美羽は、目を大きく見開いて翔平を見つめた。沈黙が流れる。周囲の空気は、死んだように冷え切っていた。どれくらいの時間が経っただろうか。美羽は冷静にこう言い放った。「それなら、あなたは自分の思い通りにできるけど、私はただ従うしかないというの?」翔平は深く息を吸い込むと、手を下ろして立ち上がった。そして見下ろすような瞳で、美羽を静かに見つめた。「俺と結婚し、柚葉を生んだ。その事実がある以上、お前の人生がお前ひとりの自由にならないことは分かっているはずだ」美羽は拳に力を込めて、強く息を吐いた。「あなたを好きになったことが、この人生で一番の過ちだったわ。5年前、愛しているというだけで私の尊厳をずたずたにされた。柚葉に対する責任はもちろん感じている。でも、柚葉を道具のように使って、私の人生をコントロールしようだなんて、もう二度とさせない」翔平は冷たい瞳をわずかに細めた。突然のことだった。翔平は口元を歪め、嘲るように笑った。「確かに5年前より、今のお前はずっと頑固で手ごわい。だが美羽、それだけじゃまだ足りないな」「これ以上私を追い詰めないで!」翔平は鼻で笑った。「いいから、柚葉の失われたこの5年間の穴埋めをどうするか考えるんだな」そう言い残して、彼は大股で2階へと向かった。美羽はその場に立ち尽くし、上がっていくその背中を見つめ続けていた。翔平の姿が見えなくなると、美羽はソファへ歩み寄り、どかりと深く腰を下ろす。顔を伏せて頭を抱えた。心身ともに限界だった。柚葉の声が聞こえてくるまでは。「ママ、ママ」美羽は感情を必死に押し殺し、階段を駆け下りてくる柚葉を受け止めた。柚葉はソファの美羽に抱きつき、甘えるように顔を擦り付けてきた。「ママ、私、いい匂いする?」美羽は穏やかに微笑んだ。「もちろん、一番いい匂いがするいい子よ」「ママも一番、いい匂いのするママだよ!そういえば、パパは?」美羽は柚葉を抱き上げて自分の膝に乗せた。「上にいるわ」柚葉は大きな瞳で美羽をじっと見ていたが、ふと黙り込んだ。美羽は理由のない不安に胸を締め付けられ、指で柚葉の頬をそっと撫でた。「あら、どうしたの?」柚葉は小さく聞いた。「イヴリンさん、本当に私のママなの?」美羽は柚葉を強く胸に抱きしめ、答えた。「もしマ
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