波の音が聞こえる。 ナディアはベッドの上に横たわったまま、虚ろな目で天井を見上げていた。「ナディア…… ナディア……」 シリウスはベッド脇のすぐそばに寄り添って、ナディアに語りかけている。 しかし、悲痛な表情でナディアを見つめ、全身からも強い悲しみの感情を漂わせているシリウスのことは、ナディアの視界には映らない。「早く元に戻って。元気な姿を見せて。俺、これからはずっとそばにいるから。任務ももうどうでもいい。兄さんとの誓いは果たせなくなるけど…… でも、俺はナディアがいてくれればそれでいいよ。それ以上はもう何も望まない。ここで二人でずっと暮らそう。ナディアのことは俺が守るから。もう誰にも傷つけさせないから。だから、だから……」 シリウスはそのまま一言も言葉を発しないナディアにしがみついて泣き出した。「俺を見てよ! 俺を愛してよ! どうして俺じゃないんだ! あんなことされても、どうして今でもあの男を思って心を閉ざすんだ! あんな男のことなんか切り捨てて忘れてしまえばいいのに、どうして俺じゃ駄目なんだ!」 シリウスの叫びと波の音だけが、この小さな島に響き渡った。 ――シリウスは打ちのめされたような心を抱えながらも、何とか現状を打開したかった。この世界で一番ナディアを愛しているのは自分だという自負もあった。もちろんあのクソ男よりもだ。 シリウスのナディアへの思いは「本物」なのだ。シリウスの番は彼女しかいない。「ナディアちゃん、ご飯出来たよ~」 心が死んだようになっていてもお腹は空くはずだ。もちろん魔法を使えば飲まず食わずの状態でも生かし続けることは出来るが、今のナディアには様々な外部の刺激が必要だろうと思った。 美味しいものを口にしていればそのうちに元気が出るかもしれないと思い、魔法も使いながらシリウスは料理に勤しむ。 上等の肉を最高の味付けで煮込み、一口で蕩けるほどになってから皿に盛る。スプーンですくって口元に差し出しても反応はないけれど、匂いは確実にナディアに届いているはずだ。「ほら、すごく美味しいよ~ ナディアちゃん、あーんして」 ナディアの口元がピクリと動く。 シリウスが自分の落ち込みから回復して料理を始めるまでには数日の時間が必要だった。その間ナディアは水すら飲むように促しても口にしていなかったから、流石にお腹も空いているは
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