All Chapters of 【牌神話】〜麻雀烈士英雄伝〜 師: Chapter 11 - Chapter 20

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第2部 三章【コバヤシ君の日報】その1 第十話 攻める麻雀

10.第十話 攻める麻雀 渋谷店日報日報担当責任者 小林 さて、昨日の何切る問題ですが手牌はこうでしたね。東1局4巡目 親 ドラ九222234566788発発 8索切りリーチで満足の3面張じゃないかとおっしゃる方は多いでしょうね。いやいや、まだ4巡目、それなら夢はでっかく清一色狙い! と発を落とす方もいるはずです。また、打5索を回答した方は正解見っけてやったぜ!! 絶対コレだろう。と思ったのではないですか? 緑一色手替わり待ち。これしかないと。しかし、しかしです。違うんですよ。私が選んだ選択は。打7索です。 スタイルの差です。守備力ある打ち手であれば12000に満足出来るのでしょうが、私は攻める麻雀です。そうなると東1局の12000は決定打になりません。ここまで材料があるんです。どうせなら決定打を作りたい。そう、7索は迷彩の為に捨てて使う。放ることでその価値が生まれる材料だと私は解釈しました。まだ4巡目ですからね。迷彩を作るにはベストのタイミングかもしれません。 そして、長谷川雅史さんもここで7索を選択して、その打ち筋に惚れ込んだ春子さんが後に結婚相手となったわけです。人生何がどういう理由で運命が動くかわかりませんね。 さて、そんなわけで長谷川夫妻の馴れ初めは麻雀でした。10代の頃の話です。それなのにいまだに麻雀を習おうとしているのはどういうこと? という疑問があるかもしれません。でも、あり得ることですよね。ご存知の通り、麻雀って遊ぶだけなら容易ですから。しかし、強くなりたいと思い始めたら難しい。終わりの見えない鍛錬の道が始まってしまうのです。 この日、春子さんは私にこう尋ねました。「小林先生はどうしてそんなに強いの? 何か強くなれるコツとかあるのかしら」「どうしてでしょうね。おれもよくわかりません。おれはとりあえず目の前の問題を解くことにだけ集中して生きてきました。この一局をどうしたらアガれるのか。そればかり考えてきた。 ずーっとそうやって繰り返していたら気が付いたら強くなってましたね。目的なんて無かったです。先のことなんて考えたこともない。そんなもんです」「そんなもんですか」「ええ」 そんな会話を春子さんとした日、春子さんにこんな手が来ました。春子手牌一一一六六④④234(中中中中) ドラ4 新ドラ5 中を暗槓してドラ
last updateLast Updated : 2026-04-29
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第2部 三章【コバヤシ君の日報】その2 第一話 四暗刻のエミ

11.ここまでのあらすじ 麻雀アクアリウムで働く小林賢は一風変わった日報を書くということでちょっとした有名人だった。 日報により上層部に気に入られた小林は麻雀教室の講師をやるように命じられる。そこには、小林のファンである長谷川夫妻が必ず来てくれていたが、ある日を境に長谷川夫妻が来なくなった――【登場人物】小林賢こばやしけん主人公。いつも一生懸命な麻雀アクアリウム渋谷店の責任者。役職は主任。渡辺健司わたなべけんじ麻雀アクアリウム渋谷店副店長。小林の同級生で相棒。鈴乃木大河すずのきたいが麻雀アクアリウム会長。現場は表面上引退して側近たちに任せている。上村大地かみむらだいち麻雀アクアリウムの関東エリア担当スーパーバイザーにして会長側近の1人。杜若蘭かきつばたらん麻雀アクアリウム上野店のチーフ。ギャルをそのまま大人にしたような女性。スタイル抜群で背も高い魅力的な上野店の主力スタッフ。その2第一話 四暗刻のエミ 渋谷店に長谷川夫妻が見えなくなってはや数ヶ月――「しかし、全く来なくなっちゃったわねぇ。長谷川さん」「ほんと、なんでだろうね」「まあ、お客さんなんて本来そんなもんじゃないのぉ。別に約束してるわけじゃないんだし」「そうなんだけどさ。でも、やっぱりちょっと寂しいよ」「そうねぇ…… まあ、こればっかりはね。その代わりってわけじゃないけど今は笑子(えみこ)ちゃんがいるじゃない」 長谷川夫妻が来なくなった後に恵美笑子(えみえみこ)さんという20代後半くらいの女性が新規で来店してリピーターになっていた。とくに、麻雀教室は欠かさず出席していて熱心に聞いてくれるので教える方もやりやすかったし、やりがいも感じていた。「恵美さんね。しっかり打てる打ち手なのに熱心に勉強しててえらいよね。麻雀打ちたるものああでなければ」「かわいい顔して麻雀は豪快だしねぇ。知ってる? 彼女の二つ名。『四暗刻のエミ』って言われてんのよ。まあ、あの子の場合自分から言ってる可能性もあるけど」「いや、あれはケンジが言い出したらしいよ。恵美さんは朝早いから遅番とも1、2回打つでしょ。先月その遅番との数回の間だけで四暗刻4回ツモったんだって」「4回! そりゃあ二つ名もつくわね。私、四暗刻なんてここ半年近くアガってないわよ」「おれも、テンパイまでは行くん
last updateLast Updated : 2026-04-30
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第2部 三章【コバヤシ君の日報】その2 第二話 交換条件

12.第二話 交換条件 蘭ちゃんは以前「笑子ちゃんはきっとケンちゃんに気があると思うなー」などと言っていた。恵美笑子さんは既に基本は出来ていて、それでも麻雀教室にせっせと足を運ぶのはおれに気があるからではないかと思うのだと。そうかなあ? そんなことないと思うんだけど。 蘭ちゃんがいらんことを言うから少しだけおれは気になってた。ま、仮にその読みが当たっていたとしてもどうしようもないだろうというのがおれの読みではあるが。だって…… すると、ほどなくしてバタバタッと慌ただしく入ってきた男性がいた。「いた! 探したぞ笑子! ほら、もうやめて帰れ」「いや! 強引なことはやめてよ。ゲームセンターじゃないんだから半荘終わるまでは待ってよね!」「あの、こちらの方は?」「うちの旦那。ごめんなさいね、騒がしくて。初回だけど今日はこれでラス半にしていいですか」 ほらね。だと思ったよ。いや、普通に考えて『恵美(えみ)家』に産まれた子に『笑子(えみこ)』とは命名しないわな。既婚なのは容易にわかることだ。「えぇ? 初回なのにもうやめるんですか? それにラス半コールはゲーム開始時にしてくれないと……」とバイトの神戸緋呂斗(かんべひろと)が空気の読めないことを言う。 小林は(ヒロトお前、この雰囲気の中よく言えたな。空気読めっての。だから麻雀勝てないんだぞ。麻雀は空気読むゲームだからな。ただ…… 良く言った)と思った。 すると蘭も「カンベくぅん。ここは空気読まないとぉ。急なお迎えが来たんだから仕方ないじゃなあい? 空気が読めないと麻雀は勝てないわよ。このゲームは空気の読み合いなんだから。ただ、きみのその真面目さはいいトコだけどね。お姉さんは真面目な人はスーキ。うふふ」「あっ、はい。すいません(?)」 そんなやり取りを聞いていた笑子さんの旦那さんは「いや、申し訳ない。そうだよな、いきなりはよくない。もう1ゲームやって行こう」と言い出した。「ホントに?!」と笑子さんは驚いた。この驚きようからしてそんな融通の利く旦那ではないのだろう。笑子さんは何かあるのではないかと疑う目で見る。「た・だ・し!」「(ほらきた! やっぱり)ただし、何?」「おれもやる」「えっ?!」「次のゲームはおれも参加する。学生の時以来だが、当時は強かったんだ。久しぶりに牌を握ってみよう。それで、笑
last updateLast Updated : 2026-05-01
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第2部 三章【コバヤシ君の日報】その2 第三話 笑子のプライド

13.第三話 笑子のプライド 笑子との1ゲーム目が終わり、2ゲーム目。笑子がここに二度と来れなくなるか否かを賭けた勝負が始まろうとしていた。「店側はもちろん恵美さん(笑子)の味方をしたいのは山々ですが、それではバトルにならない。ここは公平な麻雀をします。 あくまで、このゲームにおいて自分に有利になる選択。自分本位。必ず自分の着を上げるための判断をすることを誓います。それでいいですか」と小林が提案した。わざわざ抜けたり別卓のお客さんを移動させたりするのが面倒だったのでこの条件を先に提案することにしたのだ。「それでいい」「先生、巻き込んでしまってすみません」「いえ、構いませんよ」『ゲームスタート』 掴み取りで場所決めを行って、あらためて勝負を開始した。東家 杜若蘭南家 小林賢西家 恵美笑子北家 恵美章一「ロン!」 「ツモ」「ロン」「ツモ!」 勝負は一進一退のいい勝負だった。旦那さんも得意だと言うだけはある、なかなか鋭い麻雀をしていた。 そしてオーラス。東家 恵美章一 26000点南家 杜若蘭 36000点西家 小林賢 21900点北家 恵美笑子 16100点ドラ北 この状況であった。すると笑子に渾身の手が入る。笑子手牌 11巡目 切り番一一一三三三11566東東東(どうする……? リャンメンに受けてリーチツモか直撃で旦那には勝てる。それを勝負してる戦いだ。でも、でも、私は………… …………私は! 四暗刻のエミだ!!)「リーチ!!」打5 気合いの、プライドの四暗刻リーチ。アガリ牌の枚数は半分に減るが、笑子にはどうしてもリャンメンリーチは打てなかった。「チー」 容赦なく一発を消す章一。それはそうだ。章一もまた負けるつもりはない。 章一は一発消しだけしてその後は安全牌を切り出した。どうやら本命牌を引いたらしい。流れてしまえば二着でOKだからこれは当然の選択だった。そして笑子のラストツモ。(お願い! お願い! お願いよ!! 私はここでまだ学びたい! 遊びたい! 大好きなの! アクア渋谷店が!! 四暗刻の神様! お願いよーー!!) ゴリッと引く牌の感触が彫りの深いデザインを思わせた。ソーズだ。しかし…… ツモ9(ああ……) 笑子は力無く9索を河に置いた。リャンメンにしていたらツモれたのだろうか。そ
last updateLast Updated : 2026-05-02
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第2部 三章【コバヤシ君の日報】その2 第四話 牌で奏でる交響曲

14.第四話 牌で奏でる交響曲「ムグムグ…… どう思う? はみむら(上村)」 鈴乃木会長は会長室で昼飯を食べながら小林の日報を読んで考えていた。シャーク君箸置き(600円で販売予定)をちゃんと使っている。「小林のクイズの話ですか? これは多分、ハイテイの一翻がないと打点が足りない手とかじゃないですかね。リーチ者にハイテイを回せばハイテイでも出てくるわけですから」「なるほどな! それだ、きっと。さすがだ上村!」「ありがとうございます」──────「ツモ!!」笑子手牌一一一三三三1166東東東 1ツモ「どういうことだ! なんでリーチ者にハイテイを回す鳴きをしたんだ。それも同巡2鳴きしてわざわざ。公平な選択をする約束はどこにいった?! 明らかな不正だ。このアガリは無効だろ」と恵美章一さんはまくし立てるような勢いで異議を申し立てた。 「大きな声を出さないでよ。小林先生たちは公平に行うと言ったわ。ならこの鳴きも絶対にそのルールを守っているはずよ。例えば、役無しドラ3多面待ちとかね」「さすが恵美さんですね。御名答です!」 そう言って小林は手牌を公開した。小林手牌 ドラ北二三四伍六22北北北(999)「役無しドラ3だからハイテイじゃなきゃアガれない。アガリ牌以外は無条件にツモ切りになるリーチ者にハイテイを回せば勝算があると思ったんだけどね」「ぐっ…… 理に適っているな……。疑ってすまない。だが笑子のそのリーチ宣言牌はなんなんだ。なぜ566から5索切りなんだ。無理にトップを狙う必要はないだろ。二着のおれを抜けばいいという勝負なんだからリャンメンリーチにしたらいいものを。負けたら後のない戦いで……」「うん、これはさすがに迷ったんだけどね。でも、私の先生は小林先生だから。小林先生なら絶対にこれをリャンメンリーチはしないし。……これは誰にも譲れない私の矜持……。私は『四暗刻のエミ』だから、ね!」「そぉねえ~。条件が条件なだけに私ならリャンメンだけど小林君はここで四暗刻狙わないなんてことないでしょうねぇ」「四暗刻のエミなんて二つ名で呼ばれてんのか。よっぽど好成績なんだろうな。なのにまだ麻雀教室が必要なのか? 今だってトップだったのに」 それはそう。と小林と蘭は思った。すると笑子は隣の卓を見た。「そこの卓を見て。あのお爺さん4人はここの常連客
last updateLast Updated : 2026-05-03
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第2部 三章【コバヤシ君の日報】その2 第伍話 ケンジの日報

15.第伍話 ケンジの日報 時は少し遡り渡辺健司副店長が久しぶりに日報を書くことになった日のこと。 健司は副店長になったら寮を出ようと決めていた。 寮というのは若者たちのプライベート空間だ。プライベートの時間にも上司がいたりしたら気が休まらない。『上司は寮を出るべきだ』というのが健司の考えだった。本当は主任の頃から出ていくべきだと考えてはいたが寮費の安さを考えるとどうしてもお金の余裕がないうちは仕方ないかなと甘えてしまっていた。(ちなみに、アクアリウムのバイトには2種類あり、社員希望のバイトとそうでないバイトに分かれていた。社員希望で入社したのであればバイトであれ社員寮に住める仕組みだ) そして、健司は副店長になったので駅徒歩9分の所に住むことにした。スーパーやコンビニも近くて住みやすかった。ただ……(行きはいいんだよな。夜だし体力も全回復してるから。徒歩9分なんて楽々歩けるけど、問題は帰りだよね。全回復してるからの9分なのであって、12時間労働後の疲労が溜まった身体では到底9分なんかじゃ帰れない。そのうえ陽射しも…… ホント容赦なく浴びせてくる。高い建物もあまりないから日かげもないし。自転車を使うには近いけど歩くと帰りは遠く感じる。徒歩9分てのは絶妙な罠だなあ)などと考えながら帰り道をひたすら歩く健司。徒歩9分なはずの距離が永遠にも感じられた。遠い。「ハァ、ハァ、帰ったら眠くならないうちに日報だけ書いて、あとはすぐに風呂入って寝よ……」 5月なのにやたらと暑い。近年は異常気象だというが基本的に雀士は外に出ないからあまり関係ない。ほんの数十分。通勤時間の中の外を歩く数十分だけ異常気象が悪い方向に作用しなければいいだけだ。それだけなのにこんなにキツイと感じる。甘い、軟弱、と言われようと、キツイもんはキツイ。「今日は恵美さんに会えなかったし……」 恵美笑子は遅番にとっても大切な客であり、アクア渋谷店の癒しであった。とくに深夜帯は危険ということもあり女性を働かせていないので遅番にとって早朝に来店する笑子は心のオアシスのような存在になっていた。(恵美さん、なんで来なかったんだろう。今日は来る曜日だったのに)※24時間営業のボーリング場にあるゲームコーナーで麻雀闘技場のイベントをやっていたからである。ちなみに笑子の最推しは玄人好みの地味だけどここぞ
last updateLast Updated : 2026-05-04
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第2部 三章【コバヤシ君の日報】その2 第六話 編みぐるみ

16.第六話 編みぐるみ その日、レジ奥のスペースで小林はせっせと編みぐるみを作っていた。すると「そんなとこで何やってんすか主任」と神戸緋呂斗(かんべひろと)が奥をのぞき込んできた。ヒロトは渋谷店バイトの中では最も真面目で小林の信頼する部下の1人である。「んー、編みぐるみをな。もうそろそろしたら七夕だろ。短冊と一緒につるしたらかわいいかなと思って」 小林が作ってる編みぐるみは麻雀牌だった。『中』と『白』はもう完成していて今は『発』を作っているようだ。画数が多くて難しそうに思えるが何とも器用に編んでいる。「上手いもんすねえ。手先が器用なんですね主任」「そうでもないさ、最初からできたわけじゃない。昔、長谷川さんの奥さんに教えてもらったんだ。ヒロトもやるか?」「おれはいいっす。そういうのは苦手だし」「そうか、じゃあ短冊でも作っといてくれ。折り紙を切って穴あけパンチで穴作るだけだから」「ほんと、イベントごとに熱心ですよね主任って。七夕なんて気にしたことないっすよおれ」「そうか? まあ、言われてみればおれは俳句も好きだし、季節を感じることが好きなのかもしれないな」「ちょっと変わってますよ、主任は」「そうかな」「そうですよ。でも、良いことだと思います。ダメ人間が多いこの世界に心のキレイな人がいる感じ」 ふーん、おれって変わってるのか。と小林は初めてそんなことを思った。変わった仕事をしてる認識はあるけど、自分が変わった人だったとは知らなかったのだ。「ところで、ある噂を耳にしたんですけど。主任ってプロ試験受けるっていうの本当ですか?」「なんだって? 誰がそんな話を?」「上村SVと渡辺副店長がしてましたけど。聞いてないですか?」「まっっったく聞いてない!!」 当事者を抜きにして計画が進む。この会社にはよくあることだ。というか毎回そうだ。だが、毎回毎回いいかげんにしろと思うのももう飽きた。またいつものパターンだ。 そんなことを思っていたら小林のケータイが揺れた。ピ「ケンジか…… 聞かないでも内容は概ねわかってるよ」『え、そーなの? プロ試験受けて欲しいっていうことなんだけど』「わかってる。強制なんだろ。当然試験料は店持ちでいいんだよな?」『た、多分』「自腹じゃ絶対受けないからってSVに言っといて。じゃ、いま忙しいから(ひまだけど)
last updateLast Updated : 2026-05-05
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第2部 三章【コバヤシ君の日報】その2 第七話 短冊

17.第七話 短冊「渡辺、例の件。小林に伝えてくれたか」『連絡しておきました。試験料は店持ちですよね? と聞かれました』「店持ちでいいと言っておいてくれ」『わかりました』────「ふう、抜け目ないヤツだ。会長、小林はプロ試験の受験を了承したようです」「よし、容姿と実力とユーモアを備えた小林だ。プロになればスター選手になるだろう。今後は麻雀アクアリウムの看板選手にして盛り上げていくぞ」「うまくいくといいですね」「小林ならやってくれるだろう」「渡辺はいいんですか?」「まずは1人。うまくいったら増やす。徐々に徐々にだよ。いずれ上村にもやらせるかもな」「ええ? 私はそんな実力はないですよ」「ないならつける。そういうものだろ」「お、会長。残念なお知らせです。日本プロ麻雀師団入団試験には年齢制限がありました。私は試験を受けれません。いや~残念だ」 残念と言いながら嬉しそうにする上村。「上村のために新団体でも作るか」「や、やめて下さい! 冗談ですよね?!」「さあ、どうだろうな? クククッ」「会長~!」 これがきっかけで鈴乃木大河は後に【麻雀真剣師団体TUIKA(ツイカ)】という新団体を立ち上げることになる。◆◇◆◇ 小林がプロ試験を受けることはあっという間に店中の話題になっていた。「小林さんなら受かるよ。がんばって!」「小林プロかー。いつかなるとは思ってたんだよ」「ていうかさ、小林さん程の雀士がプロじゃないなら誰もプロとは言えないよね。絶対、競技プロになるべきだよ」 そんなことをみんな口々に言うが、なぜみんなそれを知っているのかと言えば、ヒロトだった。 ヒロトは真面目ではあるが、かなりのおしゃべりでもある。そして、誰にも言うなよとかの口止めはしていない。(仕方ないか。まあ、いずれわかることだ)と、小林は割り切ることにした。ヒロトはなにも悪くない。 そして、七夕飾りを準備して短冊も用意。願い事書いて吊るしていいよ。と言って店の中央の柱に縛るようにして置いたら奇跡のようなことが起こった。⦿小林さんがプロになりますように。⦿小林さんが合格しますように。⦿小林さんプロ試験絶対合格!⦿小林さん合格!⦿小林賢プロ首位合格!⦿小林さん合格 なんと! 全ての短冊に同じ願いが書かれていたのだ。いや、ひとつだけ首位とかいう難
last updateLast Updated : 2026-05-06
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第2部 三章【コバヤシ君の日報】その2 第八話 プロテスト試験勉強

18.第八話 プロテスト試験勉強 小林は試験へむけて過去問を検索して猛勉強をしていた。(点数問題や待ち問題は簡単だけど一向聴受け入れ枚数問題は難しいな。普段そんなの意識したことないから)「ふぅ。けっこう疲れるな」「なーにそれ。過去問?」「うん、けっこう面白いよ。東1局親番に倍満をツモられました。どのように支払いますか? とか」「なにその問題。8000点の支払いでしょ? 普通に万点棒出して二千点お釣りもらっちゃダメなわけぇ?」「それだと不正解」「なんでなんで?」「子は五千点棒で払って千点の釣りなのは決まりでしょ」「それ以外はないわね」「すると子へのお釣りで千点棒を二本消費したわけだから。残り二本。それを親が万点棒で払ったら……」「そっか、アガった人のリーチ棒がなくなっちゃう!」「そういうこと。なのでこの場合は『8000点ジャストで支払いする』が正解」「なるほどねぇ~。さすが、プロ試験。ためになるわねぇ」「いつもは何となくで点棒授受してるからね。今回おれも勉強になったよ」 小林は基本的に勉強はできる方だ。やり始めたら集中して取り組める。ただ、小林なら絶対に合格すると周囲の皆が思っていることや、七夕の短冊に全員で合格を願ってくれていることが、とてつもないプレッシャーになっていた。(万が一にも不合格なんかにはなれない) 試験日は7月20日。まだ日はあるが少しも気を抜けない。 そんなこんなで今日は七夕。ついにその短冊のほとんどが小林合格と書いてあるまま願いを届ける。ちなみに、小林本人はと言うと⦿長谷川さん夫妻が息災でありますように と書いていた。お人好しというか、なんというか。それでこそ小林である。 ◆◇◆◇ 渋谷店日報日報担当責任者 小林 昨日は七夕でした。私が作った編みぐるみと神戸君が作った短冊をたっぷり飾ってそれっぽい行事になりました。特別なイベントを行ったわけではないのですが、皆さん短冊に何か願いを書いて下さいねとお願いしたところ、その9割以上の方が私のプロ試験合格を願ってくださって。 感動しました。私は本当に幸せ者です。 これはなんとしても合格しなければなりませんね。 ところで、プロ試験の過去問を調べていたらこんな問題がありました。面白かったのでここに書いておきます。正解は次回の日報で!【問題】三三1
last updateLast Updated : 2026-05-07
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第2部 三章【コバヤシ君の日報】その2 第九話 美人姉妹 

19.第九話 美人姉妹「うーん。3面待ちを作るとどうしても高め安めができるな…… 上村! これ、わかるか? わかるならヒントくれ」「7日の小林の日報ですか? 私はわかりましたよ。かなり考えましたけど。あれ、ちょっとイジワルなんですよ」「イジワル?」「いや、なにも嘘とかついてるわけじゃないけど。なんて言ったらいいんでしょうかね。先入観が邪魔してくるというか。いや、そういうことかよ! って思ったといいますか」「ふうん…… まだ答え言わなくていいぞ。もう少し考えてみる」「わかりました。でも、そろそろ小林が日報をあげる時間になります。読まないわけにもいきませんし、タイムリミットは近いですよ」「わかってる」♪~「あ、言ってるそばから来ましたよ」「ぐあー! 残念。わかんなかった!」◆◇◆◇ 最近出た辞令で杜若蘭チーフが主任に昇級していた。それにより蘭も社員日報を見れるようになった。チーフまではバイトリーダーのような扱いで時給制だが主任からは社員扱いの月給制なのである。「ねーケンちゃん。昨日の日報の問題。答えはなんなのぉ」「それなら新しい日報に答え書いたから読んでみてよ」「あ、もう上げてるの? 読む読むー」 蘭はケータイを開いて日報を確認する。「………………こーゆーコトね。なるほどね。はいはい。なんていうか…… ひっかけじゃんこれ!」「んまぁ、ひっかけといえばひっかけかもね」   答え3.7の2枚を追加する。三三123《3》456《7》7892.5.8待ちピンフのみ「まさか一気通貫になってないとはねぇ~」「ちょっと面白いよね」「ケンちゃんはこの問題わかったの?」「まあ、クイズは得意なので」「アタマやわらか~い」「プロ試験、この手の問題ばっかりなら逆に安心なんだけどな。まあ、そうもいかないから一般常識とか漢字問題とかにも備えておかないとね」「ケンちゃんは真面目ねぇ。そんな頑張らなくても絶対合格すると思うけど」「油断して落ちたら笑えないので。頑張ります」────── ――そして試験日。(よし、過去問は全て解いた。わからない問題はひとつもない。常識問題も大丈夫。漢字も覚えた! 死角なし!!) 「っし、行くぞ!」 満を持して試験会場へ。2列に並んで受付を待つ。 すると受付にはよく知った顔がいた。「はい、名前
last updateLast Updated : 2026-05-08
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