All Chapters of 【牌神話】〜麻雀烈士英雄伝〜 師: Chapter 21 - Chapter 30

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第2部 三章【コバヤシ君の日報】その2 第十話 合否発表

20.第十話 合否発表 プロテストはたっぷり勉強していたからほとんど解けた。過去問を解いていればそれの応用で半分以上はわかるものだった。だが、そうでないものもあった。問 親と子がダブロンしました。親と子の手牌はなんと全く一緒でした。 しかも、高め安めがあり、その高め安めの打点も親と子で同じになっていました。このアガリの牌姿を答えなさい。(なんだこの問題。親は子の1.5倍の打点となるルールがあるのに同じ形で同じ点数になった。というわけか…… なるほど、面白いな。これは今日の日報のネタにしよう) 試験の最中に日報のネタのことを考えてる余裕がある。そのくらい小林は完璧に全問できた。いや、厳密にはわからない問題もあったが、それは一般常識問題なので知識がない。知らないものはどんなに考えてもムダである。ピピピピピピピ!「はい! そこまで。鉛筆を置いてください。答案用紙を回収します」 その後は小論文を書いたあと面接。そして牌を使った実践試験。という流れだった。 多くの人は小論文で手こずるらしいが、毎日のように日報という名のブログを書いている小林にはこの程度の文字数を書くくらい造作もないことで、むしろマスが足りなくて調整したくらいである。 面接も問題なく終えて実践試験もしっかりこなした。 ――30分後ピンポンパンポーン『はい、では採点が終わりましたのでこれから合格発表をします。名前を呼ばれた方から順にプロ麻雀師団証明書を受け取りに並んで下さい。ちなみに今回、テストで90点台を出した人が2人います。実に素晴らしいことです。では、名前を読み上げます――』 小林は90点以上の手応えを感じていたのでもしかしたら首位合格かな? とワクワクした。しかし。『首位! 受験番号41番。氷海恵美(ひょうかいめぐみ)96点』 「はい」 その子は普通の女の子だった。むしろちょっとヤンチャなのかなと思わせる見た目だ。髪色は金に近い茶だしピアスの穴がすごい。(彼女が首位合格か、こう言っちゃ悪いが、見た目からはわからんな~)『続いて2位は94点。受験番号7番。小林賢!』「は、はい!」 こうして小林は無事にプロライセンスを獲得した。その成績は受験者48人中2位!◆◇◆◇ 渋谷店日報日報担当責任者 小林 こんばんは、渋谷の小林です。今日はプロ試験だったのでギ
last updateLast Updated : 2026-05-09
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第2部 三章【コバヤシ君の日報】その3 第一話 引きこもり

21.ここまでのあらすじ 会社の意向でプロ師団の入団テストを受けることになった小林。 みんなの応援もあってか、テストは100点満点中94点という高得点を出して見事2位合格。 一方、長谷川夫妻はまだアクアリウムに姿を現さないのであった。【登場人物紹介】小林賢こばやしけん主人公。いつも一生懸命な麻雀アクアリウム渋谷店の責任者。今回プロ麻雀師団に入団し、プロ雀士になった。渡辺健司わたなべけんじ麻雀アクアリウム渋谷店副店長。小林の相棒。鈴乃木大河すずのきたいが麻雀アクアリウム会長。現場は引退して側近たちに任せている。上村大地かみむらだいち麻雀アクアリウムの関東エリア担当スーパーバイザーにして会長側近の1人。杜若蘭かきつばたらん麻雀アクアリウム上野店のチーフ。ギャルをそのまま大人にしたような女性。スタイル抜群で背も高い魅力的な上野店の主力スタッフ。神戸緋呂斗かんべひろと麻雀アクアリウム渋谷店のスタッフ。バカがつくほど真面目でまっすぐ。隠し事は苦手ですぐ言ってしまう方。それゆえ小林たちから信頼されている。長谷川春子はせがわはるこ麻雀アクアリウム渋谷店の常連客。しかし、ある日を境に来店しなくなってしまった。その理由とは……?長谷川雅史はせがわまさし長谷川春子の夫。ゲームセンター『ロング』の2代目経営者。その3第一話 引きこもり「上村、あの問題わかったか」「会長がそう来るだろうと思って考えておきました。わかりましたよ。かなり難しかったです。試験で出ても45分じゃ答えられなかったですね」「おお! さすが上村だな。私はもうギブアップだ。答えを教えてくれ。小林の日報は今日は無いからな」 小林は日報を次の日の朝から昼の時間に上げている。しかし、今日は前日がプロテストだったので小林の日報がない。回答編は明日の朝から昼ということになる。せっかちな鈴乃木大河はそこまで待てないようだった。「これ、答えは複数ある問題ということがわかりました。ポイントは南場であることですね」「どういうことだ?」「つまり、こうです」そう言うと上村は上着からボールペンと手帳を取り出して書き出した。正解1一二二三三778899東東 南場「親だとチャンタリャンペーコー12000とイーペーコーのみ2000。子だとピンフチャンタリャンペーコー12
last updateLast Updated : 2026-05-10
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第2部 三章【コバヤシ君の日報】その3 第二話 合格祝い

22.第二話 合格祝い 小林なんて名前はたくさんあるから同姓同名だという可能性もあるんじゃないか? と雅史さんは言ったが、それはない。 私はどんな試験なのか興味があってプロテストの過去問を検索して見てみたことがある。それはなかなかの難しい問題で制限時間45分では私には時間が足りなかった。 いかに小林が多かろうと麻雀プロテストで94点をとれる小林賢さんはこの世に1人なはずだ。 そう思った春子は小林先生にお祝いをしてあげたいと思い、重い腰を上げた。「どこに行くの?」「手芸屋さん」◆◇◆◇「ケンちゃん、94点なんてすごいわね! 一般常識もできたの?」「いや、一般常識はわかんなかった。てか、蘭ちゃんの妹さんいたよ。あまりにも似ててびっくりした」「あー、茜が来てたんだ。かわいいでしょお。自慢の妹」「かわいいっていうか瓜二つだよね。前髪の長さしか違いが無いじゃん」「だからー、私そっくりでかわいい子だったでしょー?」「えっ、うん、そうだね」  蘭は、そうだろうそうだろうと満足気にウンウンと頷いていた。そんなにかわいいって言って欲しいのだろうか。言うのはタダなのでこれからは機会があれば「蘭ちゃんかわいいよー!」と言ってあげようかとも思ったが、恋人でもないのにそんな機会は普通無いわな。と打ち消した。「小林先生! プロテスト合格おめでとうございまーす!」 そう言って勢いよく来店したのは恵美笑子(えみえみこ)さんだ。「恵美さん、いらっしゃいませ。ありがとうございます」「先生なら絶対合格するって思ってましたよー! これ、お祝いのプレゼントです。必要になると思うから受け取って下さい♡」「え、ありがとうございます。なんだろう。開けてみてもいいですか?」「どうぞ」 それは薄いブルーからグラデーションして濃いブルーになっているワイシャツで、ところどころに白い鳥の刺繍がしてある。大空を鳥が飛んでいるデザインのシャツだった。「いつもTシャツとかパーカーだからワイシャツはあまり持ってないんじゃないかなって思って。競技麻雀の対局はワイシャツ必須でしょう?」「恵美さんありがとう! そうなんですよ。実はTシャツはたくさん持ってますけどワイシャツは真っ白のつまんない無地のものを1枚持ってるだけで、買わないといけないなと思ってた所なんですよー。うわあ、嬉しいな。リ
last updateLast Updated : 2026-05-11
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第2部 三章【コバヤシ君の日報】その3 第三話 神戸緋呂斗の鼓舞

23.第三話 神戸緋呂斗の鼓舞 長谷川春子がニットネクタイを完成させたのは3週間後だった。3色使って作ったからというのもあるが、春子にしては少し完成が遅い。春子は自分がなんとなく不器用になったような気がした。とは言え、時間をかけた分満足するものが出来上がったので春子は久しぶりにテンションが上がった。 ただし、リーグ戦第一節は明日である。ギリギリもいいとこだ。出勤しているかはわからないけど、今日『アクア渋谷』に渡しに行かないと間に合わない。「春子、出来たんだろ。渡しに行こう」「うん。でも、いないかもしれないし」「そんなの行かないとわからないだろ」「そうだけど待って、じゃあラッピングしてから」  ――数分経過(出来た!) 春子は完成したニットネクタイを丁寧にラッピングするとようやく腹を決めた。「……じゃあ、行きましょうか」◆◇◆◇「会長、明日は小林のプロリーグ初日ですが見に行きますか? 観戦は自由なはずです」「どうしようかな。たしかに明日はたまたま予定ないけどな」 とかなんとか言って、鈴乃木が本当は行く気満々なのを上村は知っていた。会長室の卓上カレンダーにしっかりマルをして『リーグ戦』と書いているのを気付かない上村ではない。(本当に素直じゃないんだから)「何か言ったか?」「いいえ。ちなみに私も明日は予定が少ないので応援に行こうと思っておりますが。新しく新宿店に社員希望で入店した研修アルバイトの『狭山学(さやままなぶ)』もいますしね。あ~、私一人だと2箇所見ることは出来ないしなあ。一緒にもう一人、来てくれる人がいたら助かるんですがねえ」「そういうことなら仕方ないな。ついて行ってやるか」「ありがとうございます。助かります。(やれやれ)」◆◇◆◇「いよいよ明日ね。私の妹の弟子には気をつけてね。かなり才能あるって茜が言ってたからぁ」「それって氷海恵美(ひょうかいめぐみ)プロだよね。96点の。やっぱり
last updateLast Updated : 2026-05-12
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第2部 三章【コバヤシ君の日報】その3 第四話 小田さんと石田さん

24.第四話 小田さんと石田さん 本当に久しぶりの再会だった。「長谷川さん!! 今までどうしてたんですか。おれ、心配で心配で。ああでも元気そうで良かった。また会えて、良かった……!」 小林の心から心配していたのが伝わる表情に思わず春子は目頭が熱くなる。「小林先生ごめんなさい、心配かけて。実は私、骨折しちゃって。歳取るとだめね。骨は弱いし治りは遅いしで。でも、もう大丈夫だから」「そうだったんですか。それは災難でしたね」「ほんとよ。ほんの小さな段差に躓いただけだったのに、まさか骨が折れるとは思わなかったわ」「もう復帰できるんですか?」「それがね。私、ちょっとボケちゃったみたいでね。前みたいにパッパパッパ選べないのよ。何回も試してみたけど、だめね。認めるのは悔しいんだけど、私はもう老人。この骨折でしばらくボーッと過ごしてたせいか記憶障害が始まったみたい。もう…… フリーでは…… 遊べないわ………」「ええっ?」「今日はコレだけ渡して帰るつもりで来たの。ハイ、これ。小林先生にプロデビューおめでとうございますのプレゼント」 春子は小林に綺麗にラッピングしたプレゼントを手渡した。「え、知っていたんですね、おれのプロ入りを。これは、なんだろう。今開けてもいいですか?」「どうぞ」 小林はラッピングの紙を破かないように丁寧に開けていった。きっとこの紙ひとつとっても春子さんはじっくり考えて選んでくれたと思うと破いて開くことなんかできなかった。「わぁ! 三元牌カラーのニットネクタイ!」「さすが、すぐに気付いてくれて嬉しいわ。うちの旦那は『イタリア?』とか言って気付いてくれなかったけど」「これ、春子さんのことだから手編みですよね。タグも無いし。まるで売り物みたいな出来栄えだなあ。いや、上手だ。ありがとうございますー」 そう言われて春子は嬉しそうに照れ笑いした。やっぱり作ってよかったなと心から思った。「ネクタイ。明日のリーグ戦に着けていってほしいな」「もちろん! こんな格好良いのもらったら絶対着けて行きますよー。ところで今日は本当に打たないんですか?」「今日はって言うより、もう、打てないのよ。言ったでしょ。ボケが始まったって」 すると話しを聞いていた手前の卓で打っていた達人級の腕前のお爺さんが話しかけてきた。「なあ、アンタ。おれの対面にいるこの
last updateLast Updated : 2026-05-13
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第2部 三章【コバヤシ君の日報】その3 第伍話 その自然こそが美しい

25. 第伍話 その自然こそが美しい  渋谷店日報 日報担当責任者 小林  昨日は良いことがありました。もう何ヶ月も来てなかったお客さんが久しぶりにいらしたのです。 長谷川春子さんと長谷川雅史さん。このご夫婦は半年以上来店が途絶えていました。それが私のプロデビューを知ってお祝いに来て下さったのです。  来店が途絶えていた理由は切ないものでした。春子さんが記憶障害になったかもというのです。迷惑をかけたくないから行かないと。でも、それって問題無いと思うんです(限度によりますが)。むしろウチみたいな低レート雀荘こそそういう高齢者の方たちの遊び場ではないかと。 私は春子さんがどんなものなのか確かめるために半荘2回ほど後ろから見させてもらいました。   うん、たしかに長考が多くなった。でも、許容範囲というか、もっと遅い人もたくさんいます。 ミスもありましたが、わりとしょうがないミスというか、そんな大げさに言うようなミスじゃありません。というかそのミスの中でひとつ面白いのがあったのでここに載せます。 春子手牌 ドラ⑤二二二三四伍六③赤⑤3455  南2局の親番で勝負所です。4巡でこの形になりました。良い感じです。 しかし、数巡ツモ切りが続いて8巡目にこうなりました。 春子手牌 ドラ⑤二二二三四伍六③赤⑤3455 一ツモ  いや、つまんな! なにこれ。ドラ2のテンパイとはいえ、とはいえですよ。これは取らずにするのかなー? と思いながら見てました。(うーん)と春子さん、少考です。そして 打5ダマ  取りダマ。アリですよね。私はこれはこれでいいと思います。すると次巡
last updateLast Updated : 2026-05-14
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第2部 三章【コバヤシ君の日報】その3 第六話 自分との約束

26. 第六話 自分との約束 (あっ、来ましたよ会長。小林です)(お、いい服着てるな。それに履歴書の写真で見るより男前だ)  恵美笑子さんのくれたブルーのシャツに長谷川春子さんの編んだニットネクタイをして新人プロ小林賢が登場した。 (上村は面が割れてるんだよな?)(去年1日同番しただけですし。今日はコンタクトにしてるんで大丈夫じゃないですかね)  上村は普段メガネだ。だが、メガネをかける変装は聞いたことがあるがメガネを外すのも変装になるのだろうか? 大胆すぎやしないか。すると 「あっ、上村SV! 応援に来てくれたんですか?! お隣の方は?」 (全然大丈夫じゃないじゃないか! 麻雀打ちの記憶力を侮りすぎだ)(あちゃ~。しくじりました) ※別にバレたからって問題ない。 「やあ、小林主任。今日からプロデビューだな。頑張るように! こちらの方は私の友人だ」「寅二郎(とらじろう)です。今日はプロリーグを観戦しにきました」 「(トラジロウ? ハンドルネームかな……?)はじめましてトラジロウさん。観戦、そうなんですね。では、『観ていて楽しい麻雀』を心掛けますので、応援よろしくお願いします!」 「あ、どうかギャラリーは気にせず。いつも通りの麻雀でいいので」 「あは、実はいつも『観ていて楽しい麻雀』を心掛けてるので、いつも通り打つだけですね!」 (いつでも魅せる麻雀をしてるってことか。ファンも多いはずだ) 「なぜそんな負荷になることを?」 「誰も見てないとしても、自分が
last updateLast Updated : 2026-05-15
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第2部 三章【コバヤシ君の日報】その3 第七話 リスペクトチョイス

27.第七話 リスペクトチョイスリーグ戦第一節 小林は絶好調だった。もちろん実力があるから勝つというのはあるが。例えば一回戦のこの手。小林手牌一一一九九②③③1366北 安全性の高い北をキープしての進行だ。 そこにツモ二萬と引き即座に採用し北をリリース。この反応速度が素晴らしい。ノータイム採用。それはつまり引く前からこの手の最終形に一一一二三九九①②③123をイメージしていたということ。しかしこの局、次の変化はツモ③筒だった。変化1一一一二九九②③③1366 ③ツモ こうなると三暗刻が本線なので二萬はシュンツ使いしない方針となる。それであれば③筒の3枚壁による安全性比較の観点から見て二萬は②筒より先に切るべき牌となるのでここで選ぶのは二萬切り。 そしてさらに次の変化はツモ九萬!変化2一一一九九②③③③1366 九ツモ 三暗刻テンパイだ。もちろんこうなると四暗刻変化まで見たいのでダマ。それはいい。 数巡この形のまま小林は場を見渡した。小林の読み(この局は全員押している。4索はもう品切れだ。1索も減ってきた。そんな中でタテにしか使えないはずの2索が顔を出さないのはどうもおかしい。もしかしたらこの待ちはもう無いのかもしれない) そして――変化3一一一九九九③③③1366 ⑦ツモ この時小林は(コレかもな)と思ったと言う。打1 なんと! テンパイ破壊。さらに3巡後もツモ⑦筒と重ね――「リーチ」打3 そして!「ツモ!(一発)」小林アガリ一一一九九九③③③⑦⑦66 ⑦ツモ(やってくれましたよ会長! 小林が、すごいことをしました!!)(だな、あんな手順は到底私にはできない!)(いや、私も一生ムリですよ!) 小林は常人にはとても作れそうにない役満を決めてリーグ戦第一節一回戦を制する。 そして続く二回戦「ポン」小林手牌七八九3346中中中(発発発)(発中テンパネ親で3900か)(7索は山にありそうです。リャンメンになるといいですけどね)「チー」打3小林手牌七八九6中中中(2チー34)(発発発)(チーして6索単騎?)(鳴く必要ありますかね……) すると小林の次のツモが2人にこのチーの意味を教えてくれた。ツモ白(2枚切れの白!)(まさかこの変化を見越してたのか) 白はあと1枚を狙い撃ち
last updateLast Updated : 2026-05-16
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第2部 三章【コバヤシ君の日報】その3 第八話 後付け読みの三元副露

28.第八話 後付け読みの三元副露 リーグ戦初参加の次の日。「速報見たわよぉ! ケンちゃんすごいじゃない!! 暫定首位なんて」「まあ、そうは言っても一回戦のトップ以外は小さいし二着に至ってはヘコんでる二着だから役満やった割にはたいしたことないけどね」「役満やったの!?」「うん、四暗刻」「そんな情報はどこにも無いわよぉ。代わりにものすごくマニアックな部分は記事にされてるけど」「どんなこと?」 プロ麻雀師団リーグ戦速報"新人プロ『小林賢』ギャラリー大勢背負う。 今日から始まったリーグ戦でひときわ目立つ、多くの観戦者を背負う選手がいた。『小林賢』 聞いたこともない名だ。 調べてみたら今期からの新人だという。新人? 5人ほど後ろ見してる人がいるが? C2リーグの新人プロにギャラリー5人なんてかつて見たことのない光景だった。私だってそんなに背負ってたことないのに。 どんな麻雀をするのか興味があり、私は6人目の観戦者になった。 南1局小林手牌 北家23456中中(発発発)(二三チー四) ドラ① 発のみの1000点。待ちはいい。1番期待できる1索が2枚飛びで7索も1枚切られてはいるがだからこそ出る可能性も高い。充分な最終形だ。このまま固定で押せば2副露して連チャンしようとしてるラス目の親を蹴るのに最適な手だ。あとはアガるのみというこの手格好から――「ポン!」打6(何?!) 11枚待ち(とは言え1索と7索が減っているから実質8枚待ちだが)の1000点を6枚待ちの2000点にしてどんな意味がある。この局の目的は親のアガリを邪魔することにあるはずだ。しかし。2副露してる親の手牌を覗き見て私たちギャラリーは完全にこの鳴きの意味を理解した。 親の手牌は白の後付けなのだ。 確かに、親は焦った仕掛けをしたことで役がある程度限定されていた。しかしそれを白であると看破して三元牌を2種晒すことで白が絶対に打たれない場にしてしまうのはすごい。これでは親の連チャンは相当厳しい。後付け読みの三元副露。こんな戦略があるなんて。 これを見て偶然だと思う人は多分このギャラリーの中にはいなかった。私自身もそうだ。それはこの小林という打ち手の所作。選択の正確性から、只者ではないことがヒシヒシと伝わるから。 結局、白が鳴けない親はノーテンでラスのまま。その後も
last updateLast Updated : 2026-05-18
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第2部 三章【コバヤシ君の日報】その3 第九話 日々研究 日々精進

29.第九話 日々研究 日々精進 長谷川夫妻はその日、小林のリーグ戦を見に行っていた。「しかし春子、本当に話しかけなくて良かったのか? 先生に挨拶くらいしたら良かったじゃないか」「いいのよ。あなたも見たでしょ、小林先生は私の編んだタイをしてくれてた。それでもう十分なの。それに、負けてたならまだ応援の声かけもするけど、彼は首位じゃない。それなら邪魔せずに見守るのがファンの矜持なの」「そんなもんかい。しかし、先生強かったな。隙がないとかの次元じゃないぞあれ。まだ若いのに、よほど研究してるんだろうなぁ」「格好良かったわよねー。※若い女の子も観に来てたわね。あの子もかなりのファンと見たわ。興奮する気持ちを抑えて何時間も静か~に観戦してからコソッと帰ったじゃない。あれがファンの行動なのよ」※恵美笑子(29)であるが。春子から見たら若い子。「春子、あの子と親友みたいになってたな。先生がアガる度に手を合わせて喜んで。名前くらい聞いたら良かったんじゃないか?」「それはそうね。でも、きっとまた会えるでしょ。その時聞くわ」 もちろん、また会える。長谷川春子は1週間後には恵美笑子と再会をすることになり、あっという間に仲良くなってその1年後には一緒に旅行に行くほどの大親友になるのだった。──── 小林の絶好調はリーグ戦だけではなく普段の麻雀もそうだった。そして、しばらくして冷静な小林はこう思うようになる。(これは、罠かもしれない)と。 そう、長期で続く絶好調というのは大きな目線で見ると罠なのだ。 もちろん、誰かが罠に嵌めようとして作ったものではない。だが、自然と発生したその罠に気付くことができる計算能力の高さが小林にはあった。 いま、なぜかどんな打ち方をしても大体勝てる。だからといって、それは正解ではないんだ。という意識を持てないとダメ。勝てる選択が正解ではない。正解を選んだ上での結果なら負けでもいいという意識が必要。それが麻雀を生業にする人の考え方なのだ。(なんの祝福か知らないけど今はとにかく勝てる。連戦連勝だ。けど、そんなことは続くわけない。そういう仕組みなんだから。偶然の偏りだ。ありがたいことだが、これが実力だなんて思い上がると痛い目みる日がきっとくる。だって、蘭ちゃんやヒロト相手にこんなに何回も偏って勝てるわけがないんだ。2人の実力はよーく知って
last updateLast Updated : 2026-05-18
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