Semua Bab その結婚お断り~イケメンと三角関係になり結婚をお断りしたらやばいヤンデレ爆誕して死にかけた結果幸せになりました~: Bab 111 - Bab 120

201 Bab

2 やっぱりおかしい

 ナディアの登場に訓練は一旦休憩に入った。隊員たちは思い思いに寛ぎ、汗を拭いたり水分を補給したりしている。長椅子の上や、休憩所付近にの芝生の上に寝転がり、休息を取っているような者もいた。 そんな中、ナディアは鍛錬場に最初に現れた場所からあまり動かず、立ち尽くしたままゼウスだけを見つめていた。 突然の恋人の登場をアランに冷やかされながらも、絡み続けようとするクドい先輩をあしらってから、ゼウスはようやくナディアの所へと来てくれた。「メリッサ、突然で驚いたよ。どうしてここに? 手紙で知らせてくれればよかったのに」「それが私にもよくわからないのよ。歩いていたら突然周囲の景色が変わって、気がついたらここにいたの……」「突然、ここにいた……?」 ナディアの言葉にゼウスが首をかしげている。ナディアも自らの身の上に起こったことを上手く説明できずに、首をひねるばかりだった。「手紙なら書いたわ。でも、私が南西列島に行くことは昨日手紙に書いて今朝出したばかりだから、まだ届いてなくて当然かも……  でも、これまでだって何通もゼウスに手紙を書いたの。だけど一度も返事が来ないから、もしかしたら私の手紙は一度もゼウスに届いていないのかなって思ってた」「ちょっと、待って…… 俺からの手紙が一度もメリッサに届かなかっただなんて、そんなことはないはずだよ。銃騎士隊独自の連絡経路にも乗せていたものが届かないだなんて、そんなことあるはずがない…… それに、メリッサが出してくれていた手紙も俺に届いてないって、一体どういうことだろう……?  俺は毎日のように何度も何度も君に手紙を出したよ。だけど全然返事がないから、もしかしたらメリッサに別に好きな人ができてしまったんじゃないかって、そんなことまで考えてしまって……」 ナディアの脳裏に一瞬だけシリウスの姿がチラつくが、首を左右に強く振って追い払う。「そ、それは…… ないわ。私はゼウスだけだもの…… 私が愛せるのはたった一人……  でも、こうして会えてよかったわ」 ナディアは手紙のことや突然ここに来たことを妙だと感じつつも、とりあえず話題を変えたかった。「……メリッサ、やっぱりちょっとおかしい…… 今日の訓練はもう早退させてもらうから、どこか別の落ち着いた所へ行ってから、そこでもう一度よく話そう」「待って」 ゼウスは場所の移動
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3 慣れない距離感

 一番隊南西支隊長の専属副官になったハロルド・シュトラウスは、フランツ・クラッセン支隊長の執務室にいた。  いつもであれば午後からの戦闘訓練に参加しているところだったが、先の獣人との戦闘が発生した影響で支隊長の仕事が急増したため、フランツの専属副官としての仕事を優先していた。  執務に励んでいたハロルドは、扉を叩かれる音に手を止める。 「ブラッドレイ二番隊長がお越しです」 「二番隊長? わかった、通せ」  フランツは少しだけ怪訝そうに切れ長の眉を寄せたが、すぐに返事をした。  アーク・ブラッドレイ二番隊長は神出鬼没であり、「必要な時に必要な部隊に現れて、助力や助言などをした後に、いつの間にか忽然と姿を消す」というような都市伝説みたいな人であるらしい。  らしい、というのは、ハロルドがアークについての詳細や人となり――フランツの専属副官になった時に銃騎士隊の機密事項としてブラッドレイ家の面々が魔法が使えることは教えてもらったが――をあまり知らないからだ。  アークは一応本部勤務となっているようだが、隊が違っていたこともあり、ハロルドが本部で二番隊長を見かけたのは数える程度だ。友人の父親だといっても、会話もほとんどしたことがなかった。  アークはおそらく、先の獣人との戦いの後処理のために来てくれたのだろうとは思うが、今朝方手伝いのために、副支隊長のカイザーとリオル副官も別の島から到着して、現在は他の隊員も引き連れて現場巡りを担当してくれている。  手は足りているのに変だな、とハロルドは思わなくもなかった。  フランツが立ち上がる。その意を汲んだハロルドは、執務机の後方にあった上着掛けから隊服を取り、フランツの背後から広げて彼に着せかける。  フランツは今日は支給されている規定の黒色シャツを着ており、袖を肘までまくっていた。  袖から覗く、男らしいのに貴族の血ゆえなのか上品さと美麗さを保っているその前腕の筋肉が、袖を元に戻し上着を着ることで隠される。  本日の気候がやや暑かったせいなのか、それまでフランツは襟元のボタンを大胆に開けていて、色気ダダ漏れな胸元と綺麗すぎる鎖骨を見せつけるような格好だった。  ハロルドはフランツの上着のボタンを留めながら、彼の素肌を凝視してしまいそうになるのを理性でこらえていた。  しかし不躾
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4 告白

 ハロルドは支隊長と二番隊長の後方で彼らについて歩きながら、突然現れたアーク・ブラッドレイ二番隊長の背中を凝視していた。  何と表現するのが適切なのか迷うが、とりあえず怖い。歩く後ろ姿を見ているだけなのに、ハロルドはアークからひしひしと威圧感を感じていた。  顔だけなら三番隊長の方がよほど怖いが、全身から醸し出されるアークの雰囲気が、「銃騎士隊の暗部を全て一人で背負ってます」みたいな感じであり、上手くは言えないがとにかく怖いのだ。  アークはどんな時でもほとんどが無表情である。「複数の獣人を斬り伏せて返り血を浴びた状態であっても、全く顔色が変わらず無表情のままだった」とか、「命乞いをする獣人の頭を、一切のためらいもなく淡々と銃で撃ち抜き続けて殺していた」とか、色々と非情な噂は聞く。  ハロルドが実際にそんな血みどろな場面に出くわしたことはないが、「むき出しの自身の剣に血を吸わせるために、獣人の屍が累々と重なる血の海の中を、殺戮を求めて無表情のままで徘徊するアークの図」という恐ろしい想像は容易に頭の中に浮かぶ。  印象だけではあるものの、アークは感情があまり表に出て来なさなすぎて、人としての情が通っているのだろうかと疑問に思えるほどである。  アークは、キラキラと常に輝かんばかりの美貌を放ち人格者とも言われている二番隊長代行ジュリアスや、美人すぎて性別すら超越していそうに見える心優しき友人ノエルの、果たして本当の父親なんだろうかと失礼なことまで考えてしまう。  もっとも、ハロルドも会ったことのあるアークの妻ロゼは、びっくりするくらいのとてつもない美人なので、子供たちの顔立ちについては全員が母親寄りなのだろうと思う。  ロゼは白金髪に碧眼の、三十代後半にはあまり見えない若々しい美女で、周囲を和ませるようなほわほわとした雰囲気のある、天使みたいな可憐な印象の強い女性だ。  鬼畜が服を着て歩いているような感じのアークと、「慈しみの大天使様」みたいな安らぎに満ちた清らかな雰囲気のロゼが夫婦なのが、性質が真逆すぎて何となく不思議な組み合わせだなと思ってしまう。 (子供が七人くらいいるから夫婦仲はよいのだろうけど)  ハロルドたちが向かっているのは南西支隊本部の敷地内にある屋外鍛錬場だ。  執務室にてこの前の襲撃事件に関する助言などを受けた後に、
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5 ゼウスの過去

『――あなたはあの子に騙されているのですよ』(メリッサが獣人、メリッサが獣人、メリッサが獣人……) ゼウスは驚愕の表情のまま、何も言えずにいた。 固まる彼の脳裏に、ある光景が蘇る。 ******『ゼウス……』 記憶の中にいるかつての恋人イザベラが、弱々しい声でゼウスの名前を呼んでいた。 目の前に横たわるのは簡易的な寝具に寝かせられ、血のにじむ包帯を頭に幾重にも巻かれた幼馴染の姿だった。 高熱を出して痛みに苦しむイザベラの顔色は真っ青で、ゼウスは何度も何度も自分が彼女に代わってその苦しみを引き受けてやりたいと思った。自分の命を彼女のために捧げても構わないから、イザベラに生きていてほしいと願った。 故郷の街が獣人の襲撃にあった時、ゼウスは周囲の者たちに促されるまま、姉アテナと義兄ウィリアムと共に獣人たちから逃げ出した。 ゼウスはこの時の行動を、一番の親友だったはずのイザベラの元へ行かなかったことを、その後もずっと何度も何度も何度も繰り返し後悔していた。 どうして自分は、彼女が最も恐怖し苦しんでいる時にそばにいてやらなかったのだろうと、長い間自分を責め続けた。 致命傷を負い横たわるイザベラにかけられた毛布の腹部あたりには、血がにじんでいる。痛々しいが、毛布を取るともっと悲惨な状態で、身体に穴が開いた箇所にいくら包帯を巻いても、所詮は気休め程度にしかならないようだった。 街は壊滅状態。治療を求める人は大勢いて、頼んだ医者は時間を置いてやっと来てくれたものの、現状では手の施しようがないと首を振るばかりだった。 イザベラは手術をしなければならないほどの酷すぎる状態だったが、必要な薬や器具は全く足りておらず、出来ることといえば痛み止めを処方するくらいで、根本的な治療は無理だと言われてしまった。それほど長くは保たないだろうと医者には告げられた。 その宣告を本人には聞かせていなかったが、聞かずとも死期を悟っていたのか、イザベラは、ただ、「早く楽になりたい、早く死にたい」と、そんなことを繰り返しこぼすばかりで、全てを諦めてしまった彼女の痛みと苦しみと悲しみに、胸が張り裂けそうだった。 ゼウスはイザベラに生きていてほしかった。彼女が生きたいと願う拠り所になりたかった。 彼女を失いそうな段階になって、初めて自分の気持ちを自覚したこともあって、こんな時にと
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6 ヒーロー(仮)は遅れてやって来る

⚠【注意】⚠ 主人公への暴力(ゼウス→ナディア)があります。 ***  里に潜んでいたままの少女の姿で最愛の人との愛の巣に戻ってきたシリウスは、彼女の残した手紙を発見するなり目を見開いた。  いや、本当は手紙を読む前、この家の中に入った時から、シリウスは異変を感じていた。  シリウスは愛する人からの手紙を手の平の中で握り潰してしまった。 (どうして…… どうして俺じゃない他の男を選んだんだ……)  これまでに感じたことのない深い深い負の情動が湧き上がってきてしまい、シリウスは意図せずに落雷を何発も家の中に発生させてしまった。  家の壁や家具が壊れて周囲が破壊されていくが、心の中は荒れ狂っていてとても元には戻らない。  しかし、すぐにハッとしたシリウスは、手紙を壊れた文机の上に置くと、火の手が上がって燃え始めてしまった借家はそのまま放置して、外へと飛び出した。  ******  ハロルドはメリッサが出自を告白した後のゼウスの行動を見て、彼女の正体を聞いた時以上に目を見開き、走る速度を最大限にまで上げて、全力でその間に割って入ろうとした。  けれどそれは叶わなかった。  突然、ハロルドの足が地面に縫い留められたように動かなくなる。急停止したというのに、たたらを踏むこともできない。  足だけではなくて、全身が一瞬にして氷漬けにされたかのように、ピタリと止まって全く動かせなくなった。かろうじて呼吸とまぶたを動かず程度はできたが、叫びたくても声が出ない。  ハロルドの眼前では、腰に収めていたはずの剣をゼウスが抜刀し、一生愛すると誓った相手に向けていた―― (誰かっ! 誰かゼウスを止めて!)  メリッサに剣を向けるゼウスを見たハロルドの目からボロボロと涙がこぼれ落ちた。 (支隊長! 先輩! 副主幹! 誰でもいい! 誰でもいいからっ! 誰かっ!)  自身の自由を奪って足止めしているのが誰の仕業なのかということにも頭が回らずに、ハロルドは出せない声の代わりに心の中で叫んでいた。 (ゼウスにあんなことさせちゃいけない! 愛している人を斬らせるなんてそんなこと、絶対にしちゃいけない! その人を斬ってはいけない! あなたが愛した人は! 獣人は本当は――!)  けれどハロルドの思いも虚しく、目の前の光景に赤い色が加わった。  ――ハロルドはこの時、
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7 三角関係?

「俺の女に触るなァァァァーーーー!」  姿は少女なのになぜか男の声で、そして自分のことを「俺」と呼称して叫びながら、その少女は手の平から幾つもの電撃の刃をゼウスに向かって放出させた。  迫り来る光の刃に目を見開くゼウスは動けない。  攻撃がゼウスに当たる寸前、なぜか急に体が動くようになったハロルドは、横からゼウスに体当たりするように飛び出して、回避させた。  ゼウスが雷少女の攻撃の餌食にならなくてよかったとホッとする暇もなかった。ゼウスを抱えて地面を転がるハロルドの元に、第二撃の雷撃が襲いかかる。  ハロルドはとてつもなく俊敏な動きで起き上がると、呆然としている様子のゼウスを背負って走り出した。  少女は怒りに任せるように、手から放つ雷撃や、天空からの落雷をハロルドたちに浴びせ続けているが、ハロルドは持てる全ての力でもって疾走し、ギリギリかわしていく。  光の速度を持つ雷撃から逃げられるのは、稀人であるハロルドであればこそだった。ゼウス一人だけであれば、おそらく避けきれなかっただろう。 「退避ーっ! 総員退避っ!」  ハロルドは逃げ回りながら腹の底から声を出し、獣人との戦闘中にしか出されるはずのない指令を叫んでいた。未だ休憩所付近に留まる隊員たちに「逃げろ!」と伝えるためだった。  一番隊南西支隊長の専属副官となったハロルドは、二番隊長一家の特記事項を知らされている。先ほど一瞬垣間見えた青年の顔は、美貌の二番隊長代行ジュリアスによく似ていたし、友人であるノエルの面影とも重なった。  青年――雷少女――の正体は、おそらく特命を帯びているはずのブラッドレイ家次男、シリウス・ブラッドレイで間違いないだろうと、ハロルドは当たりをつけていた。  ブラッドレイ家は魔法使いの一族だ。彼らが本気を出せば魔法の力で支隊本部など吹っ飛ぶだろう。  怒れるシリウスは人間というよりも超天災級の化け物と言っていい。とにかく隊員たちに被害が出ないように、速やかにこの場から逃げてほしかった。  ハロルドは、『なんで味方であるはずの自分たちをシリウスさんが攻撃しているの?』という疑問は浮かびながらも、『たぶんゼウスがメリッサさんを斬ってしまったせいだろうな……』と思い至りつつ、とにかく殺気ダダ漏れでものすごい目つきでこちらを睨んでくる、泣きたいくらいに怖す
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8 許さん

 シリウスは間男を始末するべく雷の大剣を振るったが、剣が彼らに到達する寸前、透明なガラスの膜のようなもので剣撃が弾かれた。 舌打ちしたシリウスは二度三度と攻撃を仕掛けるが、全て同じ結果になった。シリウスはイライラしながら叫んだ。「何でだよっ! 父さん!」 声と同時に雷の剣は砕け散り、シリウスはナディア諸共後方に吹っ飛んで地面を転がった。 シリウスは地面に衝突する寸前に転移魔法を発動させたつもりだったが、いつの間にか周囲に「転移魔法封じ」の魔法がかけられていて不発に終わる。 咄嗟にナディアを庇って彼女が地面に激突しないようにしたが、代わりに自分の背中をしこたま打ちつけてしまって、シリウスは痛みに顔をしかめた。『頭を冷やせ。馬鹿者が』 シリウスの頭の中に精神感応の声が響いてくる。見れば自分たちと、ナディアを奪って傷つけた憎き相手との間に、父親のアークが立ちはだかっていた。 シリウスは首と手足に重さを感じた。瞬時にして出現したそれは重りのついた重厚な枷であり、首には首輪がはめられていて、首輪から続く鎖の先はアークに握られていた。 ――父さん! 何を! 父親に反論しようとしたのに声が出てこない。シリウスはアークに沈黙の魔法をかけられてしまったようだと気づく。つまりは、余計なことは喋るなということだろう。 シリウスは正体が獣人とはいえ、これまで一度も父親に枷をはめられたことはなかった。 沈黙の魔法を使われたことよりも、枷をはめられたことに困惑するシリウスの腕から、アークは念動力でナディアを引き剥がそうとした。 念動力は常人であれば抗うことはほぼ不可能だが、シリウスは体を操ろうとする動きに抵抗し、ナディアを取られないようにと彼女の体に強くしがみつき続けた。 アークはさらに念動力でシリウスの腕からナディアを引き剥がそうとするが、シリウスは必死で腕に力を込めて離さない。『いい加減にしろ! その娘は諦めろと言ったはずだ!』『嫌だ!』 シリウスも精神感応を使って言葉を返す。『今までは大目に見てきたが、人間を殺そうとするとはそこまでだ! いいか、俺は絶対に認めないからな!』『うるさい! このクソ親父っ!』 シリウスは泣きながら精神感応で返す。 大っ嫌いだと思った。シリウスはあの時からもうずっと、父
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9 ブラッドレイ家の切り札

 南西列島付近から転移した直後に、黒髪黒眼の少女の姿だったシリウスは、元の白金髪に灰色眼の美青年の姿に戻っていた。 シリウスはあの鍛錬場に降り立った直後、ナディアの惨状を知り頭に血が昇り、正体がばれることすらどうでもいいと思って自身の姿替えや諸々の魔法を解いた。 けれど直後に父アークが姿替えの魔法をかけ直したために、髪と目の色だけが黒に変わった少女の姿になっていた。 父に魔法をかけられたことには気づいたが、そんなことは些細なことだと思えるくらいに目前の男が憎くてたまらなくて攻撃を仕掛けていた。 シリウスが元の姿に戻ったのは、父の魔法の影響が及ぶ領域から抜けたためだ。 シリウスは海上の別の場所に転移した後も船を走らせて、その後目くらましの魔法を使いつつ、同じように何度か転移した。 後を追われても簡単には見つからないように撹乱するためだが、どんなに魔法を重ねがけしても、おそらく弟のセシルなら見破るだろうなと思った。 セシルの得意な『過去視』は言葉通り過去の全ての事象を見通せる術だ。 通常、他の魔法使いの影響を受けた過去は、その魔法使いの意図が反映された過去が展開される。 しかしセシルの『過去視』はそれを突破して本当の過去を見ることができる。だからセシルが父に協力した場合は居場所がばれてしまうが、シリウスは何となくセシルが自分を庇ってくれるような気がしていた。 セシルは普段は意地の悪さを装っているが、その実、兄弟随一慈悲深い。シリウスの意図を汲み父親には黙っていてくれるはずだと、兄弟間の以心伝心のような何となくの思いがあった。 セシルはこの恋を応援してくれている。 ただ、博愛主義者のセシルのことなので、ゼウスにも肩入れしそうでそこだけは嫌だが。 そして、居場所がばれそうな懸念はもう一つだけあった。それは「真眼の魔法使い」のことだ。『真眼』という真実を見通す稀有な魔法の力を持つ彼女には、目くらましや他の誤魔化しの魔法は一切通用しない。 ただ、現状では今回のことにほとんど関係のない彼女が、自分たちに関わってくることはないだろうとシリウスは考え、そのことについては気にしないことにした。 シリウスは海上の適当な場所で人工的な島を作った。土の魔法を使ってそこに植物を生やし、燃えてしまった借家の代わりに第二の愛の巣を建
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10 光の少年

 それはまだシリウスが幼く、すぐ下の弟ノエルも赤子同然で、母がノエルにばかり掛かりきりだった頃の話―― シリウスは兄ジュリアスと一緒に近所の子供たちの溜まり場へと遊びに行った。しかし子供とは残酷なもので、どこかから捕まえてきた小鳥をいじめて遊んでいた。 シリウスたちが行った時には、「獣人の処刑ごっこ~」と称して、小鳥の首が切り落とされようとしていた。シリウスもジュリアスもその光景に驚いてしまって、止めるように声を上げることもできなかった。 その小鳥の生命力が強かったのか、小鳥は首を落とされてもすぐには死なず、くちばしを動かして生きていた。「お化け鳥だ!」と誰かが言って、集まっていた子供たちはブラッドレイ兄弟を残し、みな悲鳴を上げながら蜘蛛の子を散らすように逃げてしまった。 シリウスは涙を流しながら小鳥を見ていた。「可哀想だね……」 ジュリアスはそう言って、体を痙攣させながらもまだ生きている小鳥の頭部と胴体を手の平に乗せた。小鳥の翼は両側が共にもがれていて、子供たちがどこかへやってしまったのだろうが、近くには見当たらなかった。 ジュリアスはその場から動かずに、光魔法を使い始めた。 光魔法は使用する時に光が発生する。それを通行人に見られて不審がられないようにと、シリウスは兄の意図を汲んで周囲に幻視の魔法をかけた。その頃にはもう、シリウスも魔法が使えるようになっていた。 端から見れば、ジュリアスがただその場に突っ立っているようにしか見えなかっただろう。 手の平から柔らかな光をあふれさせ、全身を覆い隠すほどの大きな癒やしの光に包まれるジュリアスは、とても綺麗で、それは幻想的な光景だった。 ジュリアスの手の中で強力な光魔法を受けた小鳥は、頭部と胴体が繋がり、失った翼を再生させていた。 羽に付着していた惨たらしい出血の後まで消えて元通りの姿になった小鳥は、ピチチ…… と鳴きながら、ジュリアスの手から空へと飛び立って行った。 小動物とはいえ失われた肉体の一部を再生させるほどの魔法なんて、父含め他の兄弟たちも誰一人として使えない。ジュリアスの光魔法はそのくらいすごいものだった。(もっとも、兄さんはもう、光属性ではなくなってしまったけど……) だから流石のジュリアスでも、あの時にもがれた鳥の翼を復元したように、失った体の一部を再生させる魔法――身体再
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11 俺が先に好きだったのに

 シリウスはナディアの体を抱え、建てたばかりの家の中に入った。 こんな海上のど真ん中には誰も来ないから、少し汗ばむ陽気のために窓は全開にしてある。窓からは明るい陽の光が差し込んでいた。 シリウスはナディアの服を脱がせてから自分も全裸になった。仰向けで寝かせたナディアの太ももを掴んで開脚させると、彼女の全部が見えた。ナディアは目を開けているが、全く抵抗しない。 これからシリウスはナディアの処女を頂く。彼女が正気に戻れば激怒間違いなしだろうが、そんなことは知ったことかと思った。(ナディアの心も体も人生も、彼女の全ては俺のものだ。俺と番になってそのことを思い知ればいい) ナディアに自身の存在自体を知られたのは最近だが、シリウスはずっと彼女だけを愛して見つめ続けてきた。(こっちは六年間も彼女一筋でやってきたのに、今更ポッと出の顔だけ野郎に持っていかれるなんておかしい。確かに強姦未遂をしたせいでナディアには嫌われてしまったけど、あっちは殺人未遂なんだから、俺の方がマシだろう) もう誰にも邪魔させない。今こそ積年の思いを成就させるべき時だ。(ナディアと激しく愛し合って番になってやる!) シリウスはナディアの秘所へ手を伸ばそうとした。しかし、先ほど船の中で触れた時にも起こったが、視界に自分とは別の男の手が入り込んで、自分よりも先にナディアの秘所に指を挿れていた。 これは魔法ではなくて番への鋭すぎる嗅覚によって再現された現象であり、音こそ聞こえないが、男は指の本数を増やすと、手淫の刺激であふれる彼女の蜜をまとわせながら、陰茎に見立てた指で抽送を繰り返していた。 感情を殺してしまった現在のナディアと、男の手技を受けて腰をくねらせ、溜まらないといった表情で喘いでいる様子のナディアの姿が、二重に見えた。 それはシリウスがいない間にナディアがゼウスとしていた行為だった。 シリウスは頭を振りその幻視を脳内から追い出した。(こんなのどうってことない。大事なのはナディアがまだアソコに男のモノを受け入れてないってことだ。あの男はナディアの番じゃない。まだ間に合う。今から全部奪えば俺が正真正銘ナディアの番になれる) シリウスは目の前にいる現在のナディアの秘裂に触れて、ゼウスがしていたように中に指を沈み込ませた。ナディアの膣内については熟知している。一緒に入浴していた頃
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