結婚も間近に迫っていたある日、江本清司(えもとせいじ)が招待状を手に私と招待客の名簿を確認していたとき、何の前触れもなく、こう言った。「話がある。俺、法律上はもう妻がいるんだ。君さえ気にしないなら、招待状はそのまま出す。式も予定どおりやる」彼は何でもないことのように煙草に火をつけ、気のない口調で言い添えた。「昔、家に押しつけられたんだよ。受け入れた以上は、責任くらい取らないとな」頭の中が真っ白になった。しばらくして、ようやく声を絞り出した。「じゃあ、この六年……私たちは何だったの?」「俺が最低だったってことだ」彼は灰を落としながら言った。「で、これからどうするかは、君が決めろ」下腹に添えていた手が、かすかに震えた。そこには、今日こそ彼に伝えようと思っていたサプライズがあった……何の心構えもないまま突きつけられた真実は、真正面から私を打ちのめし、胸の奥をぎゅっと締めつけた。「でも六年も、一度も言わなかったじゃない……」彼はあまりにも誠実に振る舞っていたから、あの優しいぬくもりの裏に、もうひとつの人生が隠れているなんて、一度だって疑ったことはなかった。清司は煙をひと息吐いた。「言ったところで、どうなった?」口元だけわずかに歪めたその笑みは、目の奥までは届いていなかった。なのに、そこには妙な確信があった。「由紀子、俺たちの間に、そんな形は必要ないだろ」必要ない?私は、まだ出していない招待状に目を落とした。あのとき彼が結婚式をしたがらなかったのは、現実的だったからじゃなくて……重婚だと世間に知れ渡るのを恐れていたから?胃の中がひっくり返るようにむかつき、私は洗面所へ駆け込んでえずいた。「そこまで大げさに反応することないだろ!」清司もついてきて、そっと私の背中をさすった。「君と知り合う前に、田舎の親戚がこっちへ寄こしてきた子なんだ。教養もないし、学ぶ気もない。実家で何年かうちの親の面倒を見て、去年こっちに呼んだ」「都内に適当に住まわせてる」清司はそこで少し間を置いた。「月に一、二回会って、生活費を渡すくらいだ」私は振り向いて、彼を見た。そこには背筋を伸ばし、上質なスーツに身を包んだ清司が立っていた。六年間、私が愛してきたそのままの姿だった。け
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