All Chapters of 我が子より他人の子?産後ワンオペ妻の離婚: Chapter 251 - Chapter 254

254 Chapters

第251話

「待ってください!離婚届の受理は、少しだけ待っていただけませんか?こちらで確認しなければならないことが、まだ残っているんです!」蛍は焦りをにじませた声で、今まさに離婚届を受理しようとしていた役所の職員へ叫んだ。突然のことに、驚きで呆気に取られている奈緒と充。役所の職員も驚いてはいたが、手に持っていた離婚届を彼らに返した。その離婚届をすぐさま手に取った蛍が、親権に関する記載の部分を確認すると、やはり黎の名前が奈緒の欄ではなく、充の欄に書かれていた。一瞬にして、蛍の怒りが頂点まで達する。蛍は離婚届と先ほど確認して自分が持っていた離婚協議書を、充に向かって激しく投げつけた。「あんたって本当最低!やけにあっさり奈緒との離婚に応じると思ったら、こういうことだったのね!」蛍は怒りで胸を上下させたまま、奈緒に視線を向ける。「奈緒、離婚届は書き直し!さっきの離婚届は出しちゃ駄目だから!離婚届の親権の欄、ちゃんと確認した?黎ちゃんの名前、奈緒の欄じゃなくて青木社長の欄に書かれてたんだよ!もしあのまま離婚届が受理されてたら、親権はこの男に取られてたの!実は、さっき離婚協議書の写真を撮って奏介さんに送っておいたんだけど、そうしたら親権についての内容に問題があるから、離婚届もしっかり確認したほうがいいって言われて。あと一歩遅かったら、黎ちゃんを失うところだったんだからね!」蛍の言葉を聞き、奈緒は目の前が真っ暗になるほどの衝撃を受けた。蛍に罵声を浴びせられた充は、戸惑いながらも、床に投げつけられた離婚届と離婚協議書の内容を確認していた。昨夜、離婚協議書を見るだけで胸が痛んだため、自分は内容も確認せずに署名をした。それに、離婚届の親権の欄だって、奈緒が記入済みではなかったのか?奈緒にしても同じで、充の欄に黎の名前が書かれていることに、全く気が付かなかった。奈緒は怒りのままに、手を振り上げて充の頬を叩いた。「充!まさか、あなたがここまで卑怯だったなんて!危うく騙されるところだった。昔のあなたは、少なくともこんな卑劣なことはしなかったのに……どうして?美紀さんと一緒にいるうちに、考え方まで同じようになってっちゃったの?」奈緒は怒りのあまり、思わず充に罵声を浴びせてしまった。あと少しで騙されるところだった。何も疑わず離婚協議
Read more

第252話

だが、胡桃はどうしてそんなことを?青木家の人々は誰一人として黎の誕生を喜ばず、本気で可愛がってくれる者もいなかった。それなのに、なぜ離婚届や離婚協議書に細工までして、黎の親権を充のものにしようとしているのだ?まあ、今はそんなことを考えている場合ではない。気づけただけでも良しとしよう。充が電話をかけようとしていたので、奈緒はその腕を掴んだ。「そんなことはしなくていいから。今は手が加えられる前の離婚協議書を2部用意して、もう一度署名を済ませるのが先でしょ?」そう言いながら、奈緒が時計を見ると、すでに午後4時を過ぎていた。まだ、仕事も残っているし、これ以上このことに時間を費やしたくはない。しかし、幸いにも携帯の中に、電子版の離婚協議書データが入っている。奈緒はすぐに近くのコンビニへ向かい、離婚協議書を印刷した。先ほどの教訓を活かし、今回も奏介に確認してもらい、不備がないことを確認してから、充にペンを渡した。その間、奈緒の態度は終始毅然としていた。一切の迷いも情けも見せず、何があっても離婚するという強い意志だけが伝わってくる。一方の充は、操り人形のように奈緒に従うことしかできなかった。心は絶え間なく血を流し続けているようで、痛みはとうに限界を超え、もはや何も感じられないほど麻痺していた。離婚協議書への署名を終え、離婚届を記入し始めたとき、二人はあることに気がついた。離婚届には、証人欄があり、そこには離婚する夫婦以外の二人の署名が必要だ。しかし、ここには蛍一人しかいない。どうやら日を改めるしかなさそうだ。そう思うと、奈緒は少し肩を落とした。そうして、少し俯くと、もう充を見ようともしなかった。一方、充の視線は終始奈緒から離れなかった。その眼差しには、未練、名残惜しさ、後悔、そして……奈緒の美しさに対する驚愕。自分のもとを去ろうとする奈緒は、以前よりも健康的で、どこか別人のように眩しく、目が離せないほど綺麗に見えたのだ。けれど、この美しい女性も、もうすぐ自分のものではなくなってしまう…………落ち込む奈緒を見て、蛍はすぐに励ました。「なに落ち込んでるのよ!今日はかなりの成果があったじゃない!離婚協議書も離婚届も、もう署名は全部済んでる。あとは証人のサインをもらうだけなんだから、離婚はもう決まった
Read more

第253話

その瞬間、充の鼓動が止まりそうになった。「夢香姉さん、どこにいるんだ?赤ん坊の泣き声が聞こえるけど」夢香がのんびりとした口調で答える。「うん、だって充の娘を抱いてるからね。DNA鑑定しろって言ってるのに、あなたがいつまで経っても子どもを連れてこないんだもん。仕方ないから、私が連れてきちゃった。でも、さっき髪を2本ほど抜いただけなのに、ずっと泣きっぱなし。この子、ほんと手がかかるね」充は耳を疑った。胡桃が起こした騒ぎを収めようとしている最中だというのに、今度は夢香が子どもを連れ去ったというのか?!充の顔から一気に血が引いていく。「なあ、本気で言ってんのか?子どもを連れ去るなんて、一体何を考えてるんだよ!俺の娘だ。いいか、少しでも傷つけてみろ。絶対に許さないからな」だが電話の向こうの夢香は、まるで気にも留めていなかった。「さっき、この子の髪の毛と、あなたの歯ブラシを一緒に鑑定に出してきたところだから、もうすぐ結果も出ると思うよ。そんなに興奮しなくてもいいじゃない。まだ本当にあなたの娘かどうかも分からないんだから。私に怒るのは、親子だと分かってからでも遅くないでしょ?それに、もし違ってたら、許せない相手は奈緒のほう。ふふっ、その時あなたがどうするのか楽しみね」電話の向こうからは、黎の泣き声だけでなく、大音量の音楽やグラスをぶつけ合う音まで聞こえてくる。充は怒りで頭に血が上り、電話口に向かって叫んだ。「姉さん、黎を連れてどこにいるんだ?なんでそんなに騒がしいんだよ?」夢香は悪びれもせず答える。「今、カラオケよ。この子にも音楽を聴かせてあげてるの。情操教育ってやつ。だから落ち着きなさいって言ってるでしょ?赤ちゃんなんて少しくらい泣かせておいても平気なんだから」その一言で、充の堪忍袋の緒が切れた。「ふざけるな!どこの店だ!?今すぐ居場所を送れ!さもないとただじゃ済まさないからな!」しかし、夢香は聞こえなかったかのように、そのまま電話を切った。通話が途切れる直前、向こうからは何人もの笑い声だけが充の耳に響いてきた。充は本気で気が狂いそうだった。3人の姉の中でも、夢香は昔から一番わがままで、気性が荒く、人の言うことを聞かないうえに、数え切れないほどの騒動を起こしてきた。数
Read more

第254話

充が関わっていると、奈緒は確信していた。彼女は怒りに任せて充の前まで歩み寄ると、そのまま思い切り、彼の頬に平手打ちを打ち込んだ。しかし、充は避けようともせず、乾いた音が響いた後、頬にはたちまち真っ赤な指の跡が5本くっきりと浮かび上がる。奈緒は怒鳴った。「充!あなたがやらせたの?!あなたが、黎を攫わせたんでしょ?!」充は何も答えなかった。真相は知っているが、それを口にすることはできない。もし黎が夢香によって連れ去られたと認めてしまえば、それは夢香の犯行を公にするのと同じになる。まだ状況を整理できていない以上、うかつなことは言えない。何より先に事態を確認する必要があるのだ。奈緒はさらに詰め寄る。「何か言いなさいよ!あなたがやったの?それともあなたの家族?どうしてこんなことができるの?深津市でなら、青木家が何をしても許されるとでも思ってるわけ?言っておくけど、黎に傷一つでもつけてみなさい。その時は、青木家の人間全員に必ず償わせるから。絶対に!」奈緒は充を指さしながら、烈火のごとく声を荒らげて糾弾した。それでも充は微動だにせず、まるで感情のない冷たい石像のように、黙って立ち尽くしている。その姿を見た奈緒の疑念は、ますます確信へと変わっていった。充は何かを知っていながら、それを自分に話す気はないらしい。昔から彼は誰よりも家族をかばってきた。黙り込んでしまえば、何を聞いても口を割ることはないだろう。娘が白昼堂々さらわれたというのに、真っ先に案じるべきは黎の安否ではなく、やはり家族を守ること……そう。なるほどね。奈緒は皮肉な笑みを浮かべて頷く。その瞳からは、充に向けられていた最後の情けすら完全に消え去り、彼女は踵を返すと、一度も振り返ることなく立ち去っていった。すっかり取り乱していた蛍も、慌てて奈緒の後を追った。「どうしよう、どうしよう!黎ちゃん、大丈夫かな?どこかへ売り飛ばされたらどうするのよ!もしかして美紀さんの仕業?山奥の村や、海外に売られちゃってないよね?信じられない、本当に怖い……心臓が止まりそう!奈緒、ちょっと待って!歩くの速すぎるんだけど!」「……」蛍は半ばパニックになり、何を言っているのか自分でも分からないほどだった。奈緒が車に乗り込むのを見ると、蛍も慌てて
Read more
PREV
1
...
212223242526
SCAN CODE TO READ ON APP
DMCA.com Protection Status