ヴィクトリアは微笑んでいた。隣にリュージュがいて、二人で草原の上に寝転んでいる。 体には心地よい疲れが残っていた。 いつものように木陰にいたら、「本ばっかり読んでないで体も鍛えろ」とリュージュに言われて、先程まで二人で鍛錬をしていた。 組手をしてみたけど、毎日鍛えているリュージュの方が勘が鋭く、攻撃は全部避けられた。確かにもう少し鍛えないと、いざという時に困ると思った。 「基本の体作りは一人でもできるけど、戦闘訓練は相手がいないとできないわ」と言うと、「俺が相手になるから頑張れ、諦めるな」と言われた。わりと熱血だ。 「あ、サーシャだ」 上半身を起こしていたリュージュが、カゴを持ちながら一人で魔の森へと向かっていくサーシャを見つけた。 「また一人かよ、誰かに声かけろって言ってるのに」 薬師は忙しい。薬草が足りなくなると彼女は護衛を頼むのを面倒がり、よく一人で魔の森まで出かけてしまう。 魔の森は時々人間が出たり大柄な野生動物もいるので危険もあるのだが、「私も獣人だし何かあればシド様が飛んでくるから大丈夫」と言っているらしい。 リュージュはサーシャを見かねて魔の森に同行することがある。リュージュらしいなと思う。 ヴィクトリアも一度、一緒に薬草取りに行かないかと誘われたことがあるが、シドから里の外へ出ること、つまり魔の森へ行くことは禁じられているので、断っている。 「ちょっと行ってくるな」 「気をつけてね」 手を振って走り出したリュージュだったが、少し走った所でくるりとこちらに方向転換して戻ってきた。 「どうしたの?」 「お前、頭ボッサボサだぞ」 「え?」 寝転んだせいで乱れてしまったのかと思い直そうとしたが、それよりも早くリュージュの手が伸びてきて、ぐしゃぐしゃに掻き回される。 「もうっ!」 リュージュは、ははっと笑って行ってしまった。 ヴィクトリアは結っていた長い銀髪をほどき、手櫛で整えながらも、満面の笑みでリュージュを見送った。 ****** 「少しいいか?」 木陰に移動して本の続きを読んでいると、あまり気配を感じさせずに一人の男がやって来た。ウォグバードだ。 ウォグバードは長い波打つ深緑の髪を後ろで一つに束ねた、四十代くらいの長身の男だ。 ボタンのついた開襟シャツと軍服のような
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