神殿は王都の東にある。女神エステルを祭神として祀っている神殿は新年を迎える際の式典、民たちに与える祝福など様々な役目がある。魔法属性の鑑定は鑑定魔法を使える魔法使いでもできるのだが、『女神の愛し子』ともなると話は別だ。女神エステルに神託を受けた者は神殿で鑑定を受けることになっている。 その日、百年ぶりの『女神の愛し子』が訪れるということで、神殿内部は沸き立っていた。セレーネが姿を現すと、神官たちは歓喜する。「お待ち申し上げておりました、王太女殿下。神殿長のもとにご案内いたします」 丁重に迎えられたセレーネは神殿長が待つ部屋へと案内される。「王太女殿下にご挨拶を申し上げます。神殿長のユリウスと申します。本日はご足労いただき誠にありがとうございます」 神殿長ユリウスは小説『エステルの戴冠』にも登場していた。年齢は二十代半ばと若いのだが、先代の神殿長が亡くなったので後を継いだという設定だ。水色の髪にアクアマリンの瞳をした優しげな風貌の美青年だった。(乙女ゲームだったら、攻略対象になりそうなビジュアルよね) ユリウスの容姿に対して内心そんな感想を抱きながら、セレーネは王族スマイルを向ける。「神殿長、本日はよろしくお願いしますね」「どうぞユリウスとお呼びください。それでは本日の手順をご説明いたします」 神殿には「エステルの泉」と呼ばれる小さな泉がある。遥か昔、女神エステルが水を湧かせたという伝説が残る泉だ。その泉に手を浸して魔力を込める。水面が金色に光れば聖属性の魔法として、『女神の愛し子』としての確かな証となるということだ。「分かりました」「それでは、準備が整いましたら、お呼びいたします。しばし、この部屋でお寛ぎください」「補佐官を呼んでも構いませんか?」「はい。構いませんよ」 ローラントは部屋の外で待機してくれている。女神エステルの神託を受けたのは紛れもない事実なのだが、いざ鑑定となるとやはり緊張するのだ。ここはローラントと話をしていた方が気が紛れるとセレーネは考えた。「殿下。お呼びでしょうか?」
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