 何も言わない。 《それでも》 《あの二人の方が》 《上だった》 認めるしかない。 今の。 歌原彩は。 弱くない。 で
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第102話《一人だけ》

午後三時五十二分。 RE:CODE MODE CONTEST。 第二ラウンド。 参加者。 十六名。 準備時間。 一時間。 使用できる金額。 十万円。 第一ラウンドで使用した衣装。 アクセサリー。 メイク道具。 持ち込んだ機材。 すべて使用禁止。 そして。 同行できるスタッフは。 一人だけ。 会場には。 まだ。 ざわめきが残っていた。 「一人?」 「本当に?」 「メイクも?」 「衣装も?」 「一時間で?」 スタッフ同士の声。 モデルたちの声。 第一ラウンドまで。 五時間。 それぞれのチームが。 積み上げてきたものを。 今度は。 ほとんど使えない。 良太の身体の奥で。 本人が言った。 《……えげつないな》 レイラは。 答えなかった。 ノルディを見る。 どういう意図か。 まだ。 分からない。 ただ。 一つだけ。 はっきりしている。 条件は。 全員。 同じ。 そして。 さっきまでとは。 まったく違う。 《レイラ》 《何》 《本当に勝ち方変えるの?》 《変える》 即答だった。 《どうやって?》 《その前に》 レイラは。 周囲を見る。 《誰を連れていくかで》 一拍。 《もう勝負は始まってるわ》 * 御堂玲奈。 八人。 その中心で。 玲奈は。 スタッフたちを見ていた。 慌ててはいない。 井原。 安藤。 ヘア。 フィッティング。 シューズ。 身体管理。 進行。 全体統括。 八人。 誰を選んでも。 何かを失う。 井原を選べば。 衣装には強い。 でも。 顔は自分たちで考えることになる。 安藤なら。 顔は強い。 衣装を。 別で用意しなければならない。 専門性が高いからこそ。 一人に絞れば。 必ず。 穴が空く。 良太が。 内側で言った。 《玲奈でも迷うんだな》 《当たり前でしょ》 玲奈が。 一人ずつを見る。 質問は。 短かった。 「私と一緒に行くなら」 一拍。 「どこまで見られますか」 井原が答える。 「服だけなら」 「かなり」 「全体なら」 少し考える。 「七割」 安藤。 「顔なら九割」 「全部なら六割」 ほかのスタッフも。 それぞれ。 正直に答える。 誰も。
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第103話《勝ち方を変える》

午後四時七分。 RE:CODE MODE CONTEST。 第二ラウンド。 歌原彩。 与那嶺良太。 いや。 良太の身体を借りたレイラは。 ユニクロの店内にいた。 白。 黒。 紺。 ベージュ。 整然と並ぶ。 誰でも知っている服。 誰でも。 一度くらいは。 見たことがある服。 良太が。 身体の奥で言う。 《……本気?》 《何が》 《ここで勝負するの?》 レイラは。 シャツを一枚。 手に取る。 《まだ決めてない》 《入ったじゃん》 《見るためにね》 彩は。 隣で。 静かに待っている。 レイラは。 服を見る。 価格。 素材。 肩。 身幅。 袖。 落ち方。 次。 デニム。 細すぎない。 太すぎない。 色落ちも。 強くない。 良太。 《玲奈たちも》 《もっとちゃんとした店行ってるんじゃない?》 《ちゃんとした店って何》 《いや》 《こう》 《コンテストっぽい店》 レイラは。 少しだけ笑った。 《そういう考え方してるから》 《あなたは素人なのよ》 《悪かったな》 良太が。 少しむくれる。 レイラは。 答えず。 彩を見る。 十六歳。 第一ラウンド。 やれることは。 かなり出した。 七瀬。 奏。 佐久間。 良太。 全員。 今の彩を。 かなりいいところまで。 持っていった。 それでも。 御堂玲奈。 真壁ミラ。 あの二人には。 届かなかった。 レイラは。 そこを。 もう。 誤魔化さない。 《良太》 《何》 《第一ラウンド》 《彩は》 一拍。 《よくやった》 《うん》 《今できることも》 《かなり出した》 《うん》 《それでも》 良太が。 少し黙る。 《届かなかった》 《……うん》 レイラは。 白いシャツを見る。 《だったら》 一拍。 《同じ勝負を》 《もう一回する意味はない》 * 良太が。 静かになる。 レイラは。 店内を歩く。 《玲奈は》 《完成度で強い》 《八人で作ったものを》 《一人になっても》 《本人の身体に残してくる》 次。 《ミラは》 《本人が決める》 《桐島一人になっても》 《中心は最初からミラだから》 《大きくは崩れない》 良太。 《
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第104話《言わないこと》

午後四時三十四分。 RE:CODE MODE CONTEST。 第二ラウンド。 残り二十六分。 歌原彩と。 良太の身体を借りたレイラは。 会場近くのレンタルスペースにいた。 鏡。 椅子。 小さな机。 レイラは紙袋を置く。 白いシャツ。 ストレートジーンズ。 靴。 百円ショップで買った道具。 良太が身体の奥で言う。 《……少ないな》 《何が?》 《道具》 《七瀬、あんなに持ってたじゃん》 《七瀬だからね》 《これで何するんだよ》 《最低限》 《それが分からないんだけど》 レイラは彩を見る。 「着替えて」 「はい」 ◇ 彩が戻ってくる。 白いシャツ。 デニム。 靴。 それだけ。 レイラは全身を見る。 首。 肩。 腰。 脚。 裾。 「歩いて」 彩が歩く。 一歩。 二歩。 ターン。 戻る。 レイラは服を見る。 いや。 服の中にいる彩を見る。 良太。 《やっぱ普通だな》 《普通でいいの》 《コンテストなのに?》 《だからよ》 彩が鏡を見る。 「……怖いです」 「何が?」 「さっきより」 一拍。 「何もないので」 「何もない?」 「服も、顔も」 彩は鏡の中の自分を見る。 「全部、私になります」 レイラが頷く。 「それでいい」 「本当にこれで勝つんですか?」 「勝ちにいく」 「でも、勝ち方は変える」 彩が少し考える。 「名前を残す?」 「それも」 「優勝も?」 「捨ててない」 彩が小さく笑う。 「欲張りですね」 「勝負でしょ」 ◇ レイラは道具を広げる。 コットン。 スポンジ。 綿棒。 良太。 《俺、化粧できないけど》 《私がやる》 《そうだった》 《忘れないで》 彩を椅子に座らせる。 顔を見る。 先ほどのメイクは落としてある。 十六歳の顔。 少し疲れている。 レイラは隠さない。 必要なところだけ。 整える。 彩が鏡越しに手を見る。 「良太さん」 「何?」 「さっきから」 一拍。 「誰かと話してます?」 レイラの手が止まる。 良太も固まった。 《……来た》 《分かってる》 彩は鏡越しに見る。 「独り言じゃないですよね」 レイラは少し考える。 「レイラと」 彩の目が見開
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第105話《託したあと》

午後四時五十分。 RE:CODE MODE CONTEST。 第二ラウンド開始まで。 あと十分。 会場へ戻るモデルたちが。 少しずつ増えていた。 御堂玲奈。 真壁ミラ。 そして。 歌原彩。 全員。 第一ラウンドとは。 違う姿になっている。 良太の身体を借りたレイラは。 彩と一緒に。 会場へ戻った。 白いシャツ。 ストレートジーンズ。 シンプルな靴。 ほとんど。 触っていない顔。 まとめただけの髪。 第一ラウンドとは。 まるで違う。 いや。 違うのは。 見た目だけではない。 勝ち方そのものが。 変わっていた。 * 最初に見えたのは。 御堂玲奈だった。 隣には。 第二ラウンドで選んだ。 一人のスタッフ。 第一ラウンド。 八人。 今は。 一人。 当然。 同じことはできない。 衣装。 顔。 髪。 足元。 身体。 進行。 全部を。 一人で分業することなど。 不可能だった。 それでも。 玲奈は。 崩れていない。 第一ラウンドほど。 隙がないわけではない。 細部を見れば。 違う。 でも。 立っているだけで。 御堂玲奈だと分かる。 良太が。 身体の奥で言う。 《一人でも》 《あんまり変わらないな》 《変わってるわよ》 《そう?》 《第一ラウンドほど》 《外から整ってない》 良太が。 玲奈を見る。 《でも》 《玲奈だろ》 《そこ》 レイラの目が。 少しだけ細くなる。 《だから強い》 《八人に》 《作ってもらってたんじゃない》 《八人と》 《同じ完成形を》 《ずっと共有してた》 第一ラウンドで。 何度も。 何度も。 整えられてきた。 立ち位置。 光。 顔。 身体。 服。 歩き。 それが。 玲奈本人の中にも。 残っている。 《一人になって》 《初めて分かる》 一拍。 《チームが》 《本人の中まで》 《仕事してたって》 良太は。 何も言わなかった。 * 少し離れて。 真壁ミラ。 隣には。 桐島誠司。 二人だけ。 黒瀬はいない。 南条もいない。 写真も。 SNSも。 メディア戦略も。 今は。 何もない。 それでも。 ミラは。 落ち着いている。 桐島が。 何か
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第106話《今は、モデルを見る》

午後四時五十九分。 RE:CODE MODE CONTEST。 第二ラウンド開始まで。 一分。 ノルディは。 審査席に座ったまま。 戻ってきた十六人を見ていた。 一時間。 十万円。 第一ラウンドで使ったものは禁止。 同行スタッフは。 一人だけ。 条件を変えれば。 見えるものも変わる。 それが。 ノルディの狙いだった。 第一ラウンド。 モデル。 服。 ヘア。 メイク。 歩き。 チーム。 すべて。 高い水準だった。 御堂玲奈。 強かった。 真壁ミラ。 強かった。 歌原彩。 まだ若い。 それでも。 残った。 だから。 もう一度。 見たかった。 何を奪った時。 何が残るのか。 * 御堂玲奈。 八人から。 一人。 第一ラウンドほど。 細部は整っていない。 当然だった。 八人でやっていたことを。 一人ではできない。 でも。 玲奈自身は。 大きく変わっていない。 立ち方。 呼吸。 身体。 目。 ノルディは。 少しだけ。 目を細める。 チームが。 彼女の外側だけを。 作っていたわけではない。 何度も。 何度も。 同じ完成形を。 共有してきた。 だから。 一人になっても。 その完成形が。 本人に残っている。 ノルディは。 何も言わない。 次。 真壁ミラ。 隣には。 桐島誠司。 七人から。 一人。 黒瀬はいない。 南条もいない。 発信。 撮影。 外へ広げる力。 そこは。 ほとんど失われている。 それでも。 ミラは。 ぶれていない。 桐島が。 何か聞く。 ミラが。 答える。 桐島が。 動く。 また。 ミラが決める。 第一ラウンドと。 同じ。 人数が減っても。 中心は。 最初から。 一人だった。 真壁ミラ。 ノルディは。 少しだけ。 口元を緩める。 そして。 歌原彩。 そこで。 視線が止まった。 * 白いシャツ。 デニム。 シンプルな靴。 顔。 ほとんど。 作っていない。 髪。 邪魔にならないよう。 まとめただけ。 高価には見えない。 むしろ。 見覚えがある。 どこにでもある。 服。 ノルディは。 少しだけ。 身体を前へ傾けた。 第一ラウンド
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第107話《もう一度》

午後五時四分。 RE:CODE MODE CONTEST。 第二ラウンド。 御堂玲奈が。 ランウェイへ出る。 一歩。 会場の空気が。 変わった。 第一ラウンド。 八人。 衣装。 顔。 髪。 足元。 身体。 進行。 全部。 高い精度で。 整えられていた。 今。 隣にいるのは。 一人だけ。 それでも。 玲奈は。 玲奈だった。 良太の身体を借りたレイラが。 目を細める。 《……やっぱり》 良太。 《何が?》 《残ってる》 《何が》 《八人》 良太が。 意味を考える。 玲奈には。 もう。 八人はいない。 でも。 第一ラウンドで。 全員が。 共有していたもの。 御堂玲奈は。 どう立つ。 どこを見る。 どう光を受ける。 どの角度で。 顔を残す。 どこまで。 服を見せる。 どこから。 自分を出す。 それが。 本人の中に。 残っている。 一歩。 二歩。 三歩。 第二ラウンドでは。 第一ラウンドほど。 服は強くない。 髪も。 顔も。 細部まで。 作り込まれてはいない。 だから。 逆に。 玲奈本人の身体が。 よく見える。 姿勢。 呼吸。 重心。 目。 第一ラウンドで。 八人が。 外から整えていたものを。 今は。 玲奈自身が。 内側から。 合わせている。 観客席。 ざわめき。 《やば》 《一人になっても玲奈だ》 《完成度落ちてるはずなのに全然弱く見えない》 《むしろ本人の強さ分かる》 《第一ラウンドのチームが本人の中に残ってる感じ》 メディア席。 記者の一人が。 小さく言う。 「これ」 「第二ラウンドの方が」 「御堂本人の価値」 「分かりますね」 隣。 「チームがいないから」 「チームの仕事が見える」 「矛盾してますけど」 「そう見えます」 玲奈が。 ランウェイ中央へ。 止まる。 照明。 わずかに。 強い。 でも。 もう。 一歩目で。 身体を合わせている。 顎。 肩。 視線。 全部。 自分で。 ノルディのペンが。 動く。 速くはない。 でも。 迷いもない。 玲奈。 ターン。 服が。 身体についてくる。 第一ラウンドほど。 完璧な動きではない。
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第108話《二人の勝者》

午後五時四十八分。 RE:CODE MODE CONTEST。 第二ラウンド。 全十六名。 終了。 会場は。 静かだった。 拍手の余韻だけが。 まだ。 残っている。 モデルたちは。 それぞれ。 チームの前に立っていた。 御堂玲奈。 真壁ミラ。 歌原彩。 ほか十三名。 誰も。 もう。 何もできない。 歩いた。 見せた。 選んだ。 あとは。 待つだけ。 良太の身体の奥で。 本人が言った。 《緊張するな》 《そう?》 《お前しないの?》 《するわよ》 《全然見えない》 《見せる必要ある?》 良太が。 黙る。 レイラは。 彩を見る。 白いシャツ。 デニム。 髪。 顔。 全部。 もう。 第二ラウンドのまま。 彩は。 前を見ている。 手。 少しだけ。 強く握っている。 緊張。 している。 当然。 * 審査席。 ノルディは。 第一ラウンド。 第二ラウンド。 両方の評価を。 見ていた。 隣の審査員が。 短く言う。 「御堂玲奈」 別の一人。 「真壁ミラ」 また。 別の一人が。 歌原彩の欄を見る。 沈黙。 ノルディは。 しばらく。 何も言わない。 そして。 一枚。 評価表を閉じる。 「第一ラウンド」 一拍。 「御堂玲奈は」 「最も完成していました」 審査員たちが。 見る。 「彼女だけではありません」 「チーム全体が」 「同じ御堂玲奈を」 「知っていた」 井原。 安藤。 ほか六人。 八人。 ノルディは。 その全員へ。 一度。 視線を送る。 「誰か一人が」 「何かに対応しても」 「他が止まらない」 「分業」 「余白」 「再現性」 一拍。 「非常に」 「高い水準です」 玲奈は。 静かに。 聞いている。 「そして」 「第二ラウンド」 「一人になっても」 「それは」 「消えなかった」 会場が。 静まる。 「チームが」 「彼女の外側だけを」 「作っていたのではない」 一拍。 「何度も」 「共有した完成形が」 「本人の中にも」 「残っていた」 ノルディが。 玲奈を見る。 「これは」 「強いモデルです」 玲奈が。 小さく。 頭を下げる。 * ノルディの
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第109話《終わらない第二ラウンド》

三日後。 午前九時十二分。 UTAHARA MODEL OFFICE。 良太は、パソコンの前で固まっていた。 「……何これ」 メール。 仕事依頼。 取材。 撮影。 広告。 昨日、整理したはずだった。 なのに、増えている。 椅子の後ろから、レイラが画面を覗く。 《何件?》 「昨日の夜から、また百件以上」 《全部仕事?》 「問い合わせも多い。あと、彩に服を送っていいかって」 《分かりやすいわね》 RE:CODE MODE CONTEST。 開催から三日。 優勝者は、御堂玲奈と真壁ミラ。 だが、話題になっているのは二人だけではなかった。 第二ラウンド。 一時間。 十万円。 スタッフ一名。 大会公式が公開した映像は、第一ラウンドの再生数を超えていた。 しかも、まだ伸びている。 * 良太が動画サイトを開く。 《御堂玲奈が10万円で選んだ服》 《真壁ミラ、1時間で作った第二ラウンド》 《RE:CODE第二ラウンド全16名比較》 《チームを一人にしたら何が残るのか》 そして。 《歌原彩、ユニクロでランウェイ》 「これ、公式より回ってない?」 《ものによるわね》 「いいの?」 《権利処理されてるなら》 「そこはちゃんとしてるんだな」 《仕事だから》 良太は、別の記事を開いた。 第二ラウンドに出場した十六人。 その多くに、変化が起きていた。 あるモデルは、フォロワーが約三万人増加。 新規撮影依頼が六件。 別のモデルは、第二ラウンドで自分の髪を切り、話題になった。 フォロワー約五万人増。 美容系ブランドから問い合わせ。 第一ラウンドでは目立たなかったモデルにも、雑誌や広告の話が届いている。 「……すげえな」 《何が?》 「優勝してない人にも仕事が来てる」 《そうね》 「なんで第二ラウンドなんだろ」 レイラは、画面を見る。 《分かりやすかったから》 「何が?」 《条件よ》 一時間。 十万円。 スタッフ一人。 《第一ラウンドは、全部が高い水準で揃ってた》 《でも第二ラウンドは、何を選んで、何を捨てたかが見える》 良太が頷く。 「見る側も比較しやすかった?」 《それに、一人ずつ物語ができた》 《短い動画にも向いてる》 「なるほど。SNS向きか」 《かな
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第110話《少し疲れたわ》

土曜日。 午後三時。 良太の実家。 自室。 机には、パソコン。 画面には、RE:CODE MODE CONTEST後に届いた仕事の依頼が並んでいた。 撮影。 広告。 雑誌。 ブランドとのタイアップ。 大会から数日。 問い合わせは、まだ増えている。 良太は、一件ずつ内容を確認していた。 彩は高校卒業まで学業優先。 仕事は月一回程度を基本にする。 金額だけでは選ばない。 誰と仕事ができるか。 どんな経験になるか。 次に何が残るか。 無理はないか。 その基準で、候補を絞っていく。 ベッドの端には、レイラが座っていた。 《それ》 「どれ?」 《三番目》 「若手デザイナーのルック?」 《そう》 「俺も気になってた」 《なら、調べなさい》 「決めてくれないの?」 《自分で決めなさいよ》 良太が笑う。 「最近、それ多くない?」 《何が?》 「自分で考えろ。自分で決めろって」 《代表でしょ》 「そうだけど」 《いつまで私に全部聞くつもり?》 良太は少し考えた。 「できれば、ずっと」 《嫌》 「即答かよ」 《あなた、最初よりかなりマシになったんだから》 「かなりマシって」 《褒めてるわよ》 「もっと言い方あるだろ」 レイラが笑った。 ◇ 夕方。 仕事が一段落する。 良太は椅子を回した。 「なあ」 《何?》 「彩、もう前ほど心配しなくてもいいんじゃない?」 レイラが顔を上げる。 「いや、心配はするだろうけど」 「何でもお前が決めなくても、大丈夫になってきたっていうか」 《そうね》 「嫌なら嫌って言うし、怖いなら怖いって言う」 「分からなかったら、分からないって言うし」 一拍。 「後で、も言う」 レイラが少し笑う。 「コンテストでも、玲奈やミラには届かなかったけど」 「ちゃんと自分で選んで、自分で歩いてた」 レイラは窓の外を見る。 夕方の光。 《十六歳で、あそこまでできたなら》 一拍。 《上出来よ》 良太が、少し驚く。 「珍しいな」 《何が?》 「お前が素直に褒めるの」 《事実だから》 レイラは、もう一度笑った。 ◇ 良太が、ふと思い出す。 「なあ」 《何?》 「そろそろ彩に言ってもいいんじゃない?」 《何を?》 「お前がこ
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