瀬奈はしばらくの間、湊斗がとめた車の前でじっと二人が歩く姿を後ろから眺めていた。そんな彼女を気遣うように彼が振り返った。「――瀬奈、何してるんだ。早く来い」「え、ええ……」瀬奈は小走りで湊斗たちの元へ駆け寄った。瀬奈と湊斗は、里亜を挟むようにして二人並んだ。「こういうところに来るのは初めてか?」「うん!とっても楽しみ!」瀬奈たちが今いるのは、都内でも有名な動植物園だった。黒川区にある神宮司邸からは、車で二十分ほどで到着する。(あの神宮司湊斗が動物園にいるだなんて……)瀬奈は隣を歩く彼の横顔をじっと凝視した。周囲にいる女性たちが彼を見てキャーキャー騒いでいる。まさか彼があの神宮司財閥のトップだとは思いもしないだろう。「そんなに見つめられると……」しばらく見ていると、視線に気付いたのか湊斗が振り向いた。「何か、変な考えを起こしてしまいそうだ」「……」その顔は、ほんの僅かに火照っていた。瀬奈が顔をしかめると、湊斗は焦ったように冗談だと笑った。「何かあったか?」「いいえ、あなたが女性に人気なのを再認識しただけよ」「……どういう意味だ?」気付いていない湊斗に、瀬奈は丁寧に教えた。「通りすがりの女性たちがあなたから目を離せなくなっているわ。若い女の子をあんな風に誑かすだなんて、あなたって罪な男なのね」「……」からかうように言うと、湊斗は不快そうに眉をひそめた。(どうしてそんな顔をするのよ)若くて綺麗な女の子に好かれて嬉しくないのか。湊斗はそんな彼女の疑問を読んだかのように口を開いた。「前も言ったがお前以外の女に好かれたとして、何の意味があるんだ」その一言に、彼から目が離せなくなっていた女性たちがキャーと歓声に近い悲鳴を上げた。「……人前でそういうことを言うのはやめてくれないかしら?」「なら、二人きりのときならいいのか?」「……まぁ、誰かいるときよりかはマシかな……」その返事に、湊斗は嬉しそうに笑った。そんな顔をされると変な気持ちになるからやめてほしいものだ。二人の間でじっとしていた里亜が、湊斗を見上げた。「おじさんはママのことが大好きなんですね」「り、里亜!」瀬奈が慌てたように声を上げた。何を勘違いしているのか、湊斗が私を好きだなんて。「あなたも、そういうことを言うのはやめなさい」「どうして?」里亜がきょとん
Dernière mise à jour : 2026-05-24 Read More