夕凪はトイレへ駆け込むと、激しく胃の中のものを吐き出した。すべてを吐き終えてトイレを出た時、一陣の冷たい風が吹き抜け、彼女は思わず身震いした。そして、ハッと完全に正気を取り戻した。待って、私、さっき何を言ったの?……今になってようやく、その場に峻がいたことを思い出したのだ。しまった、やってしまった!心臓が早鐘のように鳴り始め、彼女は慌てて階段を駆け上がり、上の階の自分の部屋へ逃げ帰った。しかし、部屋のドアの前にたどり着き、扉を押し開けたその瞬間だった。不意に背後から、熱い体が彼女の背中にぴったりと張り付いた。片腕で彼女の腰をきつく抱き寄せ、もう片方の手でドアを押し開けると、呆然としている彼女ごと部屋の中へ押し入ったのだ。そして直後、「バタン」と足でドアを蹴り閉めた。すべては、ほんの一瞬の出来事だった。部屋に入るなり、男は彼女を反転させて壁に押し付け、その高く熱を帯びた体で彼女を隙間なく押さえ込んだ。窓の外は、朧げな夜の闇に包まれている。わずかな微光だけが室内に差し込んでいた。混乱と眩暈の中で、夕凪には目の前の男が誰なのかさえはっきりと見えなかった。ハッと我に返った瞬間、頭の中でけたたましく警報が鳴り響き、彼女は力いっぱい男を突き飛ばそうとした。「誰!?あなた……何をする気!?」酔いで赤く染まっていた顔から一瞬にして血の気が引き、蒼白になる。酔いも半分以上吹き飛び、必死に抵抗して彼を押し除けようとした。「俺だ……夕凪……俺は峻だ……君の愛している人だ……」暗闇の中、男は彼女をきつく抱きしめ、その小さな体をすっぽりと自分の胸の中に閉じ込めた。彼女の頭上で響くその低く沈んだ声は、小刻みに震えていた。彼がどれほど激しく感情を昂らせ、極度の緊張と恐怖に苛まれているかが痛いほど伝わってくる。夕凪はピタリと動きを止めた。まだ完全に酒が抜けてはいなかった。頭の奥は、依然としてくらくらと眩んでいる。彼女の脳裏に、ある光景がぼんやりと浮かび上がった。小さな女の子が、毎日小さな男の子の後ろをついて回り、「峻!」「峻!」と呼びかけながら、一緒に遊んでほしいとせがんでいる……しかし彼女の「峻」は、幼い頃からすでに冷徹な若き総裁としての才能を遺憾なく発揮しており、いつも大人のように冷たい顔を
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