西村慎吾(にしむら しんご)と結婚して8年目。西村柚(にしむら ゆず)は、無人島で「システム」からの攻略ミッションの誘いを受け入れた。「本当にいいんですね?ご主人と息子さんをあれほど愛しているのに、このミッションを引き受ければ、新しい体と身分に切り替わります。二度と彼らとは関われませんし、別の男性と恋に落ち、結婚することになりますよ?」柚は俯き、手にした写真を見つめる。そこには慎吾と我が子、そして大野蛍(おおの ほたる)の姿があり、3人はまるで本当の家族のように寄り添っていた。結婚して8年、結婚式すら挙げていない。それ以上に、1枚の家族写真すらなかった。慎吾と我が子は好みまでそっくりで、蛍のことは溺愛しているくせに、柚のことだけはひどく嫌っていた。柚は涙を拭い、写真を引き裂く。「決めた……」システムが淡々と告げる。「承知いたしました。では、7日後に攻略ミッションを開始します」……無人島。柚は枯れ草の根を掴み、自分の口に押し込んでいた。枯れ草を掴む手は霜焼けで赤く腫れ、その体は痩せ細り、皮と骨だけになっていた。そして空には、柚にしか見えないシステムのホログラムが浮かんでいる。柚は18歳で慎吾と付き合い始め、24歳で入籍した。かつて慎吾は情熱的に柚を抱きしめ、「一生お前だけを愛するから」と誓っていた。だが今、慎吾は甘やかすように、彼女の両親に養子として迎えられ育てられた血のつながらない妹、蛍を抱きしめている。蛍のために食事を作り、体を労わり、高級なプレゼントまで贈る日々……今までは、柚だけに与えられていたはずの言葉や行動が、今では、すべて蛍に捧げていた。息子の西村颯太(にしむら そうた)もまた、父親の慎吾と同じように柚を毛嫌いし、蛍に懐いている。柚が無人島に置き去りにされて1ヶ月経ったのだが、誰一人として柚のことに気づいていなかった。柚が飢えと寒さで限界を迎えそうになっている間、慎吾と颯太は蛍のご機嫌取りに忙しかった。柚が無人島で過ごして30日目、蛍は持病が悪化し入院した。その時になって初めて、慎吾はようやく柚のことを思い出したのだった。慎吾が無人島へ駆けつけた時、柚は喉を枯れ草で傷つけたらしく、血を吐いていた。そんな柚を見て、慎吾の目に一瞬だけ哀れみが浮かんだが、すぐに嫌悪
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