外国人の親子連れには、ノリと勢いでビラを渡す。 若い女の子のグループやカップルには、愛想を振りまきつつ、反応を見ながら粘って押し切る。 そんなやり方でノルマをこなし、時間きっかりになったのを確認して、震えながら店内に戻ると、佐伯は女子高生二人組にアイス入りのクレープを焼いているところだった。 きゃっきゃっと盛り上がる女の子たちは、手際よく動く佐伯の指先や伏せられた睫毛を見つめながら、「ビジュ良すぎ」「ガチイケメンじゃん」と小声で囁き合っている。狭い店内、その声は丸聞こえだった。 一方、当の佐伯はといえば、完全に「無」の表情だ。死んだ魚のような目で、カットしたバナナやイチゴを生地にひょいひょいと載せていく。 いつもの姿を見ているから分かる。あれは絶対に「めんどくせー」と脳内で毒づいている時の顔だ。 手渡されたクレープを手に、店先で自撮りを始めた女子高生たちが外へ出て行く。 その背中を見送り、扉が閉まった瞬間に、佐伯は深々と、それはもう盛大に溜息をついた。 俺はその背後から忍び寄り、クイ、と制服の袖を引っ張って自分の方へ向かせた。「……これ、返す。ふつーにあったかかった」 借りていた上着を差し出すと、佐伯は受け取らずに、底意地の悪い笑みを浮かべて俺を見下ろした。「……“人に物を返すときは、お礼を言う”って、お前のママに教わらなかった?」「っ……」 鼻の横に皺を寄せながら、俺は「ありがとうございます」とめちゃくちゃ小さい声で絞り出した。 本当に恩着せがましい奴。……いや、確かにこの上着がなきゃ凍え死んでたかもしれないけどさ。「へぶしっ!」 アイスタブの周りを拭きながら、また盛大なくしゃみが出た。と同時に、店の自動ドアが開く。 さっき俺が外でビラを配った、外国人の親子連れだ。 彼らはカウンターの前でメニューを指さしながら相談を始めたが、流暢すぎる英語は俺の耳をすり抜けていく。かろうじて、幼稚園くらいの子どもが発する単語が聞き取れる程度だ。「Hi, could you tell me which flavor is your most popular?」 お母さんらしき女性から眩しい笑顔を向けられ、俺は引きつった作り笑いを浮かべる。 頭の中で必死に単語を組み立てるが、喉の奥で渋滞して一向に口から出てこない。 俺は
Última actualización : 2026-04-15 Leer más