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第3話

Author: 栄子
琴音は咲良の言葉を信じられず、自らの目で確かめるため一緒に『フォレストガーデン』へやって来た。 白いパナメーラは、昨日と同じ木陰に停められている。

車内。助手席に座る琴音は、目の前の豪邸を指差して言った。

「この外観……あなたと御堂さんの愛の巣に『似てる』なんてレベルじゃないわね。そっくりそのままじゃない!」

言い終えてから、しまったというように口を覆い、恐る恐る咲良の横顔を窺う。

咲良は無表情のまま、ただ窓の外をじっと見つめていた。「昨日、法律をいろいろと調べ直したわ。配偶者がいると知りながら同居し、夫婦同然の生活を送る。これは極めて悪質な不法行為よ。私は圭吾を一銭も渡さずに追い出すだけじゃない。紬も徹底的に訴えて、二人の社会的に抹殺するつもりよ」

「ずいぶんと勉強したのね……」

琴音は咲良の揺るぎない瞳を見て、小さく呟いた。「でも、咲良。それには二人が同居しているという、決定的な証拠が必要よ」

「そんなの、難しいことじゃないわ。証拠なら目の前にあるじゃない」咲良の声は氷のように冷たかった。

琴音はまだ困惑した顔をしている。「でも、何かの間違いじゃない? 御堂さんは確かに冷たいところはあるけれど、あなたには優しかったじゃない。あんな人が、そんな……」

「琴音」咲良はゆっくりと視線を琴音に向けた。

「実は昨日まで、私もあなたと全く同じ考えだったの。圭吾が冷淡な性格なのは知っていた。でも、私は彼を愛していた。自分で選んだ夫だから。この五年間、子供を失って情緒不安定だった私を彼が疎ましく思っていると気づいていても、一度も彼を恨んだことはなかったわ。

すべては自分が悪いんだと言い聞かせて、必死に立ち直ろうと努力してきた。……でも、まさか私が双子を失って絶望のどん底にいたあの時期に、彼がすでに紬との間に子供を作っていたなんて、思いもしなかった」

咲良の声は凪のように静かだった。愛も恨みも、すべては昨日のうちに死に絶えてしまったかのようだ。心が完全に死に絶えると、こんなにも冷徹になれる自分がまるで別人のように思えるほど、人間は自分でも恐ろしいほど冷静になれるらしい。

琴音は言葉を失い、ただ呆然と咲良を見つめた。

咲良は窓の外を指差す。

「見て。あそこで今、お祝いをしているわ。今日はあの男の子の、五歳の誕生日なんだって」

琴音はハッとして振り返った。

二階の広いバルコニーから、子供の無邪気な笑い声がはっきりと響く。まるで、世界で一番貴重な宝物を手に入れたかのような、幸せに満ちた声だった。

咲良は、叶わなかった自らの子供の姿を脳裏に過ぎらせながら、躊躇なく助手席の窓を下ろした。スマホのカメラを起動し、バルコニーの「家族三人」にレンズを向けて録画ボタンをタップする――

フランス製の上質なテーブルクロスが敷かれた円卓。圭吾は男の子を膝に抱き、男の子は限定モデルのロボットのおもちゃを嬉しそうに抱え込んでいる。オフホワイトのワンピースを着た紬は圭吾の傍らに寄り添い、片手でスマホを構えていた。

降り注ぐ陽光の中、三人は紬の持つスマホの画面を覗き込んでいる。

男の子がカメラに向かっておどけてピースサインを作ると、紬は小首を傾げて圭吾の肩に甘えるようにもたれかかった。普段は冷酷で、写真に撮られることなどひどく嫌う圭吾が、今はスマホのレンズに向かって、春の陽だまりのように優しく微笑みかけている。

なんて温かい家族三人の風景だろう。

咲良は録画を停止し、動画を保存した。

ウィンドウをゆっくりと閉め、琴音を見つめる。その口元には、自嘲めいた冷ややかな笑みが浮かんでいた。

「ねえ、琴音。これでもまだ、何かの間違いだと思う?」

琴音の顔は、すでに涙でぐしゃぐしゃになっていた。「なんで……御堂さんが浮気なんて。二人は確かに最初は政略結婚みたいな感じだったけど、御堂さんは莫大なお金をかけて結婚式を挙げてくれたじゃない。指輪もドレスも、あなたのために特注して……私たち、裏でずっと言ってたのよ。あなたが長年想い続けてきた御堂さんと結ばれて、本当に良かったって……」

そうだ。彼女と圭吾の結婚は、燃え上がるような恋愛感情から始まったわけではなかったが、それでも周囲から見れば十分に円満な夫婦だったはずだ。

圭吾が裏切るなど、誰一人として想像すらしていなかった。

咲良にとって最も許しがたいのは、あの男の子が五歳だという事実。あの双子と、わずか四ヶ月しか違わないのだ……

つまり、圭吾は咲良が妊娠中に浮気をしていた。あろうことか、咲良がお腹の双子を失い、悲しみの中で生死の境を彷徨っていたその裏で、彼と紬は隠し子の誕生を祝って笑い合っていたのだ!

心臓が千切れるように痛む。咲良は強く目を閉じ、深く息を吸い込んだ。

ここで負けるわけにはいかない。自分自身のためにも、そして失われた子供たちのためにも!

「琴音。聞くわ。この依頼、受けてくれる?」

琴音はそれを聞いて、さらに声を上げて泣き出した。

「ごめんなさい、咲良……っ。助けたくないわけじゃないの。でも、御堂さんを相手に裁判なんて、私の事務所じゃ絶対に勝てないわ!」

咲良は小さく落胆したが、彼女の言うことも理解できた。

圭吾が御堂グループを継いでからというもの、わずか五年の間でグループの時価総額は数倍に膨れ上がった。御堂グループお抱えの弁護士団は、この首都圏でも無敗を誇るエリート集団だ。

琴音のような個人の法律事務所が彼らを相手に正面から殴り合おうとしても、勝算など万に一つもないだろう。

「いいの。自分で他の方法を考えるから」

咲良はエンジンをかけた。「咲良、私にできる限りの人脈とリソースは全部紹介するわ。でも……本当にいいの? 本気で御堂さんと離婚する気?」

シフトレバーを握る手が止まる。咲良は琴音を振り向いた。「琴音。私に、まだあいつと夫婦でいろと言うの?」

琴音は言葉に詰まった。

「絶対に離婚する。圭吾に、私の子供の父親になる資格なんてない」

咲良は前を向き、静かにアクセルを踏み込んだ。

白のパナメーラが向きを変え、滑るように走り去っていく。

二階のバルコニー。紬はスマホをしまい、遠ざかっていく白い車の影を冷ややかに見下ろした。そして、誰の目にも触れない角度で、その瞳に底知れない優越感と嘲笑を浮かべたのだった。

琴音は離婚訴訟の代理人を引き受けることはできなかったが、代わりに自らの大学時代の先輩である敏腕弁護士、橘湊(たちばな みなと)を紹介してくれた。

橘は大学時代から法学部で名を馳せた秀才であり、咲良も当然その名を知っていた。

咲良は昔から行動力があり、愛憎の念をごまかさない気性だった。一度腹を決めたことは、二度と覆さない。

翌日の午前中。琴音の仲介で、三人は都心のカフェで落ち合うことになった。

琴音と咲良がカフェに着いた時、橘はまだ到着していなかった。

奥の席を見つけて腰を下ろした、その直後。入り口の方から、あどけない子供の声が響いてきた。

「パパ、辰くんチョコレートケーキが食べたい!」

咲良はビクッと肩を揺らし、無意識にドアの方へ視線を向けた。

デニムのオーバーオールを着た辰の手を引きながら、圭吾がカフェの中へ入ってきたのだ。

ショーケースのケーキを指差す辰の小さな顔は、圭吾にそっくりでありながら、子供らしい純真さに溢れている。

離婚の決意は固まっていたはずなのに。その光景を目の当たりにした瞬間、咲良の胸は再びギュッと締め付けられ、耐え難い悲哀でツンと鼻の奥が痛んだ。

琴音はすっかり呆気に取られ、目を丸くして圭吾と辰を交互に見比べている。

これほど至近距離で見せつけられれば、琴音も認めざるを得なかった。あの男の子は、圭吾に瓜二つだ!

圭吾は咲良の視線に気づいたのか、ふとこちらへ顔を向けた――

視線が交差する。

圭吾の表情が、一瞬で凍りついた。

咲良の顔に表情はなかった。ただ、水の入ったグラスを握る手だけが、制御を失ったようにきつく力を込められ、指先が真っ白に変色していた。

琴音は息を呑み、小さな声で呻いた。「嘘でしょ……最悪の修羅場じゃない!」

咲良は当初、決定的な証拠をすべて揃え、離婚協議書を完璧に作り上げてから圭吾に突きつけるつもりだった。まさかこんな場所で出くわすとは想定外だ。

だが、遭遇してしまったのなら好都合かもしれない。

この子供の目の前で、彼が一体どんな言い訳を並べ立てるのか、見せてもらおうじゃないか。
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