その声に、その場にいた全員が一斉に振り返った。宴会場の入口に立っていたのは、仕立てのいい黒いスーツに身を包んだ仁哉。その顔はひどく険しく、見るからに機嫌が悪そうだった。大股で会場に入ってくる彼の全身から放たれる威圧感に、周囲の空気まで張り詰めていく。仁哉は冷ややかに美紀を見つめ、嫌悪感を露わにした。「美紀、また君か。今日は奈緒さんの娘の百日祝いなのに、こんなところまで来て何を騒いでるんだ?」仁哉が現れた途端、それまで威勢のよかった美紀の表情が固まった。だが、それもほんの数秒で、仁哉の目に浮かぶ露骨な嫌悪に気づくと、美紀はすぐに歪んだ笑みを浮かべる。「あら、あなたもここにいたのね。ずいぶん彼女たちに肩入れしてるじゃない。そんなにビシッと決めてどうしたの?知らない人が見たら、あなたがあの子の父親だと勘違いしそうね」美紀は口元を押さえ、わざとらしく甲高い笑い声を上げた。仁哉の顔がさらに険しくなり、彼の握り締めた拳の関節が白く浮き上がっていた。その時、弘樹も会場から出てきて、状況を察すると、すぐさま二人の間に割って入る。「美紀、いい加減なことを言うな。俺も仁哉も、自分から手伝いに来ただけだ。お前が考えてるような関係じゃない」弘樹の姿を見た瞬間、美紀の胸に激しい嫉妬がこみ上げた。美紀は幼い頃から、ずっと充の後ろをついて回っていたし、仁哉、弘樹、拓也は充の幼馴染。もともと淡泊な性格だった仁哉はともかく、弘樹と拓也は昔から美紀を妹のように可愛がり、多少のわがままなら何でも聞いてくれた。それなのに今では、美紀が招待状を送ったにも関わらず、都合が悪いと参加を断り、あろうことか二人ともが奈緒の娘の百日祝いの手伝いをしている。これでは、自分とはもう関わりたくない――そう言われているようなものだ。そう思うと美紀の嫉妬の炎はさらに激しくなり、思わず皮肉混じりに嘲笑した。「本当のところなんて、本人たちにしか分からないでしょ?弘樹、あなたも余計なことに首を突っ込まないほうがいいわよ。いいように利用されてるとも知らずに、最後までこき使われたって知らないからね」弘樹は呆れて言葉も出なかった。仁哉もとうとう我慢の限界に達し、冷たく言い放つ。「言いたいことはそれだけか?気が済んだなら、もう出ていってくれ。客を迎え
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