Alle Kapitel von バ先のダウナー男子に、気付けば毎日溶かされています。: Kapitel 21 – Kapitel 30

46 Kapitel

第21話 帰らなければいいんだよ

「……じゃ、お疲れ」 「うん、お疲れ」 数日ぶりに、俺の方から穏やかに挨拶を返した。 反対方向に歩き出す、二つの足音。次の角を曲がれば、俺は駅に向かい、あいつは自分の家へと帰る。ただそれだけのことなのに、猛烈な名残惜しさが、飲み込んだクレープの甘さとともに胸を突き上げてくる。 口の中に残る余韻が、「もしかして」という予感で俺を満たしていく。 けれど、期待して傷つきたくない。俺ばっかりが佐伯を「そういう目」で見ていたら? あいつにとって、これはただの「クレープつきの謝罪」だったら? ――でも、このまま今日を終わらせたくない。 今ここで呼び止めなければ、明日どんな顔をして会えばいいのか、ますます分からなくなる。 俺は、一歩ごとに遠ざかっていく佐伯の背中を追いかけるように、勢いよく振り返った。 「さ、佐伯――っ!」 振り返った先、佐伯はポケットに手を突っ込んだまま立ち止まっていた。 まるで、俺が呼び止めることを最初から分かっていたかのような、静かな眼差しで俺を見つめている。 「……なに?」 眉を下げて、困ったように優しく笑う。その顔を見たら、もう、我慢なんてできなかった。 俺は佐伯の元へと駆け寄り、その胸に飛び込むようにして顔を伏せた。 「……泣いてんじゃん、小瀧」 呆れたような、けれど極上に甘い声。佐伯の親指の腹が、頬を伝う涙を優しく拭い去る。 俺はその広い胸に額をこつん、と預けた。佐伯の手が、俺の後頭部を慈しむように包み込む。 「また俺のせい?」 「そうだよ。だから……ないでよ」 「ん? ……今、なんて言ったの?」 「……一人で帰さないで、って……言ってます」 震える声でそう告げ、勇気を振り絞って佐伯の瞳を見上げた。 佐伯は一瞬だけ驚いたように目を見開き、やがて、この上なく愛おしそうな微笑みをその端正な顔に湛えた。 そのまま、俺の手は優しく引かれ、あいつの温かなコートのポケットの中へと誘い込まれる。 「……小瀧が、帰らなければいいんだよ。今夜は」 もっとはっきり「俺の家に来い」と言えばいいのに。 「好きだ」とはっきり言葉にしてくれればいいのに。 けれど、そんな不器用な誘い文句の代わりに、暗いポケットの中で、佐伯の指が俺の指を甘ったるく、何度も
last updateZuletzt aktualisiert : 2026-04-18
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第22話 初めてのキス

「てか、小瀧さぁ」 「ん? なに……」 「付き合う? 俺と」 ――心臓が、跳ねた。なんだ、その言い方。あまりにも軽すぎるだろ。 まるで『今からコンビニ行く?』と誘うような、あまりにも日常的なトーンだ。 「えっ……なんて?」 「いや、付き合う? って。だって、小瀧って好きじゃん。俺のこと」 予想の斜め上を行く「確信」に満ちた言葉に、息が詰まる。 『え、違った?』と無表情で見下ろしてくるその瞳には、余裕も期待もない代わりに、不思議なほどの重みがあった。 「じゃあ付き合うじゃん、普通に。……俺のこと、ずっと好きだと思ってたんだけど。違う?」 「ちがくは、ない……けど、」 普通、もっとこう、甘酸っぱい台詞とかあるだろ。 けれど佐伯は、「じゃあ決まり」とでも言うようにクッションを敷き、床に横になろうとする。 「俺、もう寝るから。小瀧はベッド使って。……おやすみ」 「は、はぁ? なんでこんな大事なシーンで寝るの? あり得なくない!?」 「有り得なくない。有り得ていることを、俺が今証明してるから」 「屁理屈言うな! おい、マジでズルだぞそれ……っ」 たまらず肩を掴んで揺さぶると、佐伯はようやく重い瞼を開き、低く、熱を持った声で呟いた。 「……無理だから。それ以上、近づいて来ないでくんない? 俺ね、小瀧が思ってるほど我慢強い人間じゃないの。……意味わかる?」 一瞬で部屋の空気が変わった。 いつも冷たいはずの佐伯から、むせ返るような欲が漏れ出している。けれど俺は、今日という日をこのまま終わらせたくなくて、素直すぎる一言をこぼしてしまった。 「でも……さすがに、先に寝られるのは寂しいんだけど……」 少しの間をおいてから徐にに起き上がった佐伯は、俺の身体をひょいと抱き上げると、そのままベッドへ押し倒した。 「えっ、ちょっ、佐伯……?」 「……俺、これでもめっちゃ我慢してんだよね。小瀧のこと、結構前から好きだったし。だから、これ以上近づかれると、本当に止まれないから」 「ま、まって……佐伯が俺を好きになったの、いつから……?」 「……覚えてない。初対面からかも」 その告白は、これまでのどんな意地悪よりも衝撃的だった。俺のことを二歳児したあの日から、ずっとだなんて。 戸惑う俺を組み敷いたまま、佐伯の大きな手が
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第23話 バ先でのキス

あの夜のあとも、佐伯とバイト先でシフトが重なることは多かった。 最初の数日は、俺の方が完全に意識しまくりだった。 職場だし、店長もバイト仲間もいるのに…… 分かってるのに……つい目で追ってしまう。 カウンター裏で作業を確認してる時も、歩く背中を見つけるたび、気づいたら視線がそっちへ滑ってる。 狭い通路ですれ違う時なんて、ただ肩が少しぶつかるだけで心臓が跳ね上がるし、アイスケースの前で二人並んで、お客さんの注文を聞くとき、指先が触れそうになるだけで――いちいち心だけが大騒ぎしていた。 で、その状態が何日か続いたころ。 閉店作業中、静かなバックヤードで、ついに佐伯の方からピシャリと言われた。 「小瀧、目で俺のこと追うの、止めてくんない?」 その言い方はいつもの無表情で、ぐさりと胸に刺さって堪えた。 俺の目から“好き”がダダ漏れしてるから、「バレるだろ」って意味らしい。 確かにその通りなんだけど……でもさ。 家も大学も違って、バイト先以外ほぼ会えない俺にとっては、その一言はあまりにも寂しすぎて、思わず顔に全部出た。 すると佐伯も片手で額を押さえて、「俺も我慢してるし」と、珍しく困ったみたいに目を伏せていた。 ――そう言われたらもう、何も言えないじゃん。 俺は頑張った。 見ないように、追わないように、ただのバイト仲間を演じた。 でも、一週間を過ぎたあたりから…… 佐伯の視線が、逆に、俺を追うようになってきた。 ほんの少し、視線がぶつかる。 逸らさない。 それを俺が耐えられなくなって逸らすと、反対に佐伯がじっと見続けている。 で、ついに――やってしまったのだ。 閉店後、更衣室のカーテンを閉めて、制服のままキスした。 「んっ、ぅ……佐伯、すき……好き、っ……」 どっちからでもない。 着替えの途中、たまたま目が合って、でも逸らせなくて、距離が縮まって、気づいたら唇が触れてて。 最初は軽く一度だけで終わるはずが、気づけば息が苦しくなるほど深くなっていて―― 気持ちを分かって欲しくて、佐伯の制服の胸のあたりをぎゅっと掴んだまま、俺は目いっぱい爪先立ちして、キスをせがんだ。 佐伯は黙ったままそれを宥めるように、俺の顔を両手で包んで、舌をねじ込む。 “会ってない時も、小瀧のこと考えてるから” キスが終わって、耳元で低く囁かれた
last updateZuletzt aktualisiert : 2026-04-19
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第24話 公園デート

そして数日後。 《ここに行くから》 そう言って送られてきたURLだけを頼りに、俺は今日を迎えている。 行き先は、郊外の国営の湖畔公園。 広くて自然いっぱいで、休日なら子連れやカップルで賑わうはずの場所だ。 (……あの佐伯が、公園? 何しに?) ずっとそれが分からなくて、俺はスマホで“公園デート 定番”とか検索してみたけど、どう考えても佐伯がバドミントンで盛り上がるとか、水鳥眺めて感動とか……そういうタイプとは思えなかった。 それでも、初デートというだけで自然と浮かれてしまっていた俺は、服も新しく買って、髪も少し整えてもらい、気合いが入りすぎたせいで……軽いお弁当まで準備してしまった。 駅のロータリーでそわそわ立っていると、静かに車が近づいてきて停まった。 運転席の窓が少しだけ開いて、佐伯が軽く手を上げて合図をしてくる。 「小瀧、乗って」 「うん、ありがと」 いつも通りの落ち着いた声なのに、それだけで胸がぎゅっとなる。 助手席に座ると、買ってきたばかりのホットコーヒーを佐伯の方へ差し出した。 少しでも寒さがましになればと思って。 「……え、わざわざ?」 「うん、運転してもらうし」 「ありがと」 受け取った佐伯が、ほんの少しだけ目元を緩めた。 バイト先では滅多に見せない、柔らかい表情。 「小瀧のそういう優しいところ、好きだよ」 不意に心臓が跳ねる。 佐伯はそれ以上何も言わず、静かにギアを“R”へ落として、一度バックで車を出庫させた。 上半身を軽く捻り、後ろへ視線を滑らせる。 横顔は淡々としたままなのに、首筋のラインも、ジャケット越しの肩の動きも、どこか男の色気があって。 本人はそんなの意識すらしていないから、それがまた拍車をかけている。 (これ……運転中の恋人にされたら、ドキドキするやつの大定番じゃん) まさにその大定番で、俺はぽけーっとその動作を見つめていて。 はっと気づいてから慌てて外の景色に視線を逃がすけれど、体の芯はずっと熱いままだった。 * 一時間ほどで到着した公園は、冬の空気に包まれていて、人影がほとんどない。 澄んだ青空と、湖の水面は太陽を散らしたみたいに細かく光っている。 広々とした芝生の上には、風だけが通り抜けていく。 「……結構、空
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第25話 カッコつけちゃだめなの?

隣に座る佐伯と使うには、ほんの少し小さい。 でも逆に、それがちょうどいい距離感に思えた。 今朝作った弁当を取り出して並べる。 サンドイッチ、ウィンナー、卵焼き、茹でたブロッコリー。 それと、おにぎりをいくつか。 「ごめん、ほんとは何が好きか聞けば良かったんだけど……言ったらつまんないかなって」 俺なりに頑張って作った“普通の”弁当。 地味だけど、味だけはどうにか練習したし……たぶん、まともなはず。 佐伯はしばらく無言で、それからおにぎりをひとつ手に取って眺める。 「……これって、コンビニで売ってるやつじゃないよね?」 まじで不思議そうに聞いてきた。 「な、何言ってんの? 俺が作ったに決まってんじゃん」 「……こういうおにぎり、初めて見たし、食ったことないわ」 「え? 普通じゃん。よくお弁当とかで親が昔から――」 「俺、こういうの作ってもらったことない」 胸の奥がひゅっと冷えた。 まるで唐突に影が差し込んだみたいな、短い一言。 でも佐伯の表情は淡々としていて、特別な話をしたという素振りもない。 それ以上言葉を足す気配もなく、「いただきます」と小さく呟いて、おにぎりを口に運んだ。 黙って、ゆっくり咀嚼する。 「……普通に美味い」 そう言う時だけ、少し目が細くなる。 その顔を見て、俺はほっと息を吐いた。 割り箸を動かしながら、佐伯がちらりとこちらを見る。 「小瀧ん家って、いつもこういう弁当作ってもらってたの?」 「うん。幼稚園の頃から高校まで、ずっとこんな感じ」 「……そっか。……もっと食べていい?」 「もちろん」 俺が予想した量の倍くらいのペースで、佐伯は全部平らげてしまった。 驚くほど静かに、でも確実に。 そして食べ終わると、お茶を飲み干して――すとん、と膝から崩れるように俺の足元へ来た。 次の瞬間、佐伯の頭が俺の膝に乗る。 「腹いっぱいで眠くなってきた」 「は?」 「昼寝するから。後で起こして」 ……こんな自然な“半強制膝枕”ある? 佐伯はそのまま目を閉じ、風の音に溶けるように呼吸を整えた。 髪にそっと触れる。 乾いた冬の匂いと、佐伯のシャンプーの香りが混ざる。 ――ほんの一瞬。 俺がその香りに顔を近づけた瞬間だった。 ぱち、と佐伯の目が開いた。 そして次の瞬間、ぐいっと俺の後頭部を
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第26話 今夜は帰さない

帰りの車内。 夜になると国道は静まり返って、車のライトだけが道路を柔らかく照らしていた。 俺は助手席で半分溶けそうになりながら、眠気に抗っていた。それに気付いた佐伯が、右手でハンドルを握ったまま、空いている左手でそっと俺の髪をくしゃりと撫でる。「……帰り、混むかもしれないし。寝てろよ。着いたら起こすから」「でも……寝るのは悪いっていうか……」恋人同士のドライブで助手席が寝るのはダメ。 そんな“どこの誰が広めたルールだよ”って感じの知識が、妙に頭を締めつけていた。 言い訳みたいにあくびを噛み殺す俺を一瞥して、佐伯は赤信号で車を止めると、何も言わずに上着を俺の膝に掛けた。 ――――目を開けた時には、外は街灯の明かりしかなくて、隣では佐伯がスマホをいじっていた。 「……起きた? 小瀧、すごい寝てた。起こすの可哀想なくらい」「え、そんな爆睡……してた? ごめ――」言いかけた瞬間、窓の外が目に入って、息が喉で止まった。 思考がバチッと途切れる。 視界の端がじわっと揺れて、指先まで一気に冷えていく。 俺と佐伯が居るのは、朝と同じ駅前の駐車場だった。 (え、なんで? どうして帰るの? 今日って……これで終わり?) 言葉にならない焦りだけが、胸の奥でざわざわ暴れ出す。「弁当も……ありがと。普通に楽しかった」佐伯は優しい声で言った。その言葉だけが余計に胸の奥をざわつかせる。「……なんで」自分でも驚くくらい弱い声が漏れた。「え?」「なんでここに居るのって聞いてんの!」怒りというより、不意に捨てられたみたいなショックが先にきて、声が勝手に震える。佐伯は“は?”みたいな顔で見返してくる。 その無神経さに、胸の奥がきゅっと痛んだ。「……佐伯の家に帰ると思ってた」絞り出すように言う。 そんな自分がうっとおしくて、でも止められなくて。今日みたいなデートなら、普通に、そのまま泊まりだって思うじゃん。 キスもいっぱいしたし、触れ方も優しかったし、甘くて、近くて。俺ひとりだけ、恋人気分で突っ走ってたんだって思うと、心が急に冷えていく。佐伯はスマホをホルダーにかけながら、平然と言った。「……いや、そんな約束してないし」「してなくても……なんとなく分かるじゃん……!」言いながら、みっともなく泣きそうになる。 自分だけ“好き”を信じ
last updateZuletzt aktualisiert : 2026-04-20
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第27話 我慢しないで

車を降りてから、家のドアを開けるまでは、お互いに無言だった。……このあとは、前にみたいにご飯を食べて、酒飲んで。 シャワー浴びたら、佐伯の方からベッドに呼ばれるのかな、なんて想像して、鍵を取り出す佐伯を横目で見る。「お邪魔します」佐伯の後に続いてスニーカーを脱ごうと踵に指をかけた瞬間、佐伯が俺の肩からリュックを滑らせるように床に落とすと、そのまま玄関の壁際に俺を抑えつけて、荒っぽく口を塞いできた。「んっ……さ、佐伯……っ!」呼吸の合間に制止するように名前を呼ぶけれど、佐伯の耳には全然届いていなくて、服の裾から手を滑らせてくる。興奮を露わにしているのが、熱っぽい吐息から伝わってきて、静かな玄関に呼吸と唾液の混じる水音がやたらと響く。ぬるつく舌が口の中の粘膜を撫でる感覚に、身体が燃えるみたいに熱がどんどん上がって行くのを感じた。「小瀧が言ったんじゃん、がっついていいよって」「い、言ったけど……」「この前泊まった夜から、俺だってめちゃくちゃ我慢してたんだけど?」まるで、俺が悪いみたいな言い方。 でもその声が低くて、妙に色っぽくて、俺は思わずぎゅっと目を瞑る。なんとなく、好きになる前も、なったあとも、ずっと心の中で思ってたけど…… (佐伯の声、めちゃくちゃエロくてヤバい……っ♡) 胸の奥にしまっていた本音を、くすぐられるように耳元に声を落されて、もう胸は高鳴りっぱなしだった。めろつくとか、なんだとか、今ならわかる。 佐伯がかっこよすぎて、俺も瞳に熱が篭っていく。「や、め……佐伯、ここでは流石に――」「分かってる」佐伯の長い指が脇腹から上へ向かって行くのに気付いて、俺がその手首をぎゅっと掴むと、佐伯はちょっとイライラしながら俺を抱き上げて、ベッドに押し倒した。「あ、あの。シャワー浴びたりとか……」「本気で言ってる? じゃあ聞くけど、俺がこのまま待てるって思うの?」佐伯は鬱陶しそうに自分のシャツを脱ぐと、それを床に投げ捨てた。 次いで俺のズボンに手を掛けると、返事を聞くより先に抜き去っていく。「ま、待って!ほんと恥ずかしいから。俺、シたことないし……もっとゆっくり――」こんなこと、佐伯に言うつもりなかった。経験人数はそれなりにありますよ、だから俺だって余裕ですよ、みたいな。初体験なんですって本当のことは言わずに、ちょっと
last updateZuletzt aktualisiert : 2026-04-20
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第28話 覚えていて欲しいこと

「……ん、あぁっ……だ、だめ。……それ、だめ……」 佐伯に指で、舌で、触られるのが気持ち良くて仕方ない。口を離して、腫れた乳首を指先で弾かれると、悲鳴に近い声が出そうになるのを我慢する。「ダメって言われると余計興奮する。……もっと意地悪したくなる。煽ってんの?」肌をするすると撫でながら下りて行って、佐伯の手が下腹部に触れた。そのまま下着を引っかけるようにしてずり降ろされて、俺はニットに靴下だけの格好になる。「は……っ、も、見ないで。ホントに……死にそう」「死なねーって。あー、この格好ヤバい」素っ裸にされるほうがまだマシなくらい。 淡白そうな顔して、実は着エロ派かよと心の中で盛大にツッコむ。「……南緒、肌白すぎ。腰も細すぎ。なんなのお前」佐伯が見られたくない所をガン見してくる。手を伸ばして隠そうとしても、軽くあしらわれて敵わない。俺だってこんなんでも男だ。めちゃくちゃ華奢なわけではない。でも、佐伯の前だと体格差があるから、佐伯にはそう見えるのかもしれない。 「……でも尻と太腿だけムチムチしてんのな。俺の理想過ぎて、すっげー興奮すんだけど。叩きたくなる……」 佐伯の性的嗜好が、どんどん詳らかになっていく。 俺は細さの割に下半身に肉がつきやすくて、それが地味にコンプレックスだった。 でも、それを理想だのなんだの言われて、頬が熱くなる。「あ、あんまりそういうの言わないで……」「なんで? エロい尻してんのが悪いじゃん」悪くない。俺は何も悪くないのに。その言葉の後、優しく中心を扱かれて、じわじわと快感で責め立てられる。佐伯はそれもじれったそうにすると、ベッドの横にある引き出しを雑に開けて、ローションを取り出すと、俺のナカに指を入れるべく少しずつ慣らして、ふちのあたりを解していく。「んんっ、だ、だめ……も、やだぁ……」怖いのに、ちょっとずつ気持ち良くなっていく。 好きな人が、誰にも見せられないようなところに触れているだけで、すっかり興奮して頭が感じる事しか出来ない。「こんな前濡らしながら言われても、説得力ないんだけど……」佐伯は少しずつ粘膜の中に指を侵入させて、俺が慣れてふっと力を抜いたのを待っていたように、二本に指を増やした。ローションが卑猥な音を立てて、時折滴のように飛沫がシーツや俺の内腿に飛ぶ。次第に手首を捻るように指先を
last updateZuletzt aktualisiert : 2026-04-20
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第29話 名前で呼んで

「っ、佐伯……早く……」「そこは流石に、名前で呼んでほしいかも」「…………」「え、俺の名前知ってるよね?」「し、知ってるに決まってるじゃん!」 またムードがぶっ壊れた。  そうするつもりはないのに、俺と佐伯はいつも言い合いになってしまう。 名前なんか、忘れてる訳がない。付き合ってからは、バカな自分がバイト先でうっかり呼んだら困るから、ずっと苗字で呼んでいただけだ。 そしたらただ、そのまま呼ぶ機会を無くしてしまっただけで……。「……と、」「聞こえないんだけど」「……澄人」「なーに?」「……いれて……っ」 若干内股のまま、自ら誘うように左右の手で割広げる。  佐伯はゴムを軽く口で噛むようにして挟むと、ピリ、と手で破いて慣れたようにそれを装着した。「おねだり上手だね。……この辺まで[[rb:挿入 > はい]]るかなぁ」 臍の下あたりを人差し指でツツ……と撫でられて、その期待と予感に体が熱くなる。「今日は初めてだから、ゆっくりするけど。これから少しずつ慣らして、もっと奥まで入るようにするから……ね?」 俺より太さも長さも上回る佐伯のそれが、挿入ってく。 自分のナカがねっとりと絡みついて、佐伯は唇を薄く開いたまま、それを押し広げていく。 初めてで、いくら慣らしてもキツい。  でも、ローションが濡れて蕩けて、信じられないくらい気持ち良かった。「はっ、ぁ……、やばい、気持ちぃ……っ」 身体の熱い奥の奥まで、埋め尽くされるような感覚。  佐伯がゆっくりと腰を引いて、ギリギリのところで一気に突き上げるのを繰り返す。「ひ、あぁっ♡んあ、あっ……澄人、……っ」「ぐずぐずに蕩けてんじゃん…… 南緒、今どんだけ自分がエッチな顔してるか分かる?」 何度も最奥を突かれて、それに吸い付くみたいに俺も離さない。  執拗に、ぐり、ぐり、と亀頭で責められて喘ぎ声を我慢することも出来なかった。「――っ! っぁ、ああっ……それ、好き……もっとして、気持ちい……」「知ってる。だって南緒のここ、めっちゃキュウキュウ締め付けてくるんだもん。……もっと、どうされたい?」「お、奥……グリグリってして、っ♡」 そのうちピストンが激しくなって、佐伯の息遣いも荒くなってきた。「あっ、んぁ……♡」「南緒……っ、」 熱でうなされた時のうわ言みたいに、佐伯
last updateZuletzt aktualisiert : 2026-04-21
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第30話 嫉妬しないで

 三月に入り、始まったイースター・フェア。 店内のどこを見ても、うさぎ・うさぎ・うさぎ。棚の上にも、ポップにも、ショーケースにも、もれなくウサ耳のデザインが踊っている。 極めつけは――店員の制帽にふわふわのウサ耳が装着されたことだった。 店長は「かわいいでしょ〜!」とはしゃいでいたけど、佐伯は即答で、 「絶対に嫌です」  と言い放ち、速攻で拒否した。  しかも店長の目の前で、ノー・ワンクッション。 結局、スーパーバイザーの市橋さんまで出てきたが、「俺が着けることに、メリットありますか?」と真顔で、説得もむなしく終了。 そういうわけで、この店舗でただひとり――佐伯だけウサ耳免除。 たかがアルバイトリーダーだけど、勤務歴の長さと売上げの貢献度と「佐伯くんだから」で全部ねじ伏せた、究極の“特別扱い”だった。 そんななか、俺はと言えば、ウサ耳つき制帽でせっせとアイスをすくっていた。  俺だってこんなの嫌だけど、客ウケは良いし、子供は喜ぶし、もう腹をくくって働くしかなかった。「こーたきっ」 聞き慣れた声がして顔を上げると、店の入り口で手を振る男がいた。  大学の同級生の、中屋だ。「……うわ、中屋。何しに来たの?」 「小瀧がウサ耳で働いてるって、ストーリーに流しに来た」 「やめろマジで!」 言いながら、中屋はスマホを俺に向けてニヤニヤしている。  自分からバラしたことはないけど、クラスの誰かが俺が働いているのを見かけて以来、大学の友達はほぼ全員俺のバ先を知っていた。「えー、何食うの?」 「小瀧が選んで。早く作れよ」 「中屋には、いっちばん高いやつ作ってあげる」 「はぁ? 普通、社割だろーが」 笑いながらディッシャーを握る。 同じシフトの佐伯は、今はバックヤードにアイスタブを取りに行っていた。  ちょうどいいタイミングだから、あとで紹介しようかな……とぼんやり思っていた。「てかそのウサ耳、似合ってんじゃん」 「死ね! 絶対バカにしてんだろ、お前〜!」 軽口を叩きながらアイスを三つカップに盛って、ぱたん、とケースを閉じる。 すると中屋が、ポケットに手を入れたまま、何でもない声で言った。「小瀧、バイト何時に終わんの?」 「え?あー……ごめん、あと一時間は掛かるかな」 飲みに誘いたかったのかな、と思いながらレジにアイス
last updateZuletzt aktualisiert : 2026-04-21
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