All Chapters of 冷徹な夫が暴走愛?それでも妻は絶対に許さない: Chapter 381 - Chapter 390

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第381話

迅は口元を歪めて笑い、ぞっとするような冷たい声でデイビッドに言った。「君の……彼女か?」「そうだけど、何か不満?」「いや、君は何股かけてるのかなと思ってね」と言って、迅は美羽に視線を投げた。「イヴリンは、案外デイビッドみたいなタイプがお好みなんだ」美羽は返事をせず、何も聞こえていないかのように振る舞った。デイビッドは迅に言った。「あんたの国にも、ことわざはあるでしょ?あばたもえくぼ、って。とにかくイヴリンは、あんたみたいなタイプは嫌いなんだ。ちなみに、翔平みたいなタイプもね」翔平の視線が美羽に向けられた。彼は冷ややかに唇を上げると言った。「どんなタイプがお好みなんだ。本人から聞かせてくれないか?」迅は横目で翔平を見た。翔平の目からは美羽への関心は微塵も感じられなかったが、その漆黒の瞳の奥には計り知れない何かが潜んでいた。美羽は翔平をじっと見つめた。その時、デイビッドのスマホが振動した。通知を確認すると、彼は集まっていた大物たちに向かって言った。「この二人に揃って目をつけられてるんでね。しばらく避難させてもらいますよ。ちょうど友人が二人来るので、俺はそっちに行ってきます」大物たちは声を潜めて笑った。「ああ、行ってこいよ」デイビッドは美羽の手を引いてその場を離れた。遠ざかっていく中でも、美羽は誰からか突き刺さるような視線を感じていた。翔平が大物たちに会釈をして立ち去ると、迅が近寄ってきて問いかけた。「本当にイヴリンに気があるのか?」翔平は前だけを見つめたまま、冷たく言い放った。「一度答えたことに、二度は答えない」迅は翔平の横顔を見つめ、それ以上は何も聞かなかった。その頃、隆と悠斗は外にいた。デイビッドが警備に連絡を入れておいた。隆と悠斗はそのまま送迎車に乗り、屋敷内へと向かった。美羽と再会すると、悠斗が思わず口を開いた。「今日も綺麗だね」デイビッドが口を挟んだ。「綺麗だろう。だがイヴリンは今、僕のものだ。あまりじろじろ見ないほうが身のためだよ」悠斗は苦笑して返した。「そんなに警戒しなくてもいいじゃないか」隆が視線を美羽から外して聞いた。「パーティーは何時で終わりですか?」「まだ始まったばかりですよ。とりあえず中へ入りましょう」室内に入ると、豪華絢爛な広間が広がり、華やかな音楽
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第382話

「デイビッド!」不意に女性の声が響いた。美羽が振り返ると、そこには目を引く美貌の女性が立っていた。ブロンドの長い髪に琥珀色の瞳。その姿はまるでトップモデルのようで、一目で高貴な家柄の令嬢だと分かった。その女性を見たデイビッドは、驚いたように声を上げた。「エレノア、どうしてここに?いつ来たんだ?」エレノアは問いに答えず、視線を美羽に固定した。そして手を差し伸べると、こう挨拶した。「はじめまして。エレノアです。デイビッドの婚約者です。あなたはデイビッドとどんな関係の方でしょうか?」デイビッドは言葉に詰まり、眉をひそめた。表情には不快感が滲む。「エレノア、まだ婚約は成立していないはずだ」エレノアは返事をせず、じっと美羽を見つめている。女性特有の直感か。美羽は相手の敵意をひしひしと感じ取った。言葉の裏にある意味は明白だ。おそらく家同士で勝手に決まった、政略的な相手なのだろう。美羽は差し出された手を取った。「はじめまして、イヴリンです。デイビッドとは学生時代からの友達です」「そうでしたか。イヴリンさん、本当にお綺麗ですね。今まで会った女性で一番ですよ。どうりで、デイビッドがわざわざエスコートしてパーティに連れてくるわけですね」「ありがとうございます。エレノアさんも今日のドレス、とても素敵です。デイビッドとお似合いですね」エレノアは微笑んだ。「ありがとうございます。それなら今日は、デイビッドを私に譲ってくれませんか?」美羽は平静を装った。「大袈裟ですよ。デイビッドはエレノアさんの婚約者なのですから、私がどうこう言うような関係ではありません」二人に完全に無視されている状況に業を煮やし、デイビッドが険しい声で言った。「エレノア……」そう何か言いかけた時、美羽のバッグの中で、スマホが震え出した。画面を一瞥し、美羽は二人に断りを入れる。「申し訳ありません。ちょっと電話に出ますね」「イヴリン!」デイビッドが慌てる。エレノアはデイビッドの腕を掴み、小声で囁いた。「デイビッド、分かって。このイヴリンという女性は、あなたに全く興味ないわ」デイビッドはエレノアの手を振り払うと、低い声で念を押した。「エレノア。イヴリンのことは君と関係ない。これ以上、俺をうんざりさせないでくれ」エレノアは意に介さず言った。「追いかければいい
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第383話

痛みで顔が真っ青になった。手から落ちたスマホは画面が粉々に砕け散った。翔平は美羽を見下ろすと、ゆっくりとしゃがみこみ、尋ねた。「自分で立て。それとも俺が抱き上げてやろうか?」美羽は顔を上げ、この忌々しい男を睨みつけ、歯を食いしばって手を引き抜いた。片手を地面について立ち上がろうとした拍子に、もう一方の手がアスファルトで擦れて赤く血が滲んだ。翔平はそれを一瞥した。その時、黒い車がゆっくりと近づいてきた。運転手が車を降り、ドアを開ける。翔平は立ち上がろうとして足元の定まらない美羽が、苦しげに屈み込んでスマホを拾おうとするのを見て、歩み寄るとそのまま軽々と横抱きにした。「翔平!」翔平は迷いなく歩を進め、美羽を後部座席に乗せた。車は屋敷を後にする。屋敷の明かりが次々と灯っていく。その頃、車内では。美羽は粉々になったスマホを眺める。さっき割れる直前に鳴った電話は、隆からの着信だったはずだ。電源が入らなくなったスマホでは、折り返すこともできない。手のひらと両膝がヒリヒリと痛む。その時、翔平のスマホからビデオ通話の音が響き、彼は慣れた手つきで出た。「パパ」柚葉の声が聞こえた。「朝ごはんは食べたか?」国内は朝の8時を過ぎたところだ。「食べたよ。パパの隣に誰かいるの?」と柚葉が尋ねる。翔平は横を向き、軽く手を挙げた。「イヴリンさん!」柚葉の弾んだ声が聞こえる。美羽が振り返る。まだ感情の整理がついていない。「イヴリンさん、どうしたの?なんだか悲しそう……またパパがいじめたの?」柚葉の問いかけに、美羽は言葉を失った。怒った柚葉が、ふくれっ面で翔平に向かって詰め寄る。「パパ、どうしてイヴリンさんをいじめるの?」翔平は横目で無言を貫く美羽を一瞥し、「帰ったらちゃんと謝るから」と柚葉をなだめた。柚葉はベッドの上で足を組み、腕を組んで言い張る。「ふんっ。パパ、今すぐ謝って。柚葉、パパがちゃんと謝るところを見てるから!」翔平は横を向いて、「すまない」と口にした。美羽は顔を背け、窓の外を見つめたまま答えなかった。それを見て、柚葉はわざとらしく鼻を鳴らす。翔平は視線を戻し、柚葉をあしらった。「分かったから柚葉。帰ったらまた謝るよ」「イヴリンさんがパパを許さないなら
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第384話

迅からの着信だ。「翔平、どこに行ったんだ?姿が見えないぞ」「用事で先に退散した」と翔平は答えた。「さっき、突然停電したの、知ってるか?」「さあな」「デイビッドとアダムス家のご令嬢は一緒にいるみたいだが、イヴリンがいなくなってしまったんだ」翔平は淡々と答えた。「いなくなったのが、俺と関係あるか?」「隆が心配そうに探し回っているぞ」「そこまで佐野社長のことが気になるのか?もしかして、あいつに興味でもあるのか?」迅は鼻で笑うような、面白がる声を漏らした。「翔平も姿を消したし、イヴリンもいなくなった。ただの偶然じゃないだろう?」翔平は変わらぬ冷淡な口調で返した。「奇遇だな」「本当に奇遇ならいいがな。イヴリンの居場所が分かったら、すぐに教えろよ」「誰かの代わりに女探しなんて、俺には何の義務もない。他に用がなければ切るぞ」そう言うと、翔平は通話を切った。1時間後、車はある豪華な洋風邸宅の敷地内に停まった。運転手がドアを開ける。翔平は反対側に回り、車の中に座ったまま降りようとしない美羽を冷めた目で見つめた。美羽は憤慨して彼を睨み返している。翔平は屈んで車内に腕を伸ばし、美羽をひょいと横抱きにして外へ連れ出した。「この最低男、一体何するのよ!降ろして!」美羽は激昂し、翔平の胸を激しく叩いた。だが、その拳も鍛え上げられた男の体を前にしては、綿で叩いているようなものだった。翔平は冷ややかな目で見下ろし、告げた。「本当に降りて、自分で歩くつもりか?」先ほど膝を擦りむいただけではなく、足首をひねっており、痛みがじわりと襲い始めていた。美羽は険しい表情のまま翔平を睨む。翔平は美羽を抱えたまま邸宅へ入り、リビングのソファに座らせると、使用人に救急箱を持ってくるよう指示した。すぐに救急箱が運ばれ、翔平はそこから消毒液を取り出すと、美羽の負傷した手首を乱暴に掴んで引き寄せた。美羽は思わず身をよじって引き抜こうとしたが、翔平の握る力は決して優しくはなく、少し動かしただけで鋭い痛みが走った。翔平が掌の傷に消毒液を噴きかける。あまりの痛みに美羽が眉をひそめると、「自分でやる」と訴えた。翔平は一瞬だけ目を合わせると消毒液を渡した。そして、腫れを抑えるための軟膏を目の前に置く。美羽は綿棒を使い、慎重に
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第385話

美羽が言った。「どうしてあなたの言うことを聞かなきゃいけないの?」翔平は視線を落とし、漆黒の瞳を細めて美羽を見つめた。拒絶を許さない強引な口調で言った。「帰国するまでは、ここで暮らせ」「あなたに私の行動を制限する資格なんてないわ」翔平は口元に微かな笑みを浮かべて言った。「俺に資格がないのなら、一体誰にあるんだ?」美羽は眉をひそめて言い返した。「私たちは何の関わりもないわ。あなたにそんな資格なんて、あるはずがないでしょ?」翔平は美羽を見つめ、質問には答えずこう言った。「K・Uの株を売却したいのだろう。代わりの者に手続きさせる」それだけ言うと、彼は足早に2階へと上がっていった。美羽は体を強張らせてソファに座り込んだ。頭の中が真っ白になる。スマホの電源は入らず、使用人に電話を使わせてほしいと頼んだが、屋内の電話はつながらないと言われた。隆と悠斗が探してくれているはずだ。けれど彼らも、自分が誰に連れ去られたのかは見当がついているだろう。先ほど入ってきた時、この邸宅のセキュリティーは完璧だった。外部から忍び込むのは容易ではなく、車がなければここから出ることもできない。脚のケガが治るまで、あと4日はかかる。翔平が帰してくれない以上、ここに留まるしかない。ここで彼に逆らっても、苦しい思いをするのは自分だけだ。美羽は、翔平と迅の通話を思い出す。もちろん、翔平が自分を大切に思って守っているわけではないだろう。結局のところ、すべては柚葉のためなのだ。少なくとも今は、変態の迅からは離れられる。使用人が1階の寝室を整えてくれた。「着替えはあとでお届けしますので、少々お待ちください」そう言い終えると、使用人は部屋から出ていった。その夜、美羽はベッドの中で眠れなかった。慣れない環境で、周囲に誰もいない広すぎる空間に、強い不快感と寂しさを感じていた。翌朝、頭がぼんやりした状態で目を覚ました。使用人に起こされ、朝食に誘われる。「食欲がないんです」「お部屋までお持ちしましょうか?」「いいえ、大丈夫です」使用人は無理に勧めず、静かに退室した。それ以降、使用人が訪ねてくることはなかった。昼頃、昼食の時間だとまた呼びに来た。美羽がたずねる。「翔平は?」使用人が答えた。「外出しております」美羽
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第386話

美羽は柚葉と少し言葉を交わした後、ビデオ通話を切り、スマホから悠斗の連絡先を探して発信した。電話がつながったが、受話器の向こうは黙ったままだ。「悠斗、私よ」悠斗は美羽の声を聞くと驚いた様子で言った。「美羽、大丈夫か!」美羽は言った。「ええ、大丈夫。翔平に連れて来られたの。スマホが壊れちゃって、連絡が取れなくて」悠斗はそれを聞いても驚かなかった。薄々感づいていたようだ。「あいつ、美羽を外に出してくれないのか?」美羽が頷いて、言った。「帰国するまでずっとここにいろって」「じゃ、今はどこにいるんだ?」美羽が居場所を教える。「とにかく、あなたたちも今無事なら良かった。佐野先生の方は大丈夫?」先日、迅が隆に対して露骨な敵意を見せていたからだ。報復心の強い迅が、そのまま引き下がるとは思えない。「確かにさっき迅のやつがここに来た。美羽が翔平さんの側にいる方が、まだ身の安全は確保できるだろう」美羽は思わず身を固くした。「え、相手は何をしに来たの?」「ただの脅し、ハッタリだよ」美羽は眉をひそめた。「あの男がただの脅しだけで終わるはずがないわ。悠斗も佐野先生も何ともないなら、早めに帰国した方がいいわ!」何しろ、ここは国内ではなくY市なのだ。その言葉が終わるや否や。背後から男の低い声がした。「もう話し終わったのか?」美羽は肩を震わせ、振り返って彼を見た。翔平が近づいてきて、美羽の手からスマホを奪い取った。画面の着信履歴を確認すると、耳に当てて厳しく言い放つ。「悠斗、二度と言わせるな。用がないならとっとと帰国しろ」悠斗は何も答えなかった。翔平はそのまま通話を切ると、美羽を見下ろして警告した。「悠斗とあまりベタベタするな。けじめくらいつけろ」美羽は翔平を睨み返した。「自分と同じように、他人を卑しい人間だと思わないでくれる?」翔平は嘲笑するように唇をゆがめ、鼻で笑った。「たくさんの男をたぶらかすなんて、大したものだな」美羽は眉を寄せた。「迅のやつに何度抱かれた?」翔平の言葉には、刺すような冷たさが宿っていた。すると、美羽の瞳が大きく揺れた。その言葉に込められた侮辱に胸をえぐられるような屈辱を覚え、拳を震わせる。次の瞬間、勢いよく翔平の頬を張ろうと手を振り上げた。だがその手は、相手によ
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第387話

美羽はずっと、心の中で言い知れぬ不安を感じていた。この日、インターホンが鳴り響いた。美羽が首をかしげ、使用人が玄関へ向かった。やってきたのはデイビッドだった。美羽の姿を見つけると、彼は心配そうに声をかけた。「イヴリン、大丈夫かい?翔平に何かされたんじゃないだろうな?」この2日間、休息もとれず混乱の中にいた美羽は、酷く憔悴していた。「私は平気。それより、どうしてここが分かったの?」「イヴリンを心配して様子を見に来たのさ」あの晩、美羽と翔平が姿を消した時、翔平が彼女を連れ去ったのだと察しはついていた。デイビッドは憤りを含んだ口調で続けた。「翔平って奴は、本当に最低な男だ」「何があったの?」デイビッドは美羽に、簡潔に事情を話した。例のパーティーでデイビッドの婚約者が現れた一件は、翔平がリークしたものだ。ここ2日間、デイビッドの父親までもが急に二人の婚約を急ぎ進めようとしていたのだ。この裏には、確実に翔平が関わっている。自由を満喫していたいデイビッドに、結婚する気など毛頭なかった。正直、イヴリンを手に入れられないのは分かっているが、それでも少しの間だけでも付き合いたかったのだ。諦めきれない想いがあった。今まで、自分を無視する女なんて一人もいなかったのだから。美羽は苦笑した。「エレノアさん、とても素敵な方だし、デイビッドとお似合いだと思うわ」デイビッドは傷ついた表情を浮かべた。「いくら僕を好きじゃないからって、そんな風に追い打ちをかけなくてもいいだろう?」美羽は真面目な顔で答えた。「本心よ」デイビッドは大きな溜息をついた。「まあいいさ。それより、ここに閉じ込められて外出禁止にされているのか?」禁止はされていない。ただスマホは壊れているし、手元にお金もなかったので、どこにも行けないだけだった。「デイビッド、スマホを貸して」「どうするんだ?」「いいから貸して」デイビッドはそれ以上問い詰めず、スマホを渡した。美羽はすぐさま隆の番号へ掛けた。繋がると、悠斗が応対した。「もしもし」「悠斗?どうしてあなたが出るの?佐野先生は?」悠斗はためらいがちに告げた。「隆さんが交通事故に遭った」「えっ!?」美羽はスマホを耳から離した。「デイビッド、すぐに病院へ送って!」美羽
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第388話

隆は、美羽にここ数日の様子を尋ねた。今回の事故は、誰かが意図的に引き起こしたものだ。誰が隆を狙ったのか、考えるまでもなく明白だった。隆は言った。「美羽さん、後で悠斗さんと一緒に警察署へ行って、『接近禁止令』を申請しなさい。弁護士には資料を提出させておいたから、君は行けば申請書類に記入するだけでいい」「分かりました」いずれにせよ、もう二度と翔平のところへは戻らない。デイビッドが口を開く。「イヴリン、よかったら僕の屋敷に住めばいい。迅のやつも、僕の所では手出しできないだろうからね」美羽が答える前に、隆が割り込んだ。「デイビッドさんがそうおっしゃるなら、美羽さん、しばらくは彼のところに身を寄せなさい」予想外のことだったのはデイビッドの方だ。隆こそ真っ先に反対するだろうと思っていたのだ。デイビッドは笑いながら言った。「佐野社長は他の誰かよりよっぽど器が大きい、我々は協力し合えそうですね」隆は口元を歪めて微笑み、「もちろんです」と返した。美羽は尋ねた。「先生、こちらの仕事の処理には、どれくらいの時間がかかりますか?」隆は少し考えるような表情を見せた。「状況による。今はもう少し時間がかかりそうだ。こっちのことは気にしなくていい。仕事が片付いたら、悠斗さんと一緒に帰国しなさい」美羽はそれ以上何も言わなかった。その時、病室のドアが開き、二人の男が入ってきた。振り返った美羽は、途端に表情が強張った。病室に入ってきたのは、迅と峰行だった。迅の視線が美羽をなめるようになぞった。悠斗が一歩前に出て彼の視線を遮る。迅は蔑むように口元を歪め、病床にいる隆を見やった。「隆が事故に遭ったと聞いてね。大事に至らなくて何よりだ」隆は鋭い瞳で迅を睨みつけた。「残念だったね」迅はふっと笑った。「人聞きが悪いな。何と言っても、俺たちは元親戚なんだから」「それも過去の話だ」「縁は切れても、協力の話はできるはずだ」そう言って、迅は手元の書類を差し出した。「これに目を通してくれ」隆は一瞥してから手に取り、大まかに内容をさらった。迅が尋ねる。「どうだ?」隆は悠斗と美羽に視線を移し、告げた。「二人は先に外に出ていてください」美羽は隆を心配そうに見つめた。紗良と峰行が離婚する前、隆と神崎家はA国で深い協力関係にあった
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第389話

美羽は眉をひそめた。「どういうつもり?」峰行は言い放った。「紗良を俺と離婚させようと焚き付けて、代わりに自分の兄を紹介する気なんだろ?」峰行は美羽を深く恨んでいる。紗良はかつて自分を心から愛し、何を言っても従ってくれていた。そんな紗良が離婚を頑なに譲らないのは、美羽が耳元で余計なことを吹き込んでいるからだ、と峰行は思い込んでいた。「あなたが他の女と遊び回っていたのに、紗良が無条件で許すとでも思ったの?」峰行は冷ややかに口元を歪めた。「お前だって、そんなお高くとまっていられるほどご立派な身分なのかよ?」悠斗が鋭く言い返す。「言葉遣いに気をつけろ」峰行は悠斗を鼻で笑うと、美羽の方へ向いて言った。「男をたぶらかすのは相変わらず得意だな」そう言って峰行が背を向けようとした、その瞬間、悠斗の拳がその頬に叩き込まれた。峰行はよろめいて数歩後ずさった。美羽は驚いて、怒りで震える悠斗を止めた。「悠斗、落ち着いて」峰行は立ち直ると、唇の端に滲んだ血を拭い、憎しみを込めて悠斗を睨みつけた。「その辺にしておいた方が身のためだぞ」デイビッドが普段のふざけた様子を消し、険しい顔つきで峰行に忠告した。峰行はデイビッドをじっと見た。その時、部屋から迅が出てきた。彼は峰行に歩み寄ると、殴られた顔を一瞥し、視線を悠斗から美羽へと移した。漆黒の瞳には深淵のような不気味さが宿っており、迅は美羽に向かって静かに告げた。「イヴリン、また会おう」そう言い終えると、迅はその場を後にした。峰行は悠斗に捨て台詞を吐いた。「今のこの一発、しっかり覚えとけよ」二人が去った後、3人で病室へと戻った。美羽が焦りながら尋ねた。「先生、一体何を話していたのですか?」隆が手元にあった書類を美羽に手渡した。美羽はそれを受け取り、目を通した。そこには400億ドルという桁外れな投資プロジェクトの企画書が記されていた。「これ、どういう意味ですか?」隆が答える。「この投資プロジェクト、中山社長も狙っているだろうね」美羽は眉をひそめた。その意味を瞬時に理解した。翔平の周りに、心からの友など存在しない。そこには常に、果てしない損得勘定だけがあるのだ。美羽は皮肉げに笑った。「なるほど。迅さんは先生を利用して、まんまと漁夫の利を得ようというわけですね」
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第390話

翔平はグラスを置き、その縁を指先でなぞった。薄暗い明かりが彫りの深い横顔を照らし出す。その瞳は、暗く底が見えない。「それで?」迅は細めた瞳で翔平を見つめ、口元を怪しく歪めた。「あいつは並の女とは違う。野性味があって、飼い慣らしがいがあるんだよ」と言い、迅の目には抑えがたい欲望が宿っていた。「試してみる気はないか?」翔平は隣のワインを手に取り、自分のグラスに注いだ。沈痛な表情で尋ねる。「佐野社長と手を組もうというのか?」迅は卑怯な笑みを浮かべた。「ただ餌をまくんだ。向こうが勝手に食いついてくれば、俺たちにとって排除する絶好のチャンスだろ?」翔平は薄い唇をわずかに持ち上げ、嘲るように言った。「なるほど。佐野社長を排除するためか。それとも、自分が一番美味しいところを持っていきたいのか?」迅は言葉に詰まり、笑みが消えた。「俺たちは今、運命共同体だろう?俺が君を陥れるわけがない。だいたい、この世に君を出し抜けるやつなんているのか?」翔平は目を細めて迅を見た。「こっちに来い」迅は促されるまま顔を寄せた。次の瞬間。ガシャーン!翔平は持っていたワインのボトルを、迅の頭に思い切り叩きつけた。中身の酒が飛び散った。迅は頭を押さえてうめき声を上げる。指の間から、鮮血がどろりとあふれ出た。続いて、椅子が床と擦れる鋭い音が室内に響く。翔平は懐からハンカチを取り出すと、優雅な動作で手に付いた血を拭い取った。使用済みのハンカチをゴミのように床に捨て、痛みに悶える迅を冷たい目で見下ろす。「警告しておく。俺を利用できるなんて思うな。小細工はやめろ。次はどうなるか分からないぞ」……その日の夜、美羽はデイビッドの屋敷には行かず、悠斗と借りている邸宅に戻った。迅には既に接近禁止令が出ていた。迅はまだ隆を利用したいはずだから、しばらくは手出しできないだろう。隆は今日も入院中で、一紀が付き添っている。美羽のスマホも修理が終わっていた。夕飯を食べ終えると、美羽は自分の部屋で休息をとった。翌日。美羽が会社へ向かうと、株式譲渡契約書が届いていたが、N・Sの人によってすでに持ち去られた後だった。先日言われた言葉からして、その契約書が翔平の手元にあることは明白だった。翔平は自分がいなくなったことを把握しているはずなの
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