陸斗も明らかにこちらの一行に気づいていた。雪乃の顔で二秒ほど視線を止めると、片眉を上げて尋ねた。「お前たちは?」「テレビ局からドキュメンタリーの撮影で来ているんです」蓮也がすかさず答えた。「ドキュメンタリー?」陸斗は鼻で笑った。「こんな何もないド田舎の、何を撮るって言うんだよ」その場の空気が一瞬、気まずく凍りついた。村長が慌てて割って入る。「陸斗さん、長旅お疲れ様でした。まずは宿泊先へご案内します。雪乃さん、視察を続けてください。何かあればいつでも声をかけてくださいね」雪乃は小さく頷き、凪いだ視線を陸斗からスッと外すと、きびすを返して村の奥へと歩き出した。「お母さん、あのお兄さんの服、すごくかっこいいね」隼人が小声で囁いた。「そうね」雪乃は彼の頭を優しく撫でた。「でも、私たちは服を見に来たわけじゃないの。ここの人たちがどんな風に暮らしているのかを見に来たのよ。覚えてる?」「うん、覚えてるよ」背後では、遠ざかっていく母子の背中を見送っていた陸斗が、泥はねだらけになった自分の靴に目を落とし、苛立たしげに「チッ」と舌打ちをしていた。陸斗の着任は、瞬く間に村中の注目の的となった。彼は役場の宿舎で唯一の個室トイレ付きという「豪華な」部屋をあてがわれたが、それでも初日の夜は、容赦なく吹き込む隙間風と硬いベッドに悩まされ、一睡もできなかった。翌朝、彼は目の下に濃いクマを作って村の食堂に現れた。並べられた白米と具がほとんど浮いていない味噌汁、それに一皿の漬物という、あまりに質素な献立を前に、これ以上ないほど不機嫌そうに顔を歪めた。「……朝飯はこれだけか?」配膳係のおばさんはニコニコとしている。「山の人間はみんなこれを食べてるんだよ。陸斗さんの口には合わないかい?」「合うわけないだろ」と喉まで出かかった陸斗だが、空腹で腹が情けなく鳴っているため、渋々椅子に腰を下ろした。ご飯を一口口に運んだその時、隣のテーブルから子供の無邪気な笑い声が聞こえてきた。隼人だ。彼は立ち上る湯気を浴びながら味噌汁をふうふうと吹き、ちびちびと味わうように啜っている。その隣には雪乃が座っていた。母子の前に置かれているのも、全く同じ粗末な朝食だ。「お母さん、このお漬物すごく美味しいね。パリパリしてる」「そうね。村の人が自分たちで漬
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