シャルロットの脳裏に蘇るのは吐瀉物にまみれながらうつむき泣いている幼いランスロットの姿だった。 ランスロットはもう過去の出来事だと割り切っているけれど、傷痕は確かに彼の中に残っている。ランスロットは未だに男しか愛せない―― アンバー公爵は三番目の妻であったシャルロットの母を殺した。 シャルロットは母の葬儀の日に自分の出世の秘密を知った。 シャルロットだけは他の兄弟と父親が違っていた。シャルロットは母の不貞の果てに生まれた子供だった。 しかも、母がアンバー公爵の長子ディオンとの間に宿した子で―― アンバー公爵自身は何も語らなかったけれど、穢らわしいものを見るような目つきで子供のシャルロットを見下ろしていた。 アンバー公爵がシャルロットをそんな目て見たのは一度だけで、自分の孫には違いないと思っていたのか、表面上は父親らしくしてくれた。好きな物は何だって買い与えてくれたし、どんなわがままでも聞いてくれた。 けれど、優しさを装いながらもシャルロットを見る瞳の奥底には、いつだって侮蔑の色があった。彼はシャルロットを通して、自分を裏切った母を見ていた。 自分の本当の父を思う時、シャルロットの胸にはいつだってレモングラスの香りがあった。 ******「……アンバー公爵令嬢、一度お話を伺わせて頂きたく我々と共にご同行願えますでしょうか。いや、それよりも先にそちらの写真を拝見させて頂くのが先ですね」「ま、待って……」 警邏隊員たちがセシルの持つ写真を確認しようと進み出るのを見たシャルロットは、彼らの動きを全身で止めようと声を上げ、立ち上がると令嬢らしくもなく走り出そうとした。しかしユトがそれを止める。 ユトは腕の中にシャルロットを閉じ込めるようにして抱きしめた。「ユ、ユト…… 駄目よ……」 二人の関係は公には秘密のはずだ。貴族と平民の結婚が可能になったとは言え、遊びならいざ知らず、使用人との結婚なんて、シャルロットの祖父であり養父であるアンバー公爵は決して許してくれなかった。 この恋はずっと秘密のままにしておくつもりだったのに、こんな風に人の目のある場所で強く抱擁してくるのは駄目だと思った。シャルロットはユトの腕から逃げ出そうとしたが、ユトの力は強かった。「……もう良いのです。あれは私が一人で勝手にやったことです。お嬢様は何
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