「で、どこに行くんだよ? そろそろ教えてくれてもいいんじゃねーの?」「大教会だよ。エンビディア大司教っていう、偉いお方がいてね。彼にこの資料を届けるんだ」「げ、教会かよ。俺は中に入らねーぞ」「だめだめ。一緒に来てくれなきゃ、君の正体を怪しむのが出てくるかもしれない。いい? 君は見習い悪魔祓いっていう設定だからね」「はいはい、見習いのローシ、だったか? 孤児の」「よくできまちた」「チッ、バカにしやがって」 ものを投げられながらたどり着いたのは、荘厳な大教会。グレーのレンガで出来た建物のてっぺんには、黄金に輝く十字架がそびえ立つ。「悪趣味」「見習いがそんなこと言っちゃダメだろ」「はいはい」 小さく息を吐き、気持ちを切り替える。本当は人間の、ましてや悪魔祓いの言うことなど聞きたくはないが、首には浄化のチョーカーがある。逆らったらまた媚薬を打ち込まれるのは分かっている。 渋々ロキに続いて大教会に入る。中央にはレッドカーペットが敷かれており、祭壇のまわりは花でかこまれている。ずらりと並ぶ長椅子には、人がまばらに座っていた。(ぐっ、やっぱり教会はキツイな……) ヴェルガーは唇を軽く噛む。淫魔や悪魔にとって、神聖な教会は息苦しい。酸素が薄く、生ぬるい環境にいるような気分だ。 あの街の教会にいるレコルスは、そこまで力が強くなかったため、ここまで体調を崩すことはなかった。それに、すぐ隷属にしたため、息苦しさから解放されるのが早かったのだ。(あー、クソ! 蒸し風呂にいるみたいだ……) 徐々に室内温度が上がり、息苦しさが増していく。もっとも、普通の人間は何も感じないのだが。「エンビディア大司教、お久しぶりです」 黒いローブをまとった初老の男性を見つけると、ロキは彼に小走りで近寄る。ヴェルガーも仕方なくロキの後に続いた。「ロキか。久しいね。そちらの顔色が悪いのは?」「こちらはローシ。悪魔祓いの見習いです。僕が面倒を見てるんですよ。きっと長旅で疲れたのでしょう」「それは可哀想に。はじめまして、ローシ。私はエンビディア。大司教なんてのをやらせてもらっている者だ」「お初にお目にかかります、大司教。お会いできて光栄です」 ヴェルガーはなんとか笑顔を作って挨拶をする。人間に紛れこむことがあるため、ある程度の作法は心得ている。「流石はロキの元にいるだ
最終更新日 : 2026-04-27 続きを読む