All Chapters of 愛人に夢中のクズ夫へ。実は私、インフルエンサーなの ~離婚カウントダウン開始よ、首を洗って待ってることね~~: Chapter 91 - Chapter 100

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知らない顔

月曜日。須藤グループ本社。午前。弘人は取引先との打ち合わせに出席していた。監査対応は続いている。問題が解決したわけではない。だが少しずつ落ち着き始めていた。会議室では新商品の販促企画について話し合いが進んでいる。担当者が資料を切り替えた。「こちらが候補になります」画面に資料が映し出される。弘人は何気なく目を向けた。「最近ですと、Mayさんとのタイアップが好調でして」担当者が説明する。「May?」弘人は聞き返した。「はい」担当者が頷く。「美容・ライフスタイル系のインフルエンサーです」「女性向け商品の販促効果が高いんですよ」画面には実績資料が表示されている。数字も悪くない。むしろかなり良い。「そんなに有名なんですか」役員の一人が尋ねる。担当者が笑った。「かなり有名ですね」「企業案件の評判も良いですし」「最近はイベント出演も増えています」弘人は黙って資料を見る。正直なところ。そういう分野には詳しくない。だが。担当者の反応を見る限り、業界では相当知られた存在らしい。 ◇◆◇ 会議終了後。弘人は一人で資料を見返していた。そこに小さく名前が載っている。May。聞き覚えのある名前だった。麻衣子が以前そんな名前を口にしていた気がする。詳しく聞いたことはない。聞こうと思ったこともなかった。仕事の話だと思っていたからだ。だが。取引先がここまで高く評価するほどの存在だったとは思わなかった。弘人は資
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選ばれる理由

午前十一時。都内のオフィスビル。麻衣子は会議室にいた。向かいには広告代理店の担当者が二人。テーブルの上には企画書が並んでいる。「本日はお時間をいただきありがとうございます」担当者が頭を下げた。麻衣子も会釈を返す。今回の案件は大型だった。化粧品ブランドの新シリーズ立ち上げ。単発ではなく、数か月にわたるプロモーション企画だ。担当者が資料を開く。「実は今回、複数の候補者を検討していたんです」麻衣子は黙って続きを待つ。「その中でMayさんを推薦する声が非常に多くて」担当者が笑った。「ありがたいことです」麻衣子も微笑む。だが驚きはなかった。仕事を続けていれば、こういう話は珍しくない。重要なのはここからだ。条件。スケジュール。求められる内容。そこを確認しなければならない。 ◇◆◇ 一時間後。打ち合わせは無事に終了した。内容は悪くなかった。むしろかなり良い。エレベーターへ向かいながら、麻衣子はスマートフォンを取り出す。新しい通知が届いていた。別企業からのメールだった。取材依頼。さらにイベント出演の相談も来ている。思わず苦笑する。最近は本当に忙しい。昼食は移動の合間に済ませた。午後も予定が入っている。今度は動画企画の打ち合わせだった。担当者は若い女性だった。「Mayさんのレビューって信頼されてますよね」資料を見ながら言う。「そうでしょうか」「はい」担当者は即答した。「売り込みっぽ
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指名案件

翌週。都内の広告代理店。麻衣子は会議室にいた。担当者が資料を広げる。今回の案件は大手食品メーカー。新商品のプロモーション企画だった。「実は今回」担当者が少し身を乗り出す。「先方からMayさんをご指名いただいているんです」麻衣子は目を瞬いた。指名案件。珍しくはない。だが大手企業となると話は別だった。「そうなんですね」「はい」担当者が頷く。「以前の案件を評価していただいたそうです」資料には企画内容が並んでいる。動画。記事。イベント。複数媒体を使った大型企画だ。条件も悪くない。担当者は続ける。「実は競合他社の方も候補に挙がっていたんです」「ですが最終的にMayさんで決まりました」麻衣子は静かに資料を閉じた。嬉しくないわけではない。だが。浮かれる年齢でもなかった。仕事は結果が全てだ。選ばれたなら応える。それだけだった。◇◆◇打ち合わせ終了後。担当者が見送ってくれる。「本当に助かります」「こちらこそ」エレベーターへ向かう。スマートフォンを確認する。未読メールが増えていた。取材依頼。案件相談。イベント出演。少し前までとは明らかに違う。活動を本格化してから、 仕事が仕事を呼び始めている。◇◆◇午後。今度は別件の撮影だった。スタジオへ入る。スタッフが駆け寄ってくる。「Mayさん、お疲れ様です」現場は慌ただしい。照明。カメラ。衣装。準備が進んでいる。麻衣子は資料を確認した。流れを把握する。質問をする。そして撮影へ入った。◇◆◇撮影終了後。スタッフの一人が言う。「Mayさんって本当に仕事が早いですよね」麻衣子は苦笑する。「長いので」「でもそれだけじゃないですよ」スタッフは笑った。「ちゃんと商品を理解してから話してくださるので」「企業さんの評判もすごく良いんです」麻衣子は少し照れたように笑う。褒められるのは嫌いではない。だが。結局は積み重ねだ。派手な近道はない。◇◆◇夜。自宅。麻衣子はソファへ腰を下ろした。今日は珍しく少し疲れていた。スマートフォンを開く。新着メールが三件。案件相談が二件。イベント依頼が一件。思わず笑ってしまう。忙しい。本当に忙しい。だが。悪くない。むしろ今の方が自然だった。結婚してから縮小
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評価

須藤グループ本社。午前。役員会議。弘人は資料へ目を通していた。新規プロジェクトの説明が続いている。担当役員がスクリーンを指した。「こちらがプロモーション案になります」販促計画。広告戦略。提携企業。数字が並んでいる。弘人は何気なく資料をめくった。「SNS施策についてですが」担当者が説明を続ける。「今回は外部インフルエンサーとの連携を検討しています」スクリーンが切り替わる。候補者一覧。実績。フォロワー数。担当者はその中の一人を指した。「第一候補はこちらです」名前が表示される。――May。「またMayさんか」役員の一人が笑う。担当者も苦笑した。「実績が安定していますので」「特に女性向け商材との相性が良いんです」「企業側から指名されることも多いですね」弘人は黙って資料を見る。最近よく耳にする名前だった。「そんなに評価されているんですか」別の役員が尋ねる。担当者が頷く。「かなり有名ですね」「炎上も少ないですし」「案件対応も丁寧だそうです」「代理店からの評判も良いです」会議室に感心したような声が広がる。弘人は資料へ目を落とした。イベント実績。企業案件。アンバサダー契約。想像していたより規模が大きい。単なるSNS投稿ではないらしい。 ◇◆◇ 会議終了後。弘人は一人で資料を見返していた。May。またその名前だった。取引先でも。
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オファー候補

数日後。須藤グループ本社。社長室。弘人は広報部から提出された企画書へ目を通していた。新商品のプロモーション案。ターゲットは女性層。SNS施策も重視されている。ページをめくる。そこに見覚えのある名前があった。――May。弘人は自然と視線を止める。コンコン。ノックの音。「入れ」広報部長が入室した。企画説明のためだ。弘人は資料を閉じる。「このMayという人物だが」広報部長はすぐに頷いた。「第一候補です」「かなり評判が良いそうだな」「はい」広報部長は笑う。「業界では有名ですね」「女性向け商品の実績も豊富です」弘人は資料を見直した。イベント。企業案件。アンバサダー契約。数字だけ見ても悪くない。むしろ優秀だ。「オファーは可能なのか」その問いに。広報部長は少し困ったような顔をした。「それが……」言葉を濁す。「人気の方なので」「スケジュールが埋まっていることも多いんです」弘人は眉を上げた。「そこまでか」「はい」広報部長は苦笑する。「代理店経由で打診することになりますが」「受けてもらえるかは条件次第ですね」弘人は再び資料へ目を落とした。正直なところ。単なるインフルエンサーだと思っていた。だが。話を聞く限り違う。企業が取り合う存在。それだけの価値があるらしい。「一度打診してみろ」弘人は言った。「予算も含めて検討する」
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依頼主

翌日。午前。麻衣子はカフェの窓際席に座っていた。午前中の打ち合わせまで少し時間がある。その間にメールを確認する。未読メールは相変わらず多い。案件相談。取材依頼。イベント関連。一つずつ目を通していく。その中に昨夜届いていた広告代理店からのメールがあった。『案件ご相談の件』新規案件らしい。麻衣子は何気なくメールを開いた。内容を読み進める。商品の概要。ターゲット層。想定スケジュール。条件は悪くない。むしろかなり良い。最近は大型案件も増えている。その一つだろう。そう思った。だが。依頼主の名前を見た瞬間。麻衣子の指が止まった。須藤グループ。その文字が画面に表示されている。一瞬だけ。思考が止まる。そして小さく息を吐いた。「そう来たのね……」思わず呟く。偶然なのか。それとも必然なのか。分からない。だが。よりによって須藤グループだった。麻衣子はもう一度メールを読み返した。代理店経由の正式な相談。内容に不自然な点はない。案件としても魅力的だ。個人的な感情を抜きにすれば。受ける価値は十分にある。スマートフォンが震える。代理店担当者からだった。『ご検討いただけますでしょうか』麻衣子は少し考える。そして返信画面を開いた。すぐには返事を送らない。まず内容を整理する。感情で判断するつもりはなかった。仕事は仕事だ。それとこれとは別である。◇◆◇その頃。須藤グループ本社。広報部では企画の準備が進められていた。「返事はまだですか?」担当者が尋ねる。代理店担当が苦笑する。「人気の方ですから」「即答は難しいと思います」「まずは検討いただく形ですね」広報担当者は頷いた。それもそうだ。有名なインフルエンサーなのだから。◇◆◇社長室。弘人は報告を受けていた。「Mayさんには打診済みです」広報部長が説明する。弘人は資料から目を上げた。「そうか」短い返事。それだけだった。まだ決まったわけではない。受けてもらえるかも分からない。だが。もし実現するなら悪くない。そう考えていた。◇◆◇夕方。麻衣子は帰宅していた。パソコンを開く。再び依頼内容を確認する。須藤グループ。見慣れた名前。見慣れすぎた名前だった。少し前の自分なら。即座に断ったかもしれ
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仕事は仕事

翌日。都内の会議室。麻衣子は広告代理店の担当者と向かい合っていた。須藤グループ案件についての打ち合わせだ。担当者が資料を広げる。「ご検討いただきありがとうございます」「こちらこそ」麻衣子は微笑む。正式な受諾ではない。今日は条件確認のための打ち合わせだった。担当者が説明を始める。商品の概要。プロモーション内容。契約期間。想定スケジュール。内容自体に問題はない。むしろ魅力的な案件だった。だが。麻衣子は一つ気になっていることがあった。「確認ですが」担当者が顔を上げる。「はい」「発信内容の事前チェックはありますか?」担当者は少し考えた。「表現上の確認はあります」「ただ、原稿を完全指定する形ではありません」麻衣子は頷く。重要なのはそこだった。Mayの仕事は信用で成り立っている。企業の言葉をそのまま読むだけなら意味がない。「商品の感想は私自身の言葉で発信したいんです」担当者はすぐに頷いた。「その点は先方も理解しています」「むしろそこを期待しているそうです」麻衣子は資料へ目を落とした。条件は悪くない。拘束期間も許容範囲。報酬も適正だ。そして何より。仕事として面白そうだった。「もう一点だけ」麻衣子が言う。担当者が身を乗り出す。「契約期間中も他社案件は受けます」「競合商品を除いてですが」担当者は笑った。「もちろんです」「その条件は問題ありません」どうやら先方も無理な囲い込みをするつもりはないらしい。 
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正式受諾

翌日。午前。麻衣子は自宅のリビングでパソコンを開いていた。代理店から修正版の契約条件が届いている。昨日の打ち合わせで確認した内容も反映されていた。発信内容への過度な介入はなし。競合案件の制限も最小限。スケジュールも問題ない。麻衣子は一つずつ確認していく。内容を読み終えたあと。椅子にもたれた。条件は十分だった。仕事としても面白い。何より。Mayとして受ける理由はあっても、断る理由が見当たらない。スマートフォンが震える。代理店担当者からだった。『ご不明点などございましたでしょうか』麻衣子は小さく笑う。待っているのだろう。返信画面を開く。そして短く入力した。『契約内容を確認いたしました』数秒だけ指が止まる。それから続きを打った。『正式にお引き受けいたします』送信。それで終わりだった。数分後。代理店の担当者から電話が入る。「ありがとうございます!」第一声から声が弾んでいた。麻衣子は思わず苦笑する。「そんなに喜ばなくても」「いえ、本当に助かりました」担当者は心底安心したようだった。「先方も喜ぶと思います」通話を終えたあと。麻衣子はカレンダーを開く。撮影日程。打ち合わせ。イベント。新しく須藤グループ案件が追加される。仕事がまた一つ増えた。忙しくなる。だが嫌ではない。むしろ充実していた。 ◇◆◇ 同じ頃。須藤グループ本社。広報
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進む準備

須藤グループ本社。広報部。会議室では朝から打ち合わせが行われていた。「Mayさんとの初回打ち合わせですが」担当者が資料を配る。企画概要。スケジュール。撮影候補日。関係者が真剣な表情で資料を見ていた。正式契約が成立した以上、準備を進めなければならない。「思ったより早く決まりましたね」若手社員が言う。担当者が苦笑した。「正直、難しいと思ってた」「かなり人気の方だからな」別の社員も頷く。社内の空気は明るかった。今回の企画は期待されている。その目玉の一つがMayだった。 ◇◆◇ 午前。社長室。広報部長が企画の進捗報告に来ていた。「初回打ち合わせの日程が決まりました」弘人は資料へ目を落とす。「順調そうだな」「はい」広報部長も満足そうだった。「先方も協力的です」「評判通りですね」弘人は小さく頷く。最近は取引先からも名前を聞く。May。業界内で評価されている人物らしい。「当日は私も同席した方がいいか?」弘人が尋ねる。広報部長は少し考えた。「お時間が取れるようでしたら」「先方も喜ばれると思います」弘人は予定表を見る。空いていない。だが不可能でもない。「調整してみる」そう答えた。 ◇◆◇ 同じ頃。監査部。彩花は資料を前に固まっていた。追加確認。再確認。説明要求。最
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初回打ち合わせ

打ち合わせ当日。須藤グループ本社。広報部では朝から慌ただしい空気が流れていた。「会議室の準備は?」「終わっています」「資料は?」「こちらです」担当者たちが慌ただしく動き回る。今日はいよいよMayとの初回打ち合わせだった。「社長は来られそうですか?」若手社員が尋ねる。広報部長はスケジュール表を確認した。「本来は同席予定だったんだが……」言葉を濁す。ちょうどその時。内線が鳴った。広報部長が電話を取る。数秒後。小さくため息を吐いた。「社長は無理だ」周囲から残念そうな声が上がる。急なトラブル対応が入ったらしい。 ◇◆◇ 一方。麻衣子は須藤グループ本社へ向かっていた。黒のジャケット。シンプルな装い。仕事用の顔だ。代理店担当者が隣を歩いている。「本日はよろしくお願いします」「こちらこそ」エントランスへ入る。受付を済ませる。案内係が現れる。そのまま会議室へ向かった。会議室へ入ると、広報部の担当者たちが立ち上がった。「本日はありがとうございます」丁寧な挨拶。名刺交換。自己紹介。打ち合わせが始まる。担当者たちはどこか緊張していた。Mayは想像以上に落ち着いている。話も分かりやすい。質問も的確だ。◇◆◇企画説明が進む。麻衣子は資料へ目を通しながら確認していく。「こちらのターゲット層ですが」「二十代後半から三十代前半が中心ですか?」
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