All Chapters of RMTサバイバー~今日の宿代を稼ぐ俺と、人助けで戦う使い魔~: Chapter 21 - Chapter 30

74 Chapters

第21話 現実

「非現実的ね、その稼ぎ方は」  ベルフラウがツンとした声で言い放った。フレアのスカートを揺らしてこちらへと近づいてくる。二人のそばで立ち止まった。 「や、やっぱりそうですよね」  ウミが小声で同意する。 トウマは怪訝な顔つきで疑問を呈した。 「非現実的とは、どういう事だ?」「そのままの意味よ。バフを他人に売るだなんて、お小遣い稼ぎにしかならないわ。そんなことをするよりも、クエストを評価Sでクリアした方が、よっぽどお金になる」  ベルフラウは左手の甲を腰に当てて右手の人差し指を立てる。 トウマが尋ねた。 「評価S?」「ふふん、そうよ」  ベルフラウがむふふんと笑みをこぼす。かなり偉そうな態度だ。 「どうすれば良いか、教えてくれるか?」「簡単よ。魅せ評価でSSを取るの」「SS?」「そう。魅せ評価は、そのまま視聴者の投げ銭にも直結するのよ」「……ふむ」「詳しくは後で実演するわ。けれどその前に」  ベルフラウが人差し指を下ろす。少し悲しそう表情で言葉を紡いだ。 「ごめんね。この間は、助けてあげられなくって」  ヒイラギに金を強奪された件である。 トウマは首を小刻みに振った。 「いや、弱い俺たちが悪い」「そうよね。弱い貴方たちが悪いの。だから、強くなった方がいいわ」  ベルフラウはまたふふんと笑う。 「そのためにも、ヴァルを現実的に稼ぐために行動をチェンジするべきね」「うんうん、そうですよね」  ウミがしきりに頷いている。 金髪のボブカットを揺らして、ベルフラウはどうしてか頬を染めた。歯切れ悪くつぶやく。 「しばらくあたしが貴方たちの面倒を見てあげるわ。あ、言っておくけど、これは貴方たちがお姫様ドレスを売ってくれたことに対する恩返しに過ぎないんだからねっ。好きだとか、そういうんじゃないんだから。変な勘違いはしないでよね!」  ……そりゃあ好きでは無いだろうな。 ベルフラウとの関係は知り合いという程度である。 トウマはツッコミを入れたかったが、言葉を飲み込む。 ウミが近づき、ベルフラウの手のひらを両手で取った。 「面倒を見て欲しいですぅ」「おい、ウミ」  トウマは身じろぎして目にしわを寄せる。 ベルフラウが満足そうにうふふんと吐息をついた。ウミの髪を優しく撫でる。 「ふふん、貴方、あたしの弟子にしてあげ
last updateLast Updated : 2026-04-27
Read more

第22話 容姿も武器

 村の服屋。 そこは宿屋の隣の直方体の建物だった。セルティラン衣服店と書かれた看板がでかでかと出ている。ベルフラウは顔だけ振り返り、口の端に笑みをたたえる。ふふんと笑った。やはり偉そうな態度だ。「うふふん、ここよ」「はいですぅ!」 ウミが元気に右手を上げた。扉を開けて三人で入室する。 こぢんまりとした木造の室内。さぞかし多くの服が飾られているのだろうと思ったのだが、一つも無い。だけど店の奥では何かの作業の音が響いていた。 ベルフラウは迷わずカウンターのそばへと歩み寄る。女性店員に話しかけた。「ふふん、こんにちは」「はい、ここは衣服店です。服の作成をご希望ですか?」「そうよ。カタログはある?」「こちらにございます」 女性店員が受付台の下から黒いファイルを取り出した。カウンターに置く。「借りるわね」「ええ、どうぞ」 カタログを持って、ベルフラウが振り返る。ウミに近寄ってファイルを開いた。「ウミ、服を選びなさい」「可愛いのが良いですぅ」「そうね。とりあえず座りましょうか」 壁際に移動して、そこにあった長椅子に二人が座った。レディースのページを開き、物色をしている。トウマは突っ立ったまま、手持ち無沙汰な気分だった。 二人のかしましい声が響く。「これ、可愛くない?」「これも可愛いですぅ」「あ、これも可愛いわ」「本当ですぅ。はふぅ」 可愛い、という言葉が連発されている。トウマはやれやれと首を振った。これだから女は……。 それからも女性二人はカタログを眺め続ける。 ……長いな。「これ、ウミに似合うんじゃない?」「それはちょっと、派手ですぅ」「派手なぐらいがいいのよ。その方が魅せ評価が上がるわ」「そうなんですか!?」「そう! 見せ方も戦闘の一部よ。強いだけじゃダメ、容姿も武器なの」「うー、じゃあ、これにしますです!」 覗き込むと 二人が見ているのは襟から胸にかけて大きなリボンのついたピンク色のワンピースだった。スカートの丈は短い。可愛い、だけど激しく動いた場合パンツが見えるんじゃないか? それも魅せなのだろか?「ウミ、決まりね」「頑張りますです!」「むふふん! それじゃあ次はトウマさん」 ベルフラウが手招きする。やっと彼の番が回ってきたようだ。トウマは近づいてしゃがみ込む。 ベルフラウがメンズのページをは
last updateLast Updated : 2026-04-28
Read more

第23話 魅せという武器

東の丘に来ていた。 坂を上がったところにあるなだらかな丘陵地帯。背の低い雑草が群生しており、見通しが良い。心が晴れやかになるような景色だ。さんさんと照らす太陽の日ざしの下。 そこには体毛がもさもさとしたノーファンシープが群れていた。雑草を食んでおり、のそのそと動き回っている。ノーファンシープの見た目は立派な角をした羊だ。体格が良く、あれに突進されたら痛そうである。 ドンと音がして、頭上に文字が表示される。 ――クエスト、服の素材集め トウマたち三人はパーティを組んでいた。 先頭を歩くベルフラウが立ち止まって振り返る。ふふんと息をついた。 「むふふん、弟子たちよ。いいかしら? 今からあたしが狩りのお手本を見せてあげるから、ここで見ていなさい」 「師匠、お願いしますぅ」 ウミがモフモフとした尻尾をぶんぶんと揺らして愛らしい笑みをこぼす。両手のひらを組み合わせておりお願いのポーズだ。 トウマは右手を掲げた。 「おい、ちょっと待て」 「何よ」 「俺たちは見ているだけなのか?」 「そうよ。仕事は見て覚えろって言うでしょ? 正座して眺めていなさい」 「はぁーい」 ウミが地面にちょこんと正座をする。 トウマは苦笑しつつ首を振った。 「いや、俺は正座しないけどな」 「まあ見ていなさいって、始めるわよ」 ベルフラウが右手を掲げて唱える。 「メイクアップ」 ベルフラウの手のひらに丸い手鏡が現われた。鏡は虹色の光を放ち、彼女の顔がさらに綺麗になる。化粧のノリが上昇したようだ。手鏡はすぐに消える。 ……何だ今のスキルは? 「さあ、狩りの始まりよ!」 :ベルさん、見にきました。 :ベルさぁぁん、貴方は今日もお美しい! :ウミちゃん、どうして正座してるの? 空中にコメントの弾幕が流れる。ベルフラウのことを好きな視聴者が次々とメッセージを送っていた。トウマたちに対するものは少なめである。 パーティを組むと配信が共有されるようだ。 ……信者たちなのか? 金髪のボブカットを揺らして、ベルフラウがベルトからダガーを両手に抜き、草原を駆け抜ける。移動速度が格段に上がっていた。メイクアップのバフ効果なのかもしれない。 「うふふん。さあさあ行くわよ。哀れな羊ちゃんたち」 ベルフラウが一頭のノー
last updateLast Updated : 2026-04-29
Read more

第24話 最適解

 なだらかな丘にモンスターの大軍が溢れる。ゴブリン、ゴブリンファイター、オーク、スイーパークロウ、ノーファンシープ。そして奥には、黒い体毛をした一際デカい羊モンスターが一頭いた。名前はブラックメリー、あれは中ボスだ。「むふふん。さあさあ、お祭りと行こうかしら。メイクアップ」 ベルフラウがふふんと余裕の笑みを浮かべて唱える。右手のひらに生まれる丸い手鏡。虹色の輝きが彼女の化粧のノリを上昇させた。「行くわ!」「ちょっと待て」 トウマは手を伸ばすが届かない。ベルフラウは一直線にブラックメリーへと駆けていく。 トウマは舌打ちをした。突然の急場である。せめてベルフラウには、コミュニケーションを取って欲しかった。「助けてくれえぇぇええ!」 NPCの男性がこちらへと逃げてくる。ウミが青い剣を両手に持ち、守るように立ちはだかった。「貴方、私の後ろへ。フレイムウェポン」 ウミの頭上に赤い剣のマークが灯る。 トウマは状況を悲観した。大勢の敵に袋だたきにされれば、レベルの低いトウマとウミの死は必至だ。「ウミ! 男性と一緒に逃げろ」「ににに、逃げろって言われても、敵がいっぱい来ています!」「馬鹿、死ぬぞ!」「そそそ、そんなこと言われても! あわわ、どうしたらっ」 ウミは動揺している。行動の判断がつかないようだ。眼前には迫り来るモンスターの群れ。くそったれが。トウマは左手を顔に当てた。 祈るように唱える。 頼む。「フィールドハック」 Hilly area. An earthquake occurs. Here we go!「Year!」 瞬間、大地が縦に揺れた。 モンスターたちが浮き上がり、地面に叩きつけられて転倒する。ベルフラウとウミ、NPCの男性とトウマも同様だった。 丘に静寂が広がる。しかしそれは一瞬のことで、モンスターたちは立ち上がろうと身をよじる。しかしその一瞬で十分だった。ウミがはっとしたような顔で立ち上がり、指示を求める。冷静を取り戻したようだ。「ご主人様、どうすれば?」「ウミ! 俺が男性を連れて逃げる。お前も着いて来い!」「分かりました!」「よし」 トウマも地面に立って走り出す。尻餅をついているNPCの手を取った。「あんた、走れるか?」「え、ええっと、今の地震は?」「気にするな! 行くぞ!」
last updateLast Updated : 2026-04-30
Read more

第25話 昼食と服屋、振り向かない背中

 昼食のため、一度ログアウトをしていた。 狭苦しいマットルーム。空調の効いた室内であり、他人の気配だけは濃厚な空間。 トウマは味の選べるログネストラーメンを食べていた。今日は塩味である。安っぽい味わいだが、さっぱりとしていて割と美味しい。割り箸でずるずると麺をすすっていた。 ふと左側の部屋で女性の声がする。「やっぱりトウマってあの人、ユウマなのかしら?」 ドキッとした。 左側の薄い壁を凝視する。 今の言葉はどういう意味だ?(まさか?) 真帆の声だと思った。セリフの内容からして、おそらく間違い無いだろう。 だけど、どうして彼女がここにいる? 田舎から出て来たのだろか。 何のために?(確かめなければ) ラーメンを食べ終える。トウマは隣人がルームから出るタイミングを見計らった。やがて、隣室で靴を履く音がする。トウマも立ち上がり、食器のオボンを手に持った。靴を履き、急いで女性の後を追いかける。 女性の背中がトイレへと進んでいた。黒髪のボブカット。女性にしては少し高めの身長。その体のラインには見覚えがあった。(おいマジか) やはり真帆だ。 トウマは勇気を振り絞った。右手を掲げる。「おい、あんた!」 女性がぎくっとして足を止めかける。しかし振り返らずに、化粧室へと足早に入って行った。がっかりとして、トウマは右手を下ろす。(どうしてだ?) 食器のオボンを返却棚へと出した。それからしばらく、トイレの入り口付近の通路でトウマは待っていた。だけど女性が出てくる様子はない。(長いな) トイレの前で長く待っているのは失礼である。トウマは顔を落とし、あごを小刻みに振った。自分のルームへと戻ることにする。また機会はある。そう思った。 ベルフラウとは一時間後にログインをする約束をしていた。トウマはVR機器に会員カードを差し込み、デバイスゴーグルを顔にかけてマットに寝そべる。スタートボタンを押した。 ノーファンの村の服屋の前に降り立つ。隣にはウミがいて、モフモフとした尻尾をパタパタと揺らしている。トウマのログインを喜んでいるらしい。猫のように可愛いやつだ。「お帰りなさい、ご主人様」「おう、ウミ。待ったか?」「待つも何も、私も消えていましたよ」「……そうだったな」 何気ない会話をウミと交わす。彼女の様子がはっきりと明るい。腰の後ろに両手
last updateLast Updated : 2026-05-01
Read more

第26話 それぞれの正しさ

 ――クエスト、千羽鶴を折る 空中に表示された文字を見て、トウマは首をかしげた。 千羽鶴を折るって、それはどのくらいの時間がかかるんだ? NPCの男性、タオジが深く頭を下げる。「すまねえ、あんたたち。明日は村の戦士たちが集まって山へ邪蛇狩りに出かけるんだがよ。成功を祈願して、千羽鶴を折りてえんだ。頼む、手伝ってくれねえが?」 ベルフラウはちょっと困った顔をして両手を胸に組んだ。「うーん」とつぶやいて、それから尋ねる。「報酬によるわね。千羽鶴を折るだなんて、凄い時間がかかると思うし。貴方、あたしたちにいくら払えるのかしら?」「報酬は、んっと、一人500ヴァルでいいべか?」 ベルフラウが顔をひきつらせる。「それじゃあ足りないわ。せめて一人につき一万五千ヴァルなら、交渉の余地はあるけれど」「い、いちまんごせん!? ひとりにつき? そ、そんな金、どこにもねえよ」「……どうしたものかしら」 ベルフラウがこちらを振り返る。トウマとウミは顔を見合わせた。(このクエストは、やりたくない) トウマは首を振る。 完全に非効率である。鶴一つ折るのに、急いだって二分はかかる。タオジを含めた4人で折ったとしても、千羽を折るとなると、ざっと計算して九時間だ。そして報酬は一人につき500ヴァル。このクエストに取りかかればトウマが飢える。 トウマは仏頂面をしてNOを示す。「ダメだ!」「どうしてですか? トウマ。タオジさんが困っていますぅ。助けましょう」 ウミが両手をグーに握って掲げる。毎度のことながら自己犠牲精神が強い。ウミならそう言うと思った。だからトウマははっきりと断る。「ダメだウミ。このクエストをやったら俺が詰む」「詰む?」「稼げなければ宿代が無い」「あうぅぅ、じゃ、じゃあ、どうしたら良いですか?」 ウミが悲しそうな顔でベルフラウに視線を向ける。 ベルフラウは人差し指を頬に当てて目をつむり、何か考えている様子だ。やがて目を開き、二度頷く。「このクエスト、やりましょう!」「師匠! さすがですぅ」「っておい!」 トウマはぎょっとして右手を掲げた。 タオジは後ろ頭を右手でさすって、嬉しそうな顔をする。「すまねえなぁ。じゃあ、おらの家で鶴を折ってもらうからさ。着いて来てくれるか?」「分かったわ」「行きますですぅ」「ちょ、ちょ、ちょ
last updateLast Updated : 2026-05-02
Read more

第27話 遠回りの価値

 結局、トウマはウミたちの元へ戻ることにした。 クエスト情報を知ったところで、ウミがいなければ高評価を取ることは難しい。クリアできるかすら危うい。 いま、タオジの家に向かって歩いている。 道中、目に映るのは、やはりというか何というか、顔がどんよりと青ざめたプレイヤーたちである。腹を両手で押さえてうずくまっている女性。剣を抜き放ち警戒を露わにしている剣士。下着姿で、恥ずかしそうに片隅を歩いている男性。あれは死んで服を落としたのだろうか?(俺も大差無いな) 破綻に片足を突っ込んでいる状況である。 ……切ない。 ログネストにはあと一晩しか泊まれない。泊まり続けるには稼がなければいけない。今夜は徹夜になることを覚悟して、トウマは暗澹たる吐息をついた。 タオジの家につく。大風が吹けば屋根が吹っ飛んでしまいそうなボロ屋だ。窓は無い。 ノックをして扉を開ける。すぐそこに部屋があり、ベルフラウとウミとタオジが折り紙で鶴を折っていた。赤、緑、黄色、様々な色の鶴が背の低いテーブルに並んでいる。トウマの顔を見て、ウミがぱあっと顔を輝かせる。「ご主人様、戻って来たんですね!」「仕方無いからな」 扉を閉めて中に入る。背の低いテーブルの上にはランタンの灯りがあった。窓が無いので太陽の光が部屋に入って来ない。だからランタンを点けているようである。 ベルフラウが早口につぶやいた。「トウマさん、いくら無いの?」「何の話だ?」「ヴァル!」「宿代の話か?」 トウマは玄関で靴を脱ぎ、木造の床に上がる。ウミの対面に腰を下ろし、折り紙を一枚手に取った。鶴を折り始める。 ベルフラウは照れたように顔を染める。ツンと顔をすました。「足りないなら、貸してあげないこともないわ」「本当か?」「……勘違いしないでよね」 ベルフラウは高速で折り紙を折っている。両手の動きは速く、まるでマジックを見ているかのようだ。「貴方が可哀想だからお金を貸してあげるのよ。性格がタイプだからとか、そういうんじゃないんだからね! ……ちょっと可愛いけど」 ベルフラウの語尾はぼそっとした小さな声である。 トウマは聞き返す。「最後何て言った?」「何でも無いわ!」 タオジは丁寧に鶴を折りながら頭を下げる。「トウマさんも協力してくれるのか、すまねえな」「いや、いい」 それから四人で鶴を折
last updateLast Updated : 2026-05-03
Read more

第28話 想定外の恩恵

 タオジの家。 ランタンの灯りだけが部屋を照らしていた。埃っぽい室内。背の低い木製テーブルの上には完成品の千羽鶴が横たわっている。 ステータス画面を出し、トウマは初心者の包丁をアイテム欄にしまう。するとステータス画面の一点が光り、新たな項目が現われた。 料理。(こんなことってあるのか?) 価値の薄いように見えたクエストが、驚くべき恩恵をもたらしていた。 人生は、効率じゃないのか? 価値観が崩れ去るような衝撃を覚える。 トウマは静かに驚きつつ、料理の項目をタップしてみる。レシピが一つだけ表示されていた。カレーライス。調理するためには材料がいるらしい。ジャガイモ、ニンジン、タマネギ、肉、香辛料である。 ベルフラウが興奮したように両手をグーにして掲げる。「すごいわっ。こんなところに料理機能を解放させるクエストがあったのね。やっぱりあたしの勘は間違って無かった!」「料理って、そんなに凄いんですか?」 ウミの疑問そうな瞳。 ベルフラウはその頭にぽんと手を置く。「ウミ、これは凄いわ。料理機能を解放させている人なんて、あたし会った事ないもの。だけど千羽鶴を折らなきゃいけないなんて、そりゃあ誰もやろうとしない訳だわ」 トウマは右手を硬く握りしめた。 もしもカレーライスを他人に譲渡できるとしたら? 売りものになるんじゃないか? トウマの脳裏に金色の妄想が吹き荒れて、鼻息が荒くなる。 これは、勝てる!「これは金の匂いだ!」「もぉ~、ご主人様はお金のことしか考えてないですぅ」「がめついわね」 ウミとベルフラウがため息をこぼす。しかしそれらの顔には仕方無いというふうな微笑が浮かんでいた。 その後、三人はタオジにお礼を言って建物を出る。外はもう夜だった。七時を回っている。 ベルフラウが提案した。「とりあえず、せっかくだから料理を作ってみましょうか。この村の食材屋へ行きましょう」「師匠、カレーライスって、美味しいんですか?」 ウミがきょとんと首をかしげる。食べたことが無いようだ。 ベルフラウは人差し指を立てた。ふふんと笑う。「うふふん、びっくりするほど美味しいわ」「わぁっ、食べてみたいですぅ」「行きましょう」「はい!」 二人が土の地面を歩きだす。トウマはその背中を追いかけて歩いた。ステータス画面の料理機能について詳しく調べる
last updateLast Updated : 2026-05-04
Read more

第29話 金になる味

:何これ、ダンスゲームあるの?:初めて見る機能だな!:そ、その機能、どうやって入手するんですか? 空中に流れているコメントには疑問の声が多い。タオジの家にはドローンが入れなかったせいで、視聴者は入手方法を見ることができなかったようだ。 ――情報ですねえ、命より高いことがありやすぜ。お客さぁん。 道具屋の店員の言葉が思い出された。 この情報、 誰にも言ってはいけない。 立体映像のお手本ダンスを見た後、ベルフラウは納得したようにコクコクと頷いた。トウマとウミに視線を配る。「簡単そうね」「いやいや! 今のを踊るんですか? できないですぅ」 ウミが両手のひらを振っている。自信が無いようだ。 トウマの方はと言うと、(これは、お手本を何度も見る必要があるな。練習も必要だ) しかし15秒という短時間である。 やってできない事は無いと思った。 ベルフラウがお姫様ドレスを揺らして宣言する。「あたし、やってみる!」「師匠、さすがですぅ」「行くわ!」 ベルフラウが調理開始をタップする。軽やかな音楽がまた流れ出した。 ベルフラウは両手両足を激しく動かし、腰を左右に大きく振ってダンスする。金髪のボブカットがサラサラと揺れた。スマイルを浮かべ、くるっと横回転する。最後にポーズを決める。思わず見蕩れるようなダンスだった。 ベルフラウ【調理評価S】『火星に轟く未知の味カレーライス』を獲得 ベルフラウは両手の甲を腰に当ててふふんと笑った。「むふふん、評価Sだわ。やっぱり簡単じゃない」「師匠はやっぱりすごいですぅ」「さすがだな」 トウマとウミは自然と拍手した。戦闘の時もそうだったが、ベルフラウのリズム感は神がかっている。 ウミが右手を上げた。「私も、私もやってみます!」「ウミ、踊りなさい!」「踊るですぅ」 ウミもステータス画面を開き、調理を開始する。再び音楽が流れた。「は、はひっ、む、難しいですぅ」 ウミは一生懸命踊るのだが、動きがめちゃくちゃである。表情に笑顔はない。「きゃあっ!」 最後の決めポーズは決まらず、転んで尻餅をつく有様だ。 ウミ【調理評価E】『焦げついた残飯』を獲得 ウミが立ち上がり、両目に涙を浮かべた。「カレーライスが焦げちゃったですぅ」「ウミはもっと練習してから挑戦した方がいいわね」 ベルフラ
last updateLast Updated : 2026-05-05
Read more

第30話 効率の敗北

 道具屋の前の地面には多くの人が集まっていた。 午後八時を過ぎたVALORIUMのゲーム内にはプレイヤーが多い。今がゴールデンタイムである。会社や学校を終えた人々がログインして来ていた。 月明かりだけが照らす土の地面の上、トウマたちはカレーライスの販売にプラスして火剣屋をやっていた。 人の声とヴァルのやり取りが入り混じり、道具屋の前は即席の市場と化している。店員をやっているウミの前には長蛇の列が出来ていた。 先頭の客がウミに声をかける。「フレイムウェポンとカレーライスが欲しいんだけど」「はい。フレイムウェポンは100ヴァル。カレーライスはSランクとBランクのものがございますが、どちらになさいますか?」 ウミの両手には二枚のカードが握られている。片方はベルフラウが作ったSランクのカレーライスカード。もう片方はトウマが作ったBランクだ。「Sランクっていくら?」「はい。Sランクは2000ヴァルになります」「それ、ちょっと高くない? Bランクはいくらなの?」「Bランクは900ヴァルになりますぅ」「900ヴァルか。カレーライスの効果と継続時間を詳しく教えてよ」「それはですね!」 ウミが説明を述べる。客は腕組みをして考え、やがて納得したようで注文した。ステータス画面を出し、ヴァルの革袋を取り出す。「それじゃあ、Bランクのカレーライスと、火剣をお願い。合わせて1000ヴァルだね」「はい。それじゃあまず、フレイムウェポン!」 ウミがバフスキルを唱える。客の頭上に赤い剣のマークが灯った。そしてBランクのカレーライスカードを差し出す。ヴァルの革袋と引き換えに渡した。カレーライスの原価は150ヴァルなので、フレイムウェポンと合わせて850ヴァルの儲けだった。「ありがとう。このカレーライス、食ってみる!」「はい! またのお越しをお待ちしております」 客が去って行く。次に並んでいた客が前に出る。 ちなみに、先ほど三人はカレーライスを試しに食べてみた。ウミはあまりの美味しさにびっくりしたようで、何度も「美味しいですぅ」とつぶやいたのだった。ウミが食べたのはベルフラウの作ったSランクのものである。トウマが食べたBランクのカレーライスはかなり辛みがあったが、スパイスが利いていてこれも大変に美味い。 話は戻る。 今、Bランクのカレーライスは50皿以上売
last updateLast Updated : 2026-05-06
Read more
PREV
1234568
SCAN CODE TO READ ON APP
DMCA.com Protection Status