浴室から出たヴィクトリアは身支度を整える。下着が上下共にないのはもうどうしようもないが、ため息が出てきてしまう。 恥ずかしいのでできるだけ早く何とかしたい。 裸足で地面を歩くのも時々痛いので、靴がないのも辛いところだ。(明日になったら買ってもらえないか交渉してみましょう) 脱衣所から部屋に戻るが、レインは部屋の中にはいない。匂いを探ると、部屋の外で扉に寄りかかるように座り込んでいるのがわかった。(いい匂い……) ヴィクトリアは吸い寄せられるように、数歩フラフラとレインがいる方向へ歩みを進めてから、はたと立ち止まる。(だめだめ! さっそく匂いにつられてどうするの! しっかりしなきゃ!) 気合を入れ直し、きりっとした面持ちで扉に向かう。「レイン、終わったわよ」 扉を開けるとレインが立ち上がった。黒曜石の瞳でヴィクトリアを見据える。「いい匂いがするね」「そ…… そうかしら?」 それはあなたよ、と言ってしまいそうになり、誤魔化す。「あなたも疲れたでしょうから部屋の中で休んで。問題はベッドだけど、何か仕切りでも作ってお互いに侵入しないようにしましょうか」 残念ながらこの部屋でベッド以外に寝られそうな場所は見当たらない。強いて挙げるなら床に寝具の上掛けを敷いて寝るくらいだが、それには抵抗があった。「俺は朝までここにいる。約束を破りたくないんだ。君は安心してあのベッドを一人で使いなよ」「え、でも……」「風呂上がりの君は凶器だ」「凶器?」 ヴィクトリアは言葉の意図がわからずに小首をかしげた。 ヴィクトリアを凝視していたレインは、「うっ」と呻いて彼女を見ないように横を向き額のあたりを押さえた。 レインの顔が赤い。「……そうでなくても一緒のベッドとか無理だ。いや、一緒の部屋に…… 一緒の空間にいること自体が無理なんだ。君が美しすぎて自分を抑えられる自信がない」 ヴィクトリアは気づいた。小屋で監視されていた時の無表情や、さっき部屋を見た時の涼しい顔、あれは作ったものだと。(この人、たぶん私のように本心を隠して表情を作り込むのが上手い人だ) それなのに感情を隠さずに顔を赤くしているのは、限界を超えて耐えられなくなったことを示す。 ヴィクトリアは身の危険を感じた。「襲うかもしれない」 言われた瞬間、ヴィクトリアはバタンと勢いよく扉
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