All Chapters of 冷徹な夫が暴走愛?それでも妻は絶対に許さない: Chapter 391 - Chapter 400

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第391話

40分後、車が高銀の本社ビルの前に到着した。美羽と悠斗が車から降り、ロビーに入った。上へ行くにはカードキーが必要だ。美羽は再び翔平に電話をかけ、着いたことを伝えた。数分後、スタッフが迎えに下りてきた。「イヴリンさん、こちらへどうぞ」二人がスタッフに続いてエレベーターへ向かった。すると、スタッフは突然立ち止まり言った。「こちらの男性はお待ちください。中山社長はイヴリンさんとだけお会いになるとのことですので」悠斗が動きを止める。美羽は彼を見て言った。「悠斗、先にあそこで待っていて」翔平は迅とは違い、変な真似をするような男ではない。「分かった」美羽はスタッフの後を追って上の階へ向かった。オフィスに着き、スタッフがドアを叩く。中から返事が聞こえると、ドアを開けた。美羽が中に入ると、広々とした部屋が目に入った。窓からは都市の風景が一望でき、何とも言えない重圧感が漂っていた。そして、デスクに座る男を見た。冷ややかな顔立ちで、すべてを手の内で操っているかのような冷酷さが漂っている。美羽は深く息を吐き、足を踏み出した。翔平は視線すら上げなかった。美羽は立ち止まり、彼に問いかけた。「株式譲渡契約書は?」翔平と対立しないよう、できるだけ冷静を装った。今はただ株式譲渡契約書を手に入れてサインを済ませたいだけだ。翔平は相変わらず目を向けず、パソコン画面を見たまま詰問するように言った。「株式を売却する理由を教えろ」やはり簡単には渡してくれないか。美羽は答えた。「今後の仕事は国内が中心になるから、こちらの会社運営にまで手が回らないの。信頼できる会社へ譲渡し、運営体制を変えずに業績を確保するつもりよ。N・Sの不利益にはならない」翔平はそれを聞いて、ようやく顔を上げた。「売却前にN・Sへの通達もなしに独断で決めるなど、株主の利益を軽視しているのではないか?」実際には手続き上の通知だけで十分であり、事前の面会など本来必要のない話だ。K・UはN・Sにとっては微々たる影響に過ぎないのだから。しかし、翔平は明らかに美羽を困らせようとしている。美羽は苛立ちを堪え、丁寧に応じた。「ごめんなさい、私の配慮が足りなかったわね。必要な書類データはすぐに送れるから、確認してくれないかしら?」翔平は目を細
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第392話

電話がつながった。「イヴリンさん!」美羽が尋ねた。「柚葉、まだ起きていたの?」翔平は美羽の横顔を見つめ、思わず眉をひそめた。柚葉はあくびをしながら言った。「今日は真奈美ちゃんとアニメを見ていたの。もうすぐ寝るよ」柚葉はこの2日間、真奈美の家に泊まっていた。「柚葉、ちょっとお願いがあるの」柚葉はすぐさま目を覚ました。「イヴリンさん、何か手伝うことがあるの?」「私の大事な書類が、柚葉のパパの手元にあるの。パパに返してって言ってもらえるかな?」そう聞くと、柚葉はすぐさま声を荒らげた。「パパ、またイヴリンさんを困らせてる!」「それじゃあ、今すぐパパに伝えてくれる?」「今、パパに電話する!」「彼はすぐ隣にいるから、電話代わるね」美羽はスマホを手に持ち、翔平の方へ向かった。冷たい表情の彼を見て、スマホを差し出した。「柚葉から電話よ」翔平は美羽をじっと見つめた。「パパ!」受話器越しに、怒ったような柚葉の声が聞こえる。翔平は手を伸ばしてスマホを受け取り、耳に当てた。掃き出し窓の方へ向き直り、美羽に背を向ける。美羽には柚葉の声だけが聞こえる。やがて、翔平が声を低め、諭すような調子で話し始めた。「いや。仕事の話をしていただけだ。ああ、分かった」「……」翔平は振り返り、通話中のスマホを美羽に突き返した。美羽はスマホを受け取った。端正な顔には冷ややかな表情が戻っており、先ほどまで優しく宥めていたのがまるで別人だったかのようだ。翔平は引き出しから株式譲渡契約書を取り出し、美羽の前に放った。美羽はそれを手に取り、確かめた。間違いない、確かに株式譲渡契約書だ。ようやく、胸のつかえが取れた。「イヴリンさん」柚葉の声が響く。美羽は電話を耳にあてた。「パパは返してくれた?」「ええ、もう返してもらったわ。ありがとう、柚葉」「もしパパがまたイヴリンさんを困らせたら、いつでも私に電話して!パパを叱ってあげるから!」美羽は胸が温かくなり、微笑んで言った。「ええ。でももう遅いから、早く寝てね」「うん、もうすごく眠いよ。起きたらまた電話するね」「ええ」そう言うと、電話を切った。美羽は株式譲渡契約書を掴むと、一秒の迷いもなく背を向けた。翔平はその立ち去る姿を
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第393話

会社に戻って、美羽はオフィスに入った。書類にサインをして押印し、すぐに郵送した。送り終えたその瞬間、ずっと抱えていた不安が、ようやく消えていくのを感じた。これでようやく解決だ。あとは、仕事の引き継ぎや変更の手続きを進めるだけだ。リナがドアをノックして入ってきて、これからの運営について相談した。今日、海外の販路提携の者が来社することになっているそうだ。直接会うべきかどうか聞かれた。美羽は答えた。「ええ、リナにお任せするわ」リナは頷く。美羽が仕事を続けようとしたところ、リナがまだその場に立っていることに気づいた。美羽は顔を上げて尋ねた。「他に何か用でも?」リナは言った。「イヴリンにこうして会えるのも最後かと思うと、寂しくなるよ」K・Uの今があるのは美羽だけの力じゃない。チーム全員の、そして中でもリナの尽力のおかげだった。美羽は席を立ってリナのそばへ行き、彼女を抱きしめた。「ごめんなさい、みんなに相談もせずに決めてしまって」リナは美羽を抱き返し、言ってくれた。「最初は勝手に決めたことに怒ったりもしたけど、イヴリンはとても疲れていたわ。イヴリンなりの事情があったはずだし、これからは自分を労って休んでもいいのよ」美羽は頷き、リナから体を離して言った。「ありがとう、リナ。これからも連絡し合おうね」リナはそれ以上は何も言わず、言った。「ええ。2時からのミーティングに向けて準備をお願いね」「分かったわ」……翔平が迅の邸宅を訪ねた。室内にはボディーガードが立っている。翔平を見ると、ボディーガードは彼を止めて言った。「中山社長、迅様はただいま手が離せませんので」翔平は相手をまっすぐに見つめた。「伝えてこい」そう言うと、そのままソファーのところへ歩いていって座った。ボディーガードは困惑しながらも、渋々2階へと向かった。それから10分ほど経ち、3人のセクシーな金髪美女が降りてきた。彼女たちの肌のところどころには、まだうっすらと痕が残っていた。ソファーに座っている長身で端正な男に気づいた彼女たちは一瞬驚き、3人で見つめ合ったあと、胸を張りながら翔平のもとへと歩み寄る。先頭にいた女がそのまま翔平の上に座ろうとした時、「失せろ!」と翔平は怒鳴りつけた。音量は低かったが威圧感は十分で、特にそ
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第394話

美羽はその日の業務を終えた。退院した隆が帰宅すると、美羽にこう尋ねた。「契約は全部済んだのか?」「ええ、すべて終わりました」「なら良かった。明日は時間あるか?」「あります」「それなら、明日マイケル教授に会いに行こう」「分かりました」美羽はそう答えると、隆の腕に視線を向けた。「今は腕の具合はどうですか?」「タイピングが少し難しくてね。これからの仕事は美羽さんに手伝ってもらうことになりそうだ」「もちろんです。お任せください」翌日。美羽と隆は、マイケルの自宅へ向かった。二人の顔を見るや否や、マイケル夫婦は温かく迎え入れてくれた。久々の再会だっただけに、話は尽きなかった。もちろん雑談だけではない。経済市場についての意見交換も行った。美羽は隆が今日ここへ来た目的を知っている。マイケルの持つ人脈やリソースを味方につけたいのだ。迅の投資プロジェクトは、主に金属市場を扱っている。昨今の国際情勢は予測不能で、前の四半期には50%以上の利益を出せたとしても、次は底割れする可能性もある。市場の変化を正しく読み解き、鋭く立ち回れば、大きな波に乗って一獲千金を狙うことも可能だ。迅の狙いは明白だ。隆をファンドや株式の勝負に引きずり込み、誰が一番先にうまく逃げ出し、他人を踏み台にして利益を得るかを試しているのだ。これは立派な宣戦布告だ。あからさまな挑発だった。隆には、引くという選択肢はなかった。昼過ぎ、二人はマイケルの家でそのまま食事をともにした。時刻は午後4時を回った。マイケルは隆を深く信頼しており、その手腕を完全に信じ切っている。次の月曜日。エルスタンフォード大学内で金融学のシンポジウムが開かれる。業界の第一人者が集まるその場に隆と美羽が招待された。そこには、隆が必要としている人物たちが現れるはずだ。「ありがとうございます、マイケル教授」話が終わると、隆と美羽は挨拶をしてその場を後にした。帰りは一紀が運転する車で送り届けられた。「翔平は、迅さんの狙いが分かっていたとしても、絶対に飛び込むでしょうね」と美羽が言った。翔平という男は、安全策を好まない。今回のようなハイリスクな投資であっても、手に入る見返りは天文学的な数字だ。そもそも、翔平と隆には因縁がある。「実は、昨日ある耳寄
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第395話

「イヴリンさん、パパが持ってきたお花、綺麗でしょ?これ、私が選んだんだよ」美羽は我に返り、翔平が持つバラに視線を移した。美羽が以前翔平のところで暮らしていたこともあり、柚葉は二人が一緒に住んでいると信じ込んでいた。だが、最近になって別々に住んでいることを知った。だからこそ、翔平が美羽を怒らせたと誤解し、謝らせようとしていたのだ。翔平がわざわざ訪ねてきたのは、どう見ても柚葉にせがまれたからだろう。美羽が返事をしないのを見て、柚葉はこう言った。「イヴリンさん、嫌い?」美羽はスマホ越しに柚葉を見つめ、告げた。「柚葉、ちょっとパパと話があるから、切るわね」「分かった!仲良く話してね」「ええ、分かったわ」美羽はビデオ通話を切ると、翔平に向き直り、告げた。「この花は持ち帰って。柚葉にはちゃんと事情を説明してあげて」柚葉が自分と翔平をくっつけようとしていることは、美羽も分かっている。翔平だって、それが理解できないはずはない。「柚葉が騒ぐんだ。どう説明すればいいと思う?」二人は何の関係もないと何度説明しても、柚葉の中では、「イヴリンさんとパパは一緒に住んでいる」という考えが変わることはなかった。美羽がどれほど説明しても、その時は納得したように見えても、結局柚葉の心には何も届いていないようだった。あの傲慢で強引な翔平でさえ、柚葉には手を焼いている。あの子の性格は、驚くほど翔平と瓜二つなのだ。「今日はもう帰って。後で柚葉には私から言っておくから」翔平は言った。「持ってきたものだ。捨てるなり好きにすればいい」美羽は彼を見つめ、結局、その花をそっと受け取った。翔平は続けた。「まだ片付かないことがあるのか?」美羽が去ろうとして足を止め、彼の方を振り向く。「ええ、もう少しね」翔平は言った。「お前に関係のないことに首を突っ込むな」翔平が何を指して言っているのか、美羽にはよく分かっていた。「首を突っ込んでなどいないわ」翔平は問いかけた。「いつ帰国するか決めたのか?」その尋ね方に、美羽は少し戸惑った。翔平ならもっと冷たく切り出すはずだ。こんな風に丁寧な態度を見せるなんて。「まだ、何も決めてない」翔平は言った。「なら、用事を片付けるのに5日やる」美羽はその場に立ち、去っていく男の背中を見つめ
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第396話

それから2日後、隆と美羽は、エルスタンフォード大学で開かれるシンポジウムに参加した。会場には、業界の著名人も数多く顔を見せている。デイビッドの姿もあった。シンポジウムが終わると、マイケルが、進んで隆を皆に紹介し始めた。すると、デイビッドが美羽に声をかけた。「イヴリン、最近どう?」ここのところ忙しくて、デイビッドとゆっくり話す時間もなかったのだ。「うん、忙しいわ」「やれやれ。せっかくY市に来たっていうのに、全然会えなくて残念だったよ」美羽は笑った。「こうして会えたでしょ?」デイビッドは口角を上げると、ふと隆の方を見てから小声で釘を刺した。「例のD・Fファンドの件、関わらない方がいい。あいつらの抗争に、イヴリンのような女性が深入りするのは感心しないな」美羽は冷静に答えた。「深入りなんてしていないわ。佐野先生が手を負傷しているから、その分析データを代わりに整理しているだけよ」デイビッドは満足そうに頷いた。「じゃあ、株式譲渡に関する事務処理は終わったのか?」「ええ。もう全部終わったわ」翔平からの嫌がらせもなくなり、全てがスムーズに運んだ。これでK・Uと美羽は、もう一切の関わりがなくなる。「で、いつ帰るつもりなんだ?」翔平から与えられた5日間。まるで脅しのような猶予だった。隆からも、悠斗となるべく早く帰国するよう勧められていた。悠斗も国内に片づけなければならない仕事があったため、3日後の便を予約した。美羽がそう伝えると、デイビッドは残念そうにため息をついた。「まだ来たばかりじゃないか?ようやく少し距離が縮まったと思ったのに」美羽は思わず吹き出した。「そういう冗談は、ほどほどにして」早いもので、ここに来て1ヶ月が経とうとしていた。「じゃあさ、発つ前に最後のお願い。今夜、僕に食事をご馳走してくれないかな?」美羽は優しく微笑んだ。「ええ、もちろん」シンポジウムは夕方5時まで続いた。隆には夜の会合が入っているため、ちょうど良い機会だった。株式譲渡を助けてくれたデイビッドへ、お礼の意味を込めて食事をすることにしたのだ。選んだのは、Y市でも長い歴史を誇る、名高いレストランだった。デイビッドの運転する車でレストランまで来た。車を降りて、二人はエントランスへ足を進める。するとその時、店
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第397話

今まで気づかなかったが、瑠衣は人の家庭を壊す不倫女だったんだ。しかも、あんなことをしておいて、よくこんなに堂々としていられる。「瑠衣さん、そんな目で見て、男を奪われないか心配でたまらないの?」瑠衣は凍りついた。デイビッドが自分に向ける軽蔑の視線をはっきりと感じ取ったからだ。以前のデイビッドは、そんな目では見てこなかったのに。間違いなく、あの美羽が裏で何か吹き込んだに決まってる。すると、デイビッドの容赦ない追撃が続いた。「でも安心して。瑠衣さんの男、今じゃ誰も欲しがらないゴミなんだから」翔平が険しい表情でデイビッドを睨むと、デイビッドは臆することなく言い放った。「そんな目で見ないでよ。間違ったことは言ってないだろう?」翔平の声が低く冷え込んだ。「どうやら、ずいぶん暇を持て余しているようだな」デイビッドはすぐに身構えた。翔平は瑠衣を連れ、レストランの中へと足早に向かった。浩平は二人をちらりと見て、その後に続いた。デイビッドは美羽に声をかけた。「行こう。僕たちも入ろう」二人はレストランに入り、席を探して座った。翔平たち3人の席は美羽たちのテーブルと3つ分の距離があり、近すぎず遠すぎずといった位置だった。ウェイターが近づいてきて、メニューを差し出した。「注文して」美羽が促す。デイビッドはメニューを受け取り、言った。「じゃあ、遠慮なくいただくよ」美羽が微笑む。「気を使わないでいいから」注文を済ませると、デイビッドがいきなり核心を突いてきた。「そちらの国の女性は美徳にこだわりすぎだよ。今のイヴリンの婚姻関係なんて紙切れ一枚だろ?他の男と恋愛して何が悪い?何年も独身と同じようなもんだろう」美羽は苦笑した。「言われてみれば、そうね」デイビッドは目を細めて笑う。「だったら僕はどうだ?一人の女性として、ちゃんと愛される恋をさせてあげるよ。僕の世界には君しかいないって、約束する」ジュースを飲んでいた美羽が言った。「遠距離恋愛は嫌よ」デイビッドが返す。「簡単だろ。僕がイヴリンについて行けばいいんだ。飛行機代ぐらいはあるよ」美羽は再び断りを入れた。デイビッドは傷ついた顔をして見せた。「チャンスすらくれないのか?辛いよ」美羽は優しく微笑んだ。「友達として付き合いを続けていくのはダメなの?」デイビ
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第398話

ようやく食事が終わった。デイビッドは美羽の手を引いてレストランを出た。レストランから出たときのこと。デイビッドは美羽に向かって言った。「もう一度戻って、ゆっくり座り直さない?」美羽は自分の手を引っこ抜くと、そのまま前を見据えて言い放った。「帰らなきゃいけないから」デイビッドは苦笑いしながら、大股で美羽に続いた。彼が美羽を家まで送り届けた。家にいたのは悠斗だけで、隆たちはまだ戻っていなかった。美羽が抱えているバラの花束を見て、悠斗は眉をひそめて尋ねた。「誰からだ?」「デイビッドからよ」と美羽が答える。美羽がデイビッドと結ばれるはずがないと分かってはいたが、悠斗はどうしても気になって食い下がった。「何でバラなんかくれてんだ?」「ただの気まぐれよ」美羽はそう受け流した。悠斗もそれ以上は追及しなかった。その時だ、美羽のスマホが震え出した。画面を確認すると、翔平からの着信だった。出ようとしない美羽を見て、悠斗が聞く。「翔平さんからか?」美羽は小さく頷き、一息ついてから通話ボタンを押した。「もしもし」受話器越しに、低く冷たい声が響いた。「いつ帰国するつもりだ?」相変わらず高圧的な物言いだ。「自分なりに考えてるから」と美羽は答えた。電話の向こうが沈黙した。美羽が電話を切ろうとした瞬間だった。翔平の鋭い声が割って入る。「甘いことを考えるな。お前なんて、デイビッドの周りの女と比べれば大した存在じゃない」その軽蔑しきった口調に美羽はスマホを強く握りしめ、冷ややかな声で言い返した。「自覚してるわ。わざわざ忠告してくれなくてもね。おっしゃる通り私は釣り合わないわ。それなら一刻も早く離婚届を出してちょうだい。あなたの戸籍の配偶者欄に私の名前があるなんて、あなたを侮辱することになるでしょ?」「俺はまじめに話をしているんだ」翔平の声が低く沈む。美羽の口元に皮肉な笑みが浮かぶ。「悪いけど、あなたの言葉のどこが『まじめ』なのかしらね。まともな話し合いをするなら、私の問いに答えてくれる?」翔平が遮った。「今の言葉、心に留めておけ。2日後、もしお前がまだそこにいたら、強制的に連れ戻す手配をする」美羽が言葉を返すよりも早く、翔平は電話を切った。耳元で鳴るプープーという音を聞きながら、美羽はスマホ
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第399話

美羽は答えた。「ええ、もちろん」「じゃあ、決まりね」リナと会う約束を取り付けた。そう言うと、電話を切った。悠斗が言った。「なら、今夜は俺もついて行くよ」美羽は、悠斗の懸念を理解していた。最近は確かに波風も立たず順調そのものだが、油断は禁物だ。「分かった」午後は、二人でY市の中心部でショッピングを楽しんだ。せっかく来たのだから、お土産を買わなくては。美羽は、あるネックレスが目に留まった。澪への贈り物にするつもりだ。店員に包装を頼んだその時、忌々しい声が響いた。「それ、私がもらうわ」店員の動きが止まる。美羽が振り返ると、そこに瑠衣がいた。思わず眉をひそめる。瑠衣は店員に近寄り、問い詰めた。「これ、いくら?」店員は答えた。「500万ドルでございます」瑠衣は迷わずブラックカードを差し出した。美羽はひと目で分かった。世界最高峰のブラックカードだ。こうして人前で見せびらかすなんて、誰から貰ったものかは火を見るよりも明らかだ。なんて低レベルで幼稚な自慢なんだろう。翔平がこのカードを持たせたことは、彼がどれだけ瑠衣を気に留めているかの裏返しに過ぎない。翔平も今や、瑠衣に付き合う時間がないから、せめて金で埋め合わせているということだ。ブラックカードを見た店員は、さっきまでの態度を一変させた。目の前にとんでもない顧客が現れたのだ。彼女たちは美羽の方を見て申し訳なさそうに言った。「お客様、申し訳ございません。このカードをお持ちでしたら、このモールではどこでもVIP優先待遇をさせていただいておりますので」瑠衣は侮蔑の眼差しを美羽に向け、続いて隣に立つ悠斗を流し目で見た。「相変わらず恥知らずね。昨日はデイビッド、今日は悠斗さん?昔は顔のせいで誰にも相手にされなかったから、整形が成功して男をたぶらかす楽しさを覚えたのかしら……あっ!」美羽は迷わず瑠衣の頬を叩いた。乾いた音が店内に響き渡り、周囲がどよめいた。「相変わらず、その口からはろくな言葉が出てこないわね」瑠衣の付き添いのボディーガードたちが、慌てて前に出た。悠斗が美羽をかばうように立ち塞がり、冷たく言い放った。「美羽に触れてみろ。タダじゃ済まさない」美羽は、瑠衣の手に握られていたブラックカードを奪い取った。「なっ、このあばずれ!何するの
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第400話

迅が数人の前へと歩み寄った。迅が瑠衣に視線を向けると、瑠衣の体はピクリと強張った。もう自分を驚かせるような男はこの世にいないと思っていたが、目の前の男のたたずまいに、再び心が惹きつけられてしまった。しかし迅は瑠衣を無視してカウンターへ歩き、並んでいたネックレスを手に取ると、美羽の前へ突きつけた。「これが気に入ったか?贈ってやるよ」迅の言葉を耳にして、瑠衣は息を呑んだ。この男、美羽を知っているの?それとも、狙っているの?瑠衣は無意識に指先を強く握りしめた。作り物の顔をしているこのあざとい女のどこに、そんな魅力があるの?美羽は冷ややかな目で迅を一瞥すると、踵を返し、店を去ろうとした。迅が美羽の腕を掴もうとした瞬間、横で警戒を続けていた悠斗がすぐに察知して踏み出し、彼の手を払いのけた。「美羽に触るな」手を出されて痛みを感じた迅は、悠斗を見上げると、薄い唇を歪ませた。「そんなにムキになるなよ。イヴリンに贈り物をしてやろうとしただけだ」「悠斗、行こう」と美羽が言った。しかし二人が店の外へ出ようとした矢先、迅のボディーガードが立ちはだかった。美羽と悠斗の足が止まった。悠斗は振り返り、迅を冷たく睨みつけた。「これはどういうつもりだ?」迅はソファの前まで行き、背もたれに腕を広げてゆったりと腰を下ろした。開いたシャツから筋肉質な胸板が見え、狂気に満ちた鋭い視線を漂わせていた。連れていた美女も、当然のようにその隣に寄り添う。「せっかく会えたんだ。ゆっくり話でもしようぜ」瑠衣は空気のように無視され、苛立ちを隠せないまま、憎々しげに美羽の方を睨みつけた。しかし、目の前の男と美羽の間に険悪な空気が流れているのを見て、彼女は少しだけ胸がすく思いがした。「イヴリン、こっちに座って話さないか?」と迅が言った。店の客はまばらだったが、店長は状況を察し、残りの顧客を早足で店から出した。ボディーガードが美羽を案内しようと手で合図した。「どうぞ、こちらへ」美羽は動こうともせず、迅を見据えた。「あなたと話すことなんて何もないわ。私たちの間にあるのは憎しみだけ」迅は低く笑ったが、その眼差しはすっと冷えた。「俺は美人にはいつも優しいんだがね。イヴリン、素直にそこに座った方が身のためだぞ」その声には脅迫が混じっていた。
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