余命一ヶ月と知った浅見結衣 (あさみ ゆい)が、真っ先に取った行動は――桐生蓮(きりゅう れん)を呼び戻し、強引に自分のそばへ引き留めることだった。その夜、結衣の腰に手を添えた蓮は、息を乱しながらも、沈んだ目で彼女を見つめている。しかし、その目だけは冷えきっていた。自分と狂おしいほどに肌を重ね合わせる女を見つめる彼の瞳の奥には、残酷なほどの憐れみが滲んでいる。「結衣、こうしてしつこく付きまとって何になる?いくら体を重なっても、お前に惹かれることなどあり得ないって、分かってるだろう」以前の結衣なら、それだけで十分に傷ついたはずだ。しかし、自分の余命がわずかだと悟っている彼女は、そんな言葉は耳に入らないとばかりに、さらに艶めかしい仕草で蓮と唇を重なり、それ以上の言葉が出ないよう完全に封じ込めた。……すべてが終わると、結衣は名残を惜しむようにそっと蓮に口づけし、ベッドを下りて洗面所へ向かった。自分が死んだあとのことを、蓮ときちんと話しておくつもりだ。しかし、数歩歩いたところで突然目の前が真っ暗になった。倒れ込んだ拍子に、蓮がテーブルに置いている鍵を落としてしまった。パシャン――部屋の中に、甲高い音が響き渡った。次の瞬間、蓮が飛び出してきた。しかし、彼の視線は床に倒れた結衣には一切向かず、ただ自身のキーホルダーだけを捉えている。鍵についているクリスタルのストラップが砕け散っているのを見た途端、蓮の顔色がさっと変わった。「何やってんだよ!」彼は低く押し殺した声で言った。「お前、どこに目をつけてるんだ!?」怒鳴りながら、蓮の目はすでに赤く染まっている。結衣は誰かを突き落として死なせたてしまったかのような底知れぬ恐怖を覚えた。喉の奥にひどく渋く苦い味が広がる。結衣は分かっている。そのストラップがそれほど高価なわけではない。ただ、瀬戸清香(せと さやか)が蓮に贈ったものだからだ。「ごめんなさい」彼女は体を起こし、ストラップの破片を拾おうとした。だが、蓮は彼女の手を払いのけ、瞳の冷たさを露わにした。「その汚い手で触るな!」結衣は唇を噛みしめた。「わざとじゃないの。ちょっと目眩がして、つい……」結衣は説明した。彼女は少しだけためらい、言葉を紡いだ。「蓮、私……もうすぐ死ぬの」蓮は冷笑
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