一発の銃声と共に胸に衝撃が走った。 自分の口から血が吐き出されるのと、銃弾が飛んできた方向を見て狙撃手が誰かを確認したのと、全身から力が抜けてまぶたが閉じそうになるのが同時だった。 それから、あの時と同じ、心が深い悲しみと絶望と喪失感に苛まれるのも…… 狙撃手は――――だった。 どうして、と思う反面、彼は自分を殺したかったはずだから、これで良かったのかもしれないとも思った。 けれど、まぶたを閉じる直前まで見ていた彼の表情が、あの時と同じく衝撃に包まれていて今にも泣き出しそうに見えたから、違う、と思った。 (……やっぱり、そうだった。――――は私を殺したくなんてなかったのね…… 理解するのが遅すぎてごめんね……) ドサリと自分の身体が地面に倒れたような気がしたが、不思議とあまり痛みを感じなかった。全ての感覚が急速に遠ざかっていく。 ナディアは死の淵にいる自覚のないまま、これまでの人生を走馬灯のように脳裏に蘇らせていた。 ****** ――ナディアが死亡する約二年前。 首都中枢に位置する銃騎士隊本部。 二番隊長の執務室で一人仕事をしていた二番隊長代行ジュリアス・ブラッドレイは、窓からの陽が当たらず暗くなった壁の一角に突如現れた人物に気づき、瞬時に幻視と防音の魔法を執務室の周囲にかけた。 ジュリアスは魔法使いだ。そのことはごく一部の者しか知らない。 「兄さん、すまない。しくじった」 声は幼さの残る若い女のものだ。部屋の影になった部分からその人物が一歩踏み出す。 目の前にいるのは、茶色の瞳を持ち、波打つ茶色の髪を肩まで下ろした十代前半くらいの少女だった。 「シリウス……」 ジュリアスは椅子から立ち上がり、目前の人物の本名を驚きと共に呼んだ。 家族だけでいる時、他の者に彼らの秘密が絶対に漏れることのない場面では、ジュリアスは弟を真名で呼ぶ。 目前の少女の正体は、ジュリアスのすぐ下の弟であるシリウス・ブラッドレイだ。 シリウスもジュリアスと同様に魔法使いだった。少女の姿をしているのは自身の姿替えの魔法によるものだ。 少女の姿が一瞬にして青年の姿へと変わる。 白金色の髪を持ったシリウスの面差しはジュリアスに似ていて、冴え渡るような類稀なる美貌を誇っている。 ただ、シリウスの瞳の色
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