「――今日から、君は俺の専属秘書だ。24時間体制で、その『機能』を管理させてもらう」 九条部長の、あまりに強引な宣言。 私の正体が「アンドロイド型・愛玩用ドール」だという、宇宙の果てでもあり得ないほどの誤解。その日から、私の任務(とおにぎり探求生活)は、斜め上の方向へと激変した。 サオリ(以降モノローグでは呼び捨て)が「機械を優遇しすぎです!」と憤慨するのを、「最新鋭の機密保持だ」と一蹴した蓮さんは、オフィスの私のデスクを部長室の中にまで移動させた。 さらに、その日の終業後。 「メンテナンスの時間だ。……星野、自宅(ラボ)へ来い」 連れて行かれたのは、蓮さんのマンション。 彼は白衣(※ただの高級ルームウェアです)に着替えると、大真面目な顔で、琥珀色に輝く小瓶を取り出した。 「製作者の不届きな設計により、君の『外装(肌)』は極度に乾燥している。……これは、最新の冷却・潤滑オイル(※1本数万円の超高級エステオイル)だ。……失礼する」 蓮さんの大きな手が、私の腕に、そして首筋に。 オイルの滑らかな質感よりも、彼の指先が触れるたびに伝わってくる「熱」が、私の内部回路をショートさせそうになる。 「……部長、あの、くすぐったいですし、自分で塗れますから……!」 「黙れ。……素人が触れて、センサーを狂わせるわけにはいかない」 真剣な眼差しで、私の肌のキメ一つ一つを「点検」するように、ゆっくりと、ねっとりと指を滑らせる蓮さん。 耳元にかかる彼の熱い吐息。 ストイックな男が、大真面目に「愛玩ドールのメンテナンス」を遂行しているという背徳感。 (……だめ。心臓のバクバクが、外まで聞こえちゃう……!) 私は、耐えきれずに指を重ねた。 【 世界よ、止まれ。 】 色が消え、すべてがモノクロの静止画に変わる。 蓮さんの顔が、私の首筋のわずか数センチで止まっている。 私は止まった時間の中で、激しく乱れた呼吸を整え、暴走する心拍数を必死に抑え込む。 (……落ち着け、ルナ。これは観測任務なんだから。……でも、蓮さんの睫毛、やっぱり長い……) 残り、1秒。 本来なら「サオリの罠の証拠」を探すべき貴重な5秒間を、私はただ、自分の顔の赤みを引かせるためだけに使い果たした。 【 時間は、動き出す。 】 「
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