よかった、修一は自分を止めなかった。だが、考えてみれば当然だ。相手はあの神崎修一なのだ。彼の方こそ、自分に付きまとわれることを恐れているはずだ……しかし、ドアを押し開けて外に出ようとした瞬間、廊下の突き当たりに記者らしき男がいるのが見えた。男はうつむき加減でカメラをいじり、何かの設定を調整しているようだった。ドアが開く音にビクッと肩を揺らした男が勢いよく顔を上げ、そのまま二人の視線がぶつかった。二秒後、まるで雷にでも打たれたかのように、二人は同時にハッと我に返った。男の反応は素早かった。即座にダイヤルを回してカメラを構えると、夕凪と背後のドアへレンズを向けたのだ。だが、夕凪の反応は彼よりもさらに上をいっていた。男がカメラを構えてシャッターを切ろうとした瞬間には、夕凪はすでに修一の部屋の中へと舞い戻っていた。微塵の躊躇いもない、流れるようにスムーズな一連の動作だった。あまりの早業に、男はすっかりもぬけの殻となった廊下を見つめ、思わず自分の目を疑った。そして、ゴシゴシと目を擦った……まさか?本当に見間違いだったのか?たった今、修一の部屋から一人の女が出てきたはずだ。もし本当なら、世間を揺るがすほどの特大スクープだぞ!カメラに収めてSNSですっぱ抜くことができれば……フォロワーも再生数も爆上がり間違いなしだ!それなのに……どうして今は影も形もないんだ?本当に、ただの見間違いだったのだろうか?一方、ドアの内側では、夕凪が背中をぴったりとドアに押し付け、荒い息を吐きながら後から込み上げてくる恐怖に身を震わせていた。視線を向けると、修一は相変わらず平然とソファに座り、あろうことか足を組んでさえいた……怪我をしていない方の手でスマホを持ち、淡々と言い放つ。「何が食べたい?早く言え」夕凪は絶句した。この時になって、彼女はようやく悟った。だから止めなかったのだ!私が外に出られないことを、最初から知っていたくせに!だったら、どうして一言注意してくれなかったのよ!危うく特大スクープの的になるところだったじゃない!夕凪は腹立たしさを覚えつつ、信じられないという表情で尋ねた。「あなたの部屋の外に……どうして……記者がいるんですか?」修一は顔を上げることもなく答えた。「奴らは記者じゃない、ただの配信者だ
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