All Chapters of 夫と息子が憎む私はもう死んだ: Chapter 21 - Chapter 23

23 Chapters

第21話

柚は慎吾の公開声明を見た。ネット上では、慎吾と蛍に対する非難が殺到している。【蛍さん、研究室にすら入ったこともないくせに、どうしてそんな厚かましいことができたんだろ?しかも、柚さんに自分を見習えなんて言ってさ】【厚顔無恥ってこのことだよね!】【西村社長みたいな夫や上司を持つって、柚さんは一体どれだけ災難なんだ?】【私、A大学卒業生です。もともとは西村グループを受けようと思っていましたが、今は別の企業から内定をもらいました。いつこんな社長に理不尽な理由で目をつけられて、成果を愛人に奪われるなんて思ったら、怖くてやってられませんから!】ネット上には、慎吾と蛍への議論以外にも、西村グループの巨額の赤字や、大野家が破産に直面しているというニュースで持ち切りだった。しかし、柚はちらりと見ただけで、すぐに自分の結婚式の準備に戻った。慎吾たちがどうなろうと、もう自分には関係のないことだ。梨花と一緒にウェディングドレスショップへ向かう道中、慎吾に遭遇してしまった。「柚、話をしよう」慎吾の頬はげっそりと痩せこけ、以前の自信に満ち溢れた面影は消えていた。柚は冷ややかに見つめる。「話?いいよ。じゃあ、まず死んでくれる?そうすればあの世で『柚』と心ゆくまで話ができるはずだから」梨花も目を思い切り見開いて呆れていた。「まだ柚に執着してるの?厚かましいにも程がある!柚、もう行こう!こんなやつ、無視無視」梨花は柚の腕を組んで、二人でドレスショップの方へ向かった。それでも慎吾は諦めず、追いかけてきた。「柚!ネットニュース見たか?西村グループに大損害を与えてまであんなことをしたのは、すべてお前のための復讐で、改心の意志を見せるためだったんだよ!」柚は慎吾の叫び声にうんざりした。その時、車が脇に止まり、弘樹が降りてきた。「出張は半月のはずじゃなかったの?どうしてこんなに早く戻ってきたの?」弘樹を見るなり、柚はさっきまでの苛立ちを忘れて目を細めた。弘樹は柚の手を取り、甲に優しくキスをした。「ウェディングドレス選びに付き合いたくて。君が俺のために着るウェディングドレスだろ?どうしても見ておきたかったんだ」「そんな無理をしなくてもよかったのに」「やる必要はないのかもしれないけど、俺がこうしたいから。それじゃ駄目か?」
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第22話

家政婦が、柚に向かって呆れたように言った。「あの親子、頭がちょっと……あれですね。自分の奥さんに酷いことをしておいて、なのに、何で柚様を探しにくるんですかね?」誰も柚がこの体の中にいるなんて思わないだろう。単に、慎吾と颯太がおかしくなったと思われるだけだ。柚は二人を相手にしたくはなかったが、いつまでもつきまとわれるのは本当にうんざりだった。彼女はドアを開けて外に出ると、ボディーガードを20メートル先まで下がらせ、冷ややかな目つきで慎吾と颯太を見つめた。慎吾は小綺麗にしていたが、醸し出される廃れたオーラを隠し切れてはいなかった。かつては色白でわがままし放題だった颯太は、今では痩せ細り、どこか影のある表情を浮かべていた。柚が出てくるのを見た慎吾は、顔を輝かせた。「やっぱりな。いくら俺が憎くても、お前が颯太を捨てるわけがない。命がけで産んで、大事に育てた息子だ。諦められるはずがないだろう?」颯太も泣きながら駆け寄り、柚の脚にしがみついた。「ママ!ママに会いたかった!ママ、一緒に帰ろうよ!」しかし、柚は冷たく颯太の手を振り払った。「あなたの母親はもう死んだの。以前、『ママが早く死ねば、蛍さんがママになる』って望んでたんでしょ?やっと叶ったじゃない?」「蛍さんはいやだ!僕のことを叩くし、怒るから……もう蛍さんなんかにママになって欲しくない!ママ……ううっ……ごめんなさい。僕、これからは良い子にするから……一緒に帰ろう?」颯太は息も絶え絶えに泣きじゃくった。しかし、柚は冷めた目で彼を見下ろす。「これから良い子になれば、たくさんの人があなたを好きになってくれるかもしれない。でも、あなたが母親に与えた傷は深すぎるから、一生許されないのよ」この息子に、これまで何度もチャンスを与えてきた。まだ幼いのに、嘘に唆され、扇動された彼も、また哀れな存在なのだと分かってはいた。しかし、過去の自分自身もまた哀れなのだ。だからこそ、絶対に許すことはできない。颯太は何度も柚に抱きついては拒絶され、ママと叫びながら涙を流した。最後には床にへたり込み、ママと呼ぶ気力も失っていた。颯太はただ、壊れたように涙を流し続けていた。慎吾が颯太を抱きかかえ、柚に絞り出すように言った。「柚、過去の俺は本当に最低だった。でも、今は深く
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第23話

慎吾のその後。慎吾は無人島に着いて初めて、かつて自分が柚にしたことの罪深さを思い知った。真冬の無人島は、石ころと乾いた草しかなかった。あんな気味の悪い虫を食べる羽目になるとは、思ってもみなかった。生臭くて、ドロリとした内臓。見るだけで吐き気がする。しかし、1週間もしないうちに、虫さえもいなくなった。残っているのは、枯れ草ばかり。草の根は硬くて、渋かった。飲み込むたびに喉を刃物で切り裂かれるような痛みが走り、口の中は血の味がした。食料も水もなく、寒さに凍える日々。唇は裂けて血が滲み、全身にもひどい霜焼けができた。何度衛星電話を手に取り、助けを呼ぼうとしたか。それでも歯を食いしばって堪えた。1ヶ月耐え抜いて、柚と同じ苦しみを味わえば、許してもらえるはず。そう思いながら、慎吾は必死に堪え、毎日極限な思いをして無人島で過ごした。しかし、気力だけではどうにもならず、2週間目で限界が訪れた。慎吾は医療チームに救助を要請した。目が充血したまま、柚へ向けた長文のメッセージを書く。だが、結局はすべて削除し、最後に【ごめん】とだけ送った。どんな言い訳や行動も、柚を傷つけたという事実を変えることはできないのだから。慎吾はすぐに救急で搬送された。2日後、目を覚ました慎吾の最初の言葉は「柚は……柚は来てくれたか?」だった。「いいえ。彼女は、結婚式の真っ最中です」慎吾は点滴をぶら下げたまま、必死で式場へ駆けつけた。そこでは美しいウェディングドレスに身を包んだ柚に、弘樹が膝をついて指輪をはめていた。その光景を見た瞬間、慎吾は完全に絶望した。そして、二度と戻れないことを悟った。どうして柚をあんなに愛していて、結婚までできたのに、あれほどまで深く傷つけてしまったのか?慎吾は自暴自棄になって酒を煽り続けた結果、急性アルコール中毒で集中治療室に運ばれた。意識が混濁する中、柚が泣きながら「慎吾、起きて。お願いだから。目を覚ましてくれたら許してあげる!」と言う幻聴が聞こえた。慎吾ははっと目を開けたが、そこに愛しい人の姿は影も形もなかった。集中治療室には、患者の自分と看護師だけ。天井を見上げながら、慎吾の頬に涙が流れる。柚はもうこの世にはいない。今、生きているのは「佐々木柚」なのだ。
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