ヤジン・デザインと業界トップ3社の調印式が、海に浮かぶ豪華客船で開かれた。水面に揺れる光が、海を取り囲む都市の華やかな眺めを映し出していた。午前9時半、式が始まる前から会場には多くの業界関係者やメディアが集まり、あちこちで潜めた声での会話が弾んでいた。「ヤジン・デザインって表には出ないけど、設計の質と速さには定評があって、ここ数年では、トップレベルですよ。特にあのNAOというデザイナーの描く図面は異次元ですね。今回、あの大手3社が喉から手が出るほど契約したがったのも当然です。我々にもチャンスがあるんでしょうかね」「そうですね。それにNAOさんが男なのか女なのかさえ分かっていないから、今日ついに姿を見せるんですよ、本当に待ち遠しいです!」「私もNAOさんの設計図を見たが、常に斬新なアイデアを取り入れていて、構成が本当に巧みです。今日会えるなんて、まさに一生の幸運ですね!」「あの二人、ものすごくお似合いじゃないですか!二人のどちらかがNAOさんでしょう?俺の勘だが、あのショートカットの女性がそうに違いないでしょう!」「……」誰かが人だかりの中で声を上げた。充はグレーのスーツ姿で、すらりと人の外に立っていた。それを聞いて、眉がぴくりと動いた。すぐに声のほうを見た。そこには、書類の入ったファイルを手にして、談笑しながら登壇してくる奈緒と仁哉の姿があった。奈緒はシルエットの白いパンツスーツを着こなし、真ん中に立っている。ぴんとした生地が、その姿をいっそうすらりと見せた。腰のほそいベルトが、きゅっとした腰のラインを引き立てた。瞳には生気があふれ、星のような輝きを宿している。高く通った鼻筋に整った唇、シャープなフェイスライン。その表情には、誰にも縛られない毅然とした誇りがあった。一方、仁哉は黒い手縫いのスーツを着ていた。生地は柔らかく、体に沿って落ちる。それが、彼のすらりとした体つきを引き立てた。整った眉の下には、どこか柔らかな光を宿した瞳がある。人に視線を向けるときはいつも微かに微笑み、口元を真一文字に結んでも、なお柔らかな雰囲気が漂う男だった。白と黒。強気な華やかさと柔和な優しさが並び立ち、奇跡のように完璧なハーモニーを醸し出していた。奈緒の鋭さは、仁哉の優しさにそっと包まれる。そして、仁哉の静けさは、奈緒のいきいき
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