All Chapters of さらば、テクなしマザコンとフレネミー〜敏腕ウエディングプランナーは極上の愛に溺れる〜: Chapter 31 - Chapter 40

41 Chapters

31話

「お義母さんと一緒に式を挙げられるとか、斬新!」「きっと、結婚後の嫁姑関係も、うまくいくと思います」「息子と結婚式できるなんて素敵! こんなプランがあったのね」「当式場のオリジナルプランですし、まだ誰もご利用されていませんので、きっと、唯一無二の式になりますよ」「オリジナリティ高いの、いいな。よし、採用してやる」「ありがとうございます。では、さっそくドレス選びからいたしましょう」 予想以上に乗ってきた3人に、笑いが込み上げてくるのを必死に抑え、ドレスサロンへ案内する。前回と同じく本田は待ち構え、笑顔でお出迎え。「どちらのお姉様でしょう?」 本田が困惑気味に和子を見ると、和子は得意げに胸を張る。「私はかずくんの母親なのよ」「母さんは美容に気を使ってるから、いつまで経っても綺麗なんだ」「えぇ!? お母様だったんですか!? とてもお若いですね。びっくり」 あからさまなお世辞に、得意げになる皆本親子に、沙綾は背を向け、肩を震わせる。(ちょっと、そんなに笑わせないでよ。我慢するの大変なんだから) 深呼吸を2,3回繰り返すと、完璧な営業スマイルを作って本田に声をかけに行く。「本田さん。こちら、親子式をしてくださる皆本様。お母様のドレス選び、お願いします」「えぇ!? あの親子式の第一人者ってことですよね? すっごーい! 絶対いい式にしましょうね」 本田の嘘くさいオーバーリアクションにヒヤッとしたが、3人共まんざらでもなさそうだ。(バカで助かった……) 安堵すると、一緒に和子のドレス選びを始める。「ドレスの色や形のご希望はありますか?」「そうねぇ。式のコンセプトは虹なんでしょ? なら、虹色のドレスがいいわ。結婚式の主役は、あくまでも花嫁さんだし、お色直しまでするつもりはないわ」 元義母の発言に、吹き出しそうになる。虹色のドレスはいくつか置いてあるが、派手好きの彼女が選ぶドレスを簡単に予想できてしまった。「実は、虹色のドレス、数種類ございます。こちらへ」 本田が案内した先には、虹色のドレスがいくつもあった。といっても、色合いや形は様々で、愛らしいものもあれば、誰が着たがるのか甚だ疑問なものもある。「へぇ、虹色も可愛い」 星羅は淡い色合いのドレスを手に取り、目を輝かせる。それは7色がグラデーションになっており、夢かわな愛らしいドレス
last updateLast Updated : 2026-04-21
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32話

「すっごいカラフル!」「流石は最先端の式をするお母様。誰も着たことがないドレスですわ」「他の人が着ても似合わないでしょうけど、私くらいになると、これくらい派手じゃないと、服が釣り合わないのよ」 ふふんと鼻を鳴らし、得意げな和子。それを称賛する和人。星羅は少し不機嫌だった。 その後も式場を歩きながらプランの説明をしていくと、和子の意見も取り入れ、プランを見直していくことに。和子の案が通る度に、星羅の機嫌が悪くなっていく。「この虹のケーキ、地味じゃない? もっとくっきりした色じゃないと」「ゴンドラで登場? 雲と虹のデザインも可愛いけど、これに風船を足してみたら? それから……」 淡い夢かわ虹色ケーキは、アメリカンなビビットカラーに。ただでさえ教育番組のセットのようなゴンドラは、更に子供っぽくなっていく。 カウンセリングルームに戻り、見積書を直すと、900万に跳ね上がった。「あら、ちょっとお高いわね。けど、かずくんの貯金とか考えれば余裕よね。5000万はあるし」「まぁ、そうだな」 和子の発言に、今度は和人の表情が曇る。和子は気づかずに、どんどん話を進めていった。「では、こちらのプランをベースに進めていきましょう。今後は最低2回はカウンセリングをし、式までに軽いリハーサルを1回はしますので、またお越しください」「あぁ、分かったよ」 上機嫌な和子と、不機嫌そうな和人と星羅は、式場を後にした。「さてと」 沙綾は和人からもらった紙袋を、中身の確認もせずにゴミ箱に放り込んだ。ろくでもないものが入っているのは確かだから、確認するだけ時間の無駄だ。 仕事を終えて職場から出ると、英二が誰かと電話をしながら待っていた。彼は沙綾に気づくと、電話を切り、小走りで近寄る。「どうしたの?」「迎えに来たんだ。ストレス溜まってるだろうと思って。今日は外食しないか?」 彼の言う通り、ストレスが溜まっていた。彼らの顔を見たからというのもあるが、ウエディングプランナーは、新郎新婦の予算内で、彼らが納得する式を提供しなくてはならない。予算が低い夫婦ほど、新婦が豪華にしたがる傾向があるため、格安で豪華に見えるようにするために、色々工夫をするのに頭を使うのだ。「ありがとう。助かるわ」「では、お手をどうぞ」 差し出された手を取り、英二と共に夜のビル街を歩く。連れてこら
last updateLast Updated : 2026-04-21
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33話

 食事を終えて帰宅してからも、英二は沙綾を甘やかし続けた。風呂で髪や体を丁寧に洗い、寝室に運ぶと、丁寧に髪を拭いてから、ドライヤーで髪を乾かしてくれた。きっといいドライヤーなのだろう。沙綾の髪は彼女史上1のさらさらツヤツヤになった。「寝るか? それとも……」 英二の指が、沙綾の唇をそっとなぞる。沙綾が目を閉じると、英二はそっとキスをし、彼女をお姫様だっこし、ベッドに下ろす。「今は全部忘れるといい」 ふわりと優しいキスが落とされる。キスは何度も繰り返していくうちに深いものになっていき、彼の手が、バスローブの紐を解くのだった……。 沙綾は英二の背中に腕を回し、彼から注がれる愛をすべて飲み干し、満足したまま眠りについた。 翌日の昼休憩、お弁当を食べ終えスマホを手に取ると、美樹からラインが来ていた。友人ではあるが、お互いの性格上、こまめに連絡を取ったりしない。長い時は半年ほど音信不通になることもあるが、お互い気にすることがない。そんな仲だ。「なんかあったのかな?」『これ、星羅の裏垢じゃない?』 短いメッセージと共に、SNSのリンクが送られていた。リンクをタップすると、stella☆というユーザーのアカウントが出てきた。見てみると、匂わせ写真と共に、頭が痛くなるような投稿がズラリ。『世界1幸せな花嫁になります♡』『大好きなダーのためにダイエット♡ がんばるもん♡』『私の王子様はいつもイケメン♡』 そういった短い文章と共に、星羅の胸元や口元の写真や、和人の後ろ姿の写真が上げられていた。更に遡ってみると、不倫時代の投稿がたくさん出てきた。『イケナイ恋って、胸が苦しい。運命だって分かってるのに、悪い魔女が邪魔をするの』『魔女はまだいる。けど負けない! 令和の姫は強し。待ってて、王子様。ぜーったいにstella☆が助けるんだから!』『眠れない夜は、いつも王子様のことで胸が張り裂けそう。絶対一緒になるんだから』 他にも、見てて恥ずかしくなるポエムが並んでいた。しかもそれらの投稿には、#禁断の恋、#運命、#イバラの道、#戦う姫といった、脳内お花畑なハッシュタグがついていた。 どうやら彼女は自分がお姫様、和人が王子様、沙綾が魔女だと思っているようだ。 慰謝料は既に請求し、支払っているため、今更不倫の証拠などいらないが、これを見ていれば、今後の彼らの動
last updateLast Updated : 2026-04-21
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34話

 2月13日。この日は和人、星羅、和子の結婚式。朝に軽いリハーサルを新郎新婦とすると、仲間内での最終確認をし、準備を整える。今まで数え切れないほどの結婚式を見てきたが、ここまでワクワクするのは初めてだ。 時間になると、会場が人で埋まる。新郎側は彼の友人や職場の人間。仕事をしていない星羅の席には、学生時代の同級生が座っている。 昔から人様の彼氏を奪ったり、マウントを取ったりしていた星羅に、友達はいない。「ご祝儀いらないから出席して」と、片っ端から頼み込んでいたことは、美樹を始めとした旧友達から聞き、知っている。 そのため、星羅の席はちょっとした同窓会状態だった。沙綾はそんな式場を、改めて見回す。飾られた花々は統一性がなく、各テーブルのテーブルクロスはそれぞれ違う上にビビットカラーで、目が痛い。「虹がテーマって言ってたけど、やり過ぎじゃない?」「見てよ、このテーブルクロス。目がチカチカする」 招待客達からも不評なようで、沙綾は満足した。「皆様、本日はお二人の結婚ご披露宴にお越しくださいまして、誠にありがとうございます。新郎新婦、ご入場の準備が整ったようでございます。早速皆様の元へとお迎えしたいと思いますが、お二人のお顔が見えましたら、皆様どうぞ大きな拍手でお迎えください。また、カメラをお持ちの方はどうぞご準備くださいませ」 盛大な音楽と共に、ドライアイスの煙が祭壇を包む。ゆっくりと降りてくるのは、ふたりが乗ったゴンドラ。最初は大きな拍手と歓声があったが、彼らを見て困惑したり、苦笑したりする人が増えていく。 彼らがそんな反応をするのも、無理はない。雲を描いた板を貼り付けたゴンドラには、虹のアーチがかかり、7色の風船がくくりつけられている。どこからどう見ても、教育番組のセットだ。 ゴンドラが開き、先に降りる新郎。そして新郎にエスコートされ、出てくる新婦に、会場は再び失笑。子供っぽい水色のドレスをまとった新婦は、笑われていることに気づかず、得意げな顔をしている。「それでは、新郎新婦、こちらへ」 ふたりは牧師の前に行くと、誓いの言葉、キス、指輪交換をする。会場は式の進行内容に安堵したのか、ふたりを祝福している。(さぁ、ここからよ) 暗がりで見守る沙綾は、口角を上げた。「それではただいまより、親子式を始めます」 司会の言葉に、会場は再びどよめく。
last updateLast Updated : 2026-04-21
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35話

「社会人になって、知らないことを経験していき、時には傷ついたり、困惑したりしました。そんな時も母さんは、俺を慰め、励ましてくれました。 母さんは努力家で、ずっと家を守ってきましたね。家事も怠らず、美容にも力を入れている母さんを、心の底から尊敬しています。これからも、元気で美しい母さんでいてください」「かずくん、ありがとう。母さん、すごく嬉しい……。どうしよう、ウォータープルーフにするんだった……」 涙を拭い、鼻をすする和子。そして既に氷点下の会場。この場で笑っているのは、沙綾と同級生くらいだろう。「素晴らしい親子愛ですね。それでは、プレゼント贈呈」 スタッフが、和人にラッピングされた箱を手渡す。「母さん、今まで本当にありがとう。これからもよろしく。ずっとずっと大好きだ」 和人は箱を和子に差し出す。受け取った和子は泣き崩れてしまう。会場からは悲鳴があがるが、おめでたい3人は、それを歓声と勘違いする。「では、感謝のハグをどうぞ」 和子は星羅に支えられて再び立ち上がる。彼女にプレゼントを預けると、親子は多くの招待客の前で熱い抱擁をする。 再び悲鳴が上がるが、彼らはそれも祝福と受け取っているだろう。 星羅が預かっていたプレゼントを和子に返すと、和子は会場の新郎側に座った。「素晴らしいですね。お母様には、何をプレゼントなさったんですか?」「ペアのマグカップです。ペア物は夫婦で使う印象が強いので、妻と同等に大事にするという意味を込めて贈りました」「素敵ですね。では、高砂へどうぞ」 ふたりは高砂へ行く。この時点で星羅は険しい顔をしていた。きっとガラスの靴で足が痛むのだろう。和人は星羅を気遣う様子もない。 その後、スピーチや乾杯をし、本場のイギリス料理が運ばれてくる。眼の前に料理を置かれた招待客の中には、悲鳴を上げるものもいた。 それもそのはず。イギリス料理はまずいことで有名だ。イギリスにある美味しい飲食店は、他国の料理を出す店と言われているほど。 パイから魚の頭部が突き出しているスターゲイジーパイ。煮込んだウナギをゼリーで固めたウナギゼリー。豚の脂肪や血、オート麦などを使って作ったブラックプディングは、赤黒い肉に白い脂肪がくっきり浮き出てグロテスク。羊の内臓を羊の胃に詰めて作ったハギスなど、イギリス料理の中でもゲテモノ揃いだ。「なにこれ、食
last updateLast Updated : 2026-04-21
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36話

 目まぐるしい披露宴が終わると、今度は2次会が始まる。手入れされた庭園で、ガーデンパーティーだ。星羅もカジュアルなドレスに着替え、靴も低いヒールに履き替えた。 会場には、男性が圧倒的に多い。和人の友人と同期だ。 女性は野次馬根性で残ったもの好きが数人いる程度で、イマイチ盛り上がりに欠けた。それを見て不満だったのか、星羅は沙綾に近寄る。「ねぇ、沙綾ちゃんもお客さんとして参加してよ」「仕事だから無理なの。ごめんね」 にっこり笑いかけ、忙しいふりをした。 式が終わると、沙綾は警察署に赴いた。手には以前、英二からもらった報告書。あの3人の地獄は、まだ終わらない。終わらせてやらない。 警察署ですべて話しきると、今度はSNSをチェックした。stella☆こと星羅は、結婚式の自慢をしていた。あれだけひどい結婚式を、誰もが羨むような内容に思わせることができるのだから、そこだけは尊敬する。『明日は神様からの贈り物で新婚旅行♡ バレンタインだし、こっそりチョコ作ろうかな?』 チョコ菓子の材料の写真と共に、そんな投稿があった。「あーあ、知らない」 沙綾はぷぷっと吹き出す。学生時代、星羅は男子全員にチョコを配っていたのだが、それが酷い出来だったのだ。英二や他の男子に見せてもらったが、食べ物とは思えなかった。 星羅はカップケーキを作ったつもりなのだろうが、炭のように真っ黒でゴツゴツしたものだったり、ラッピングの中でどろっとしたりしていた。なんとか形を保っているものでも、チョコレートコーティングの間からぶにょぶにょの生地が見え隠れしていたのだ。 コンビニバイトしている男子がこっそり集めて捨てたことにより、英雄扱いされたほどだった。 星羅は性格に問題こそあれど、男子にはぶりっ子で顔だけはいいので、ファンが数名いた。彼らはカップケーキを食べ、数日休んでいた。 そんな星羅が作るチョコなど、もはや核兵器だ。「ご愁傷さま」 そうつぶやき、スマホをしまう。「帰って支度しないと」 沙綾は鼻歌を歌いながら帰宅した。 翌日、沙綾と英二は空港にいた。ハワイ旅行へ行くために。「お客様。何度も説明しておりますが、他人の航空券はご利用になれませんし、国内パスポートでは、海外行きの飛行機には乗れません」「だーかーらー! 知り合いから譲ってもらったの!」「ちょっとくらいいいじ
last updateLast Updated : 2026-04-22
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37話

 沙綾達が受付をしている間、3人は詐欺だのなんだのと騒いでいたが、もうひとり警備員が来て、どこかに引っ張っていかれた。「ちょっと! 私の航空券は私名義じゃない! 私だけ行かせなさいよぉ!」「和人さん、なんとかして!」「うるさい! なんでふたり共パスポート持ってないんだよ!」「空港ですぐもらえると思ったんだもん!」「そうよ! 教えてくれなかったアンタが悪い!」 罪のなすりつけ合いをする3人の声を聞きながら搭乗手続きを済ませると、ふたりは腕を組み、案内に従って歩いた。「ハワイなんて初めて」「俺も。何泊しようか?」「お任せするわ。しばらく休業だし」 沙綾の職場は、上がドタバタしている。というのも、オーナーが高齢のため、娘に交代するのを機に、経年劣化が目立つ式場を取り壊し、更に条件の良い立地に建て直すのだ。 だからこそ、スタッフ全員が沙綾に協力し、あのような結婚式が実現したとも言える。 搭乗時刻になると、ふたりはファーストクラスに案内される。「すごい……!」 人生初のファーストクラスに、胸が震える。ひと席ひと席が簡易個室となっている上に、席はリクライニングベッドのよう。小さなテーブルには、テレビとヘッドホンが置いてあるが、それでも食事をしたり、ノートパソコンを広げたりする余裕がある。「ハワイまで8時間ある。ゆっくりしよう」「えぇ、そうね」 隣同士とはいえ、簡易個室だ。座ってみると、一緒にいるという感覚はほとんどない。(ふふ、ひとり用シアタールームみたい) ハワイまでの約8時間。沙綾も英二も、映画やニュースを見たり、ハワイで行く予定の場所をおさらいしたりと、快適な空の旅を満喫した。 ハワイに着くと、ふたりはホテルへ向かった。時差ボケがあるはずなのだが、初めてのハワイでハイになっているのか、ちっとも眠くならない。「なんかいいね、ハワイ。少し暑いけど、空気がからっとしてて、気持ちいい」「おいおい、まだ着いただけで、どこにも行ってないだろ?」「そうだけど、海外来たって感じして、楽しい」 浮かれている沙綾を、英二は愛おしそうに見つめる。その視線に気づき、沙綾の頬が染まる。「もしかして、子供っぽいって思った?」「可愛いって思った」「もう、何よそれ」 ホテルに着くと、部屋に案内される。1階にある1番上等な部屋で、大きな窓から海が見
last updateLast Updated : 2026-04-22
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38話

 少しだけショッピングを楽しみ、ホテルに戻る頃には夕飯にちょうどいい時間になっていた。部屋に戻ると、キャンドルディナーの準備がされている。 純白のテーブルクロスの上には、南国ならではの料理がずらりと並び、赤いキャンドルが灯されていた。「素敵……」「喜んでもらえて良かったよ。沙綾……」 真剣な声で名前を呼ばれ、自然と背筋が伸びる。振り返ると、彼の瞳がまっすぐ沙綾に向けられていた。「英二くん……?」「君と一緒に、幸せになりたい。結婚してほしい」 差し出されたジュエリーボックスには、ピンク色の石がきらめいている。「ピンクダイヤモンドだ。石言葉は、永遠の愛、完全無欠の愛。俺は君につらい思いをさせない。傷つけない。最優先事項は、沙綾だ」「英二くん……!」 嬉し涙で、視界が滲む。いずれ英二と結婚できれば幸せかもしれないと思っていたが、まさかこんなにはやくプロポーズをしてもらえると思わなかった。「喜んで」「あぁ、嬉しいよ。手、出して」 左手を差し出すと、英二は丁寧に指輪をはめてくれる。自分の薬指に輝くピンク色の宝石は、まるでこれからの幸せを象徴しているように見えた。 どちらからともなくキスをし、笑い合う。「英二くん、大好き」「俺もだ、愛してる」 再びキスをすると、英二は沙綾をお姫様だっこし、椅子に座らせる。「さぁ、食べよう」「えぇ、そうね。お腹すいた」 シャンパンで乾杯し、食事を始める。「にしても、勇気あるよね」「そうか?」「だって、ハワイ旅行初日にプロポーズだなんて……。もし私が断ったら、気まずくならない?」「沙綾は断らないって確信してたからな。沙綾だって、結婚してもいいと思えない相手と、ハワイ旅行なんて行きたくないだろ? しかも、同じ部屋なんて」「確かに……」 言われてみればそうだ。面食いとはいえ、心を許せない相手と同室だなんて、考えられない。「それでも、緊張したよ。プロポーズって、人生のターニングポイントっていうか、重大なことだし」「ふふ、そうよね。ありがとう、すごく嬉しかった」 その晩、ふたりが愛し合ったのは言うまでもないだろう。 翌朝、英二に手を引かれて着いたのは純白の教会。背景に海がある美しい教会だ。ステンドグラスも太陽できらきら眩しい。「もう結婚式?」「違うって。フォトウエディング、どうかなって思って
last updateLast Updated : 2026-04-22
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39話

 スタッフと一緒に教会に戻ると、純白のタキシードを着た英二が待っている。メンズメイクまで施された彼は、まるでどこかの王子のように気品があり、思わず見惚れてしまう。「沙綾、すごく綺麗だ……」 英二は沙綾に気づくと駆け寄り、スタッフの目があるというのに、沙綾を抱きしめる。「あ、ありがとう……」「こんなに綺麗な人が、俺の奥さんになってくれるなんて……奇跡だ……」「私からしたら、あなたが旦那さんになってくれることが奇跡よ」 見つめ合っていると、シャッター音がした。そちらを見ると、カメラマンがカメラを構えている。「おふたりとも、とても素敵です。さっそく撮影を始めましょう」 にこやかなスタッフに、恥ずかしさで顔が熱くなる。「まずは教会の中で撮りますよ」 カメラマンの指示に従い、ポーズを撮って撮影をする。最初は恥ずかしくて固くなっていたが、だんだん楽しくなってきて、自由にポージングをするようになっていた。 撮影は教会の中、前、外で行われた。幸い晴天だったため、理想的な写真になった。撮影が終わると英二がデータを受け取る。補正などをした写真は、3週間から1ヶ月後に届くそうだ。「ハワイでウエディングドレスを着れるなんて思わなかったから、すごく嬉しかった。それに、楽しい」「楽しんでもらえてよかった。勝手に決めてたことだから、突っ走りすぎとか言われるかと思ってたよ」「驚いたけど、いい思い出になったわ。ありがとう、英二くん」 微笑みかけると、英二は目をそらす。「英二くん?」「いや、その……。逆光で、神秘的に見えたというか、女神みたいだったというか……」 過剰な褒め言葉に、耳まで熱くなってしまう。「もう、大げさ……」「そんなことない。沙綾は、俺にとって女神だよ。あの頃も、今も」「え?」「中学になるのと同時に、あのへんに引っ越してたんだ。あの頃は自分に自信がなくて、引っ込み思案だったから、友達できなくてさ。高校でもそうだと思ってた。けど、沙綾が話しかけてくれてただろ? すごく嬉しかった。それに、沙綾との会話を聞いて、俺のこと気になって話しかけてくれるヤツも出てきて、おかげで友達もできたんだ。ホント、感謝してもしきれないよ」「英二くん……。感謝してるのは、私のほう。あなたのおかげで、あの家から抜け出せたし、復讐もできた。それに、ハワイにまで連れてきて
last updateLast Updated : 2026-04-22
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40話

 ふたりは約2週間、マリンスポーツをしたり、散策をしたり、美味しいものを食べたりと、ハワイを満喫した。 そして日本に帰ると、沙綾は久しぶりにスマホの電源を入れた。 沙綾には、ことあるごとに写真を撮る習慣はない。それに、ハワイでの写真は英二が撮っていたから、それでよかった。何より、和人達がしつこく連絡をしてくる気がしたため、ハワイに行く前に電源を切ってから、ずっと放置していたのだ。スマホがない生活は、それはもう快適であった。「うげ……」 案の定、彼らから大量の不在着信とラインがあった。トーク画面を開くと、どれもこれも逆恨みだった。沙綾は彼らの連絡先をブロックし、削除した。「大丈夫か?」「えぇ、ブロックもしたから、もう大丈夫。でも、知らない電話番号もいくつかあるの」「調べてみたら?」「そうね」 電話番号をコピーして検索してみると、地元の警察からだった。「警察だ……」「ちゃんと動いてくれたってことだな」「えぇ、きっとそうね」 和人達の結婚式の後、沙綾は警察署に行き、彼らが義父の年金を不正受給したり、遺産を遺言書通りに沙綾に渡さず、自分達で分け合ったりしていたことを話し、報告書と証拠を提出していたのだ。 折り返し電話をしてみると、皆本親子は逮捕されたと言う。確認したいことや、手続きがあるから、後で警察署に来てほしいとのこと。「ま、大変だけどやらないと行けないしな」「ちょっと面倒だけど、そうね……」「今は帰ろう」 ふたりはタワーマンションの最上階に帰ると、旅の疲れを癒やすように眠った。 さて、皆本達がどうなったのか……。親子には実刑判決が下り、刑務所暮らしが確定した。義父の遺産を沙綾に返還しないといけないのだが、沙綾への慰謝料、家の購入の他にも散財してしまったため、3000万近く足りない。 その借金を、唯一逮捕されず、外で働ける星羅が返すハメになってしまった。だが星羅は今まで男性に寄生して生きていたため、働いた経験がない。いつものようにパパ活相手の元へ寄生しに行こうとしたのだが、和人と結婚する際、酷いフリ方をしてしまったため、全員に断られてしまった。 新しい寄生先を探そうにも、星羅の悪い噂が広がってしまって見つからない。 実家に頼ろうとしたが、事情を知った彼女の両親は、星羅を勘当して追い出してしまった。 泣く泣く家を手放し、今は
last updateLast Updated : 2026-04-23
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