翌朝。須藤グループ本社。監査部からの追加確認は止まらなかった。経理部。秘書室。営業部。関係部署には次々と問い合わせが届いている。彩花の机の上にも、朝から資料が積み上がっていた。そのとき。内線が鳴る。「はい」『社長室へ』短い呼び出しだった。彩花は小さく息を吐く。最近は呼ばれるたびに胃が痛くなる。 ◇◆◇ 社長室。入室すると、弘人の前には複数の資料が広げられていた。経理部長もいる。空気は重い。「辻本」弘人が資料を差し出す。「この案件だ」彩花は受け取る。そして顔が曇った。また例の案件だった。社長室経由で処理された外部契約。監査部が何度も確認している案件だ。「処理したのはお前だな」弘人が言う。彩花は頷く。「はい」「経緯は」「社長の了承をいただいています」思わずそう答えた。部屋が静かになる。経理部長が視線を伏せる。弘人の表情がわずかに変わった。「了承したのは覚えている」弘人は低く言う。「だが処理内容の確認は担当の仕事だろう」彩花は息を飲んだ。「……え?」「申請内容と実際の処理が違う」弘人は資料を指で叩く。「それを確認するのは誰だ」彩花の顔色が変わる。そんなことを言われるとは思わなかった。今までずっと。弘人のために動いてきた。急げと言われた。優先しろと言われた。
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