「杏華が母親にそっくり……?」「そう。病室入ってあまりに似ててビックリしたよ。一瞬、母親がいるかと思って時が止まった」「そんなガキの頃のこと憶えてるのか?」「嫌ってほど母親の写真見てたからね。俺の記憶の中でも、不思議と鮮明に残ってるんだ」「母親のこと憎んだりはしてないのか?」「あぁ……。もちろん寂しいとかはあったけどな。でも一緒にいた頃は俺を可愛がってくれていた記憶はちゃんと残ってるし、俺もその母親が急にいなくなったことは何か理由があると思ってるから」「そんな深い理由なんてあるもんなのか?」「いなくなる前にさ、父親が母親が何か悩んでる姿を見たって言ってたんだ。誰かから電話かかってきて誤魔化したりしてた姿も見たりしてる」「それは……実際その好きな男のところに行ったんじゃないのか……?」「……あぁ、なるほど。だからお前は杏華さんをそんな一方的に男がいるとか決めつけてたんだな」「──今、俺のことは関係ないだろ」「いや、ちゃんと相手を見てたら、そんなことはわかるはずだ」はっきりとそう告げた詠司に俺は反論出来なかった。確かに俺がもっと杏華を見ていたら、本当はどうだったのかもわかっていたのかもしれない……。「一弥。杏華さんの旧姓、なんて言うんだ……?」「本城だ」「本城……。そういえばお前んとこのグループ、HONJOと業務提携してたよな……?」「あぁ。杏華と結婚したのもそのためだ」「あぁ、いわゆる政略結婚ってやつか」「そうだ。本来はその相手が綾乃だった」「え?」「あの家と結婚することでお互いメリットはあったからな。最初は綾乃と結婚と言われてたんだ。だから婚約相手として学生のときから綾乃と付き合うことになった」「それでどうして杏華さんと?」「さぁ、俺にもわからない。いきなり綾乃はいなくなって、代わりに同じ年の杏華と結婚しろと言われただけだ」「なんだそれ」「俺は言われるように従っただけだ。家の都合がいいように動かされる。それがこの家の人間に生まれた宿命だ」「面倒な宿命だな……」「そうだな……。まぁ、グループ的にあのタイミングで業務提携する必要があったんだろう。そのタイミングに綾乃がいなくて杏華がいた。あの家にとっても娘たちは俺と同じ駒でしかないのかもな」「そういうことね……」「だからお前も結婚してからも杏華さんに構わなかった
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