涼太が電話を切った。美羽が尋ねる。「お兄ちゃん、どうするか決めたの?」たった今、涼太は恒に対し、アーンアウトを受け入れると伝えたばかりだった。涼太は答える。「もう後戻りはできない」今の状況は、会社そのものを賭けているようなものだ。成功すればボヘンの時価総額は倍増し、涼太の評価も爆上がりするだろう。しかし失敗すれば、ボヘンは涼太の手を離れ、彼自身も莫大な借金を抱えることになる。千億円規模のアーンアウト、まさに命がけの勝負だ。美羽が聞く。「じゃあ、トウキとの提携は?」「桑原と交わしたのはあくまで合意書だ。アーンアウトについては承諾したが、トウキとの提携の方は白紙に戻す。明日、桑原を連れてトウキ側に交渉に行く」これ以上、相手のいいように操られてたまるか。美羽は納得したように頷く。「うん、絶対勝てるよ」涼太が笑う。「ああ、きっと勝つ。母さんから聞いたけど、退院したばかりなんだろう?早めに休めよ」「お兄ちゃんも早く休んで。体調万全じゃないと、勝てないよ」「分かってる」「……」部屋に戻った美羽に、紗良が尋ねる。「美羽、涼太さん何て言ってた?」「もう準備は万端だって。だから、信じてあげよう」「それなら、私が少し投資しようかな?」今の紗良は、千億円以上の資産を持つ大富豪だ。「だったら、お兄ちゃんに直接相談してみたら?」状況を理解した紗良が笑う。「後で連絡してみるわ」翌日。涼太は朝一番で出社した。美羽が起きると、お腹の痛みはだいぶ引いていた。澪が薬を持ってくる。「美羽、お薬だよ」美羽はその匂いを嗅ぐと、苦味を我慢して一気に飲み干した。それをじっと見守る柚葉。すると美羽に、柚葉が飴を差し出した。「イヴリンさん、飴を食べたら苦くなくなるよ」美羽がそれを受け取る。「ありがとう、いい子ね」自分にそう言ってくれたことが嬉しくて、柚葉が弾んだ声で言う。「パパもいつも私のこと、いい子って言うんだよ」美羽はそっと微笑む。翔平の柚葉に対する愛情に、嘘はないのだと知っていた。朝食を済ませた後、美羽と紗良は子供たちを連れて幼稚園へ向かった。雑談していた時、紗良が休暇を取って知幸の誕生日パーティーに出席するという話をした。「お兄ちゃんが言ってたんだけど、美羽も贈り物を贈って
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