All Chapters of RMTサバイバー~今日の宿代を稼ぐ俺と、人助けで戦う使い魔~: Chapter 11 - Chapter 20

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第11話 守るための力

 ――ベラミー。 植物のツルが絡み合う人型のモンスターだった。顔の部分には赤い花弁が大きく咲いている。目は無い。紫色の唇がグロテスクに揺れた。「ぎょほほほほぅっ!」 口から黄色い花粉を放出している。死ぬほど臭いがデバフ効果は無さそうだ。 ベラミーは真っ直ぐにこちらへと泉を歩いてくる。水面がざわざわと揺れていた。小さな波が地面へと押し寄せる。 可愛いは正義勢:ウミちゃん子供を連れて逃げて! 俺最強LV99:初心者の村の森にこんなボスいたか? トウマはすぐに指示した。「ウミ、ドーラ君を抱えて下がれ!」「分かりましたっ!」「な、何だよこいつ!」 ドーラはベラミーを指さしている。ウミがドーラの胸を抱き上げて、後ろの茂みへと後退した。 敵が右手を振り上げて薙ぐ。その長い手がムチのようにしなる。 トウマは杖で防御した。バチンと音がして、水しぶきが体にかかる。「くっ」「ぎょふふふぅ」 気味の悪い笑い声だった。ベラミーは今度両手を振り上げる。二本の長い手が高速で伸びた。 トウマは腰を低くして後ろに下がる。背中に一発もらってしまい、HPが激しく減少する。「ちっ」 とりあえず、敵を陸に上げないとウミの攻撃が届かない。 泉からだいぶ距離を取ったところでトウマは振り返る。 ベラミーが追いかけて来ており、水面をざぶんざぶんと波立たせて地面に上がったところだった。 すぐそばにウミが駆けつける。「ご主人様!」「ウミ、ドーラ君は?」「避難させました」「ナイスだ。あのボスをやるぞ!」「どうやって倒しますか?」「俺が奴をひきつける。ウミはバックアタックだ」「それ、大丈夫ですか?」「いいからやるぞ!」 トウマが走り出す。ベラミーのわきをすり抜けて奥へ行こうとした。「ぎょふふううっ!」 敵が両手を振るう。トウマの体がバチンバチンと叩かれた。HPが大きく削れる。しかし移動には成功した。 距離を取ったところでトウマは振り向いた。ウミと挟み撃ちの構図になる。 ベラミーがこちらへと歩いてくる。その歩行速度は遅い。これならやれる。 トウマは杖を振って魔法弾を飛ばしつつ呼んだ。「ウミ!」「わ、分かりました!」 フレイムウェポンのバフはお互いにすでにかかっている。ウミが両手に剣を構えてベラミーの背中をメッタ斬りにする。敵はくぐもった悲鳴を
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第12話 優しさの値段

 来た道を引き返し、やがて森を出る。 村へ戻る途中、雑魚モンスターがまた出た。特に苦戦することなくウミが撃破する。そして西入口から村へと入った。そこで立ち止まる。「ここまででいいよ」 ドーラの両手にはセティアの花が握られている。可憐な一輪がそよ風に揺れた。 ウミがにっこりと微笑んだ。かがんで、両手を膝に当てる。「分かった。良かったね、ドーラ君」「うん! ありがとう、お姉ちゃんたち」「いいのいいの」 ウミが顔の前で手を振る。 ドーラは思いついたように「そうだ」とつぶやいた。ズボンのポケットに手を入れる。一枚のカードを取り出してウミに差し出した。「お姉ちゃん、これやるよ!」 ウミはきょとんとしたような表情である。「何これ、カード?」「この間、道端で拾ったんだ」「もらってもいいの?」「いいっていいって。お姉ちゃんたちが助けてくれたからセティアの花を採れたんだ。これはお返しだいっ」「ありがとう!」 ウミは頬を緩めて笑みをこぼす。 まさか?  トウマは目を瞠った。 カードにはお姫様ドレスのような絵が描かれてある。 なんだろう、あれは? どんなアイテムかは分からないが、レアアイテムに違いない。道具屋の店員が教えてくれた情報、PK(プレイヤーキル)の遺品である。 ドーラは最後に挨拶をした。右手の指で鼻の下をこする。「じゃあね。お姉ちゃん。俺、妹の病院へ行くよ」「うん! バイバイ、ドーラ君」「またね!」 二人が手を振り合っている。そしてドーラは駆け足で行ってしまった。小さな背中が遠ざかっていく。 ――突発クエストクリア トウマ 効率D 技術C 意義E→[少年の気持ちが分からない] 魅せB→[大人の男として森へ同行]【総合評価C】【+2520ヴァル】 ウミ 効率D 技術C→[初心者としては悪くない戦闘] 意義S→[少年の気持ちを理解。人助け] 魅せB【総合評価B】【+5020ヴァル】「やりました! 総合評価Bです!」 ウミが両手を握り合わせて飛び跳ねている。とびきりの笑顔。モフモフとした尻尾がぶんぶんと揺れていた。 まるで報酬が十分だと言わんばかりに。 トウマは眉をひそめた。 ……おかしい、多すぎる。 効率は良くなかった。 ボス戦では死にかけた。 それなのに、ヴァルだけが跳ねて
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第13話 目立つという代償

 ヤマネコ食堂。 直方体の木造の室内。四角いテーブルがいくつも並んでいる。現実でいう古めかしい定食屋と言った感じだ。 ウミと共に店に入り、窓際の席に対面で腰掛けた。他に客はいない。スキンカードを木製テーブルの上に置いた。金色に縁取られたカードである。 立てかけてあったメニューを開き、二人は注文する品を選んだ。 女将さんがやってきて水コップを二つ並べる。そしてびっくりしたような顔で右手を口元に掲げた。「いらっしゃいませ。あら、プレイヤーさん、その高級カード、すごいレアアイテムだねえ。どこで取ったんだい?」「ドーラ君からもらったんですよ」 ウミが機嫌良く長い茶髪を揺らす。モフモフとした尻尾がパタパタと揺れている。口からはチャーミングな八重歯が覗いた。「ドーラ君って、ダニスンさんの家の男の子だねえ。ふーん、どこかで拾ったのかしら? ところでお客さん、ご注文は?」「日替わり定食で頼む」「山盛りポテトとチョコレートパフェでお願いしまぁす」 トウマは首をかしげた。「おい」「どうしました?」「ポテトとパフェで良いのか?」「食べたいですぅ」「……そうか」 女将さんは伝票にメモを取り、「それじゃあ、少し待っていておくれよ」 背中を向けてカウンターの方へと去って行く。 トウマはステータス画面を開き、自分の満腹度を確認した。いま60%より少し低い。下がりすぎるとHPやMPの自然回復が遅くなる。「トウマ、本当に服を売っちゃうんですか?」「当然だ」「あう~。ちょっと残念ですぅ」「ウミ、そう嘆くな」「嘆きます」「泣くな」「泣いちゃいます」「泣きたい時こそ笑え」「意味が分からないですぅ」 とは言いつつも笑みをこぼすウミ。「これ、あの子を助けたから、もらえたんですよね?」「そんなこと言ったって、金が無ければ俺が詰む」「これ……売っちゃうんですか?」「仕方ないからな」 ステータス画面で調べていた。ショップの欄に取引所は無い。あるのはヴァルで買えるパッとしないアイテムが数種類だけである。 つまり、プレイヤー同士で取引をするためには直接会う必要があるのだった。「よし、ワールドの商売チャットで買ってくれる人を探すぞ」「もう~、仕方無いですぅ。服はあきらめました」 ちなみにウミの今の服装はピンクのロングシャツに灰色のスカートである
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第14話 守れなかった約束

 遠い過去。 その日は田舎の夏祭りだった。幼馴染みの女の子、中村真帆と一緒に、ユウマは屋台を見て回っていた。二人とも小学生である。 辺りは行き交う人々でごった返している。お祭りの匂いがしていた。出店からこぼれるオレンジ色の照明。らっしゃいらっしゃいという威勢の良い声が響いている。二人はオモチャ屋の前で立ち止まる。 真帆がガラスの指輪を手に取った。気の強そうな顔立ちに笑みを浮かべている。「これ、綺麗!」「本当だ。買ってやるよ」「いいの?」「お前に似合うと思って」「あ、ありがとう!」 親からもらった五千円のお小遣いの中から、ユウマは指輪代を支払った。450円。ちょっと高いけれど、真帆にプレゼントしてあげたかった。 それから二人でお好み焼きを一つずつ買って神社へと行った。階段に並んで座る。割り箸を割って食べた。 真帆が声をかける。「ねえ、ユウマ」「どうしたの?」「ユウマは、大人になったら、東京に行っちゃうんだよね?」「うん、大学に行かないといけないからな」 勉強の成績が良かった。特に算数と社会だけはいつも100点である。将来は弁護士になるという夢がユウマにはあった。 真帆の左目の下の泣きぼくろがわずかに揺れる。悲しそうな顔をした。「……ずっとこの町にいなさいよ」「嫌だよ。弁護士になりたいもん」「どうして弁護士になりたいの?」「英雄って映画、知らない?」「知らない」「弁護士が困っている人を助けてあげる映画なんだ。俺もそうなりたい」「ふーん。ユウマは優しいね」「あ、あのさ。真帆ちゃん」「何?」 真帆の左手の薬指にはガラスの指輪が光っている。ほんのりと染まった頬。祭りの賑やかさに当てられて、二人とも気分が上気していた。「これからは俺を友達としてじゃなくて、冬野ユウマとして見てくれよ」「それは、どういうことなの?」 真帆の顔に期待の笑みが灯る。 ユウマは顔が真っ赤だった。心臓の鼓動がうるさくて左手で胸を押さえる。「どういうことって、そういうことだよ」「友達としてじゃなくて、ユウマとして見れば良いの?」「そうだ」「意味がわかんない」 真帆の笑いが弾ける。素敵な横顔。肩口までの艶やかな黒髪。少し広いオデコ。ちょっと気は強いけれど、心優しい女の子である。 ユウマの好みにど真ん中だった。「だーか
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第15話 気づかない再会

 村の噴水広場。 奥のベンチに、トウマとウミは並んで腰掛けていた。辺りには他プレイヤーの姿があり、各々の同伴者と会話をしている。桜の木々が風に揺れて花びらをこぼした。淡い香りが漂ってくるかのようだ。空を見上げると、太陽が西の山へ沈もうとしている。「トウマ、どうしました?」 ウミの声ではっと我に返る。すごく懐かしいことを考えてしまった。どうして今、思い出したのだろう。 苦笑しつつ、トウマは首をゆっくりと振る。「いや、何でも無い」「遠い目をしていましたけど」「気にするな」「そうですか」 ――真帆とはもう、会うことは無いだろうな。 いま、ベルフラウを待っていた。お姫様ドレスのスキンカードを買ってくれる約束をしている。 遠くでは黒いジャケットを着た男がいて、こちらを注意深く睨みつけていた。 監視されている? 考えすぎだろうか? ……取引の際は用心しなければいけない。 ふっと風が吹いて、人々の合間から水色のセーターを着た女性が歩いてきた。金髪のボブカット。腰のベルトには二本のダガーを携えている。どうしてだろう、その人の姿が幼馴染みの少女に一瞬見えた。 真帆? 水色のセーターの女性が近づいてくる。HPMPバーに目をやる。名前はベルフラウ。購入者が来てくれたようだ。だけど真帆では無い。「来たぞ」 トウマはつぶやいて立ち上がる。ウミもベンチから腰を上げた。 対面して顔をつき合わせる。トウマは右手を掲げた。「こんにちは」「こんにちは、貴方がトウマさん?」「ああ。ベルフラウさん、スキンカードを買ってくれる人で合っているか?」「お姫様ドレスのスキンカードよね?」「そうだ。50万ヴァルでいいんだな?」「合ってるわ」「よし、それじゃあ取引をしよう」「ええ」 彼女の言葉のリズムに引っかかりを覚えた。トウマはステータス画面を開きながら、思わずつぶやく。「あんた、どこかで?」 声を発した瞬間、ベルフラウがはっとしたような表情をした。だけどすぐに眉をひそめてそっけない口調でつぶやく。「どうしたの?」「……いや、何でも無い」「ふーん」「悪い。気にするな」 トウマはステータス画面から金色のカードを取り出す。ベルフラウもステータス画面を出し、ヴァルの入った革袋を取り出した。その中を覗くと、金貨がこんもりと入っている。「中身を確認させ
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第16話 奪う者と奪われる者

 大きな公園ほどの面積を持つ広場の片隅だった。空の夕焼けは小さくなり、ゲーム内には夜が始まろうとしている。空気が冷えてきていた。「お前ら、その服と金を寄越せ。さもなくば殺す」 黒のジャケット男、ヒイラギが軋むような低い声で恫喝した。野獣のような出で立ち。身長は190cmと言ったところか。両手には鎖鎌の武器を持っている。 辺りにいた他プレイヤーたちが何事かと視線を向けた。関わり合いになりたくないのだろう、人々は遠ざかって行く。不穏な風が吹いて、ウミのモフモフとした尻尾がゆらりと揺れた。 ベルフラウが前に出た。腰のベルトから二本のダガーを抜き放つ。「貴方、誰?」「俺はヒイラギ、HPバーにそう書いてあるだろう? いいかお前ら。スキンカードと金を寄越せ」「お断りするわ」「ならば殺す。おい、やれ!」「「はっ!」」 ヒイラギの背後に控えていた三人の男たちが囲むように展開する。 ドンと音がした。 ――対人戦クエスト、強奪プレイヤーの排除 トウマは驚いて目の周りにしわを寄せた。(これもクエスト扱いになるのか?) 隣にいるウミがトウマの腕のそでを引く。「ご主人様、逃げましょう」「待て、ウミ」「逃げられると思うなよ」 ヒイラギが両腕を大きく開き、黒い鎖を振りかぶる。分銅をトウマに向けて投擲した。ベルフラウがダガーでそれを叩き落とす。鈍い音が鳴った。 ベルフラウが叫ぶ。「トウマさん、逃げなさい! 貴方のレベルは知らないけれど、初心者が勝てる相手じゃないわ!」「そ、そうか」 ヒイラギの強さは分からない。しかしトウマはまだレベル3である。ヒイラギが高レベルであるのなら、ワンパンで葬りさられる状況もあり得た。「悪い、逃げさせてもらう」「ご主人様、行きましょう!」しかしすでに囲まれている。「おおっと、逃がしませんよお」「金を渡せ!」「雑魚が群れても意味ねえよ。レベル差は絶対だ」 ヒイラギの部下たちは各々の武器を持って臨戦態勢に入っていた。トウマとウミは背中合わせになり、こちらも武器を構える。トウマの額からじっとりとした汗が伝った。 可愛いは正義勢:ウミちゃん、逃げて! 古参ニキ:ヒイラギって、有名な悪質プレイヤーだな。 通りすがりA:セレクターのギルドマスターじゃん? ベルフラウがヒイラギを狙って
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第17話 効率の崩壊

 次に瞳を開くと、そこはログネストのマットルームだった。 顔からデバイスゴーグルをはずす。VR機器は作動したままだ。会員カードは機械から返却されている。どうしてここに戻ってきたのだろう? ウミはどうなったんだ? ベルフラウは? 会員カードを機器に再度押し込み、ゴーグルを顔に慌ててかけ直す。横についているスタートボタンを押した。すると機器から音声が響く。「Death penalty. Login restrictions have been put in place」 トウマはゴーグルを再び取って床に置く。「くそっ、デスペナルティか」(また負けたのか?) ログイン制限がかかったようだ。 何時間インできないのだろうか? これではヒイラギたちにリベンジできない。いや、もう一度挑んだところで勝てないだろう。少なくとも、今の実力では。 トウマは立ち上がった。靴を履いてルームを出る。そこで猛烈にトイレへ行きたくなった。そう言えば朝からログインしっぱなしである。トウマは化粧室へと急いだ。 用を済まし、手を洗って乾かした後で通路へと戻る。玄関のカウンターへと歩いた。そこにいた女性店員に尋ねる。「あの、すいません。VALORIUMのデスペナルティについてお聞きしたいんですが」「デスペナルティについてですね!」 女性店員が手のひらを掲げて、指を順番に折る。「まず、所持ヴァルが30%減少します。次にリスボーンできるまで、一時間のログイン制限がかかります。リスボーンするとプレイヤー様の満腹度は0%であり、クエストの不評価デバフが、これも一時間発生します。獲得ヴァルマイナス30%です。その間さらに、魅せ評価が著しく下がります」「そんなにか!?」「はい、ただし朗報があります」 女性店員は満面の笑顔で言葉を紡ぐ。「プレイヤー様には緊急支援として、500ヴァルが支給されます。良かったですね!」「……500ヴァル? たったのそれっぽっちか?」「はい。デスペナルティの説明については、以上になります」「……そうか」「はい。気を落とさずに、頑張ってくださいね!」 腹に両手を組み合わせて恭しく頭を下げる女性店員。 トウマはがくんと肩を落としてルームへ戻るのであった。 リスボーンの制限時間を待っている間、落ち着かなかった。トウマは飲み物を何度も汲みに行き
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第18話 笑うと思ったから

 アゲハチョウのヘアピンを手に取り、道具屋のカウンターへと近寄る。 ネズミの亜人女性の店員がニヤリと笑って応対してくれた。「恋人へのプレゼントですかい?」「違う」「では自分でつけるんですか?」「そんなはずがあるか」「怒らないでくださいよぉ。そうですか、へへ、1000ヴァルになりやす」 トウマはヴァルの革袋を受付台に置いた。ネズミの亜人女性は受け取って意味ありげな声を響かせる。「ありがとうございやす。似合うと良いですねえ、へへ」「……うるさいな」 トウマはヘアピンを右手に握りしめて店を出た。月明かりに照らされた土の地面を歩いて行く。 ノーファンのプレイヤーの表情はやはり暗い。道端に座り込んでいる者。両腕をだらりと下げてとぼとぼと歩いている者。盗人のようにキョロキョロと他人を見回している者。様々だ。 残金は、少ない。 ……稼がなければ。 そして生きなければ。 道の向こうにウミが見えてきた。泣きはらした目をしており、地面に三角座りをしている。モフモフとした尻尾はだらりと投げ出されていた。しかしトウマの接近に気づくと、尻尾がもそもそと揺れる。「ウミ」「ご主人様、戻ってきてくれたんですかぁ?」「ああ。これを頭につけてみろ」「ふえ?」 トウマが右手を開いて差し出す。 ウミが立ち上がる。アゲハチョウのヘアピンを眺めて鼻が赤くなった。「どうして、プレゼントしてくれるんですかぁ? トウマ、お金無いのに」「違う、これは、魅せ評価を上げるためなんだ」「魅せ評価のためなんですか?」「そうだ……いや、違う」「違うんですかぁ?」 トウマは恥ずかしくなって顔をひきつらせる。 ウミは真意を見抜こうとするように見つめていた。「……プレゼントだ」「プレゼント?」「お前が、笑うと思って」「ふぇ?」 ウミが目をパチクリとさせる。その瞳からしずくが頬へとまた伝った。「あうぅぅ、あ、あ、ありがとうございます。う、うえぇぇぇぇええん!」 大泣きをまた始める。 トウマは視線をそらした。 ……どうすればいい。 やがて、ウミが泣き止んでアゲハチョウのヘアピンを受け取る。側面の髪につけた。紫色に輝いており、可愛らしくてよく似合っている。るんるんと鼻歌まで歌っている。「トウマ、このヘアピン大切にします」「ああ、そうしてくれ」「一生の宝物です
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第19話 稼ぎ方

 ネットカフェの狭いマットルーム。 ログアウトをした瞬間、トウマは激しい目眩に襲われた。 そう言えば今日は朝も昼も食べていない。それでいてゲームプレイをし続けていた。体に負担がかかりすぎている。とりあえず、何か食べよう。 腕時計を見る、現在午後7時半過ぎ。 デスクトップの横に立てかけられている食事のメニューを手に取ってみる。様々な料理がヴァルで売られていた。そしてびっくりする。味を選べるログネストラーメン、500ヴァル。 他にもモーニングサービスとして、朝はフレンチトーストとフライドポテトが無料だった。(マジか!) 1ヴァルにつき0.2円の価値だ。つまりラーメンは100円の価格である。これは安い。 トウマは電話の受話器を手に取り、とんこつ味を注文した。ラーメンが運ばれてくる前、玄関前に行ってドリンクとソフトクリームを作った。やがて部屋に熱々のとんこつラーメンが運ばれてくる。割り箸を割って麺をすすった。安っぽい味。だけど値段以上の価値はあると思った。 栄養が体に染み渡る。 ぼろりと涙が出た。(俺は、生きている) 食べ終わると、食器の載ったオボンを下げに行った。また通路を歩き。カウンター前に来る。制服を着た男性店員に話しかけた。「あの、シャワーを利用したいんだが」「はい。現金でお支払いしますか? ヴァルになさいますか?」「現金で」「180円になります」 渋々支払う。体を清潔にしなければ人様に迷惑がかかる。体臭はクリアにすべきだ。そして汗のベタベタを取りたい。 男性店員からタオルと鍵を受け取り、マットルームへと戻る。バッグから歯磨きセットと着替えを取り出して、シャワー室へと向かった。 熱いお湯が体の汗を剥ぎ落としていく。 地獄のような状況なのに、天国のような心地よさがあった。 ……ああ。 さっぱりしたな。 体を拭いて着替えた。歯磨きも済ませる。次は洗濯である。ログネストの建物の隣には泡美人というコインランドリーがあった。トウマは移動する。 室内にはドラム式の洗濯乾燥機がいくつも並んでいた。柔軟剤の香りが漂っている。機械に小銭を入れて汚れた着物を洗う。五十分後、洗い終えると自動で乾燥が始まった。 ベンチに腰掛けて、回転する乾燥機をぼーっと見つめる。 ……それにしても。 ゲームを一日やってみたが、稼げない。 これなら普通
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第20話 時給二千ヴァル

 あれから二日が経った。 いま、同じ場所で同じことを繰り返している。 道具屋の外の地面でトウマとウミは火剣屋をしていた。火剣屋、それはつまり、ウミのバフスキルであるフレイムウェポンを他者にかける事でお代金を頂戴するのである。 彼らの前には、長蛇とは言わないまでも列が出来ている。 ウミがプレイヤーに唱えた。「フレイムウェポン」 お客さんの頭上に赤い剣のマークが灯る。「お、助かった。これでクエストに行けるよ」「はい。また来てくださいね」 ウミが嬉しそうに笑顔を浮かべる。 客は100ヴァルを支払って去って行った。次に並んでいた客が前に出る。スキルクールタイム後、またウミが声を張る。「フレイムウェポン」「ありがとう。攻撃力アップ強いな!」 もう何人目になるか分からない。(悪くないな) これならぎりぎり生きていける。 しかしである。 フレイムウェポンのクールタイムは三分と長い。どう頑張っても一時間に20回しかかけることができなかった。一回100ヴァルの儲けでは、時給2000ヴァルである。8時間続けたところで16000ヴァルだ。宿代の二万には足りない。その他の支払いを合わせれば完全に赤字だ。 稼ぐために、トウマとウミは一日12時間という過酷なゲームプレイを余儀なくされていた。 何気なくステータス画面を開く。 視聴者数3。 コメントは無し、か。(見てはいる、のか?) それにしても。 ……もっと稼ぐにはどうすれば良い? ウミがこちらを向いて不満げな顔をした。「トウマ、そろそろクエストを探しに行きませんか?」「待てウミ。俺に考えがある」「考え?」「ああ」 トウマは一歩前に出た。両手を軽く開く。列を作っている3人の客に向けて宣言する。「すいませんが、今から値上げです! フレイムウェポン一回につき、200ヴァルにします」 お客さんたちが眉をひそめて不平をこぼした。「たった30分の攻撃力アップで200ヴァルかよ」「トウマさん、そりゃ高いって」「こっちはクエストを探すのも容易でないって言うのにさあ」 トウマはあくまでも強気だ。「うるさい、値上げだ! 200ヴァルを支払えないのなら、かけてやらないぞ」「じゃあ俺、いいっすー」「僕もいいやあ」「時間の無駄したなぁ」 客が散っていく。ウミが焦ってこちらを振り向いた。
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