嫌われ淫魔は忌み子の悪魔祓いに堕とされる のすべてのチャプター: チャプター 21 - チャプター 30

50 チャプター

21話

「で、どこに行くんだよ? そろそろ教えてくれてもいいんじゃねーの?」「大教会だよ。エンビディア大司教っていう、偉いお方がいてね。彼にこの資料を届けるんだ」「げ、教会かよ。俺は中に入らねーぞ」「だめだめ。一緒に来てくれなきゃ、君の正体を怪しむのが出てくるかもしれない。いい? 君は見習い悪魔祓いっていう設定だからね」「はいはい、見習いのローシ、だったか? 孤児の」「よくできまちた」「チッ、バカにしやがって」 ものを投げられながらたどり着いたのは、荘厳な大教会。グレーのレンガで出来た建物のてっぺんには、黄金に輝く十字架がそびえ立つ。「悪趣味」「見習いがそんなこと言っちゃダメだろ」「はいはい」 小さく息を吐き、気持ちを切り替える。本当は人間の、ましてや悪魔祓いの言うことなど聞きたくはないが、首には浄化のチョーカーがある。逆らったらまた媚薬を打ち込まれるのは分かっている。 渋々ロキに続いて大教会に入る。中央にはレッドカーペットが敷かれており、祭壇のまわりは花でかこまれている。ずらりと並ぶ長椅子には、人がまばらに座っていた。(ぐっ、やっぱり教会はキツイな……) ヴェルガーは唇を軽く噛む。淫魔や悪魔にとって、神聖な教会は息苦しい。酸素が薄く、生ぬるい環境にいるような気分だ。 あの街の教会にいるレコルスは、そこまで力が強くなかったため、ここまで体調を崩すことはなかった。それに、すぐ隷属にしたため、息苦しさから解放されるのが早かったのだ。(あー、クソ! 蒸し風呂にいるみたいだ……) 徐々に室内温度が上がり、息苦しさが増していく。もっとも、普通の人間は何も感じないのだが。「エンビディア大司教、お久しぶりです」 黒いローブをまとった初老の男性を見つけると、ロキは彼に小走りで近寄る。ヴェルガーも仕方なくロキの後に続いた。「ロキか。久しいね。そちらの顔色が悪いのは?」「こちらはローシ。悪魔祓いの見習いです。僕が面倒を見てるんですよ。きっと長旅で疲れたのでしょう」「それは可哀想に。はじめまして、ローシ。私はエンビディア。大司教なんてのをやらせてもらっている者だ」「お初にお目にかかります、大司教。お会いできて光栄です」 ヴェルガーはなんとか笑顔を作って挨拶をする。人間に紛れこむことがあるため、ある程度の作法は心得ている。「流石はロキの元にいるだ
last update最終更新日 : 2026-04-27
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22話

 大教会を出たふたりは、郊外にあるロキの別荘へ足を運んだ。どうやらロキはそれなりに地位が高いらしく、普段は城の敷地内にある豪邸に住んでいるが、ひとりになりたい時はこの別荘に行くらしい。 派遣された時のために、別の地方にも別荘があるらしい。あの街や周辺に行くことはほとんどないため、別荘はなかったと、道中で話していた。「お前がこんなすげー奴だったとはな。イカレ野郎のくせに」 ヴェルガーは別荘の中を見回しながら毒づく。平屋で部屋数が多いわけではないが、天井にはシャンデリアが煌めき、素人でも高級だと分かる調度品が並んでいる。「あはは、褒め言葉として受け取っておくよ。それより、君もお腹すいただろ? こっちにおいで」 ロキはソファに座ると、両手を伸ばす。ヴェルガーは呆れてため息をつく。「お前みたいなチビの上に俺が乗ったら、潰れるだろ」「あはは、それもそうか。じゃ、舐めて」 そう言ってロキは、足を開く。ヴェルガーは舌打ちをしながらもロキの前にしゃがみ、彼のズボンと下着を脱がせる。 可愛らしい顔に似つかない巨根を軽く握り、ロキを見上げる。「本当に、顔と合ってないよな。これ」「あっはは、ギャップがあっていいだろ? ね、そうやって僕の顔を見ながら咥えて」「ド変態が」 文句を言いつつ咥えるだけで背筋が震える。毎日聖水を飲んでいるロキの体は、淫魔や悪魔からしたら毒そのものだ。だが彼は魔法を用いて、毒を媚薬に変えることができる。そのせいでほんの少しロキに触れられただけで、たまらなく感じてしまうことがある。「んむぅ、ふ……♡」 巨根が喉に詰まり、舌が、脳が甘く痺れていく。まるで麻薬のようで、一度味わったら忘れられないそれは、口に含むだけで例えようのない幸福感に包まれる。(あぁ、もっと欲しい……。口も喉も、すっげぇ気持ちいいのに、ケツがうずく……) 口と喉が満たされるほど、体が切なく火照っていく。躾けられたのはほんの数日だというのに、体はすっかりロキに虐げられる悦びを覚えてしまった。「ふふ、物欲しそうな目。可愛いよ。もっと奥まで咥えられるでしょ?」 言い終わるや否や、ロキはヴェルガーの頭を掴み、彼の喉に巨根をねじ込んでいく。「んんっ!? んむぅー!」 苦しみより、なじられる快楽が勝つ。ヴェルガーの喉は期待に応えようと締め上げ、舌を懸命に這わせる。目からは
last update最終更新日 : 2026-04-27
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23話

 ロキは片手でヴェルガーの陰茎を掴むと、もう片方の手で棒を尿道に押し込んでいく。「んぎいぃ♡ ふーっ♡ ふーっ♡ お、んほぉ♡」「あっはは、なっさけない声だなぁ。まだ、これで終わりじゃないのに」 今度は30センチほどの紐を出し、ヴェルガーの睾丸と陰茎にきつく巻き付けていく。「ひいぃ!? おごっ♡ おおぉっ♡ い、いだっ、ああっ♡」「痛いのが好きなくせに」 きゅっと紐を縛ると、ヴェルガーは舌を突き出し、白目をむき、みっともないアヘ顔を晒す。気を良くしたロキは、乳首に爪を立てながらつまみ上げる。「ぎひいぃ♡ あひっ、んああっ♡」「すっかりマゾメスになっちゃって。僕は嬉しいよ。ヴェルガー」 ロキがグリグリと爪を動かす度に、ヴェルガーは悲鳴に似た嬌声を上げ、縛られた陰茎をビクビク震わせる。変身はいつの間にか解け、羽根と尻尾が出現していた。「さぁ、もっと可愛くなろうね」 床に置いてあった燭台を手に取り、ヴェルガーの体にかけていく。「あぎゃ!? ひぎっ、い、あああっ!」 低温蝋燭ではなく、普通の蝋燭だ。普通の人間なら熱さと痛みで狂い悶えるだろうが、ヴェルガーは違った。「あづうぅ♡ んぎっ、いぃ♡」 縛られた陰茎は萎えるどころか、更に勃起し、紐が食い込んでいく。ヴェルガーにとって、その痛みでさえ気持ちいい。「ふふ、淫魔ってこんなに調教しやすいんだ。それとも、ヴェルガーが特別なのかな?」 首筋、乳首、腹、太もも、陰茎に蝋を垂らしていく。蝋が垂れる度にヴェルガーの体は面白いくらいに跳ね、アナルは発情毒を垂らしながら物欲しそうに開閉を繰り返した。 ヴェルガーの褐色の裸体が蝋で白く染まると、ロキはようやく蝋燭の火を吹き消した。「あ、あぁ……♡ 熱くて、気持ちいい♡ 幸せぇ♡」 ヴェルガーは舌をだらりとさせ、焦点の合っていない目で天井を見ていた。「ふふ、全身に精液かけられたみたいで、すごくえっちだね。肌の色が色だから、余計に白が際立って、とっても綺麗だよ」「俺、綺麗……? へへ、うれ、ひぃ♡」 呂律の回らないヴェルガーを、ロキは慈しむような目で見る。自分がいなかったら壊れてしまいそうなヴェルガーが、愛おしい。「さてと、そろそろ本番行こうか。慣らしなんていらないだろ?」 アナルに亀頭を押し付けると、ヴェルガーは嬉しそうに笑う。「へへ、はぁ
last update最終更新日 : 2026-04-27
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24話

「栓、外そうね」 棒をゆっくり抜いていく。「おごっ♡ ひっ、んあぁっ♡」 玉がひとつ出る度に腰を揺らしながら嬌声をあげるヴェルガーが面白くて、わざとひとつずつ出していく。「あっ♡ あっ♡ はぅ♡」「ふふ……」「ひぎいいぃ!?」 一気に押し込むと喉が潰れそうな悲鳴を上げてくれる。「もっと見せて」「きゃふううぅっ♡」 今度は一気に引き抜く。全部抜けて安堵したのか、口角がわずかに上がっていた。「こっちも、ほどいてあげるよ」 睾丸と陰茎を縛り付けていた紐を解くと、だらだらと精液が零れてくる。ヴェルガーはあうあうと赤子のような声を上げていた。 ほとんど精液が流れ出たのを確認すると、ヴェルガーの顔を覗き込む。彼は白目をむいて痙攣していた。「あーあ、やりすぎちゃったかな。でもお腹いっぱいになったよね、ヴェルガー?」 ヴェルガーが目を覚ましたのは、真夜中のこと。淫魔も悪魔も、本来なら夜行性だ。だが、ここ数日はロキに付き合わされていたため、昼夜逆転していた。(やっと夜に起きれるか……) のっそり起き上がると、すぐ近くにロキの胡散臭い笑顔。「うおっ!?」「あっはは。おはよう、ヴェルガー。ま、夜なんだけどね」「何してやがる」「そろそろ起きたかと思って。ピロートークもなしに寝ちゃうから、寂しかったよ」「プレイ内容的にピロートークに持ってける雰囲気じゃねーだろ」「あっはは、それもそうか」「んで、なんで起きてんだよ」「ちょっと仕事してたら、こんな時間になったってだけ。ねぇ、今更だけど、ヴェルって呼んでいい? ヴェルガーって、呼びづらいし」「好きにしろ」「これからはヴェルって呼ぶね」「そうかよ」 そっぽを向くと、ロキは満足したのか、部屋から出ていく。ヴェルガーは複雑な気持ちでロキが出ていったドアを見る。「お前は何考えてるんだ?」 淫魔は性交相手の感情を読み取れる。といっても、「この後はこうしよう」などといった具体的な思考が読めるわけではない。ただ、漠然と寂しい、嬉しいなどといった感情が伝わってくるのだ。 ロキから流れてくる感情は、諦めややるせなさといったネガティブなものばかりで、いつものあの笑顔と結びつかない。「はぁ、めんどくせー人間」 激しいセックスの名残で重たい体を再び横たえ、声に出す。だが、ロキのことがどうしても頭から離
last update最終更新日 : 2026-04-28
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25話

 色々考えているうちに、ヴェルガーは再び眠ってしまい、早朝に目覚めてしまった。人間にとっては健康的でも、淫魔にとっては不健康な目覚めだ。「はぁ、なんで人間は、あんなのをありがたがるのかねぇ」 カーテンの隙間から見える太陽を、忌々しげに睨む。 羽根と尻尾を消し、ロキから買い与えられた服に着替えると、1階のリビングに行く。リビングには珈琲の香りが漂い、忌々しい朝日が差し込む。ロキはソファに座り、優雅に珈琲を飲んでいた。「おはよう、ヴェル。君も珈琲飲むかい?」「いや、いい」「好きじゃない?」「あぁ、そうだな。紅茶はまだ飲めるが、珈琲は美味いとは思えない」「大酒飲みなのに、そういうところはおこちゃまでちゅねぇ」「うるせぇよ」 朝から不快指数が急上昇するが、ロキとは言い合うだけ無駄だとこの数日で学んでいた。こういう時は黙っているに限る。 ロキの向かいに座ると、テーブルの上に封筒がいくつもあることに気づいた。昨日、ロキがエンビディア大司教に手渡していたものと同じ封筒だ。「それ、また誰かに送るのか?」「ん? あぁ、そうだよ。リシャール陛下と、別の国の大司教にね。忘れないうちに、送っちゃおうかな」 ロキは残りの珈琲を飲み干すと、立ち上がって転送魔法を発動する。中央に長方形の穴がある魔法陣が出現すると、ロキは宛先を言いながら、穴に封筒を入れていく。「よし、これで完了」 すべての封筒を入れ終えると、魔法陣は霧散して消えた。「あのじーさんにも、それで送ればよかっただろ」 昨日のことを思い出しながら、文句を言う。ロキは淫魔が教会に入れば体調を崩すことを知っていた。それなのに、ヴェルガーを無理やり連れ込んだのが、理解も納得もできていない。ロキは人間だと思わせるためだと言っていたが、必要なことに思えなかった。「大教会の中では魔法は禁止されてるからね。それに、大教会は観光禁止だから、君が外にひとりでいるのも不自然だし」 ヴェルガーの不満に気づいたのか、ロキは苦笑しながら言う。「意外と律儀なんだな」「失礼しちゃう。僕は誰よりも律儀で真摯だよ」「自分で言うなよ、胡散臭い」「あっはは、ひどいなぁ」 いつものおちゃらけたロキに、ヴェルガーは安堵する。(なんで俺、こんな奴の心配してたんだ? コイツに何があろうが、俺には関係ない。むしろ、消えてくれた方が
last update最終更新日 : 2026-04-28
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26話

 ロキは各地に資料を転送しているのと同時刻。エンビディアは自室で怒りに震えていた。「あの小僧、よくも私の前でヘラヘラしていられるものだ」 亡き妻、リリスのことは、目を閉じなくても思い出せる。エンビディアが生涯をかけて愛を誓った唯一の女性だ。 旅行好きのリリスは、よくひとりで各地を巡っていた。本当はエンビディアも一緒にいたかったが、立場上、王都を離れるわけにはいかない。「大丈夫、結婚前から、よくひとり旅してたもの。あなたの分まで楽しんでくるわ。お土産と写真、楽しみにしてて」 エンビディアが同行できないことを申し訳なく思う度に、リリスは笑顔でそう言ってくれた。そして旅先から絵葉書を送ってくれたり、撮ってきた写真を見せながら話を聞かせてくれたりして、エンビディアを楽しませてくれた。 そんな心優しい妻が、何よりも大事だった。だが、アルマディナに旅行に行った際、例の大嵐に飲まれ、命を落とした。遺体や形見すら見つかっていない。 愛しい女性は海の藻屑となり、二度と会えないのだ。 当時、司教だったエンビディアは、アルマディナでの悲劇を知っている。 当時7歳のロキが、原因不明の力でフィニトスの命と力を吸収してしまい、フィニトスの代わりに教会に縛り付けられていたことを。 そしてロキが自分の意志でフィニトスを屠ったわけではないことも、虐げられていたことも知っている。 だが、それがどうしたというのだ。 ロキはフィニトスの命と力を奪ったのだから、虐げられるのは当然だ。罪に年齢など関係ない。 ロキは我が身可愛さに、なすべき責務を放棄した。そのせいで神の怒りに触れ、大嵐がアルマディナを襲い、妻を含めた多くの人々の命を奪った。ロキが逃げ出さなければ、妻は命を落とさなかったはずだ。 否。ロキさえいなければ、アルマディナは今もフィニトスの加護を受け、美しい観光地として名を馳せ続けていただろう。何も失われずに、平和に時が流れていたはずなのだ。「ロキ、私は貴様を許さない」 エンビディアは気づいていた。一緒にいた青年が悪魔の類であることを。羽根と尻尾を隠してはいるが、邪悪な気配は消せない。何より、彼は教会に入った途端、体調を崩していた。それが魔族である証拠だ。 妻を奪い、悪魔と結託したあの男を許すなど、できるわけがない。 机の上にある結婚式の時の写真を手に取り、リリスを
last update最終更新日 : 2026-04-28
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27話

 資料を各地に転送し終えたロキは、ヴェルガーを連れて森の中を歩く。かれこれ20分は歩いているが、同じ景色が続くだけ。「おい、ロキ。どこに向かってるんだよ?」「堅苦しくない場所、とだけ言っておくよ」「こんな森に堅苦しい場所がある方が驚きだ」「はは、確かに」「いい加減教えろよ。どうせ俺もそこに行くんだろ?」 ヴェルガーが苛立ちを隠さずに言うと、ロキは立ち止まり、振り返る。顔には例の胡散臭い笑顔が張り付いていた。「な、なんだよ」「あんまりしつこいと、祓っちゃうぞ♡」「チッ、分かったよ……」 更に歩くこと30分。ロキは知らなければ見落とすような細道に曲がる。細道を少し進むと開けた場所に出た。心もとない小川がちょろちょろと流れ、そのすぐそばに年季の入った小屋がある。ちょうど今陽が当たっている場所には、物干し竿まであった。「誰が住んでるんだ?」「入れば分かるよ。いや、裏手かな?」 耳を済ませると、ざく、ざく、と土を掘るような音がする。ふたりで小屋の裏手に行くと、ドラム缶風呂と小さな畑があった。麦わら帽子を被った男が、畑を耕している。うつむいているため顔は見れず、体格で男と分かるだけで、年齢はいまいち分かりにくい。「ただいま」「おぉ、ロキ。帰ったか」 ロキが声をかけると、男性は背筋を伸ばし、鍬を地面に刺す。汗を拭いながら爽やかな笑顔を浮かべる白髪の中年男性は、ロキによく似ていた。「ロキの父親か?」「いかにも。ロキの父親のニアスだ。そういう君は?」「彼はヴェルガー。淫魔だよ」「あ、おい!」 自分の正体を言うのをためらっていると、ロキが勝手に紹介してしまう。恐る恐るニアスを見ると、彼は好奇心に目を輝かせ、ヴェルガーを見ていた。「おぉ、君がヴェルガーくんか!」「なんで知ってるんだよ」「手紙で教えてもらったからね。私が作った浄化のチョーカーが役に立ったって」「これお前が作ったのかよ!?」 忌々しいチョーカーに触れる。服に隠れていたチョーカーがあらわになると、ニアスは嬉しそうに笑った。「つけてくれて嬉しいよ」 まるで恋人が贈ったプレゼントをつけてきてくれたかのような喜び方に、ヴェルガーの不快指数が急上昇する。(親子だな。悪い意味で!)「外したくても外せねぇんだよ!」「あっはは、それはそうだ。ロキが聖力をこめながらじゃないと、外
last update最終更新日 : 2026-04-28
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28話

 その後危険な試作品が出てくることはなく、平和に時が流れた。といっても、それは親子にとっての平和で、ヴェルガーは倫理観が崩壊した親子の会話でぐったりした。 午後3時過ぎ、ロキは軽食を食べ終えると、ベッドの上で体を丸めて寝息を立てた。(寝顔は天使なんだけどな……) あどけなさが残る寝顔を見ながら、苦笑する。(はぁ、どうするか……) ロキが眠ってしまったことによって、ニアスと実質ふたりになってしまった。先程までの雑談はロキを介していたから続いていただけで、ふたりだと何を話せばいいのか分からない。「君には感謝しないといけないかもしれないね」 ニアスはお茶をひと口飲み、息を吐くと、噛みしめるように言った。「感謝? 何言ってるんだ?」「その子が背負うものは、あまりにも大きい。罪も、立場もな。そのせいか、作り笑いばかりだった。けど、君といるとロキは、心の底から笑えているように見えるよ」 息子の寝顔を見ながら、ニアスはつらそうに話す。そこには先程までのマッドサイエンティストの面影はなく、子供思いの父親がいた。「気の所為だろ」 感謝されることに慣れないヴェルガーは、そっけなく言う。ロキと知り合って、10日経つかどうかだ。それに自分はいつ祓われてもおかしくない。そんな相手の大切な存在になるなど、まっぴらごめんだ。「いいや、そんなことはない。淫魔の君にこんなことを頼むのもおかしな話かもしれないが、どうかこれからも、ロキを支えてやってくれないか?」「冗談じゃねーぜ。事あるごとに俺を祓ってこようとする奴なんか、誰が支えるかよ」 反射的に吐き捨てるように言う。支えるのは、フェアな相手がいて成り立つものだ。狩る側と狩られる側にいるロキと自分は、お世辞にもフェアとは言えない。第一、ヴェルガーはロキに振り回されているだけだ。「そうかい、それは残念だ」 残念と言いながらも、ニアスはにこにこしている。居心地の悪さを覚えたヴェルガーは、小屋から出る。「支え? はっ、冗談じゃねぇ」 ニアスの言いたいことは分かる。天使殺しの異名も、過去も、今の立場も、まだ20歳を過ぎたばかりのロキにはあまりにも重すぎる。同じ状況に陥って、ロキのようにたくましく生き抜ける人間は少ないだろう。 だが、だからといってヴェルガーが同情したり、支えたりする義理はどこにもない。ロキによって囚わ
last update最終更新日 : 2026-04-28
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29話

 その日、ロキとヴェルガーは、ニアスの小屋に一泊することになった。ヴェルガーとしては、一刻も早くこの居心地が悪い小屋から出ていきたいが、ロキが起きたのは夕方。王都の別荘まで、歩きで1時間近くかかる。途中で夜になって迷子になるのがオチだ。 ヴェルガーは自分がロキを抱えて飛ぶことを提案したが、王都の近くを飛んだら他の悪魔祓いや、王都を守る天使サフィリスがヴェルガーを撃ち落とすからと却下されてしまった。 ニアスが外のドラム缶風呂に入ってる間、ヴェルガーはベッドに腰を掛けていた。ロキはヴェルガーに後ろから抱きつき、耳元に唇を寄せる。「あれだけ帰りたがってたってことは、もうお腹すいちゃったの? ヴェルってば、えっちだなぁ」「バカ、ちげーよ!」 鬱陶しくて振り払うと、ロキは無邪気な子供のようにきゃっきゃとはしゃぐ。 寝る時間になると、ニアスはふたりにベッドに使うように言い、研究スペースに座った。「あんたは寝ないのか?」「考察したいことがあるからね」 ニアスはいたずらっぽく笑うと、ロキが各地に転送していた封筒を見せた。 ひとり用のベッドは狭い。ヴェルガーがロキを抱え、羽根で包むようにしないと、ふたりのスペースを確保できない。「なんか、ドキドキするね♡」「変なこと言ってねぇで、とっとと寝ろ」「はーい」 ロキは素直に目を閉じ、寝息を立てる。気持ちよさそうな寝顔に、あっけにとられる。「もう寝たのか……?」 小声で声をかけても、起きる気配はない。つい先程までロキにイライラしていたというのに、この寝顔を見ると消えるのだから不思議だ。「おやすみ、チビ」 そう声をかけ、ヴェルガーの目を閉じた。 翌日、ふたりは再び大教会に向かう。蔑む視線も、投げられるゴミも、大教会も、すべてが不愉快だ。「なんでまた大教会なんざに行くんだよ?」「立ち去る前に挨拶するのは礼儀だからね」「くっだらねぇ」「ちょっと挨拶するだけだから、ヴェルは外で待ってていいよ」「そんじゃ、お言葉に甘えて待たせてもらうぜ」 大教会の前につくと、ヴェルガーは少し離れたところにあるベンチに座って待つことにした。 ロキがひとりで大教会に入ると、不自然なほどに静かだ。王都の人間は特に信心深い人が多い。そのため、平日だろうが人が完全に途切れることなどありえないのだ。 何より、天使の加護を感じ
last update最終更新日 : 2026-04-28
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30話

「おい、大丈夫か!?」 焦ったヴェルガーの声に、固く閉じていた目を開ける。ヴェルガーは肩で息をし、心配そうにロキの顔を覗き込んでいる。「あぁ、なんとか……。一体何が……いっ!?」 立ち上がろうと地面に足をつけた瞬間、激痛が走る。足を見てみると、靴が焼け焦げ、むき出しになった足はやけどをしていた。「やけどか……。まずはここを出るぞ」 周囲を見回し、自分がまだ大教会の中にいると気づく。奥にある祭壇から、出入り口付近まで、ヴェルガーが運んでくれたようだ。祭壇に目を向けると、轟々と燃え盛っていた。 ヴェルガーに抱きかかえられたまま外に出ると、エンビディアと大勢の人々がいた。エンビディアは怒りで顔が真っ赤になって震え、人々の顔は恐怖が滲んでいる。「ロキ、やってくれたな!」 怒りに震えるエンビディアは、ずかずかと大股で近寄ると、ロキの胸ぐらを掴んだ。「やめろ、コイツは怪我をしてる!」「貴様は黙れ!」 ヴェルガーがかばうも、エンビディアに一喝されてしまう。ロキは何が起きたのか、必死に情報を整理しようとするが、考えれば考えるほど、混乱してしまう。「何が、起きたんですか……?」「とぼけるな、悪党め!」 エンビディアの拳が、ロキの顔に叩き込まれる。熱を帯びた痛みの数秒後、鼻血が垂れ、真っ白なロキのローブを汚す。「皆様、ご覧になりましたか!? 天使殺しのロキは、王都カロナの大教会を爆破しました! しかも、悪魔を連れています!」 エンビディアの言葉で、ロキはようやく気づいた。彼が自分を助けるために、本来の姿に戻っていたことに。(僕のせいで、ヴェルガーが……!)「悪魔と結託して、天使を殺したんじゃないのか?」「やっぱり、フィニトス様が殺された時、アイツも殺すべきだったんだ!」「穢らわしい!」 人々はじりじりとにじり寄り、非難する。彼らの手には、鍬やスコップ、箒やデッキブラシなど、武器になり得るものが握られていた。「やめろ!」「黙れ、悪魔が!」「テメェも殺してやる!」「俺は悪魔じゃない、淫魔だ! それにロキは何も……」「うるせぇ!」「静粛に!」 人々の動きを止めたのは、エンビディア。人々は武器を構えたまま、顔だけをエンビディアに向ける。「彼は、大教会を爆破させるだけでは飽き足らず、あろうことか、私の相方である天使サフィリスを誘拐しました
last update最終更新日 : 2026-04-28
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