夏の夜。薄暗い主寝室で、二人の姿が大きなベッドに沈み込む。レースのカーテンが白い月光を巻き込んでふわりと舞い上がり、また落ちる。絡み合う呼吸、揺れる二つの影。酒の匂いを纏った男の動きに、優しさはなかった。むしろ、何かを罰するかのような荒々しささえ孕んでいる。結城咲良(ゆうき さくら)は目を閉じ、ただその痛みに耐えていた。「咲良、目を開けて俺を見ろ」突然、顎をきつく掴まれる。痛みに顔を顰めると、頭上から微かな怒りを帯びた、低く掠れた声が響いた。咲良はゆっくりと目を開いた。一筋の月光が、彫刻のように整った男の横顔を冷たく照らし出している。咲良は少しの間、ぼんやりとその顔を見つめた。一ヶ月前、二人は墓地で不愉快なまま別れた。あの日――お腹の中で亡くなった男女の双子の命日。男は「忙しいんだ。お前の戯言に付き合っている暇はない」と冷酷に言い捨て、そのまま一ヶ月間、一度も家に帰ってこなかったのだ。鎖骨に走った鋭い痛みに、咲良の意識が現実に引き戻される。見上げると、夫の御堂圭吾(みどう けいご)の漆黒の瞳が視線を絡え取る。「集中しろ」圭吾の掠れた声には、先ほどよりも濃い苛立ちが滲んでいる。咲良は長い睫毛を震わせた。ツンと鼻の奥が痛む。「圭吾……」彼女はそっと手を伸ばし、氷のように冷たい指先で、彼の眉間に寄った皺をなぞった。「もう一度、子供を作ろう……」震える声で、そう懇願した。圭吾の動きがピタリと止まる。欲情を湛えていた黒い瞳が、探るように彼女を深く見据えた。「咲良、本気で言っているのか?」咲良は答えず、彼の首に腕を回すと、自ら口づけようとすがるように頭をもたげた。圭吾は目を細め、長い指を彼女の髪に這わせると、その後頭部をきつく押さえつけた。だが、咲良の唇が重なるその瞬間。圭吾の薄い唇が開いた。吐息は熱いのに、その声は凍りつくほど冷酷だった。「お前はどれくらいの間、まともに鏡を見ていない?」咲良は息を呑み、目を見開いた。彼の漆黒の瞳に映っていたのは、枯れ枝のように痩せこけ、土気色になった自分の顔だった。圭吾は突然体を離し、ベッドから起き上がった。傍らにあったバスローブを羽織り、背を向けたまま無造作に腰紐を結ぶ。「今のその体じゃ、産むどころか、妊娠すら無理だ」咲良は呼吸を忘れ、ただ茫然と
Magbasa pa