【一弥side】はぁ~疲れた。入院の手続きをするだけで、どうしてこんなにも時間がかかるんだ。無駄にこっちの女どもに声もかけられるし、連絡先まで渡されるとは。病人にとって大事な連絡だというからあの紙も受け取ったのに、その場で見たらあの看護師の連絡先じゃないか。そんなの受け取るはずないだろ。せっかく異国の地でそういうわずらわしさから逃れられたと思ったのに、こっちでもこんなことうんざりする。どうもあの積極的にアプローチする女どもが苦手で仕方ない。それに比べ杏華はあんな女たちとは正反対だな。あんな女たちみたいに露骨に好意を垂れ流されるのも迷惑だが、逆に杏華みたいな女も何を考えているのかわからん。だが、何を考えてるのかがわからないから、そんな杏華が気になって仕方ない。結婚していた時は、ただ従順に尽くしてその妻という義務を果たしているだけと思っていた俺は、あいつに必要以上の気持ちも役割も求めようとは思わなかった。政略結婚で一緒にいただけの関係に、愛だのそんな想いも必要はなかった。俺も妻という役割り以上に求めもしなかったし、あいつもそれ以上の関係を望んでいなかったはずだ。だからだろうか。結局あいつといた三年間、杏華が何を考えているのか俺は理解することが出来なかった。だけど、綾乃から杏華が俺以外の男には心も身体も許していると聞いて、どうしてなのか俺の心は激しく乱れた。俺にはいつも冷静に義務的にしか接していない杏華が、他の男にはどんな表情でどんな言葉であいつ自身をさらけ出しているのかと思うと、俺の暴走は止められなかった。あの日、俺が暴走してしまったことで、杏華に負担をかけ一人で子供を抱えるという申し訳ない選択をさせてしまった。俺がもう少し自分を止められていたら、あいつに今こんな辛い想いなどさせずにいたはずなのに……。だが、そう思う気持ちと同時に、あいつの中でどうやったって消えることのない俺とのその時の証みたいなものを感じられて、勝手だが今ホッとしている自分がいる。唯一杏華と繋がっていられる証。それがあることを今俺はこんなにもよかったと思ってしまっている。そう思いながらも、今杏華と新しい関係を築きだして、初めて知る部分が少しずつ増えていく。今思えば、もう少し杏華と向き合うことが出来ていれば、この関係ももしかしたら変わっていたのかもしれない
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