応接室の花は、すでに整っていた。けれど美緒は、もう一度だけ花器の向きを確かめた。床の間の掛け軸に対して、枝先がわずかに右へ流れている。ほんの少しのことだった。誰も気づかないかもしれない。けれど、佳乃子は気づく。この家では、気づかれないことよりも、気づかれたときにどう見えるかが大切だった。美緒は花器を両手で持ち、音を立てないように数ミリだけ動かした。陶器の底が畳の上の薄い板に触れる、そのわずかな感触にまで神経が向く。朝から動き続けているせいか、指先が少し冷えていた。応接室は、客を迎えるための部屋というより、久世家が久世家であることを証明するための部屋に見えた。磨かれた座卓。季節に合わせて替えられる掛け軸。古いが手入れの行き届いた茶箪笥。壁際には、先代たちの写真が小さな額に収まっている。どれも古く、静かで、重みがある。部屋全体に、ほのかな香の匂いが漂っていた。強すぎてはいけない。弱すぎてもいけない。来客が部屋に入った瞬間、上品だと感じる程度でなければならない。美緒は窓を少しだけ開けた。庭の木々が朝の光を受けて、葉の先を光らせている。高台にあるため、遠くに町の屋根が少し見えた。外の空気は澄んでいるのに、応接室へ戻ると、閉じた場所の静けさが肌にまとわりつく。茶器の数を確かめる。来客は三人と聞いている。佳乃子を含めて四客。念のため、もう一客。湯呑みの模様の向き、菓子皿の色、茶托の艶。座布団は客の膝が座卓に近すぎない位置に置く。佳乃子の席は床の間に近い側。美緒は入口近くに控える。呼ばれたときすぐ動ける位置で、けれど会話の邪魔にならない場所。この部屋に、美緒が座る場所はなかった。それは当然のことのようで、だからこそ改めて考える機会もなかった。美緒がそこにいる意味は、席に座ることではない。席に座る人たちが気持ちよく話せるように、気配を消して動くことだった。手土産を置く台に白い布をかけ、端を指で整える。来客用のスリッパは玄関に並べた。廊下から応接室までの通り道に埃がないか、もう一度だけ視線を滑らせる。大丈夫。そう思ってから、美緒はすぐに打ち消した。大丈夫かどうかを決めるのは、自分ではない。廊下の向こうから、衣擦れの気配が近づいてきた。佳乃子だった。今日の佳乃子は、淡い若草色の着物を着ていた。帯は控えめだが上質で、胸元には小さな真珠の帯留めがある。髪は
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