着替えその他を抱えて浴室へ行こうとしたわたしの背中に、貢の声が飛んでくる。 「絢乃さん、バスタオルと浴衣は脱衣所にありますから。持っていくのは着替えと洗面道具くらいでいいと思いますよ」 「分かった、ありがと」 本当は自前のバスタオルも持っていこうと思ったけれど、ホテルのアメニティがあるならそっちを使わせてもらおう。 ――着ていたものを全部脱ぎ、先に髪を洗ってから浴槽に浸かった。 「はぁ~~、いいお湯~~♪ 気持ちいい~~……」 ここ洲本温泉の泉質は〝美肌の湯〟らしい。この淡路島を創造したという古代神・伊弉冉尊も、この温泉でお肌を磨いていたのかな……。夫である伊弉諾尊のために。だとしたら、なんかロマンを感じる。 「わたし、これ以上お肌ツルツルスベスベになっちゃったらどうしよう。貢、困っちゃうよね……。フフフッ♪」 いい加減気持ちよく温まったところで、わたしは濡れた髪をヘアクリップでひとまとめに留めて、浴衣姿で入浴を終えた。 「あー、いいお湯だった~♪ お天気がよかったら、眺めも最高だったのにね」 ホカホカと湯気を立てながら貢の元へ。……そういえば、彼にわたしの浴衣姿を見てもらうのも初めてだ。さて、どんな反応をするかな? 「あ……、絢乃さん。浴衣いいですね。大人っぽくてステキです。……っていうか、和装の着付けもできるんですね」 彼は惚けたように、わたしの浴衣姿に見惚れている。凝視できないのは、照れているから?
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