落ちこぼれ女子社員は時を5秒操れる宇宙人、バレたら母星へ強制送還!  なのに溺愛上司が離してくれません

落ちこぼれ女子社員は時を5秒操れる宇宙人、バレたら母星へ強制送還! なのに溺愛上司が離してくれません

last updateHuling Na-update : 2026-05-03
By:  憮然野郎Kumpleto
Language: Japanese
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「今、この5秒で……彼にキスしてもバレないよね?」 広告代理店の「ドジっ子」社員・ルナの正体は、時間を5秒だけ【 停止・逆転・加速 】させる宇宙人! だが能力が地球人にバレれば、即・母星へ強制送還。 無能を装い静かに暮らすはずが、ルナは「氷の暴君」と恐れられるエリート上司・九条蓮の絶体絶命な窮地を見てしまい……。 「あと5秒あれば、彼を救えるのに!」 禁断の力で密かに彼を救うルナ。だが完璧すぎる偶然に、九条の鋭い瞳が光る。 「君、ただのドジじゃないな? 正体を吐くまで離さない」 正体を隠したい宇宙人vs執着MAXの溺愛上司。5秒の静寂で繰り広げられる【 隠密無双 】コメディドラマ、開幕! 第5話以後は毎日19:00更新予定です。

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Kabanata 1

第1話:今、この5秒で彼を救う

「ああっ、またやった……!」

オフィスに私の情けない叫びが響いた。手元から滑り落ちたのは、淹れたてのコーヒー。

地球の重力というのは、どうしてこうも気まぐれなのだろう。銀河系の端っこから調査にやってきて三ヶ月。私は未だに、この星の物理法則と仲良くなれずにいた。

名前は星野ルナ。大手広告代理店で「万年ドジっ子」のレッテルを貼られた底辺社員。

……というのは仮の姿だ。

本当の正体は、銀河の果てから地球の文化を調査しに来た【 観測者(エイリアン) 】。そして、指先ひとつで時間を「5秒」だけ操れる、銀河でも希少な能力の持ち主である。

でも、その力を使うことは厳禁だ。

もし地球人に正体がバレれば、即・母星へ強制送還。私の地球での「おにぎり探求生活」は終わってしまう。

「星野。……怪我はないか」

低く、落ち着いた声が頭上から降ってきた。

九条蓮(くじょう れん)。

我が社の誇る超エリート上司。常に背筋を伸ばし、一分の隙もないスーツ姿の彼は、社内一ストイックな男として知られている。

「す、すみません、九条部長……! すぐ片付けます!」

「謝罪はいらない。だが、君は自分の歩幅を理解していない。……これを使いなさい」

彼は甘い言葉をかけるわけでもなく、無造作に自分の白いハンカチを差し出した。

周囲の社員は「また部長に詰められてる」と遠巻きに見ているが、違う。彼は、私が火傷をしていないか、一番に確認してくれたのだ。

「他人の評価を気にする暇があったら、自分の足元を見なさい。私は、君の価値は他人の物差しで決まるものではないと考えている」

ぶっきらぼうな言い方。でも、周囲が「無能」と笑う中で、彼だけは私を「一人の社員」として正当に、ストイックに評価してくれている。

――かっこいい。

私が、彼が絶体絶命の窮地に陥るたびに、こっそり時間を止めて救っているのは、私なりの恩返しでもあった。

その日の夕方。事件は起きた。

新プロジェクトのプレゼンのため、九条部長と共にビルを出て移動していた時のことだ。

歩道を歩く九条部長の背中を見ながら、私は心の中で

「歩く姿もトレンディドラマの主役みたいだなぁ」なんて場違いなことを考えていた。

その時だった。

ガガガッ、という不穏な金属音が上空から響いた。

見上げると、工事中のビルから巨大な鉄骨が、固定具から外れて落下してくるのが見えた。

落ちる先は――九条部長の真上。

「部長、危ない!」

叫んだが、遅い。彼は避けるよりも先に、咄嗟に私の肩を掴んで自分の方へ引き寄せ、庇おうとした。

死の淵にあってなお、彼は自分より部下を優先する。……そんなの、絶対に死なせられない。

私は周囲に誰も見ていないことを瞬時に確認し、指を鳴らした。

【 世界よ、止まれ。 】

その瞬間、色が消えた。

落下する鉄骨も、行き交う車も、道行く人々の驚愕の表情も、すべてがモノクロの静止画に変わる。

私だけに許された、自由な5秒間。

「……本当、お人好しなんだから」

私は静止した世界の中で、九条部長の体を抱えるようにして数メートル横へ引きずった。

至近距離で見る彼の顔は、ストイックな性格を象徴するように凛々しい。でも、その腕は私を必死に守ろうとしていた形で固まっていた。

残り、1秒。

私は何食わぬ顔で、自分も彼に巻き込まれて転んだような姿勢を取る。

【 時間は、動き出す。 】

ズドォォォォンッ!!

鼓膜を震わせる轟音と共に、鉄骨がアスファルトを砕いた。九条部長のいた場所は、無残に陥没している。

「……なっ?」

九条部長が呆然とした声を漏らした。

彼は歩道に倒れ込み、その腕の中には、私がいた。

「だ、大丈夫ですか、部長……! びっくりしましたね……!」

「星野……今、君が動いたのか?」

九条部長が私の肩を強く掴む。その瞳は驚きに揺れていたが、すぐに鋭い「観察者の目」に変わった。

彼は、他の誰よりも私のことを見ていた。だからこそ、今の「不自然な速さ」に気づいてしまったのだ。

「えへへ、私、焦ると足が速くなるんですぅ」

いつもの笑顔で誤魔化そうとした。けれど、九条部長は私を離さない。それどころか、顔をぐっと近づけてきた。

その瞬間、彼から余裕の仮面が剥がれ落ちる。

「……君は何者だ。この短時間で俺を救い、自分まで無傷でいるなど、計算が合わない」

心臓が跳ねた。至近距離すぎる。

剥き出しになった【 俺 】という言葉と、熱い吐息が頬にかかる。厳格な彼が、これほどまでに激しい執着心を見せるなんて。

(……今、この5秒で……彼にキスしてもバレないよね?)

そんな考えが頭をよぎった瞬間、九条部長が私の耳元で低く囁いた。

「逃がさないぞ。君が隠しているもの、すべて俺に吐き出せ」

強制送還の危機と、ストイックな彼からの強引な独占欲。

私の地球調査は、どうやらとんでもない方向へ走り出してしまったみたいだ。

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第1話:今、この5秒で彼を救う
「ああっ、またやった……!」 オフィスに私の情けない叫びが響いた。手元から滑り落ちたのは、淹れたてのコーヒー。 地球の重力というのは、どうしてこうも気まぐれなのだろう。銀河系の端っこから調査にやってきて三ヶ月。私は未だに、この星の物理法則と仲良くなれずにいた。 名前は星野ルナ。大手広告代理店で「万年ドジっ子」のレッテルを貼られた底辺社員。 ……というのは仮の姿だ。 本当の正体は、銀河の果てから地球の文化を調査しに来た【 観測者(エイリアン) 】。そして、指先ひとつで時間を「5秒」だけ操れる、銀河でも希少な能力の持ち主である。 でも、その力を使うことは厳禁だ。 もし地球人に正体がバレれば、即・母星へ強制送還。私の地球での「おにぎり探求生活」は終わってしまう。 「星野。……怪我はないか」 低く、落ち着いた声が頭上から降ってきた。 九条蓮(くじょう れん)。 我が社の誇る超エリート上司。常に背筋を伸ばし、一分の隙もないスーツ姿の彼は、社内一ストイックな男として知られている。 「す、すみません、九条部長……! すぐ片付けます!」 「謝罪はいらない。だが、君は自分の歩幅を理解していない。……これを使いなさい」 彼は甘い言葉をかけるわけでもなく、無造作に自分の白いハンカチを差し出した。 周囲の社員は「また部長に詰められてる」と遠巻きに見ているが、違う。彼は、私が火傷をしていないか、一番に確認してくれたのだ。 「他人の評価を気にする暇があったら、自分の足元を見なさい。私は、君の価値は他人の物差しで決まるものではないと考えている」 ぶっきらぼうな言い方。でも、周囲が「無能」と笑う中で、彼だけは私を「一人の社員」として正当に、ストイックに評価してくれている。 ――かっこいい。 私が、彼が絶体絶命の窮地に陥るたびに、こっそり時間を止めて救っているのは、私なりの恩返しでもあった。 その日の夕方。事件は起きた。 新プロジェクトのプレゼンのため、九条部長と共にビルを出て移動していた時のことだ。 歩道を歩く九条部長の背中を見ながら、私は心の中で 「歩く姿もトレンディドラマの主役みたいだなぁ」なんて場違いなことを考えていた。 その時だった。 ガガガッ、という不穏な金属音が上空から響いた。 見
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第2話:氷の暴君が、ドジな私を抱き寄せた
大手広告代理店、東央エージェンシーの底辺社員・星野ルナ。 彼女の直属の上司となった九条 蓮(くじょう れん)部長は、社内で「氷の暴君」と囁かれていた。 しかし、それは彼が感情に流されず、常にプロとしての仕事を完遂させるがゆえの異名だった。 「星野、この企画書だが。……論理の飛躍がある。ここを埋めれば、もっと説得力が増すはずだ」 九条の声は常に低く、落ち着いている。厳しい指摘ではあるが、そこにはルナを萎縮させるような棘はない。 むしろ、ルナが自力で答えに辿り着けるよう、絶妙なヒントが散りばめられていた。 ルナが残業でデスクに突っ伏していれば、いつの間にかブランケットが掛けられ、傍らには「糖分は脳のガソリンだ」と書かれた高級なチョコレートが置かれている。 (部長は、本当は誰よりも優しい……) ルナは、そんな彼の不器用な思いやりに、いつしか救われていた。 だが、そんな穏やかな緊張感は、視察先のホテルの大階段で一変する。 「部長、本日の議事録ですが――」 一歩先を行く九条の背中を、ルナは重い資料を抱えて追っていた。その時、大階段の陰から子供が勢いよく飛び出してくる。 「危ない……っ!」 ルナは反射的に子供を避けようとして、体勢を崩した。 (あ、時間……!) ルナはポケットの中の【小型時間操作デバイス】に手を伸ばそうとする。だが、指先が触れたのは虚空だった。 急ぐあまり、ポーチごとデスクに置き忘れてきたのだ。 「……っ!」 回避不能。大理石の角が、ルナの後頭部に迫る――。 その瞬間だった。 「……星野!」 鋭い声と共に、強い力がルナの体を横からさらう。 激しい衝撃が走る。しかし、それは冷たい石の感触ではなかった。九条がルナを抱きしめたまま自らが下敷きになり、彼女を守り抜いたのだ。 「……目を開けろ。怪我はないか」 至近距離で見つめ合う二人。九条の瞳には、いつもの沈着冷静さはなく、今にもルナを飲み込みそうなほど激しい【焦燥】が渦巻いていた。 「ぶ……部長……」 「黙っていろ。お前が負傷すれば、俺のチームの損失だ」 九条はそう言いながら、ルナの腰を抱き寄せる腕に、さらなる力を込める。その手は、かすかに震えていた。 「お前は、俺が選んだ『戦力』だ。……俺の許可なく勝手に
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第3話:5秒止めた世界で、甘い逆襲
「星野。お前は本当に、何も気づいていないのか」 専用車の後部座席。九条部長の低く甘い声が、ルナの耳を熱くさせる。 吐息が触れそうな距離。部長の瞳は、まるで獲物を追い詰める肉食獣のような光を宿していた。 「それは……私が、部長にとって必要な『戦力』だから……ですよね?」 震える声で答えるルナ。九条はわずかに目筋を細め、フッと自嘲気味に口角を上げた。 「……半分は正解だ。だが、もう半分は――」 その答えが紡がれる直前、九条のスマホが激しく振動した。 「……九条だ。何? プロジェクトのメインデータが消えただと?」 電話の向こうからの悲鳴に近い報告に、車内の空気は一瞬で氷点下へと変わる。九条は即座にプロの顔に戻り、運転手に「会社へ戻れ」と短く命じた。 「星野、足を冷やしながら車で待っていろ。すぐに済ませる」 「あ、私も行きます! 私のミスかもしれないし……っ」 怪我を心配する九条を振り切り、ルナは無理やり車を降りてオフィスへと急いだ。 しかし、そこで待ち受けていたのは、想定外の【悪意】だった。 フロアに入った瞬間、静まり返るオフィス。 同僚のサオリが、ルナのデスクに置かれた「あのポーチ」を手に、勝ち誇ったような笑みを浮かべて立っていた。 「あ、ルナ。おかえり。大変なことになってるわよ? あなたが担当したクライアントへのプレゼンデータ、全部消えちゃったみたい」 「えっ……そんなはずは……」 「それより、これ何?」 サオリがポーチから取り出したのは、ルナの時間操作デバイスだった。 「変な機械。これで部長を誘惑してたの? さっき、階段で部長に抱きついたっていう目撃情報も入ってるわよ。底辺社員の分際で、姑息な手を使って……!」 周囲の同僚たちの冷ややかな視線が刺さる。 (違う……それは、私の大事な……!) ルナが手を伸ばそうとしたその時、サオリは意地悪な笑みを浮かべ、わざとデバイスを床に叩きつけようとした。 「こんなガラクタ、壊れちゃえばいいのよ!」 その瞬間、ルナの胸に熱い何かが込み上げた。 (……今度こそ、逃げない!) ルナは一歩踏み出し、床に転がったデバイスを必死の思いで掴み取った。 指先が冷たい金属に触れた瞬間、デバイスが淡い光を放ち、ルナの脳内に【再起動完了】の文
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第4話:宇宙人、コンビニおにぎりの神業に震える
深夜のオフィス。フロアの明かりは落とされ、九条のデスク周辺だけが、都会の夜景をバックに青白く浮かび上がっていた。サオリの嫌がらせを退け、プロジェクトのデータを無事復旧させたルナと九条は、二人きりで最終確認を終えた。「星野。……まだ、帰さないと言ったら、どうする?」九条が椅子から立ち上がり、ゆっくりとルナとの距離を詰める。ルナの背中が壁に当たり、逃げ場がなくなる。九条の長い腕がルナの顔の横で壁を叩いた。いわゆる「壁ドン」の形に、ルナの心臓は爆発寸前だ。「ぶ、部長……。あの、私……」「お前はさっき、自分のしたことは自分に返ると言ったな。ならば、俺の時間をこれほどまでにかき乱した責任、どう取るつもりだ?」至近距離で交わる視線。九条の瞳には、上司としての厳しさを超えた、一人の男としての濃密な独占欲が渦巻いている。ルナが思わず目を閉じると、不意に耳元でクスクスと、微かな笑い声が聞こえた。「……腹の虫が鳴っているぞ。腹が減っては、戦(いくさ)はできん」九条が離れ、デスクから取り出したのは、意外すぎるものだった。「これを食べろ」差し出されたのは、どこにでもあるコンビニのおにぎり。ルナは呆然としてそれを受け取った。実はルナは、社内でいつも孤立していた。地球の複雑な食文化に馴染めず、昼食はいつも一人で「カロリーメイト」や「ゼリー飲料」を無機質に流し込むだけ。そんな彼女を、サオリたちは「味気ない女」「宇宙人みたい」と陰で笑っていたのだ。「部長……これは?」「開け方が分からないのか? 貸せ」九条は手際よくフィルムを剥き、完璧な三角形を維持したままルナに手渡した。「一口食べてみろ。その『効率重視』の食事よりは、マシなはずだ」ルナは恐る恐る、そのおにぎりを口に運ぶ。次の瞬間、彼女の脳内に衝撃が走った。「な、何ですか……これ……ッ!」パリッ、と鼓膜にまで響くほど小気味よい音を立てる海苔。その内側には、一粒一粒が立っている、ふっくらと甘い白米。そして中央に鎮座する、絶妙な塩気の紅鮭。「海苔が……乾いているのに、お米を包んでいる……! それなのに、お米はこんなに優しくて……。
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第5話:毒入りスープと、氷の微笑
 その夜、九条部長──蓮さんの自宅マンションで、私は地球の料理の奥深さに圧倒されていた。 食卓には、素材の旨味を凝縮させた『オマール海老のビスク』をはじめ、低温調理された『和牛のローストビーフ』など、プロ顔負けの数品が並んでいる。「星野。俺の料理に、文句は言わせない」 エプロン姿の蓮さんは、いつもの「氷の暴君」らしい口調のままそう告げた。 そんな至福の時間の直前、不意にインターホンが鳴った。現れたのは、私を敵視している同僚のサオリさんだった。「あら、蓮さん。……あら、ルナさんもいたの?」 彼女は私を認めると、一瞬だけ口角を歪めたが、すぐに「ルナさん」と呼びかけ、お決まりの猫なで声で蓮さんに擦り寄る。「あら、このお料理! 蓮さん、流石ですね……本当に豪華で素敵。……あ、でも私、この後すぐ用事があるんです。明日はお休みをいただいているので、明日までに提出の資料を、どうしても直接蓮さんにお届けしたくて。……ふふ。それじゃあ、お邪魔しました。ごゆっくり」 嵐のように現れた彼女は、蓮さんの料理を一通り褒めちぎると、満足げな笑みを残して足早に去っていった。 招かれざる客が去り、ようやく訪れた二人きりの試食会。蓮さんが、丹精込めて作ったビスクを一口、口に運んだ。 その直後だった。「っ……、う、ぐ……!」 蓮さんがスプーンを落とし、喉を掻きむしるようにして食卓に突っ伏した。 顔色は一瞬で土気色に変わり、全身が激しく震え始める。「部長!? 蓮さん!!」 痺れ薬だ。サオリさんが、あの短い滞在中に料理に何かを仕込んだのだ。 彼がテーブルに置いたスマートフォンには、追い打ちをかけるようにサオリさんからの着信が光る。 苦しむ彼の姿に、私の理性が弾けた。母星への強制送還なんて恐れてはいられない。 私は、蓮さんがスープを口にする「直前」の時間へ、指を鳴らした。【 世界よ、巻き戻れ。 】 色が消え、すべてがモノクロの静止画に変わる。 蓮さんがスプーンを口元へ
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第6話:九条の疑念「君、本当に人間か?」
サオリさんが仕掛けた盗聴器を破壊し、蓮さんと「共犯者」のような夜を過ごした翌日。 オフィスに戻った私の心臓は、いつも以上に激しく鼓動していた。 「ルナさん、ちょっといいかしら?」 給湯室で背後から声をかけてきたのは、サオリさんだった。昨夜の失態など微塵も感じさせない、完璧な笑顔。 だが、彼女の手元にあるものを見て、私の血の気が引いた。 「これ……昨日、オフィスの床で拾ったの。ルナさんのポーチから落ちたのかしら?」 彼女の指先に光っていたのは、私の【 観測デバイス(時空操作機) 】の予備パーツ。地球の技術では絶対に作れない、複雑な幾何学模様が刻まれた極小のクリスタルだ。 これが解析されれば、私が地球人ではないことが一発でバレる。 「……返してください」 「ふふ、そんなに怖い顔しないで。返してあげてもいいけど……条件があるわ。今すぐ、蓮さんの前から消えて。彼にふさわしいのは、あなたみたいな『正体不明のドジ』じゃないの」 サオリさんの冷ややかな脅しに、私は拳を握りしめた。 デバイスを取り返さなければ強制送還。けれど、蓮さんのそばを離れるなんて──。 「星野。何をしている」 背後から、氷柱のような声が響いた。九条部長だ。 サオリさんは瞬時にパーツを隠し、「お喋りしていただけです」と余裕の笑みで立ち去った。 残されたのは、私と、射抜くような視線を向ける蓮さんだけ。 彼は無言で私に近づくと、逃げ場を塞ぐように壁に手をついた。 「……星野。私は、最近ずっと疑問に思っていることがある」距離は近すぎて私の心臓が持たない。 「君が現れてから、このオフィスでは常識的に考えてあり得ないほどの『幸運な偶然』が重なりすぎている。鉄骨の落下、昨夜の痺れ薬の予見……。まるで、君だけが数秒
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第7話:エリートたちの罠、5秒で粉砕
その夜、私は大手クライアントとの会食、いわゆる「接待」の場に駆り出されていた。 場所は、予約が半年待ちという超高級料亭。 本来、私のような平社員が出る幕ではない。けれど、蓮さんのさらに上役である常務から「あのドジっ子くんを連れてこい。場の和みになるだろう」という、実質的な見せ物扱いの命令が下ったのだ。 「星野。……無理に出る必要はない。私は、常務には体調不良だと報告しておく」 出発前、蓮さんは部長室でそう言ってくれた。けれど、彼が自分の立場を危うくしてまで私を庇おうとする姿を見て、私は決意した。 「大丈夫です、部長。私、これでも盛り上げ役には自信があるんですぅ」 そうして始まった会食。並み居るエリート男性陣に囲まれ、私はお酒を注ぎ、空気を読む……という、地球の「接待文化」に耐えていた。 「おや、九条部長の部下は、ずいぶん……『素朴』な方だねぇ」 嫌味な笑いを浮かべたのは、クライアントの重役だ。隣には、常務のお気に入りとして同席を許されたサオリさんが、勝ち誇ったように座っている。 「ええ。ルナさんは、弊社でも有名な『天然キャラ』ですから。……ねえ、ルナさん? 常務も期待していらっしゃるわ。何か気の利いた余興でも見せてくださる?」 サオリさんの無茶ぶりに、座の空気が凍りつく。 これは「接待」という名の、公開処刑だ。 チラリと蓮さんを見ると、彼はグラスを握る指が白くなるほど力を込め、怒りを押し殺していた。彼は、私をこの場に連れてこざるを得なかった自分自身に、猛烈に腹を立てているのだ。 その時。 サオリさんが、わざとらしく自分の袖を私のグラスに引っ掛けた。 なみなみと注がれた赤ワインが、放物線を描いてクライアントの真っ白な高級スーツへと飛び散る――。 (……やったわね、サオリさん) 地球の時間軸では、
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第8話:雨の日の密着、バレそうな鼓動
地球の空というのは、つくづく気まぐれだ。 さっきまでの晴天が嘘のように、退勤間際のオフィス街を激しい夕立が叩きつけていた。 (……しまった。傘、おにぎりポーチと一緒にデスクに置いてきちゃった) 駅まで走れば、地球の「風邪」というウイルスにやられて、母星への定時連絡に支障が出る。 困り果ててビルの軒下で立ち往生していると、背後から、低く落ち着いた声が響いた。 「……何をしている。風邪を引くぞ」 九条部長――蓮さんだった。 差し出されたのは、彼らしい、一分の隙もない黒い高級傘。 「あ、部長! すみません、うっかり傘を忘れてしまって……えへへ、ドジですよね」 「笑いごとではない。君は自分の体調管理が甘すぎる。……入れ」 彼はぶっきらぼうに言い放つと、私の肩を抱き寄せ、その大きな傘の中に強引に収めた。 狭い。近すぎる。 雨の音にかき消されそうなのに、私の耳には、蓮さんの規則正しい呼吸の音が鮮明に聞こえてくる。 「……部長、スーツが濡れてしまいます。もっと傘、真ん中に……」 「黙っていろ。君が濡れるよりはマシだ」 蓮さんは私の言葉を遮るように、さらにぐっと腕の力を強めた。 雨風から私を物理的に遮断するように、彼の大きな体が壁になる。 その時、私の二の腕に、彼の体温がダイレクトに伝わってきた。 (……あったかい。……ううん、熱いくらいだ) ストイックで、いつも氷のように冷徹な判断を下す人。 けれど、今、私の肩を抱いている腕からは、驚くほど情熱的で優しい体温が伝わってくる。 厳しい言葉とは裏腹な、大切に宝物を守るようなその抱き方に、私の宇宙的心臓(マイハート)は、制御不能なほどトクン、と跳ねた。 (…
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第9話:5秒間の盗み見、寝顔は天使
 昨夜の雨の日の相合い傘。 蓮さんに「何者だ」と詰め寄られたあの熱い夜から一夜明け、オフィスにはいつもの、けれど少しだけ気まずい空気が流れていた。 その日の昼下がり。 外回りから戻った蓮さんは、珍しくひどく疲れているようだった。 新プロジェクトの追い込みで、連日徹夜が続いていたらしい。(……あ、蓮さん。デスクで……) ふと部長席を見ると、書類を握ったまま、蓮さんが静かに目を閉じていた。 あの一分の隙もない、鉄壁の九条部長が、オフィスの自席で居眠りをしている。 前髪が少しだけ額にかかり、いつもは鋭く私を射抜く瞳が、長い睫毛(まつげ)に覆われている。(……今なら、バレないよね?) 私は周囲に誰もいないことを確認し、そっと指を鳴らした。【 世界よ、止まれ。 】 色が消え、すべてがモノクロの静止画に変わる。 カタカタと鳴り響いていたキーボードの音も、コピー機の作動音も消えた、私だけの5秒間。  私は、忍び足で部長席へ近づいた。 至近距離、わずか10センチ。 (……うわぁ。……本当に、綺麗) 止まった時間の中で見る蓮さんの寝顔は、まるでギリシャ彫刻のように整っていた。 眉間の険しさが取れ、少しだけ開いた唇からは、規則正しい呼吸の音が漏れてきそうだ。 いつもは「氷の暴君」なんて呼ばれているけれど、こうしていると、まるでいたずらっ子のような、あるいは守ってあげたくなるような――。(……まさに、天使) 私は、自分の頬が地球の沸点(100℃)くらいまで熱くなるのを感じた。 昨夜、この唇から「俺の前で嘘はつくな」なんて言われたんだと思うと、もう心臓のバックアップ電源までショートしそうだ。 残り、1秒。 私は名残惜しさを振り切るように、元の位置へ戻ろうとした。 けれどその時、蓮さんのデスクの端にあった予備の眼鏡が、私の袖に引っかかって床に落ちそうになった。(あっ、まずい!)
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第10話:強制送還のシグナル
深夜。一人、自宅アパートでおにぎりを頬張っていた私の脳内に、突如として爆音が響き渡った。 『――ピンポンパンポーン! 観測者・星野ルナ。至急、現在地で静止せよ!』 (……えっ、何!? 食べかけのサケおにぎりが喉に詰まる!) 目の前の空間がぐにゃりと歪み、母星の「監視AI・ポチ(仮)」のホログラムが浮かび上がる。 『ルナ。お前の「5秒操作」ログ、見たぞ。一週間の使用回数が、母星の全観測者の平均を3000%上回っている! お前、時空を何だと思ってるんだ? おにぎりの賞味期限を伸ばすための道具じゃないんだぞ!』 「だ、だって、部長が毒を盛られそうになったり、サオリさんが意地悪したり……!」 『言い訳無用! 次に無駄打ちしたら、即座にトラクタービームで強制送還だ。お前の部屋にある、地球限定フレーバーのポテチも全部没収だからな! 任務を忘れるなよ!』 ブツリ、と一方的に通信が切れた。 ……ポテチ没収。それは死を意味する。私は翌朝、真っ青な顔で出社した。 部長席では、蓮さんがサオリさんの持ってきた「予備パーツ」を、恐ろしいまでの集中力で凝視している。その傍らには、なぜか分厚い『ロボット工学』と『特殊素材の構造』、そして……『現代における愛の形』という、何やら不穏なタイトルの本が積まれていた。 「……星野。こちらへ来い」 低く、地を這うような蓮さんの声。 私は、処刑台に向かう気分で彼のデスクの前へ立った。サオリさんが、勝ち誇ったように腕を組んで隣に立っている。 「蓮さん、結論は出たのかしら? この異常なパーツの正体が」 「……ああ。すべてが繋がった」 蓮さんがゆっくりと立ち上がり、私との距離を詰める。 逃げ場を塞ぐ壁ドン。……けれど、今日の彼の目は、いつもの「氷」ではなく、何か……未知の深淵を覗き込むような、異様な「熱」を帯びていた。 「体温の低さ、異常なまでの可動域。そして、この未知のデバイスから放出される特殊なフェロモン(※ただの宇宙エネルギーです)。……星野。君は、某国の闇組織が極秘開発した、『超高性能アンドロイド型・愛玩用ドール』だな!?」 「……は、はい?」 「な、なんですって!?」 サオリさんが腰を抜かしそうになる中、蓮さんは震える手で私の肩をがっしりと掴んだ。その瞳には、製作者に対する激
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