人間関係は利害関係。 相手に適切な利益を与えられなければ関係は維持できない、そう思っていた。「三浦淳之介です」 女子の目は壇上で挨拶する男子にくぎ付けだった。 そこらのアイドル顔負けの顔で優し気に微笑んで自己紹介をしていれば目を引くのは分かる。「自己紹介はこれぐらいだけど質問はあるかな?」 「えー、どうして淳之介って言うの?」 「気になるー」 今までの男子には何も質問しなかったのに、彼には媚びたような声と表情で質問している。 彼女達にとって見た目というのはそれだけの利益なんだろう。「親が芥川を好きでさ、本当は龍之介ってつけようとしたけど母から駄目だしされたから淳之介なんだ」 「そこでなんで淳之介になるのよー」 「そうそう」 「それがすごいんだ『龍の次といったら虎だろ、でも寅之助はいかついから次の順ってことで淳之介』だってさ、意味分からないだろう?」 「意味分かんないー」 「あたしは分かるな」 女子同士楽しそうに笑いながら話しているけど、目は笑っていない。 彼の話を理解しようと話しているというより、誰が会話の主導権を握るかで争っているようだった。 見た目……か。 彼以外が同じことを話してもあそこまで反応してもらえないだろうなとは思う。 奇しくもそれは直後の体育の授業で証明された。「え、また入れたよね」 「すごいよねー」 「さっき聞いたけどサッカーばかりでバスケットはやったことないって」 「スポーツ万能なんだ」 女子が話すことは全て彼のことばかり。 同じぐらい活躍しているはずの男子には視線すら送っていない。 運動能力を褒めている訳ではないのは一目瞭然だった。「舐めやがって」 それを男子が面白く思うはずがない。 ねたまれるのは当然の結果だった。「おっと」 ある男子が彼に足をひっかけようとした。 ほぼ完ぺきなタイミングでやり慣れているのが分かる。 でも彼には簡単に避けられてしまった。「すまない、足を踏みそうになったよ」 屈託のない笑顔でそう言われると、どうにも恥ずかしくなったようだ。 小さい声で返事して足を引っ込めた。 彼は誰に対しても明るく気軽で優しかった。 誰でも仲良くなるし、嫌われても態度を変えない。
Last Updated : 2026-04-14 Read more