【一弥side】医者との話が終わり、俺は杏華がいる病室へと移動した。ベッドの隣の椅子に座りながら、静かに穏やかに眠っている杏華を見つめる。あんなに苦しそうにしていた杏華が、今こうやって穏やかに眠っているだけでも、俺の心も落ち着いてくる。だが、杏華の身体に流産の兆候があるなんて知ったら杏華は……。さっきまではただ助かってくれることを願っていたのに、今度はその事実を聞いて不安になってしまう杏華を考えると胸が痛む。すると、ゆっくり杏華が目を開く。「杏華……。わかるか?」「一弥さん……」隣で声をかける俺に杏華は静かに呟く。そして視線をゆっくり動かし、自分がどこにいるかを確認する杏華。「私……またあなたに迷惑を……」「そんなことお前は考えなくていい」目を開けて一言目がそんな言葉とは……。「どうして俺に言わなかった……?」「え……?」「腹に子供がいること」俺がそう伝えた瞬間、杏華の顔がみるみる不安そうな顔に変わっていく。「ごめんなさい……! ごめんなさい……!」すると、なぜか杏華はどんどん泣き顔になり、手で顔を覆い、必死で俺に謝ってくる。なんだ……? なんでこいつはこんなに俺に謝ってくるんだ……?「なんだ! なんで泣いている!」俺は杏華の泣いて謝る理由がわからなくて、顔を覆う手を両手で掴みその手を下にそのまま降ろし、杏華の顔を確認する。「黙っていてごめんなさい──! 絶対あなたに迷惑はかけません! あなたに責任を取ってほしいなんて言わないから! 私が一人でちゃんと育てます──! だから私からこの子を奪わないで──!」杏華は目から大粒の涙を流し、見たことない追い込まれたような表情で、必死に俺に懇願するように訴える。「杏華! 興奮するな! 安静にしてろ!」俺はとにかく興奮している杏華の身体を抑えつけ、ゆっくりとベッドにまた寝かせる。杏華のその言葉で、すべて明確となった。腹の子供は、確かに俺の子だ──。それが明らかになった瞬間、俺の中でいろんな感情が入り乱れる。俺の子だと湧き上がる喜びと他の男が父親じゃなかった安心感。なのに何も俺に言わなかった苛立ちと、杏華も子供も共に守りたいと思う庇護欲。そして、なぜかただ杏華を悲しませている自分のこの情けなさ──。頭と心がぐちゃぐちゃになって上手く言葉を返すことが出来ない。「
Terakhir Diperbarui : 2026-06-15 Baca selengkapnya