会員制バーの個室は、水を打ったように静まり返った。 その場にいた者たちは、息を殺して蓮を見つめていた。なぜ彼が突然声を荒らげたのか、誰にも分からなかったのだ。 紗良も困惑した様子で問いかけた。「蓮さん、どうしたの……?」蓮の冷え切った視線が、部屋にいる者たちをゆっくりと射抜いた。「お前ら、誰に言ってるんだ。結衣の名前を軽々しく口にするな」 「今後、彼女について一言でも余計なことを言ってみろ。許さないぞ」一同は一斉に顔色を変えたが、反論できる者は誰一人いなかった。 紗良の表情もひどく強張っていた。ここにいるのは、彼女の友人たちがほとんどだったからだ。 蓮がこれほどまでに厳しく彼らを一喝するのは、彼女の顔に泥を塗るも同然の行為だった。「蓮さん、ごめんなさい。この人たち、デリカシーがなくて……」 紗良は怒りを押し殺し、しおらしく言った。「みんな、蓮さんのために喜ぼうとして、つい口が滑ってしまっただけなの」しかし、いつもなら彼女を何より優先する蓮だったが、この時ばかりは見向きもせず、そのまま部屋を飛び出していった。 面目を丸つぶれにされた紗良の顔は、蓮が背を向けた一瞬、鬼のような凄まじい形相へと変わった。だがすぐにそれを取り繕うと、慌てて彼の後を追った。「蓮さん、待って!」家に戻るなり、蓮は門を固く閉ざすよう命じ、追いかけてきた紗良を外に閉め出した。 それから数日間、彼は家に引きこもり、ただ眠るか浴びるほど酒を飲むかだけの荒んだ生活を送った。 もはや、何をする気力も湧かなかったのだ。蓮は、空っぽになった心でぼんやりと考えていた。認めざるを得ない。自分は結衣を失ったことが、これほどまでに辛いのだと。 結衣が死んでしまった今、この広い世界で、あそこまで自分に狂おしいほどの愛情を注いでくれる人間は、もう二度と現れないだろう。すぐにこんな気持ちは消えると思っていた。だが…………蓮は力なく目を伏せた。結衣がこの世を去ってからというもの、彼は毎晩のように彼女の夢を見た。 ハッと目を覚ますたび、夢の内容は霧のように消えて思い出せない。だが、気づけば枕がびっしょりと濡れるほど、涙を流していた。それは罪悪感なのか、それともただの名残惜しさなのか。 いや、もっと心の深いところで渦巻いている、別の、もっと重い感情
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