「待ってください!離婚届の受理は、少しだけ待っていただけませんか?こちらで確認しなければならないことが、まだ残っているんです!」蛍は焦りをにじませた声で、今まさに離婚届を受理しようとしていた役所の職員へ叫んだ。突然のことに、驚きで呆気に取られている奈緒と充。役所の職員も驚いてはいたが、手に持っていた離婚届を彼らに返した。その離婚届をすぐさま手に取った蛍が、親権に関する記載の部分を確認すると、やはり黎の名前が奈緒の欄ではなく、充の欄に書かれていた。一瞬にして、蛍の怒りが頂点まで達する。蛍は離婚届と先ほど確認して自分が持っていた離婚協議書を、充に向かって激しく投げつけた。「あんたって本当最低!やけにあっさり奈緒との離婚に応じると思ったら、こういうことだったのね!」蛍は怒りで胸を上下させたまま、奈緒に視線を向ける。「奈緒、離婚届は書き直し!さっきの離婚届は出しちゃ駄目だから!離婚届の親権の欄、ちゃんと確認した?黎ちゃんの名前、奈緒の欄じゃなくて青木社長の欄に書かれてたんだよ!もしあのまま離婚届が受理されてたら、親権はこの男に取られてたの!実は、さっき離婚協議書の写真を撮って奏介さんに送っておいたんだけど、そうしたら親権についての内容に問題があるから、離婚届もしっかり確認したほうがいいって言われて。あと一歩遅かったら、黎ちゃんを失うところだったんだからね!」蛍の言葉を聞き、奈緒は目の前が真っ暗になるほどの衝撃を受けた。蛍に罵声を浴びせられた充は、戸惑いながらも、床に投げつけられた離婚届と離婚協議書の内容を確認していた。昨夜、離婚協議書を見るだけで胸が痛んだため、自分は内容も確認せずに署名をした。それに、離婚届の親権の欄だって、奈緒が記入済みではなかったのか?奈緒にしても同じで、充の欄に黎の名前が書かれていることに、全く気が付かなかった。奈緒は怒りのままに、手を振り上げて充の頬を叩いた。「充!まさか、あなたがここまで卑怯だったなんて!危うく騙されるところだった。昔のあなたは、少なくともこんな卑劣なことはしなかったのに……どうして?美紀さんと一緒にいるうちに、考え方まで同じようになってっちゃったの?」奈緒は怒りのあまり、思わず充に罵声を浴びせてしまった。あと少しで騙されるところだった。何も疑わず離婚協議
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