All Chapters of 【牌神話】〜麻雀烈士英雄伝〜 師: Chapter 31 - Chapter 40

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第2部 三章【コバヤシ君の日報】その4 第一話 麻雀は過程が全て

30.ここまでのあらすじ プロリーグで雀荘でと活躍する小林。 長谷川夫妻も復活して活気づくアクアリウム渋谷店。その仕事ぶりを評価されて小林は新店舗『アクアリウム渋谷2号店』を任されることになる。【登場人物紹介】小林賢こばやしけん主人公。いつも一生懸命な麻雀アクアリウム渋谷2号店の店長。今回プロ麻雀師団に入団し、プロ雀士になった。渡辺健司わたなべけんじ麻雀アクアリウム渋谷店店長。小林の相棒。鈴乃木大河すずのきたいが麻雀アクアリウム会長。現場は引退して側近たちに任せている。上村大地かみむらだいち麻雀アクアリウムの関東エリア担当スーパーバイザーにして会長側近の1人。杜若蘭かきつばたらん麻雀アクアリウム上野店の主任。ギャルをそのまま大人にしたような女性。スタイル抜群で背も高い魅力的な上野店の主力スタッフだったが今回の辞令で渋谷店の副店長になった。神戸緋呂斗かんべひろと麻雀アクアリウム渋谷店のスタッフ。バカがつくほど真面目でまっすぐ。隠し事は苦手ですぐ言ってしまう方。それゆえ小林たちから信頼されており、この度チーフになった。長谷川春子はせがわはるこ麻雀アクアリウム渋谷店の常連客だったが、とある理由からしばらく来てなかった。心配事が杞憂に終わり、また常連客として復活した。長谷川雅史はせがわまさし春子の夫でゲームセンター『ロング』の2代目店主。基本的には春子の付き添いだが麻雀の腕は春子より上。恵美笑子えみえみこ小林を慕って来店する主婦。麻雀の腕は中々のものだが、それでも小林の麻雀教室に必ず来て一生懸命に学ぶ。二つ名は『四暗刻のエミ』その4第一話 麻雀は過程が全て 小林は主任から店長へと昇級し自分の担当店舗を構えるようになっていた。アクアリウム渋谷2号店。通称、アクア小林店。 元いた店舗のアクアリウム渋谷店はアクアリウム渋谷1号店と名前を変え、渡辺副店長は店長に、神戸緋呂斗はチーフに、そして杜若蘭は主任から副店長になり、担当店舗も上野店から渋谷1号店へと正式に異動することになった。「会長。杜若を上野から抜いて良かったのですか? その穴は大きいかと思われますが」「最近新宿店にアルバイトが増えただろ。だから新宿店の狭山学に上野店をやらせてみようと思う」「それは名案ですね。新宿店と違い、上野店は老獪な打ち手の多
last updateLast Updated : 2026-05-19
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第2部 三章【コバヤシ君の日報】その4 第二話 トンボ食いの青澤

31. 第二話 トンボ食いの青澤  その日はアクア小林店に小林の上司としてスーパーバイザーが配属されるということだった。 実際、アクア小林店には社員が少なく責任者不足であったので助かるのだが、ただこの『青澤正克(あおさわまさかつ)SV』という人がどんな人かよく知らないので不安があった。 青澤SVには会ったことはないが噂は耳にしたことがある。たしか、トンボを食べたことがあるとかなんとか。いや、どんな奴よそれ。という不安。  善人か悪人かは分からないが、やべえやつには間違いなかった。その人SVで大丈夫なん?  だが、青澤は雀士としては卓越していて、トッププロより強いかもしれないという話も聞く。 (あれ? 青澤SVが来るのって12時だよな。そろそろ来そうなもんだけど)  小林はそう思いながら麻雀を打っていたらふと気付く。(あれ、対面の人って誰だっけ) よく考えたら知らない人だ。新店で、しかも自分の店なのに知らない人がいるか? (こいつがまさか……)と思ったら急にその対面から話しかけられた。 「リーチのかけすぎだな」 「……はい?」 「小林賢。デキると聞いてきたが、まだまだ甘いな。素人を使う勝ち方を分かってない。そんなんだから俺に今負けるんだよ。いいか、くだらんリーチをかけすぎるな」「オッサン! 素人っておれらのことかよ」「他にいないだろ?」「ちょ、ちょっと待って下さいよ。あなたは誰ですか? 私はともかく彼らに失礼なこと言うのは許しませんよ」「俺は青澤だ。失礼もなにも事実しか言ってない」「あのですね。事実だと許されるなんて社会はこの日本には無いんですよ。上司だからって調子に乗らないでも
last updateLast Updated : 2026-05-20
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第2部 三章【コバヤシ君の日報】その4 第三話 テスト会

32. 第三話 テスト会  杜若蘭副店長と神戸緋呂斗チーフはいいコンビだった。融通のきく蘭が責任者となり、真面目で馬鹿正直な緋呂斗がその右腕となる。この凸凹コンビなのがとても良かった。 また、2人はお互いに想い合っているようであった。  真逆の性格の2人だが、むしろそれゆえに惹かれあったのかもしれない。まだ恋人というには早かったが、この2人が特別な関係になるであろうことは誰の目にも明らかだった。が、それはまだ先の話。   しかし、この日はその2人に少し進展があるのであった。    アクアリウム渋谷1号店は2人が中心になって小林麻雀教室を引き継いでいた。 2人の行う麻雀教室は真面目で合理的な神戸先生と勢いと直感の蘭ちゃん先生とで様々な考え方が飛び交うので面白いと評判だった。 全く違う考え方の2人だが、お互いがお互いを尊重し合っていたのでぶつかり合うことなく素直に学び合うことができた。  麻雀は勝ち方がたくさんあるゲーム。その人に合う勝ちパターンというのは人それぞれだ。  例えるなら格闘ゲーム。 最強キャラはいるものの、みんなそれを選ぶわけではない。各々自分の好きなキャラクターを使い、それで勝ちにいく。  麻雀もそう。杜若蘭には杜若蘭の勝ち方があり。神戸緋呂斗には神戸緋呂斗の勝ち方がある。ただ、共通しているのは2人とも強いということ。  ただ問題があるとしたら、この2人の人間性をもってしても、小林1人の人気には及ばないということだ。  (ハァー。やっぱケンちゃんがいないとダメなのかしら。そらそうよね。私だってケンちゃんのことは好きだったし。ヒロトくんもケンちゃんのこと慕ってたし。彼がいな
last updateLast Updated : 2026-05-21
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第2部 三章【コバヤシ君の日報】その4 第四話 3センチのヒール

33.第四話 3センチのヒール「ふうん、テスト会か。面白いこと考えたね」 渡辺店長は杜若副店長と神戸チーフの報告を聞いていた。「なにも難しいモノじゃなくていいと思うの。ただ、基本の確認という意味でもやる価値があると思うし。問題作りは私と神戸くんに任せてくれればいいわぁ」「例えばどんな問題を?」「そーねぇ…… 数字の問題がいいかな。麻雀とは(問1)種(問2)枚の牌を使用して行うテーブルゲームです。とか」「いいね。34種136枚というこのベースとなる数字を知らないでやってる人もいるもんね。数字を知らないで確率は計算できない。まさしく基本だ」「数字ほど確かなものは麻雀にありませんから。数値化は言語化より優れた情報です」とヒロトも言う。「数値は言語より上ね。なるほど」 そういえば、と。ふとヒロトは先日蘭に身長を聞かれたなと思い出した。「そういやこの間、身長聞いてきましたよね。あれも数値情報ですね」「そっ、そうねぇ」「?」「ニブいなチーフ。副店長が身長聞いてきたのはなんでなのかとか考えなかったのか?」「いや、べつに。ただの興味かなって」「そそそ、そうよ~。ほんと、ただの興味! ケンジくん! 余計なことは言わないでいいのよぉ?」 そう言うと蘭は渡辺をキッと睨んだ。「いいじゃん。誘えば喜ぶと思うよ」「だーかーらー! 余計なこというなってばっ!」(私とヒロトじゃ歳が離れすぎてるのに。私から誘えるわけないじゃない。バカ)「ははぁ。なるほど、年齢差が気になるのか。意外とバカだな蘭ちゃんも。ヒロトがそんなん気にすると思う? 絶対気にしないと思うけど」「はっ? ケンジくんはサイコメトラーかなにかですか?」「いや、触れてないし。そんなん見りゃわかるって」「どういうことなんですか? 僕にもわかるように説明してください」「だからー。蘭ちゃんはヒロトとイチャイチャキャッキャッしたいって言いたいけど言えない奥ゆかしい女性ってこと」「ちょっ! そこまでは思ってないわよっ!」「!! そうなんですか? え、なんでそれが身長聞いてきたことからわかるんですか? 関連性が知りたいです」「だからさー、蘭ちゃんは女性にしてはかなり高身長だろ。ヒロトとあまり変わらない。横を歩く時に何センチのヒールまでなら履いていいかを知りたかったんだよ。それはつまりデートがし
last updateLast Updated : 2026-05-22
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第2部 三章【コバヤシ君の日報】その4 第伍話 牌覇王

34.第伍話 牌覇王 青澤SVはかつて佐々木剛太(ささきごうた)という友人がいて青春時代のその全てを2人とも麻雀に費やしたのだそうだ。 毎日毎日対局して何回勝った負けたを繰り返したかわからない。若かったこともあり疲れ知らずで寝ずに対局。時間の許す限り戦っていたという。 だが、お互い短気なものだから。ある日、何切る問題の解答で答えが食い違い、熱くなり、それがきっかけで不仲になって今は連絡先も知らないとか。「奴は今なにしてんのか知らねーが。まあ、強いやつだったよ。あいつとの時間がおれを強くしたのは間違いないなー」という話を青澤はしてくれてた。 いま店が暇なのだ。なので自己紹介がてらお互いの昔話でもしようとなったわけだ。 小林はその話を聞いて(はーーー。なんつーくだんない理由で別れてんだろ)と思った。そしてふと気付く。(ん? 佐々木剛太?)「あの、SV。その人、おれ知ってました」「はぁ? 剛太をか?」「はい、なんかハッタリかますのが上手い人ですよね?」「お、そうそう! 間違いねーわ! それ、剛太だ」「現、牌覇王です。師団に所属してますね」「マジか!」  小林は「コレ」と言って歴代牌覇王一覧をケータイで開いて見せた。「マジかよアイツ~。ていうかそのタイトル戦、明日決勝じゃねえか。アイツはディフェンディングチャンピオンか。どこでやるんだろ。観に行こうかな」 牌覇王戦は前回優勝者は確実に次回決勝に参加のシステムだ。本戦シードどころではない。必ず決勝に参戦なので連覇しやすいタイトルだと言える。「SV明日って休みでしたっけ? (おかしい、明日はおれが休みなはずだ。チーフがいるにしても社員2人同時の休みが土曜日にあるわけが……)」「小林賢。おまえ休みだろ。譲ってくれよ!!」 (やっぱりーー)「悪いんですけど明日は予定が…」「予定が?」「いや、予定が…… 別に無いんです。(素直)無いんですけど6連勤して疲れてて、楽しみにしてた休みなんですから等価で交換はできませんよ。代わりにどこかで連休を下さい。そしたら納得します」 「ちえーー、しかたねえな。休みのバランス崩れるけどまあ、やむなしか」「おれは日曜日は麻雀教室で休めないから明日を譲ると最低でも8連勤になるんです。それでも明日の休みをよこせって言うんですよね? ならバランスとか言ってる場
last updateLast Updated : 2026-05-23
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第2部 三章【コバヤシ君の日報】その4 第六話 プロフィール帳

35.第六話 プロフィール帳 近頃は小林の日報に影響を受けたのか、ブログ形式の日報を書く社員が増えてきた。 しかし、小林のように文章の才があるわけではないので読みづらく、しかも文章に満足して肝心の数値を報告し忘れる者や、日付の書き漏れをしてる者などもおり、これでは報告書として扱えない。(送信日の日報であるかはわからない。事実、小林は前日の日報を翌日昼に上げるのが基本スタイルだ)「どうしたもんかな、上村。まあ、読んでる分には楽しいっちゃ楽しいんだが、しかし不備があるのはなー」「杜若蘭副店長は文章力はかなりありますが報告ミスが目につきますね。逆に渡辺健司店長は報告に漏れはないものの文章力がいまいち……。やはり小林の日報だけですね、ユニークかつ読みやすく、書き漏れや報告ミスも一切無いのは」「うん、書くのをやめて欲しいわけじゃないんだがな。なんとかならんかな」「そうですね。特に杜若の日報は面白さはピカイチなのでこのまま続けて欲しいですよね。彼女が書き漏れさえしなければ……。そうだ! 日報用の記入シートを作ったらどうでしょうか。日報担当責任者はこれに記入して報告するようにとあらかじめ報告欄を作っておいてやるんです。どうです?」「それはいいな! 上村。作っておいてくれるか」「はい、お任せください」◆◇◆◇おなまえ年齢性別誕生日血液型星座趣味ひとこと「……これは?」「日報シートの試作品です」「アホか! だれが小学生女子の大好きな《プロフィール帳》作れって言った。ちゃんと仕事しろよな! たくぅ」「面白いかなと思ったのですが」「バカが。面白いに決まってるだろ。だが、さすがにこれは不採用。次はちゃんとしたの作れよ。シンプルなやつでいいからな」「はい」◆◇◆◇日付店舗名担当責任者フリー売上セット売上フードメニュー売上その他売上備考欄・報告事項「そうそう、これでいいんだよ。ところでこの『その他売上』っていうのは何だ?」「はい、そろそろシャーク君箸置き(兼文鎮)などグッズ販売を本格的に行う時期かと思いまして、今までフードメニュー売上に混ぜて報告していたものをこの度きちんと分けるようにしてみました」「なるほどな、物品販売か。いいだろう。その件に関しては上村に一任する。部下を好きに使って今後も計画を進めること。あと、今期か
last updateLast Updated : 2026-05-24
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第2部 三章【コバヤシ君の日報】その4 第七話 大人気小説家『ゼロ』

36.第七話 大人気小説家『ゼロ』「蘭ちゃんってさ、何か趣味とかないの?」 神戸緋呂斗が唐突に杜若蘭に質問してきた。先日、蘭の自分に対する好意を知ってからというものヒロトも蘭のことが今まで以上に気になってきている。「なーにいきなり。趣味は麻雀よ。知ってるでしょ」「いや、それ以外で」「……そーねぇ。読書とか、趣味だけど」「あ、それでかあ」「何が?」「いや、最近僕も次期社員候補として日報のグループに入れてもらったんだけど、そこで蘭ちゃんの日報読んでびっくりしたんだよね」「え? あれ、ヒロトも読んでるの? てか、え? なんか変だった?」「いや、その逆。文章、面白いなーって。ただの素人とは思えない。日報というにはあまりにも長い文章だったけど最適な所に句読点があり、読みやすいように改行が行われ、場面場面で罫線(─)ダッシュ(―)ひし形(◇)などを入れて区切りを表現していたから、この人プロなのかなって。 文字数2000を軽く超えてるのに読んでて疲れないどころかもっと読みたくなる。だから、気になって。そーか。読書が趣味だったのかー」(ぎくり!)「そうそう、小林さんが蘭ちゃんのことを初め『蘭ちゃんさん』って呼んだ時に『のべ◯ちゃんさんか!』ってツッコミいれてたよね」「え、あのときヒロトくんいたっけ」「いましたよ。僕も応援で上野店行ってました。あの時のあれ、何のことかわかんなくてあのときは誰も追求しなかったけど僕は気になってさ、あれって小説投稿サイト『ノベルアルファプラス』のマスコットキャラクター? の名前だったんだね。調べてわかったよ。蘭ちゃんの文章ってそこで人気の『ゼロ』さんそっくりだもんね。ゼロさんの小説読んでるんでしょ?」(ぎゃあ! ヤバい! 私の秘密の趣味がバレてしまう)「ゼロさん? さあ、分かんないわぁ。私は読み専だし」「ヨミセンって?」「あっ、えと、読むだけで書かない人のこと」「普通そうじゃない? てか、ヨミセンなのに大人気のゼロさん知らないの? 書籍化もしてるよ?」(完全に墓穴掘った!)「あ~、知ってるかもしんないけど私は色々読んでるから。とにかく、私は書いてないから」「誰も蘭ちゃんが書いてるなんて言ってないでしょ。ていうか小説なんて普通書けないよ。あれは一握りの天才たちが作るものでしょ。すごいよね、物語を作れるなんて
last updateLast Updated : 2026-05-25
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第2部 三章【コバヤシ君の日報】その4 第八話 剛速球は名捕手がいてこそ投げられる

37.第八話 剛速球は名捕手がいてこそ投げられる月曜日「おはようございます」「おーす」 小林が出勤すると既に青澤が来ていた。青澤は遅刻をしない。そういう所は真面目であった。まあ、社会人として当たり前のことではあるのだが、ここアクアリウムにとってはかなり珍しい存在であった。(アクアリウムの連中は基本的に時間にルーズである。それはどの店舗でも責任者であろうともなぜか同じ、早めの出勤が普通とされる麻雀業界ではかなり珍しいこと)「今日で9連勤か。お疲れ、明日から3連休していいからな」「ほんと、誰かさんのおかげで疲労困憊ですよ。それで? 昨日は忙しくて話を聞くどころじゃなかったけど、例の佐々木剛太さんとは仲直りできたんですか?」「ああ、アイツな。応援の甲斐あって優勝したからさ、話しかけやすかったよ。負けたらすぐキレるからな」「へえ! すごい、連覇じゃないですか。で、連絡先は?」 約束を守ったか? という確認で小林は証拠の提出を求めた。「千葉県の個人雀荘で働いているんだってさ」「ふうん。で、連絡先の交換は」「いや、アイツも勝利者インタビューとか色々あったからな……」と言って青澤は小林から目を逸らす。「あー! 腑抜け! 青澤腑抜けSV! 約束はどうした約束は!」 そう言うと小林は『佐々木剛太麻雀』で検索して千葉県のどの雀荘で働いているかを特定した。「えーとなになに、千葉県津田沼リーチ麻雀『陽』佐々木剛太プロ常勤の店、ここだ。もちろん行ってミッションクリアしてきますよね?」「えっ、津田沼までわざわざ行くのか?」「トーゼンですよ! 貴重な休みを譲ったんだから約束は守ってくれないと。なあに7時間半も歩けば着きますよ」「歩くのか!?」「あ、自転車使います? そしたら2時間40分くらいだと思いますが」「いや、普通に総武線使わせてくれ。……俺が悪かったから」「では、次の休みを使って必ず津田沼『陽』に行って彼と連絡先を交換し、また以前のように剛太さんと仲良しになってきて下さい。これはおれとSVとの約束です」「おう……」◆◇◆◇「てなわけだからよ。剛太、お前が連絡先を交換してくれないと困るんだ。まったく変な部下を持っちまったよ。でも、いい奴なんだけどな」「何だそりゃ! 小林賢ってそんな面白い男だったのか。いや、小林賢は俺も知ってるよ。実技試験
last updateLast Updated : 2026-05-26
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第2部 三章【コバヤシ君の日報】その4 第九話 シフト作りはパズル

38.第九話 シフト作りはパズル 杜若蘭と神戸緋呂斗は2人の初デートの日取りを決めるために学生たちのシフト作りを頑張っていた。 シフト作りはパズルだ。ここにこう入れると連勤になってしまうし、この人は土日は出れないし、などの制限をよく考えながらバランスよく埋めていく。一見簡単そうでかなり難しい、責任者に課せられる難問のひとつだ。 これをクリアするのに必要なのは何よりも人望である。責任者とスタッフの信頼関係があれば少し無理なシフトも協力してもらえたりする。パズルゲームでいう『アイテム使用』のようなものだ。 杜若蘭は善良な人間ではあるが女子人気は意外と無かった。甘ったるい声で男を落とす感じが嫌。という意見が多かったが、これは単純に嫉妬であり、多分話し方を変えても男子からの人気は揺るがないだろうし、やはり女子からは何かしら陰で言われるだろう。 スタイルよし、顔よし、知力よし、そのうえオトナの色気まである。 どうやっても魅力的な蘭が嫉妬されるのは仕方のない事だった。「はー、ダメねぇ。どーにもうまく行かない。私、シフト作りは向いてないのかも。ね、悪いんだけど今月からヒロトくんがシフト作りやってみてくんない? 社員候補はバイトのうちから社員の仕事を回して社員に上がる前に教育しておいていいっていうアクアリウムの教育システムもあるし。何より、ヒロトくん人望あるから、私がお願いするより女子バイトたちが協力してくれると思うの」「えっ、僕がやるんですか? できるかな」「仕上げる前に必ず私がチェック入れてモレのないようにするから。やってみてよぉ。お願い~!」「まあ、そこまで言うなら……」 真面目でまっすぐなヒロトはスタッフ全員に慕われていた。言ったことはすぐやる。約束は必ず守る。ごまかしはしない。そんなヒロトは仕事仲間としてとても頼りになるし、その麻雀は男気に溢れていた。 一方、蘭の麻雀はあの手この手で相手を惑わし、ミスリードさせたり自滅に追いやるものだ。当然、蘭の方が麻雀は強い。まっすぐな麻雀なんてどうやっても強いわけがないのだ。裏をかくのが醍醐味のゲームでまっすぐが強いわけがない。 だが、それがヒロトの良さだった。ヒロトからしたら嫌な話だが、ヒロトと麻雀するとそこそこ勝たせてもらえるから楽しいのだ。 そんな理由もありヒロトを嫌うような人など1人としていない
last updateLast Updated : 2026-05-27
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第2部 三章【コバヤシ君の日報】その4 第十話 全性愛の宴

39.第十話 全性愛の宴 渋谷1号店女子バイトの橋本宴(はしもとうたげ)はショックを受けていた。 なぜなら、ひそかに慕っていた杜若蘭に彼氏ができてしまいそうだから。 わかってはいる。自分の想いは届くことはない事くらい。まず届けるつもりがない。 同性から告白されてもおそらく蘭に迷惑をかけるだけである。それがわからない宴ではなかった。 そもそも自分のこの気持ちが恋愛感情なのかもあやしかった。好きか嫌いかで言うと、めちゃくちゃ好き! というだけかもしれず。それが愛なのかは若い宴にはわからない。 ただ、近頃の浮かれている蘭の様子から察するに、やはり彼氏が出来たのだろう。そしてそれは多分、神戸緋呂斗チーフだろう。と気付いていた。 その予想が確信に変わったのはシフト表を見て満面の笑みになっている蘭を見た時だ。(あんなに嬉しそうな杜若副店長は始めて見た。何がそんなに嬉しいのだろう)と思ってシフト表を見てみると、チーフと一緒の日に休みになっているところがある。 責任者とサブ責任者が2人同時に休む、そんなシフトは珍しい。たしかにその日は2人がいない代わりに上村エリアマネージャーという人がいるしアルバイトも充分いるから2人とも休めるが(これは多分この日はデートだな)と宴は察してしまった。 宴は複雑な気持ちだった。それは大好きだった芸能人やアイドルが結婚した時とよく似た心境だ。(私の杜若副店長が誰かのものになるのは嫌)とも思うが(杜若副店長のあんな幸せそうな顔が見れたならそれだけで良かった)とも思う。 杜若蘭は宴にとってアイドルなのだ。 また、橋本宴は決して同性愛者という括りではなかった。彼女には性別という概念があまり無く、好きな人は好き。それが同性とか異性とかは気にならないのだ。実際、彼女は蘭が来るまでは渡辺健司を狙っていたし、高校時代は男子とも女子とも交際があった。シンプルに、好きな人とは一緒になりたい。だから付き合う。それだけなのだ。これを全性愛と言うらしい。 もしかしたらこちらの考えの方がわかりやすいまでありそうだ。 実は我々異性愛者(ふつうのひと)の方がどちらかといえば本能に支配された野性的な存在なのではないだろうか。(あーあ、副店長相当うかれてるな。鼻歌歌いながら昼休憩入っちゃった)※ゆるい店ではあっても一応、店内での歌、鼻歌は禁止なので
last updateLast Updated : 2026-05-28
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