頭と体にタオルを巻いただけの状態で、ヴィクトリアは鏡台の前に立った。タオルを外し、先程シドにつけられたキスマークを眺める。首と、胸に近い場所と、お腹にもキスマークがついていた。 つけられたばかりだから赤みが強い。湯で体を温めたせいかよりくっきり浮かび上がっている。シドの匂いもしばらく取れないだろう。 (早くここから逃げなきゃ。いつか取り返しがつかなくなる) しかし安全に逃げる方法がない。最近はシドにつきまとわれているし、リュージュに会いに行くのさえ四苦八苦している。 それに、里から出るということは、リュージュとさよならするということだ。 リュージュと離れたくなかった。いずれやってくるその時に、自分はその選択ができるのだろうか。全く自信がなかった。シドに襲われかけた衝撃が尾を引いていて、ヴィクトリアの精神は弱りきっていた。 とにかく服を着ようと、ヴィクトリアが頭のタオルを外した時だった。部屋の扉が叩かれる。 (誰?) 扉は金属製であまり隙間がないように作られているため、廊下の匂いは扉に近づかないと察知できない。食事を運んだり洗濯物を回収しに訪問する者はいるが、今はその時間ではない。 ヴィクトリアは警戒した視線を扉に向けた。 「ヴィクトリア、いるか?」 (その声は……) 「リュージュ?」 思わず名前を呼んでしまってから失敗したと思った。居留守でも使えばよかった。 「最近会ってなかったから心配になってさ。大丈夫か? 体の具合でも悪いのか?」 「えっと……」 会いに行かなかったのは意図的なので返答に困る。 「それともあいつに何かされたのか?」 声を一段低くし、わずかに攻撃的になった声で聞いてくる。思い当たることがありすぎて、一瞬体が動かなくなった。 シドが頻繁に会いにくることはリュージュに言っていない。何かあったら頼るという約束を破ってしまっている。でももし話したら、リュージュはヴィクトリアを守ろうとするだろう。またあの時のように、リュージュが死んでしまうような目にあうのは嫌だった。 「そんなことない、大丈夫よ」 「じゃあ無事かどうか確認するからここ開けて」 その言葉に驚いたヴィクトリアの体が強張った。 「今お風呂上がりで何も着てないの。恥ずかしいからまた今度にしてね」 「服を着終わるまでここで待って
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