それから海外撮影はまだまだ続いて行った。綾乃やモデル仲間から小さな嫌がらせはあったものの、特に目立った大きな事件になるほどのことはなかった。そしてAKIさんとは、特にあれから距離を縮めることもなく、かといって、一弥さんとは、前よりもっと気まずい空気が流れ、明らかに距離を感じるほどになっていた。だけど、仕事のパートナーとして、必要最低限の仕事上の言葉を交わすことをしていた私たちは、ある意味今の関係としては特に不自然なことでもなかった。ただいきなり私との距離を置き始めた一弥さんが、少なからず気になってしまうこと。なんだかんだ言って、彼とつかず離れずの元夫婦であることで生まれる独特の慣れた空気感や距離感に、無意識で私は心のどこかで安心していた。だけど、それを彼がどう接してこれば、どう変われば、私は今の違和感が拭えるかもまだわからないでいた。そして、それらは、最後の撮影が終わるまで、もう何も変わらないと、そう思っていた。──けれど。事件は、ふとした時に起きた。その日は、いつもとは違う人里離れた簡素な山奥での撮影だった。その撮影は全員参加でもあり人数もスタッフも大人数で、持参するセットも大掛かりで、移動や運ぶだけでも、どれだけの数が動いているのかわかりにくいロケだった。しかも今回はいくつもの場所での撮影。ブランドもカメラマンもスタッフも最初に比べ随分人数も増えた状態。至る所で何グループにも分かれ、一つ連絡をミスれば確認しづらいほどの状況にもなっていた。私はそのロケの途中、同じ撮影に参加していたモデル仲間に、私たちのグループはある場所で撮影があるからと聞かされ、一緒に移動した。そのあとで、なかなかスタッフが呼びに来ないことを不思議に思ったそのモデル仲間は、携帯が繋がらないという理由で、別のグループが近くにいるから確認してくると言い、この場を離れた。その場に残されたのは、気付けば私たった一人。かなりの時間が経ったことで、私は少し不安になり、携帯を手に取る。無意識に連絡先を知っている一弥さんの名前を画面に表示させるも、その瞬間、電波が繋がらないことに気付く。気が付けば辺りは少しずつ暗くなってきていた。山奥なだけに暗くなるのもこの辺りでは早い。その上、すぐに撮影を始めると言われていたせいで、衣装も薄着のままだった。少しずつ肌寒くなってく
Last Updated : 2026-06-05 Read more